Fallen Angel

エリックはフラッと立ち寄った町でステラを好きになった。しかしステラはなかなか手強い。
そこでエリックは金を持っているジェーンという女性に近づいた。ジェーンを騙して付き合い結婚した。金を取るつもりである。
結婚した日の夜、ステラを訪ねていった。翌朝ステラの死体が発見された。


映画関連目次(闇雲映画館)

製作:1945年、脚本:ハリー・クレイナー、監督:オットー・プレミンジャー ■ はじめに

数人の男がステラを好き。エリックもそうなのだが、ステラを手に入れるためにジェーンを利用する。そしてステラ殺人事件が起きる。これがメインのストーリー。

そして悪人のエリックがジェーンの純粋な愛情に気が付いていくのがもう一つのストーリー。

タイトルはジェーンが神話の話をする場面があり「みんな天使として生まれるが、堕ちて人間界に来る」ということから。

登場人物(キャスト)
 エリック・スタントン(ダナ・アンドリュース)
 ジェーン・ミルズ(アリス・フェイ) (途中から)エリックの妻
 クレア・ミルズ(アン・リヴェール(リヴィア)) ジェーンの姉
 ステラ(リンダ・ダーネル) 「ポップ」のウェイトレス
 ポップ(パーシー・キルブライド) 飲み屋「ポップ」の経営者
 アトキンス(ブルース・キャボット) 「ポップ」の出入り業者
 マーク・ジャッド(チャールズ・ビックフォード) 「ポップ」に入り浸っている刑事
 マッドリー教授(ジョン・キャラダイン) 交霊能力者
 ジョー・エリス(オリン・ホーランド) マドレイの助手

ポップが経営する店も「ポップ」なので、店を表す場合は「ポップ」と記述する。「ポップ」はカウンタとわずかな席がある小さな店。
 


■ あらすじ

◆ 「ポップ」

エリックはバスの運賃がなかったので強制的に下ろされた。「ポップ」に入った。

中に入ると「ステラが行方不明になっている」と話していた。この店のウェイトレス。今までにもあったらしい。

このような話が展開している中、ステラが戻ってきた。誰か男と一緒にどこかに行っていたらしい。

◆ 講演会

エリックが店を出て歩いていくと、あるホテルに「マッドリー教授、死者との交信」とのポスターが貼ってあった。

フロントで聞くとマッドリーは不在だそうである。エリックはフロントの制止を無視して部屋に入るとエリスという助手がいた。

マッドリーの旧友と偽ってエリスから話を聞いた。マッドリーは講演がうまくいかずに、金に困っているらしい。

主な理由はすでに死亡している前市長の娘が反対しているのでチケットが売れないかららしい。

エリックは「チケットを売れるようにしてやる」と適当なことを言って外に出た。

◆ チケットが売れてくる

エリックはさっそく前市長の家に行った。娘のクララとジェーン。

講演会への協力を求めるとジェーンはわりと協力的だが、クララは批判的。しかしともかく二人の協力を取り付けることができた。

「ポップ」に講演会のポスターを貼った。

ステラは相変わらずやる気がなさそうな感じで仕事をしている。おまけにレジから金をくすねている。

ジャッドはジュークボックスに5セントを入れてステラが好きな曲をかけている。いつものことである。ジャッドには妻がいるそうである。

マッドリーが来て「チケットが売れ始めている」と握手を求めた。もちろんマッドリーとエリックは初対面である。マッドリーはエリスに「前市長のことを調べておいてくれ」と指示をした。

エリックはステラをマッドリーの講演会に誘った。

◆ 講演会

エリックの働きで会場は満員となった。

マッドリーは事前に取得した情報にもとづいて「クララは騙されて、前市長から譲られた財産(の一部)を盗られた」という話をした。

クララとジェーンは気分を害して会場から出ていった。

◆ ステラとデート

エリックとステラも会場を抜け出して海岸で話した。

ステラは「あなたの話し方が好き」と言った。エリックはステラの手相を見て「あの店(「ポップ」)には不釣り合い、男に騙されやすい」と言って、さらに「目の前に運命の男がいる」と歯の浮くような言葉を付け加えた。

ステラはいい加減に相槌を打ったが、ともあれ二人はなんとなくいい雰囲気になった。

エリックの発言はさらに飛躍して「女優やプロデューサーのエージェントをしている」「結婚して家庭を持つと決めた」と展開した。

実は先日ステラが行方不明になって戻ってきたのは、男との間で結婚話が出てステラが拒否したかららしい。

ステラは「話し方は好きだけど、中身は他の男と同じ」と反撃した。エリックがキスをしようとすると「金も持ってないんでしょ。詐欺師でしょ」と止めを刺した。

◆ 「15000ドル用意する」

講演会は無事に終わった。ホテルの前にいるとマッドリーとエリックが車で来て「次の講演地に」と誘った。「バスで行く」と言ってバス代を貰った。

「ポップ」に行ったが店は午後六時まで閉店となっていた。

エリックはバス停まで行ったが、やはりステラのことが忘れられずにステラのアパートに行った。

これから二人は、ずいぶんとストレートな話をする。「結婚しよう」「からかわないで」「指輪をやる」「それじゃダメ、金が欲しい」「15000ドル用意する」「人殺しをするの?盗むの?」「金が入ったら、俺は君の亭主」「厄介ごとには巻き込まれたくない」「黙って待っていてくれ」。

これだけ言ってエリックはステラとのキスにこぎつけた。

◆ ジェーンとデート

ジェーンが教会の礼拝堂でオルガンを弾いているところを訪ねていく。礼拝堂には誰もいない。

エリックは演奏を精一杯誉めるが、ジェーンの反応はそっけない。

二人は教会をでて歩きながら話した。講演会の件を謝った。やっとジェーンとのデートの約束を取り付けた。

映画を見て、飲みに行ってダンスをした。そこではステラが他の男性と踊っていた。

ジェーンを家まで送っていったが「君にはキスはしない」とわざと
らしい言葉を付け加えた。

◆ 「ポップ」でステラに

相変わらずジャッドがいてステラの好きな曲をかけている。

ステラが入ってきたポップが何らかのプレゼントをした。

ステラは、誰かから昨日貰ったと思われるブレスレットをしていた。

エリックはステラにささやいた。「今度は俺とだけデートしろ」「あなたにはミルズさんがいる」。

◆ ジェーンは次第に騙される

エリックはクララと会った。「明日出発する。いいところだが離れがたい。戻ってくかどうかは決めてない」。

「なんのためなら戻ってくる?」「ジェーンのためなら」「腹を割って話す?」「何も隠してない」「妹に近づかないで」「俺に金がないから?」「いやジェーンには金はある」と言われる。

「妹のことは忘れてちょうだい」「本人次第だ」。

注、クララとジェーンには父親から受け継いだ財産があるが、クララはジェーンが結婚すれば、自分の財産もジェーンに譲ると言っている。

ジェーンと海辺でデートする。「クララのいいなりか?」「そんなことはないわよ」「やっぱりここを出ていく」。

ジェーンが次第に騙されてくる。

エリックがステラのアパートを訪ねてくる。「すぐに結果は出ないが大金が入ってくる。君と結婚したい、信じてくれ」というような話をするが、ステラはエリックを追い出した。

◆ ジェーンと結婚する

エリック、クララ、ジェーンの三人がサンフランシスコに行くことになった。三人でコンサートに行くつもり。クララとジェーンは銀行の貸金庫にも用事がある。

サンフランシスコに着いて二人は銀行の貸金庫に行った。エリックはその間に「婚姻用健康診断書を作成する」というオフィスに電話する。

クララは先にコンサート会場に行った。エリックとジェーンは別の場所に行ってからクララに合流した。

この間になんと二人は結婚していた。クララはジェーンに「気は確かなの?」というが、ジェーンの決意は固く押し切った。

◆ エリックがステラを訪ねていく

ミルズ家に戻ってきた。クララはもう「二人の結婚は仕方ない」と思っているようである。クララは自分の財産をジェーンに譲るという話をする。

エリックはこっそりと出かけた。しかしクララが気がついた。

エリックは「ポップ」に出かけた。ちょうど閉店するところでポップは出て行って、ステラも店を閉めて出てきた。

「大金が入った。ジェーンと結婚した、それも計画だ。明日サンフランシスコへ行こう」。

しかしステラは「あなたは結婚したのでしょ」と一人で帰っていった。この様子を陰からクララが見ている。

◆ ステラが殺された

エリックが昨夜出かけたことをクララがジェーンに喋って重い空気が漂う。

ジェーンが一階から上がってきて「警察の人(ジャッド)が来た。ステラが殺された。エリックに質問があるらしい」と告げて「ステラはあなたにとって、どんな存在なの?」

ジャッドとエリックはステラのアパートに向かった。アパートの前は人だかりがしている。

ステラの死亡時刻は午前3時から午前4時の間。階段にステラの時計が落ちていた。

エリックの他にポップ、アトキンスが連れてこられていた。ポップはすぐに帰らされた。

アトキンスは隣の部屋に連れていかれて、「彼女にいつ時計を送った?」と言われて何度も殴られた。拷問である。隣の部屋であってもエリックにはアトキンスの叫び声がよく聞こえた。アトキンスへの「取り調べ」はかなりしつこく続いた。

そのうち署長が来て「アトキンスのアリバイが確認された」と伝えた。ジャッドは、まったく悪びれる様子もなく、アトキンスを釈放した。

ジャッドはエリックにも「帰ってよい」と告げた。

◆ エリックとジェーンが逃げた

ジャッドから当地を離れないように言われていたが、エリックは脱出することにした。ジェーンも一緒に行くという。「一人で行く」「一緒に行く」「疑われる」「お金が必要でしょ」。

二人は用心して荷物を持たないで、幹線道路まで歩いて行って、車を拾った。

二人はボロホテルに泊まった。エリックはイライラしている。しかしジェーンは、エリックと一緒にいて、むしろ嬉しそうである。「後悔してるだろ」「自分の意志よ」。

エリックは身の上話をして「自分の人生は失敗ばかり」と言った。

ジェーンは「私たちは夫婦なのよ」と言って、さらに次のような話をした。「私たちは天使として生まれ、この世界へ来た。でも急ぐと、躓いて墜落する」。これが本作の題名の由来。

朝になって食事をして、二人で銀行に出かけた。エリックが立ち止まって新聞を買い、ジェーンが一人で銀行の前まで来ると警察に呼び止められた。サンフランシスコ警察。そのままジェーンはパトカーに乗せられた。

◆ ジェーンが尋問される

警察でジェーンは尋問されるが、正々堂々と受け答えする。「エリックは初夜に別の女に会いに行った」「それは夫婦の問題よ」。

しかし「エリックの結婚の目的は金だ」と言われるとジェーンは興奮して否定する。

迎えに来たクララと一緒に家に戻った。

◆ 「ポップ」

「ポップ」にポップとジャッドがいる。

するとエリックが入ってきた。ジャッドが「戻ると思ってた、コーヒーを飲んだら署につれていく」と言うとエリックは落ち着いて喋った。

「ニューヨークの検事局にいる知人に電話した。退職時には健康だった。被疑者をケガさせて辞めさせられた」「もういい、後は署長と話せ」。

「ステラの時計の購入者が分かった」「分かったのか?」「分かった。実はパトカーで迎えにきた」。

ジャッドが拳銃を構えて言った。「時計を落とさなければ完全犯罪だった」。

ポップが横から拳銃を奪い取った。エリックがポップを止めた。ドアが開いて警官が拳銃を構えて入ってきた。ジャッドに手錠をかけた。

ジャッドはジュークボックスに金を入れて例の曲をかけて出ていった。

ジェーンが車でエリックを迎えに来た。二人は車に乗ってミルズ家に帰った。
 


■ 補足

エリックは利己的な動機からジェーンに近づくが、次第にジェーンの愛情に気がついていく。二人はハッピーエンドとなる。

ポップがステラのアパートの家賃を肩代わりしている。

ジャッドは病気休暇で当地に来ていることになっている。なので当地の警察で取り調べするのは変。

ホップ、ジャッド、アトキンスとエリックは、けっきょくみんなステラが好きだった。
 


■ 出演作

ダナ・アンドリュース
(1940)スワンプ・ウォーター/Swamp Water
(1944)ローラ殺人事件/Laura
(1945)堕ちた天使/Fallen Angel
(1946)我等の生涯の最良の年/The Best Years of Our Lives
(1947)影なき殺人/Boomerang
(1948)海の呼ぶ声/Deep Water
(1950)恐怖の一夜/Edge of Doom
(1956)口紅殺人事件/While the City Sleeps
(1949)禁じられた街/Forbidden Street/Britannia Mews
(1945)ステート・フェア/State Fair
(1952)パリの記者とハンガリーのスパイ/Assignment - Paris
(1965)勇者の街/Town Tamer
(1950)歩道の終わる所/Where the Sidewalk Ends
(1941)女傑ベル・スター/BELLE STARR

ブルース・キャボット
(1936)激怒/Fury
(1945)堕ちた天使/Fallen Angel
(1963)マクリントック McLintock!
(1939)無法者の群/Dodge City
(1948)テキサス警備隊/Gallant Legion
(1942)賭博の女王/Silver Queen
(1965)勇者の街/Town Tamer

リンダ・ダーネル
(1941)血と砂、闘牛士の最後/Blood and Sand
(1946)荒野の決闘/My Darling Clementine
(1952)海賊黒ひげ/BLACKBEARD, THE PIRATE
(1947)永遠のアンバー/Forever Amber
(1945)戦慄の調べ/Hangover Square
(1948)殺人幻想曲/Unfaithfully Yours
(1945)堕ちた天使/Fallen Angel
(1944)西部の王者/Buffalo Bill
(1940)約束の地を目指せ/Brigham Young
(1944)明日起こったこと/It Happened Tomorrow
(1951)カジノで負けた女教師/The Lady Pays Off
(1954)私の愛と恨み/This Is My Love
(1940)怪傑ゾロ
(1951)戻ってきた男/The Guy Who Came Back
(1944)夏の嵐/Summer Storm
(1950)二つの国旗:南軍捕虜部隊が北軍に/Two Flags West
(1949)ハリケーン観測/Slattery's Hurricane
(1948)ジェリコの壁/The Walls of Jericho