■ BLACKBEARD, THE PIRATE
ヘンリー・モーガンの愛人のエドウィナ・マンスフィールドは、モーガンの財宝(の一部)を持ち出して、ベラミー船長と逃げようとした。
しかしベラミーは黒髭に殺されており、エドウィナは黒髭にとらえられた。
ロバート・メイナードはモーガンが海賊と繋がっていることを掴んで懸賞金を得ようとした。しかしメイナードも黒髭に囚われた。
黒髭はエドウィナが持って来た財宝を手下にも内緒で自分のものとしようとした。
手下の一部は黒髭に叛旗を翻して、黒髭を処刑した。
エドウィナは財宝にずっとこだわっていたが、財宝は結局海に沈み、メイナードとの愛を選択した。


製作年:1952、監督:ラオール・ウォルシュ、脚本:アラン・ルメイ


■ はじめに

◆ 登場人物(キャスト)
 ロバート・メイナード(ケイス・アンデス) 医師
 ブリッグス(Richard Egan) メイナードの仲間

 ヘンリー・モーガン卿(Torin Thatcher)
 エドウィナ・マンスフィールド(リンダ・ダーネル) モーガンの愛人
 アルヴィーナ(Irene Ryan) エドウィナの侍女

 エドワード・ティーチ(ロバート・ニュートン) 黒髭船長
 ベン・ウォーリー(ウィリアム・ベンディクス) 手下
 ギリー(Skelton Knaggs) 手下
 デュヴァル(?) 手下

 ベラミー船長(-) 殺された
 トッテン船長(-) 殺された

◆ 人物の関係

本作はわりとストーリーが複雑。本作前半で、次第に以下のことが分かってくるが、その辺をいちいち解説すると長くなるので、以下にまとめる。

ヘンリー・モーガンは実在の人物で、海賊映画には多出する。元海賊で後にジャマイカ総督になり海賊を征伐する立場になる。しかし裏では海賊と通じている。莫大な財宝を隠している。多くの映画の記述はこのようになっている。本作でもこれを踏襲している。

エドウィナ・マンスフィールドはモーガンの愛人。しかしベラミー船長には「モーガンの姪」と言っている。本作冒頭でモーガンのいくばくかの財宝を持ち出している。ベラミーと一緒にモーガンの財宝を狙っている。

ロバート・メイナードはモーガンと黒髭が裏でつながっているとみて、その証拠を掴んで懸賞金を狙っている。補足、しかしモーガンとつながっていたのは本当はベラミーなのだが、それは以後のストーリーには影響しない。

ギリーは黒髭の手下だが、それは表向きで、メイナードに協力する。

ベン・ウォーリーは黒髭の手下だが、黒髭を出し抜こうとしている。
 


■ あらすじ

◆ メイナードとエドウィナは捕らえられた

モーガンが航海に出ている間に、ベラミー船長の船が入港してきた。メイナードとブリッグスは船に潜入した。しかし二人は捕らえられた。しかし縛られるわけではない。

一方、エドウィナとアルヴィーナもボートに乗って船に向かった。

しかしマストにはベラミーが吊るされており、その船はエドワード・ティーチ、すなわち黒髭が支配していた。

黒髭はベラミーとの戦闘で左肩を負傷していた。黒髭は医師のメイナードに治療させた。

そばには手下のギリーがいる。ギリーは「殺せ」と書いた紙をメイナードに渡すが、メイナードは応じない。目的はモーガンの不正を暴くことだからである。

船は出港した。要塞のそばを通り抜けていくが、要塞では「(エドウィナ・)マンスフィールド嬢が乗っている。砲撃を止めろ」との指令が届くので、無事に要塞の前を通り過ぎた。

◆ 航海記録を盗む

メイナードは、黒髭が船長室からでてくるスキをついて、甲板からロープを下ろして船長室に窓から侵入した。航海日誌を発見し必要部分を切り抜いて懐にしまった。

しかし黒髭がロープに気が付いた。ロープを切断して、黒髭は船長室に戻った。

気配を察したメイナードは元に戻ろうとしたが、ロープがないので、船長室の床から貯蔵室に入った。

黒髭も貯蔵室に入ってきたが、ギリーが助けてくれて隠れることができた。

◆ エドウィナを助ける

エドウィナが船室から出てきた。黒髭と話すが「いずれモーガンが来るのよ。覚悟して」と言う。

船員たちが「美人だな」と迫ってくる。メイナードが船員たちを遮る。船員の一人と剣で戦う。メイナードが勝って死亡した船員は海に流された。しかし直前にはメイナードは剣を持っていなかったので「誰が剣を渡した?」と問題になる。実はギリーが渡した。

エドウィナは「ベラミー船長がいたらよかったのに」と話す。「私は大海賊の娘。私はモーガンの愛人ではない。でもあなたはベラミーよりも頼れそう」と展開する。大海賊が誰なのかは不明。

そして「モーガンの財宝を持ってきている。手伝って」と頼む。もちろんモーガンの財宝のごく一部である。

◆ ブリッグスに航海日誌を託す

この後はゴチャゴチャするのだが、エドウィナの荷物の二重底に隠していた宝が見つけられて黒髭に取り上げられた。

エドウィナからベラミー宛てた手紙も発見された。「伯父(モーガン)は出港しました。あなたを待っています」。注、ベラミーに送った手紙がエドウィナの荷物から見つかるのはおかしいが許す。

メイナードとエドウィナが話すが、けっきょくエドウィナは、ベラミーも道具としか思っていなかった。

メイナードが「一緒に船を下りよう」と話すが、財宝のことに拘る。「じゃお別れだ」と突き放す。ここで二人はキス。わりと単純だな。

メイナードはブリッグスに持っていた航海日誌(の切れ端)を渡して、届けてもらうことになる。これでモーガンの犯行が証明できる。ブリッグスはボートで船を離れた。

その後メイナードは船倉に入って、そこに穴をあける。水が入ってくる。

◆ 上陸する

船が水漏れをしているので島に上陸する。船には4門の大砲を残して、残りの10門は陸に上げて設置する。そうすれば、敵に襲われても反撃ができる。現地の人間も動員して、大砲の設置作業が行われた。

補足。このように大砲を陸揚げして防御するのは「女海賊アン/ANNE OF THE INDIES(1951)」(ジーン・ピーターズ、ルイ・ジュールダン)でも行われる。

黒髭とまったく同じような男が発見された。ちょっと精神的におかしいようである。処刑しようとするが、手下から「馬鹿を殺すと運がなくなる」と言われたので、そのままにした。

◆ 宝を埋める

船から宝が入った箱が持って来られた。ここでウォーリーが黒髭に拳銃を突き付けるが、黒髭から適当なことを言われておだてられた。拳銃をしまった。

黒髭、ウォーリー、メイナードともう一人デュヴァルが穴を掘る。宝箱を埋めるためである。

ここでまた黒髭とウォーリーが争う。このスキにメイナードは逃げ出す。しかしそれに気が付いた二人は争いをやめた。ウォーリーがメイナードを追いかけた。

ウォーリーがメイナードに追いついて「(黒髭を外して)一緒にやろうぜ」みたいな話をする。

しかしその間に黒髭はデュヴァルを殺して、別の場所に宝箱を隠して、穴を埋めた。

黒髭は「メイナードとエドウィナを閉じ込めろ」と命令する。二人(とアルヴィーナ)は小屋に閉じ込められた。注、縛られたりはしていない。

◆ モーガンが上陸する

さて「モーガンが来た」との報告。沖にモーガンの船が見えている。そしてすでに上陸している。三方向から近づいてくる。

黒髭は「モーガンの船が空なので、それを狙う」と言う。補足。海賊映画で「空になった敵の船を狙う」のは定番バターン。

しかしボートがない。ボートがないのは、メイナードが脱出して使ったからなのだが、ボートは複数あったはずなので、ここの展開は少々おかしい。

ここで黒髭は卑怯な手を使う。先ほどの黒髭に似た男を射殺して自分は隠れる。

モーガンは「黒髭の死体」を確認した。明示はされてないが、黒髭の手下たちは「黒髭が死んだ」のでモーガンの部隊は引き上げて、まだ残存している。

補足。メイナードとエドウィナの脱出。ここは場面が省略されている。たぶんエドウィナはモーガンと知り合いなのでモーガンのところに行った。メイナードはボートを使った。それしかない。それと黒髭の手下たちは捕らえられているのだが、その後に普通に出現する。解放される場面はないが。

◆ メイナードエドウィナはイギリスを目指すが捕まった

ジャマイカの町。メイナードがうろうろしている。しかしメイナードの手配書が張られている。偶然、軍人の伯父と出会った。「ブリッグスはイギリスに旅立った」と聞いた。

モーガンとメイナードが話している。エドウィナはメイナードの手配書のことで抗議している。モーガンは「国王の侍女の依頼が来ている」と言う。エドウィナを侍女にして、自分の出世の足がかりにするつもりらしい。

その後アルヴィーナが「メイナードが来ている」と知らせに来た。メイナードは「今夜イギリスに行こう。クリス埠頭で会おう」と伝えた。

ぎりぎりの時刻にエドウィナが来て、トッテン船長の船に乗り込んだ。注、アルヴィーナはいない。

しか~し誰もいない。船室に下りて行って調べるとトッテン船長の死体っ!。

ここで(メイナードにしてみると死んだはずの)黒髭と手下が乗ってきた。二人は捕らえられた。船は出港した。

事態に気が付いたモーガンは船を出して追いかけた。モーガンの船の方が武装が強力で黒髭は不利である。

互いに砲撃を始めたが、やはりモーガンが有利。黒髭はエドウィナをマストに縛り付けた。仕方がないのでモーガンは砲撃を停止、強引に接近させて、兵士を乗り込ませた。

今度は剣の戦いになったが、やはりモーガンが次第に有利になっていく。黒髭はエドウィナに剣を突き付けた。仕方がないので、モーガンは兵士を引き上げた。

◆ 宝箱を持ってくる

ここで、もう不穏な雰囲気。いままでもウォーリーは黒髭に反抗的だったが、みんなを巻き込んで黒髭に反抗した。

しかたなく黒髭はウォーリーに「メイナードと一緒に宝を持ってこい」と言った。もちろん黒髭は宝箱を別の場所に隠しているのでタカをくくっている。黒髭に同調する手下は船に残っている。

ウォーリーは、同調する仲間やメイナードと島に向かった。ギリーも一緒。

しかし掘り返しても隠してあるはずの宝箱が見当たらない。ウォーリーはメイナードが怪しいと見て責めた。しかしギリーが宝箱を見つけた。

黒髭はウォーリーたちが宝箱を持ち帰ってきたのを見て驚いた。黒髭は船室に引っ込んだ。

◆ ウォーリーが殺されたが、黒髭が捕らえられた

ギリーはウォーリーに「戻ったら、黒髭を始末すると言ってたよな」と言って拳銃を渡す。

ウォーリーは少しビビりながら拳銃を持って船室に入っていった。銃声が聞こえた。

しかし黒髭と同調する手下が現れて、みんなを捕らえた。そして船倉に閉じ込めた。死んだのはウォーリーだった。

閉じ込められた後、ギリーは笑い出した。この船の構造はよく知っている。船倉から抜け出す道がある。

黒髭はまたズルいことをする。自分に味方した手下を「休んでいろ」と船室に戻した。一人だけ手下(名前不明)を残した。

宝箱をロープで結んで船から吊り下げる。ボートに下ろそうとする。こうして宝箱を隠すつもり。

だがしかし、ギリーを先頭とする造反組の船員が襲ってきた。宝箱はロープから外れて海に沈んだ。そして黒髭は捕らえられた。

◆ 黒髭は生き埋めにされた

ここでメイナードとエドウィナはボートで島に来た。

そして造反派が黒髭を縛って連れてきた。宝が失われた腹いせで黒髭をリンチするつもり。二人は隠れた。

造反派は砂浜に穴を掘った。黒髭を埋めるつもりである。しかし黒髭はなんとか後ろ手のロープを解いた。みんなと格闘した。

さすがは黒髭。相手が複数でもなかなか強い。しかし砂をかけられて目が見えなくなった。再び捕らえられた。

黒髭は穴に埋められた。首だけが出ている。次第に潮が満ちてくる。顔が波で隠れる。

◆ メイナードとエドウィナは脱出

二人は陰から、この争いを見ていたが、ボートに乗って沖へ出て行った。メイナードは「今度こそモーガンは終わりだ」と満足したようである。

宝は残らなかったが、二人はキスした。

補足。ボートなので遠くへは行けない。船には黒髭の手下が残っているので、どうするのかは分からないが、ともかくハッピーエンド。
 


■ 出演作

◆ リンダ・ダーネル
(1941)血と砂/Blood and Sand
(1946)荒野の決闘/My Darling Clementine
(1952)海賊黒ひげ/Blackbeard the Pirate
(1947)永遠のアンバー/Forever Amber
(1945)戦慄の調べ/Hangover Square
(1948)殺人幻想曲/Unfaithfully Yours
(1945)堕ちた天使/Fallen Angel
(1944)西部の王者/Buffalo Bill
(1940)約束の地を目指せ/Brigham Young