HOUSE BY THE RIVER

スティーヴンは間違ってメイドを殺してしまった。弟のジョンを誘い込んで死体を袋に入れて川に沈めた。
隠ぺいするための嘘を重ねるが次第に収拾がつかなくなってくる。


製作:1950年、脚本:メル・ディネリ、監督:フリッツ・ラング


■ はじめに

◆ 登場人物(キャスト)

スティーヴン・バーン(ルイス・ヘイワード) 作家
マージョリー・バーン(ジェーン・ワイアット) スティーヴンの妻
エミリー・ガーント(ドロシー・パトリック) 新入りメイド
メイド(名前不明)(?) 料理担当?
ジョン・バーン(リー・バウマン) スティーヴンの弟、足が少し悪い
フローラ・バンタム(ジョディ・ギルバート)ジョンのメイド
アンブローズ夫人(アン・シューメイカー) スティーヴンの近くの人
ハリー・クローナー(ピーター・ブロッコ) 判事
検事(ハウランド・チェンバレン) 検事
サーテン警部補(ウィル・ライト)
ガーント氏(レスリー・キメル) エミリーの父
ガーント夫人(エフィー・パーネル) エミリーの母

◆ 補足

設定は19世紀末、ニューイングランド。スティーヴンの家がタイトル通りに川に面している。ジョンの家は別の場所。

ほとんどのシーンがスティーヴンの家。裏庭から階段を下りれば川になっている。かなり幅が広い川。両側は沼や林になっており、わりと不気味な風景。
 


■ あらすじ

◆ エミリーは殺された

スティーヴン・バーンは川に面した部屋で執筆中。近くに住むアンブローズ夫人が裏庭から入って来て「また(動物の)死体が流れて来たわ」という話をする。川にはいろいろゴミが滞留している。

出版社から不採用になって原稿が戻ってくる。「川の流れと同じだな」という話をする。アンブローズ夫人は「大衆が求めるのは刺激的なもの」。

アンブローズ夫人が帰った後、新しくメイドになったエミリー・ガーントが「浴槽を修理する配管工がなかなか来ません」と言ってくる。浴室は一階と二階にあるが、一階のものが故障して修理依頼中。

スティーヴンは「二階のものを使え」と答える。

エミリーは風呂に入った後、二階から下りてきた。スティーヴンはちょうど二階に上がるところで、二人は階段ですれ違った。

エミリーが妻のマージョリーの香水を使ったらしい。匂いがする。スティーヴンは「いい香水を使ったな」と腕を掴んでキスをしようとする。

エミリーが悲鳴を上げたので思わず首を絞めた。

◆ ジョンが入ってきた

ドアを叩く音がした。スティーヴンはノックを無視した。すると弟のジョンが入ってきた。

ジョンはエミリーの死体を見た。「事故なんだ。キスするふりをしたら嫌がった」。

ジョンは死体を確認し「これは絞殺だ」。続いて「警察に行く。今までは尻拭いをしてきたが、これはできない」。

スティーヴンは「私ではなく、妻のために頼む。今日は病院に行っている、助けてくれ」と言われて、ジョンは結局スティーヴンの尻拭いをすることになった。これまでも何度かあったようである。

二人は袋を持ってきて、エミリーの死体を入れた。「川に沈めれば忘れられる」。

二人はボートで死体を運んで行って、重りをつけて沈めた。

◆ バーティが開かれた

二人は戻ってきた。ジョンは帰った。二階から妻のマージョリーが下りてきた。今日は二人でパーティに出かける予定。

「エミリーは?」という当然の言葉。「着つけを頼んでいたのに、いないの」「散歩に行くと言っていた」。

「仕事は進んだの?」「(不採用で)また戻ってきた」「なのにボートに乗ってたの?」。

パーティに出かけた。スティーヴンは楽しそうにやっているのでジョンは呆れている。マージョリー「彼(ジョン)は今日は元気がないわ」スティーヴン「根が陰気なんだ」。

ジョンが帰ろうとするとスティーヴンは「お前は死体遺棄の共犯だ。余計なことを言うな」と囁いた。

家に戻ってくるとメイド(名前不明)が「エミリーがいないんです」。スティーヴン「実家に行ったのでは?」と勝手なことを平気で言う。

メイド「いえ、両親とは不仲なんです」マージョリー「泊まるなら言うはずよ」メイド「服が全部、そろっている」。

◆ エミリーは泥棒?

ジョンの家、新聞を見ている。「小説家のメイド、失踪から一週間」。

メイドのフローラ・バンタム「エミリーは私たちメイドに汚名を着せた。エミリーはアバズレ、男と破目を外したに違いない」ジョン「よく知らないのに、そんなことを言うな」。

警察の聴取にエミリーの両親が来た。居合わせたスティーヴンは両親に「あんな娘を送り込むな」とメチャクチャなことを言った。

スティーヴンの家。マージョリー「帽子、服、靴がなくなっていた。イヤリングもなくなっていた」。

しかしマージョリーはジョンに「夫の方が心配、よく言えないけど」と話している。

スティーヴンは町で開かれたサイン会で「作家は実体験を書けば成功する」という話をした。

マージョリーはスティーヴンの原稿が机の上にあったので見てみた。題は「川」。「袋に入れられた死体が川を流れてくる」という内容である。

◆ 袋はどこに行った?

ジョンの仕事場。会計の仕事。メイドのフローラから電話がかかってくる。「お兄さん(スティーヴン)に袋を貸したままになってます。帰りによって取ってきてください」。数週間前にエミリーが袋を借りにきたとのこと。袋にはジョンの名前が入っている。

スティーヴンは執筆中。アンブローズ夫人が来て世間話をする。その中で「また動物の死体が流れてきた」。

スティーヴンが川を眺めていると袋が流れている。慌ててボートに乗って袋を追いかけた。

その後、マージョリーが休んでいるとジョンが訪ねてきた。「兄は?」「川に行っているみたい」。

ジョンは遺産相続を放棄してスティーヴンが小説に専念できるようにと配慮した。

ジョンとマージョリーはわりと親しいようである。マージョリーは「スティーヴンとあまりうまく行っていない」と言う話をする。「私は必要ないのよ」「みんな誰かが必要さ」「あなたは誰が必要なの?」。ジョンが黙っているので「私がよくなかった」という話をする。

スティーヴンの新作「川」は売れているようである。マージョリー「やりすぎよ」。

スティーヴンは依然として袋を探している。が、袋を見つけたので、近づいて取ろうとしたが、流れていったので掴めない。

◆ エミリーの死体が見つかった

ジョンの家。スティーヴンが訪ねてきた。「あれが流れていた。あと一歩で逃した。あの袋は、普通のやつだから、大丈夫だよな」「いや名前が書いてある」「それはお前の名前だな」。

スティーヴンの家。サーテン警部補が訪ねてきた。

持ってきた袋を出して「見覚えはあるか?」。「盗まれた袋だ。返そうとしたらなくなっていた」。

「これはジョン・バーンの袋。なぜこの家にあった?」「知らない」「この袋にエミリーの死体があった」。

◆ 裁判

スティーヴンが起訴された。注、逮捕される場面はない。

エミリーは絞殺された。着ていたのはマージョリーのガウン。注、エミリーは二階の風呂に入ったので、その時にマージョリーのガウンを使ったものと推定される。

マージョリーに尋問。
「ガウンがないと気がついたのはいつ?」「ご両親に荷物を送り返そうとした時」。
「では自分のもの(帽子、服、靴、イヤリング)がなくなったと気がついたのは?」「彼女が消えた翌朝」。

スティーヴンの尋問も行われて「エミリーが盗みを働いたのでは?」と答える。エミリーの両親も聞いている。

フローラ・バンタムに尋問。
「誰の袋」「ジョンのもの。記名されている」。
「どうしてスティーヴンの家に?」「エミリーが借りに来た」。

スティーヴンに尋問。
「袋をなぜ戻さなかった?」「返す前に盗まれた」。
「それなら警察に届けなかったのは?」「その程度では届けない」。
「ではなぜ他の盗難(イヤリングなど)は届けなかった?」「エミリーの両親に迷惑をかけたくなかつた」。

裁判はまだ続くが、けっきょく無罪になる。

◆ ジョンは町をでていく?

ジョンの家。マージョリーが訪ねてくる。

「僕は町をでる」。事件以来匿名の手紙が送られてくる。また顧客からの取引停止が続いている。

ジョンは川のそばの船着き場にいる。スティーヴンが来た。スティーヴン「自殺したら犯人と思われるぞ」。注、ジョンが言ったのではない!

「現実を描いたいい作品が書けた」「かなり重症だな」「もし警官が来て、どっちが犯人と聞いたら?」「兄さんは僕を犯人というのかっ!?」。

ジョンはスティーヴンを殴った。「警察に行く」。

スティーヴンは金属の棒を拾ってジョンを殴った。ジョンは倒れて、水の中に捨てられた。

◆ 次の作品

マージョリーがスティーヴンの机の上にある次の作品の原稿をみている。タイトルは「死の川」。

スティーヴンが来た。「感想は?」「このまま彼に罪を着せるの?」。マージョリーはジョンが川に投げ入れられたのをまだ知らない。

「ジョンは今夜自殺した」「なんてことを」「君を殺しても弟の仕業と思われる」「正気じゃないわ」。

スティーヴンはマージョリーの首を絞めた。しかしジョンが駆け込んできた。

スティーヴンは逃げ出した。スティーヴンの前にエミリー(の幻覚)が立ちふさがる。スティーヴンの首にカーテンが巻き付いた。スティーヴンは倒れて首が締まった。