■ PITFALL
保険会社のジョン・フォーブスは服役中のビル・スマイリーからモナ・スティーヴンスに渡された財産を調べるために、私立探偵J.B.マクドナルドに調査を依頼した。
しかしマクドナルドはモナに異常な関心を示し、調査終了後も付きまとった。ジョンもモナに惹かれたが、それもマクドナルドの恨みを買った。
マクドナルドはもうすぐ出所するスマイリーにジョンとモナの関係を誇張して知らせた。
スマイリーは出所後、拳銃を持ってジョンの自宅に向かった。


製作:1948年、原作:ジェイ・ドラットラー、脚本:カール・カム、監督:アンドレ・ド・トス


■ はじめに

登場人物(キャスト)

 ジョン・フォーブス(ディック・パウエル) 保険会社の社員
 スー・フォーブス(ジェーン・ワイアット) ジョンの妻
 トミー・フォーブス(ジミー・ハント) ジョンとスーの息子
 マギー(アン・ドラン) ジョンの秘書
 モナ・スティーヴンス(リザベス・スコット) モデル
 ビル・スマイリー(バイロン・バー) 服役中、モナの恋人
 J.B.マクドナルド(レイモンド・バー) 私立探偵
 地方検事(ジョン・ライテル)
 


■ あらすじ

◆ J.B.マクドナルド

ジョン・フォーブスはオリンピック相互保険の社員。妻のスー、息子のトミーがいる。スーが運転する車に乗って出勤した。

契約している私立探偵J.B.マクドナルドが来た。モナ・スティーヴンスの件である。服役中のビル・スマイリーからモナに渡った金や物品を調査するため。

一応の調査ができたので、マクドナルドに依頼するのはこれまでである。マクドナルドは「モナはすごい美人だ。付き合ってもいいか?」と聞く。個人的に付き合うかどうかは業務とは関係ないので適当に答えた。

◆ モナ・スティーヴンス

ジョンはモナの家を訪ねた。ずいぶんと立派な家である。ボタンを押しても応答がない。ドアが開いていたので勝手に入った。

ポーズを取った写真がいくつも飾ってある。モナはモデルらしい。

モナが帰ってきた。「刑事なの?泥棒なの?」。ジョンが自己紹介すると「昨日、お宅の調査員が来た。かなり変な人よ」「我が社が雇った私立探偵」「ちゃんと監督してちょうだい」。なにか不快なことがあったらしい。

スマイリーが横領したので、スマイリーからいろいろ貰っているモナから弁償してもらおうという話である。それでマクドナルドに事前調査をしてもらったという経緯。

スマイリーの刑期は二年。二か月後は仮釈放となる。

マクドナルドが作成したリストを確認していく。指湯、ドレス、..。しかしボートも買ったらしい。これはリストから漏れていた。

ボートの話が出たついでに、二人でボートに乗った。

ボートを下りてバーで話した。スマイリーはモナに愛情を示すために、横領したらしい。でもモナは「あんな人はいないの」と言う。

モナがジョンのことを聞いたので「自分は数字とばかり付き合っている」と言う。モナは「でも今日は私と付き合っている」。

◆ 「恐ろしい人が待ってます」

ジョンが出勤すると秘書のマギーが「恐ろしい人が待ってます」と伝えた。

マクドナルド。昨日のモナのリストを見たらしい。しかし要点はそうではない。

「いい女だろう。一目見たら恋に落ちた、彼女とならうまくいく。昨日は彼女と会って話しこんでただろ」と見ていたようなことを言う。

異常な執着心である。

ジョンはまたモナを訪ねて行った。「近くに来たの?」「いや遠回りしてこちらに来た」「昨日来た人(→昨日のジョンのこと)とは別人ね」。

そして「マクドナルドが一晩中、ドアを叩いていた」。

ジョンは家に戻ってきた。外にマクドナルドがいる。「彼女が好きだと伝えたのに邪魔した」「そんなこと知るか」「仕事はこっちから辞めてやる」。

ジョンは殴られた。二三日入院となる。

◆ モナはジョンが結婚していることを知った

モナはジョンがバッグを忘れていたことを思い出した。ジョンの会社の近くまで行って電話をかけた。しかし「病気で欠勤しています」とのこと。

ジョンの自宅の方に車を向けた。家から女性がでてきて子供も出てきた。しばらく止めて見ていた。

スーがモナの車を見て不思議に思う。

数日休んだ後、ジョンは出勤した。リストの件でモナに電話をかけた。近くの店で会った。モナから結婚していることを指摘された。

ジョンは謝った。「どうしたいの?」「申し訳ないことをした」「私は暖かい家庭を壊すようなことはしない」「何でもする」「家に帰って」「そう言うなら」「なんにも分かってないのね」。

モナはバッグを渡して立ち去った。

◆ マクドナルドが押し掛けてきた

ファッションショーが行われている。モナも出ている。

客の中にマクドナルドが来ている。本来はファッション関係の人間のみが来るところである。

「帰ってちょうだい」「ドレスを買いに来た、金もある」。モナは睨みつける。マクドナルドは立ち去った。

しかしモナが帰宅すると、家の前で待っている。「時間の無駄よ」「無駄で結構」「嫌いよ」「それでも結構」。マクドナルドは揺るがない。

モナは、この状況をジョンに連絡した。

マクドナルドを殴り倒し「モナに近づくな」と言ったが、もうこの状況では、
収まりそうにない。

◆ マクドナルドはスマイリーに面会した

もう間もなくスマイリーは仮出所。マクドナルドはスマイリーに面会して、ジョンとモナのことをばらした。

モナもスマイリーに面会した。「明日は出所よ。この町を出ましょう」と言うと「マクドナルドという男が会いに来た。ジョン・フォーブスとは誰だ?」。

モナは「彼の話は信用しないで」と言った。しかしモナがスマイリーからの指輪をしていないのを見ると怒った。注、指輪は保険会社に取られている。

またモナは、この状況をジョンに知らせた。「スマイリーもあなたに迷惑をかけるかも?」。

◆ スーは心配している

この状況になって、ジョンは悩んでいる。そしてスーはそれに気がついている。

ジョンは会社の精神科医に相談した。「妻に話すのは?」「絶対にダメ」「いつかは向き合わなければならない」。

スー「悩んでるでしょ?。悩みは共有すべきよ。何なの?」。

ジョンが覚悟を決めて話そうとしたところ、トミーが怖い夢を見て騒ぎ出した。二人はトミーの部屋に行った。

スーは改めて「さっきの話は?」と聞くが、今度は「たいしたことじゃない」と逃げた。

◆ スマイリーが出所した。

モナは自宅に帰った。ライトを消した中でスマイリーがいた。

スマイリーがじっとしているので「私にキスしたくないの?」という。スマイリーはモナを抱き寄せてキスをした。

モナはスマイリーが胸ポケットに銃をもっているのに気がついた。

「君の友人(マクドナルド)が貸してくれた」「ばれたら逆戻りよ」「なぜマクドナルドがジョン・フォーブスに嫉妬する?」「もう終わったことよ」「つまりは何かがあったんだな」。

「君は許すがフォーブスは許さない。ヤツは贈り物を回収して君まで奪った」。

◆ スマイリーが来る

モナからジョンに電話。「スマイリーは銃を持ってる、刑務所に戻したくない」。

ジョンは「三人で映画に行こう」と提案する。家族を危険にさらしたくないためである。トミーは喜ぶがスーは反対する。ジョンは二人に二階から下りてこないように言い渡した。

ジョンは引き出しから拳銃を出した。一階に下りてライトをすべて消した。

マクドナルドは近くの道路に車を止めて、ジョンの家を窺っている。

スマイリーが歩いて来た。ジョンの家に近づいた。中を窺う。ジョンも中から見ている。

銃声っ!

スーが二階から下りてきた。ジョンはソファに座っている。「警察を呼んでくれ。男を殺した」。

◆ マクドナルドがモナの家

モナが家に戻ってきた。中にマクドナルドがいた。

警察無線をつけた。パトカーと救急車の手配の連絡。住所はジョンの家。

「出て行ってよ。ジョンかビル(スマイリー)に何かあれば警察にばらす」。

マクドナルドは「撃たれたのはスマイリーかジョンかジョンの妻」。警察の知り合いに電話をかけた。そして「死んだのはスマイリー」。

「笑える、予想以上の出来栄えだ。君は俺といる方がいい。旅行に行こう。スマイリーのことなど、すぐに忘れる」と勝手なことを言う。

常識がある人間ならば、そのようなことは考えないが、マクドナルドには常識は通用しない。

マクドナルドが向こうを向いた隙に、モナは引き出しから拳銃を出して、引き金を引いた。

◆ 「私たちは危機を乗り越えてきた」

先に補足。ジョンはスマイリーを射殺したにも関わらず、逮捕されていない。おかしい。

ジョンは出社した。マギーが声をかけてきた。「新聞を読みました。全紙にでています。州地方検事がお待ちです」。

ジョンは検事とともに検事局に行った。

「スマイリーはあなたを殺しに行った」「銃をもってたから撃った」「通報していれば、この事態は避けられた」。

それからモナが逮捕されたことを知らされた。

外にでるとスーが待っていた。

しばらく無言の後「離婚しないのか?」「私たちは危機を乗り越えてきた」。

 


■ 補足

本作はマクドナルドの異常性を描いているが、横領までしてプレゼントをするスマイリーもかなり異常。

「地方検事」には「州地方検事」と「連邦地方検事」がある。前者は選挙で選ばれて、州内の事件を扱う。後者は連邦政府から任命されて、州間にまたがる事件を扱う。
 


■ 出演作

◆ ディック・パウエル
(1943)ブロンドの殺人者/Murder, My Sweet
(1948)拳銃往来/Station West
(1951)犯人を逃がすな/Cry Danger
(1944)明日起こったこと/It Happened Tomorrow
(1948)落とし穴/PITFALL
(1940)七月のクリスマス/CHRISTMAS IN JULY

◆ ジェーン・ワイアット
(1937)失はれた地平線/Lost Horizon
(1943)硝煙のカンサス/The Kansan
(1950)ハウス・バイ・ザ・リバー/HOUSE BY THE RIVER
(1947)影なき殺人/Boomerang


リザベス・スコット
(1946/呪いの血/マーサの奇妙な愛情/The strange love of Marth Ivers
(1947)暗黒街の復讐/I Walk Alone
(1948)落とし穴/Pitfall
(1949)遅すぎた涙/Too Late for Tears

◆ レイモンド・バー
(1949)陽の当たる場所/A Place in the Sun)
(1953)コルシカの嵐/The Bandits of Corsica
(1948)脱獄の掟/RAW DEAL
(1951)替え玉殺人計画/His Kind of Woman
(1953)青いガーディニア/The Blue Gardenia
(1948)落とし穴/PITFALL

◆ ジョン・ライテル
(1938)黄金の罠/Gold Is Where You Find It
(1939)太平洋の翼/海の荒鷲/Wings of the Navy
(1939)無法者の群/Dodge City
(1940)カンザス騎兵隊/Santa Fe Trail
(1942)壮烈第七騎兵隊/They Died with their Boots on
(1961)地球の危機/Voyage to the Bottom of the Sea
(1945)西部のサロメ/Salome, Where She Danced
(1949)メアリー・ライアン刑事/Mary Ryan, Detective