■ The Suspect
フィリップ・マーシャルは妻のコーラとはあまりうまくいっておらず、喧嘩ばかりしている。
ある日、激しく喧嘩してコーラが階段から落ちた。周囲の人からは気の毒がられた。
しかしハックスレイ警部はフィリップを信用していないようであり、また隣のギルバート・シモンズが怪しい動きをしている。


製作年:1944、原作:ジェームズ・ロナルド、脚本:バードラム・ミルハウザー、アーサー・T・ホーマン、監督:ロバート・シオドマク


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 フィリップ・マーシャル(チャールズ・ロートン)
 コーラ・マーシャル(ロザリンド・アイヴァン) 妻
 ジョン・マーシャル(ディーン・ハーレンス) 息子
 メアリー・グレイ(エラ・レインズ)
 ギルバート・シモンズ(ヘンリー・ダニエル) 隣人
 エディス・シモンズ(モリー・ラモント) ギルバートの妻
 ハックスレイ(スタンレイ・リッジス) 警部

フィリップの勤務先は「FRAZER & NICHOLSON PURVEYOUR OF TABACO」。タバコを扱っているが小売りではない。


■ あらすじ

◆ フィリップは妻とうまくいっていない

ロンドン。1902年。フィリップはタバコ商に勤務。妻のコーラとの間には息子のジョンがいる。

コーラは性格が悪くフィリップには何かと文句を言いまくる。「いや夫にも何か悪いところがあるからだろう」と言うのは、まっとうな意見だが、フィリップにしてみれば、妻が悪い。

息子のジョンもコーラが嫌いである。motherと言わずにsheと言っている。ジョンは家を出て行った。それからはフィリップはジョンの部屋で生活した。

◆ フィリップはメアリーと付き合い始めた

閉店間際、フィリップの会社にメアリーという女性が店に入ってきた。職が欲しいそうである。

フィリップが面接したが、会社の求人条件に合わなかったので断った。

フィリップは店をでたが、道路脇にあるベンチにメアリーがいるのを見かけた。泣いている。

カフェによって話を聞くと父親が死亡して身寄りがないとのこと。今は女性用のアパート(BOARDING HOUSE)に住んでいる。

それをきっかけに二人は会うようになった。

いろいろなところに行ったが、フィリップもメアリーもマジメ人間である。それ以上の関係には進まない。

◆ コーラを殺した?

表面的にはメアリーとは、単に会うだけの関係であったが、内心では少しずつ変化していた。

メアリーは仕事が見つかって仕立て屋(?)に勤めている。

帰宅するとジョンの部屋にカギがかかっている。コーラの部屋に行って抗議した。コーラはカギを投げて渡した。

「売り言葉に買い言葉」ではあるが、ここでフィリップはコーラに離婚を申し込んだ。しかしコーラはそれを怒って否定した。

フィリップが仕事が終わって町を歩いている。その後をコーラが尾けている。

尾行に気づいたフィリップは建物の陰に隠れてコーラをまいて、メアリーに会った。

すでにメアリーはフィリップが結婚していることを知っている。フィリップは、二人(フィリップとメアリー)の関係に見込みがないようなことを言う。

クリスマスイヴ。フィリップは帰宅してツリーを飾った。コーラも帰宅した。この時は少しばかり和やかな雰囲気。

しかしほんの少しの意見の違いで情勢が一変した。コーラは怒り声を上げながら階段を上った。

フィリップはステッキを持ってコーラを追いかけた。

コーラは死亡した。

◆ ハックスレイ警部がフィリップを怪しむ

近所の女性は「あの家は階段が狭くて危険なのよ」とか噂している。

葬式が行われた。多くの人が訪れた。隣の家のエディス・シモンズが手伝ってくれた。

エディスは夫のギルバートからDVを受けているらしい。

みんなが帰った後、スコットランドヤードのハックスレイ警部が訪ねてきた。

丁寧な言葉遣いではあるが、フィリップを疑っているようである。

ハックスレイは階段を上りながら、階段の絨毯が一部破れていることに気が付いた。手摺の傷にも気が付いた。フィリップのステッキを手に持って「重くて頑丈だ」と言った。

フィリップがそのような話に抗議をすると「仮定の話です」と答えた。

◆ フィリップはメアリーと結婚した

コーラが死亡したことで、メアリーとはしばらく会っていなかった。

フィリップの店の前。メアリーがいる。フィリップが出てきたことろで声をかけた。

二人は店に入って話した。また元の感情がよみがえった。店員の女性が二人のハッピーな様子を見て「乾杯!」と言った。

メアリーはアパートを引き払った。アパートを出て行こうとするメアリーの前にハックスレイが来た。

ハックスレイは自己紹介した後、メアリーに話を聞いた。「彼(フィリップ)の妻に会ったことがあるか?」「会ったことはないが、結婚していたのは知っている」「それを知っていて、ずっと会っていた」。

「彼の妻が殺された」「関係ないでしょ」。ここでフィリップが来た。「私たちは結婚した」とハックスレイに告げた。

もう少しハックスレイと話した後、二人は歩いて行った。ハックスレイはまだフィリップを疑っているようである。

それともう一つ不穏な事実。フィリップの隣家のギルバート・シモンズがウロウロしている。

◆ フィリップはギルバートを殺した?

店でフィリップ一人で食事をしていた。ギルバートが来た。前の席に座った。

「新しい奥さんはどうだ?」「幸せだ」と簡単な会話をした後、フィリップはギルバートの分も支払って出て行った。

その後にハックスレイが来た。「まだマーシャル夫人の件は解決したわけではない」。

自宅にフィリップがいる。ギルバートが訪ねてきた。

「ハックスレイは証人を求めている。私は10ボンドが欲しい」と言った後、「クリスマスイヴに大きな声と音を聞いた」。

フィリップは少し迷った後、5ポンドを渡した。ギルバートは「次は25ポンド」と言って出て行こうとした。

フィリップは引き留めて、ウィスキーを出した。睡眠薬(ANODYNE)入り。

ギルバートが簡単に飲み干すので心配した。しかし崩れ落ちた。

その時ドアをたたく音がしたので、ギルバートをソファの後ろに隠した。ドアを開けた。

メアリーとジョンが数人を連れてきた。みんなで騒ぎ、また飼っている猫がウロウロするので心配するが、訪問者は出て行った。

メアリーはフィリップが暗い顔をしているので心配した。

ここでフィリップはカナダに行く話をする。兄弟がカナダにいる。「いい考えね。どこにでも行くわ」。

近所の人にはカナダに行くと知らせた。それと近所の人はギルバートが消えたことを噂している。

フィリップはシモンズ家を訪問、エディスと話した。「ギルバートの行方は分かったか?」。

エディスはDVを受けていたせいか「夫が帰ってこなくてもよい」と言う。そして姉妹と住むつもりらしい。

◆ フィリップとメアリーはカナダへ行く

いよいよ出発の日が来た。フィリップ、メアリー、ジョンは港に行った。メアリーは嬉しそう。注、ジョンは仕事の関係でもともとカナダに行く予定。

ここでフィリップへの呼び出しが放送された。店に勤めていた少年が挨拶に来ていた。別れの挨拶をして、彼なりのプレゼントを渡した。フィリップは自分のマフラーをプレゼントした。

メアリーとジョンのところに戻ろうとしていると声をかけられた。ハックスレイ!

フィリップは心臓がドキドキしたが、ハックスレイは「元気で」と言った後、ギルバートの死体が発見されたとの新聞を見せた。

ハックスレイによると、死体は運河で発見され、自殺に見せかけているが殺人、彼の妻が怪しい、保険も妻に入る。

フィリップは「女性には運河までは運べないでしょう。彼女は無実では?」と言うと「共犯がいたのでしょう。彼女のアリバイを知ってます?」と答えた。

ハックスレイはフィリップの肩をたたいて立ち去った。

フィリップはしばらくその場で目を閉じていた。出港のドラがなった。

フィリップは船を降りて歩いて行った。
 


■ 補足

最後はフィリップは船を降りるのだが、それは「ハックスレイに犯人であることを指摘されたから」としているレヴューがある。

だがそのようなストーリーにはなっていない。途中ではともかく、最後の場面ではハックスレイはフィリップが犯人であるとは思っておらず別れの挨拶をする。

しかしフィリップはギルバート殺害の犯人がエディスにされそうになっているのを知って、責任を取るべきだと判断して、自主的に船を降りていく。本作は悪いことはしてしまったけれども、フィリップの誠実なキャラクタを表現するのが目的なので、この違いは重要である。

コーラとギルバートを殺す場面は明示されない。
 


■ 出演作

◆ チャールズ・ロートン
(1939)ノートルダムのせむし男/The Hunchback of Notre Dame
(1944)容疑者/The Suspect
(1948)凱旋門/Arch of triumph
(1943)自由への闘い/This Land Is Mine
(1945)海賊キッド/Captain Kidd
(1947)パラダイン夫人の恋/The Paradine Case
(1952)人生模様-警官と賛美歌/The Cop and the Anthem
(1960)スパルタカス/Spartacus
(1939)巌窟の野獣/JAMAICA INN

エラ・レインズ
(1944)容疑者/The Suspect
(1944)拳銃の町/Tall in the Saddle
(1944)幻の女/Phantom Lady
(1945)ハリーおじさんの悪夢/The Strange Affair of Uncle Harry
(1949)ウォーキング・ヒルズの黄金伝説/The Walking Hills
(1949)殺しのミッション/危険な職業/A Dangerous Profession
(1949)狂った殺人計画/Impact
(1950)峡谷の銃声/Singing Guns
(1952)ハチェット牧場の対決/Ride the Man Down
(1956)道路の男/The Man in the Road

◆ ヘンリー・ダニエル
(1940)フィラデルフィア物語/The Philadelphia Story
(1944)ジェーン・エア/Jane Eyre
(1961)地球の危機/Voyage to the Bottom of the Sea
(1950)海の無法者/海賊の女/BUCCANEER'S GIRL

◆ スタンレイ・リッジス
「壮烈第七騎兵隊/They Died with their Boots on(1942)」
(1949)テキサス決死隊/Streets of Laredo
「大平原/Union Pacific(1939)」