■ Impact/1949
妻と妻の愛人がウォルターを殺害しようとする。しかし愛人は事故で死亡した。
愛人の死体は判別が不可能でウォルターと判断される。ウォルターは記憶を失い、自動車整備工場で働く。
ウォルターを殺した容疑で、妻は逮捕され、愛人は指名手配された。そして記憶を回復したウォルターが登場した....。


製作:1949年、監督:アーサー・ルービン   フル動画   予告編  


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 ウォルター・ウイリアムス(ブライアン・ドンレヴィ) 自動車メーカーの管理職
 アイリーン・ウイリアムス(ヘレン・ウォーカー) ウォルターの妻
 スー・リン(アンナ・メイ・ウォング) ウイリアムス家のメイド
 ジム・トレンス(トニー・バレット) アイリーンの親戚、実は愛人
 クインシー(チャールズ・コバーン) 警部補
 キャラハン(ロバート・ワーウィック) クインシーの上司
 マーシャ・ピーターズ(エラ・レインズ) 自動車整備工場経営
 ピーターズ夫人(メエ・マーシュ) マーシャの母親
 アー・シン(フィリップ・アーン) スー・リンの伯父
 


■ あらすじ

◆ ウォルターが襲われる

ウォルターは工場の買収契約の件で外出した後、途中でアイリーンと待ち合わせてタホ湖に行く予定だった。

ウォルターは待ち合わせ場所に着いたがアイリーンがいないので電話で連絡を取った。歯痛が激しくなったのでいけないとのこと。そして「従兄弟のジム・トレンスを乗せていってほしい」と依頼された。

ウォルターはジムと待ち合わせて乗せていった。

ジムは途中で隙を見てタイヤに細工をした。その後ジムが運転しながら走っていった。

峠に差し掛かった時、ジムが車を止めた。「パンクだ」。

ウォルターがかがんで車を見ていると、ジムがレンチを振りかざしてウォルターの頭を殴った。もう一発殴ろうとしたが、車が通りかかったので、レンチを崖下に捨ててやり過ごし、ウォルターを崖下に落とした。

引っ越し会社のトラックが停止し、声をかけたが、ジムは(ウォルターの)車に乗ってアクセルを踏んだ。しかしそこで前から来たタンクローリーに正面衝突し、車は崖下に転落、炎上。ジムは死亡した。注、タンクローリーも転落。

◆ 整備工場に雇われる

ウォルターは気がついて崖を上って、道路に止まっていた引っ越し会社のトラックの荷台に乗り込んだ。注、トラックはずいぶんと長く止まっていた。

ウォルターは記憶をなくしていた。心配した駅員に進められて医者に診てもらう。記憶がないのは「脳震盪のせい」と言われた。

ウォルターは池のそばで事件の新聞を見た。それで記憶を回復し、指輪を外して投げ捨てる。ここでアイリーンの裏切りを知るのは、殴られた時に、ジムが「アイリーンと俺からだ」と言ったのを思い出したから。

ウォルターはアイダホまできた。車の整備工場があった。「整備工」がうまく車を整備できずに困っていたので、それを助けて、その工場で雇われることになった。住居も整備工場の経営者マーシャ(=「整備工」)とその母親が住んでいる家に住まわせてもらうことになった。

名前はビル・ウォーカーと名乗った。注、新聞に写真がでているので、マーシャや母親が気がつかないのは変。

マーシャの夫は戦死したとのこと。夫と二人でやり始めた整備工場なので、マーシャは、なんとか工場を続けている。しかし経営は苦しく整備士を雇えない。

◆ アイリーンが逮捕される

一方ジムは「ウォルター・ウイリアムス」として処理された。クインシーがアイリーンを訪ねていった。

クインシーがウォルターの死亡を伝えるとアイリーンは「ヒッチハイカーに?」と聞いた。理由は、それがアイリーンとジムが考えていたストーリーであったからである。アイリーンはどうして話が違っているのか理解できなかった。

ウォルターのバッグが引っ越しトラックの中から見つかった。そのバッグからジムの指紋が発見された。注、ウォルターの指紋も発見されたはず。

クインシーはジムについて調べ始めた。ジムのアパートに行って荷物を調べる。シャツを洗濯に頼んでおり、そのシャツにはウォルターの屋敷で見たと同じようなイニシャルが刺繍してあった。特注品だそうである。注、ジムのアパートはホテル風で、一階にフロントがある。

またジムのアパートとウイリアムス家の間で、事故の前日と当日に何度か電話がされていることが分かった。

クインシーはアイリーンとジムが共謀しているものと考える。注、この時点ではクインシーは、発見された死体はウォルターであると認識している。

クインシーはアイリーンに会って「(アイリーンが言ったように)犯人はヒッチハイカーかも?」と偽情報を流す。「ウォルターのバッグが引っ越しトラックから見つかった。犯人が引っ越しトラックで逃亡したのかも?」。

さらに「バッグから指紋が見つかった。犯人のものだろう」と言う。これでアイリーンが動くと見た。

クインシーはアイリーンを見張る。アイリーン出かけて行ってはジャック・バーンズへ電報を打とうとするが、見張られていることを感づいて、電報依頼用紙を破って書き直す。次の宛先はマーガレット・ハバート。内容は当たり障りのないものである。クインシーは、その用紙を回収して筆跡を調べる。注、ジャック・バーンズはジム・トレンスの別名。

警察は殺害共謀容疑でアイリーンを逮捕した。ジム・トレンスは指名手配された。

◆ ウォルターが登場する

ウォルターは、アイリーンの裏切りと逮捕されたことを知っていた。しかしそのままにしていた。

マーシャは次第にウォルターに惹かれていった。そしてウォルターが心の中に隠しているものを感じた。マーシャは「悩みは断ち切るのよ」と言った。ウォルターは「結婚してるの?」と言われて肯定した。

マーシャの母親はウォルターの引き出しから、新聞記事の切り抜きを見つけ、ウォルターの正体を知った。ウォルターは母親に問われて真実を話した。

マーシャは「自分に裁きを下すために、他人を傷つけていいわけではない」と言った後「幸せになれる機会なのよ」と付け加えて、自分の気持ちを伝えた。注、マーシャの「自分に裁きを下す」ははっきり言って意味不明。

ウォルターはマーシャとサンフランシスコに行った。自分の過去に決着をつけるべく警察に行った。クインシーは死亡したのは(おそらく)ジムであると認識した。

ここでアイリーンも警察に来た。ウォルターが生きているのを見て驚いた。「あなたが殺したのね」。注、アイリーンが連れてこられたのは、ウォルター殺害容疑が晴れたため。

そしてアイリーンは「ジムと別れないと殺すと脅した」と嘘をついた。さらにクインシーに「ウォルターが投げつけて割れた花瓶の音をメイドが聞いたかもしれない」と告げた。注、ウォルターが間違って花瓶を落として割る事件があった。

逆にウォルターはジム殺害容疑で逮捕された。

◆ 裁判

クインシーはウォルターの記事の切り抜きを見て「記憶喪失の裏付けが怪しい」と言ったが、続いて「しかし偶然に妻の愛人を乗せたとは思えない」と迷った。

クインシーとマーシャは死亡現場を調べてみたが無駄だった。さらにスー・リンを訪ねていった。しかしスー・リンは居留守を使った。スー・リンはその理由を伯父に「黙っている方がウォルターの助けになる」と説明した。

裁判が始まった。ジムの死体を車に乗せて走っていきぶつかる直前に飛び降りた、医師の「記憶喪失の症状ではなく脳震盪」の証言、新聞の切り抜きの存在、「もう心配しなくてよい、なんとかする」とのアイリーンへの伝言など。ウォルターに不利な状況である。

スー・リンが傍聴に来ているのにマーシャが気づいた。するとスー・リンは逃げ出した。マーシャは追いかけた。

スー・リンの伯父の家まで追いかけて説得した。スー・リンが協力を拒否したのは、花瓶の割れる音とウォルターの叫び声を聞いていたので、それが却ってウォルターに不利になると考えていたためであった。

しかしスー・リンは、続いてマーシャに「アイリーンが歯の調子が悪かったのは嘘。その後出かけた」と喋った。この時に「ジムにも嘘をついた。他の誰かと会えるから」とも言うが、これはスー・リンの誤解。アイリーンとジムがバーンズの偽名を使っていたため。

そしてスー・リンは「次の朝アイリーンのコートにホテルのカギがあった」と証言。クインシーを加えた三人は、ウイリアムス家に駆けつけてカギを探した。見つかったカギはオークランド空港ホテルの302号室。

ホテルに行った。302号室の宿泊カードはバーンズ夫妻。しかし筆跡がアイリーンのものであった。夫妻は宿泊していなかった(←あたりまえ)。

クインシーは、まだこれでは証拠不十分と考えた。ここで預けられていた荷物を調べた。

アイリーンが弁護側の証人として呼び出された。

弁護士はまず筆跡の確認を求めた。ウォルターの写真に書かれたメッセージ、マーガレット・ハバート宛ての電報、ジムの写真に書かれたメッセージ、ジム宛ての手紙。空港ホテルの宿泊カード。すべてアイリーンのもの。

次にイニシャル入りのシャツ。ウォルターのものと、ジムのものが同じところで作られたものである。

ホテルのカギがアイリーンのコートのポケットに入っていたこと。預けられてバッグ入っていたものの確認。

結果、ウォルターの公訴は棄却となった。代わりにアイリーンが夫殺害の共謀容疑で起訴されることになった。

◆ ラスト

ウォルターは元の会社に復帰することになった。マーシャに「デンバーに来てくれ」と誘った。
 


■ 補足

◆ 「はい、ボス」

ウォルターとマーシャが「はい、ボス」と言う場面がある。ウォルターがマーシャの整備工場に雇われる。ここで何度かウォルターが「はい、ボス」と言う。

最後にウォルターが元の会社に復帰することが決まったら、ウォルターがマーシャをデンバーに誘う。ここでマーシャが「はい、ボス」と返事する。これが本作のオチになっている。

◆ マーシャの修理技術のレヴェル

ウォルターがマーシャの整備工場を通りかかったとき、マーシャは姿は作業着を着て、それなりの恰好をしているが、まったくダメで、車を治せないが、ウォルターがやると一発で治る。

マーシャの伯父が電話を借りに来る。電話している相手は別の整備工場。マーシャが抗議をすると「ガソリンはここで買うが、整備は別」と言われる。これもウォルターが修理する。

ウォルターを雇ってからは、マーシャは普通のスボンやスカート姿になる。
 


■ 蛇足/疑問

事件現場でずっと引っ越し会社のトラック止まっている。しかも荷台の扉が開いている状態。

マーガレット・ハバートとは誰か?アイリーンは、マーガレット宛てに電報を打つ。またウォルターは、駅のそばに歩いてきて、電話をかける。それがマーガレットの電話番号。そして交換が「ジム・トレンスさんからの電話」と取り次ぐ。マーガレットは実在しているが、しかしここが全く不明。ストーリーが省略されているのかもしれない。そもそもウォルターがどうして、この番号を知ったのかは説明されていない。

ヘレン・ウォーカーはいつも悪役。でも日本語化されてないが「Lucky Jordan」はアラン・ラッドと共演でコメディらしい。エラ・レインズは好き、しかし本作では後半からしか登場しないのが残念。
 


■ 出演作品

◆ ブライアン・ドンレヴィ
「大平原/Union Pacific(1939)」(バーバラ・スタンウィック、ジョエル・マクリー、ロバート・プレストン、エイキム・タミロフ、ブライアン・ドンレヴィ、アンソニー・クイン)
「死の接吻/Kiss of Death(1947)」(ヴィクター・マチュア、ブライアン・ドンレヴィ、コリーン・グレイ、リチャード・ウィドマーク)

◆ ヘレン・ウォーカー
「悪魔の往く町(1947)」(タイロン・パワー、ジョーン・ブロンデル、コリーン・グレイ、ヘレン・ウォーカー、テイラー・ホームズ、マイク・マズルキ)

◆ チャールズ・コバーン
「レディ・イヴ/The Lady Eve(1941)」(ヘンリー・フォンダ、バーバラ・スタンウィック、ウィリアム・デマレスト、チャールズ・コバーン)
「カナリヤ姫/Princess O'Rourke(1943)」(オリヴィア・デ・ハヴィランド、ボブ・カミングス、チャールズ・コバーン、ジェーン・ワイマン)

◆ ロバート・ワーウィック
「奥様は魔女/I Married a Witch(1942)」(フレデリック・マーチ、ヴェロニカ・レイク、ロバート・ベンチリー、スーザン・ヘイワード)
「サリヴァンの旅/Sullivan's Travels(1941)」(ジョエル・マクリー、ヴェロニカ・レイク)

エラ・レインズ
(1944)容疑者/The Suspect
(1944)拳銃の町/Tall in the Saddle
(1944)幻の女/Phantom Lady
(1945)ハリーおじさんの悪夢/The Strange Affair of Uncle Harry
(1949)ウォーキング・ヒルズの黄金伝説/The Walking Hills
(1949)殺しのミッション/危険な職業/A Dangerous Profession
(1949)狂った殺人計画/Impact
(1950)峡谷の銃声/Singing Guns
(1952)ハチェット牧場の対決/Ride the Man Down
(1956)道路の男/The Man in the Road

◆ メエ・マーシュ
「蛇の穴/The Snake Pit(1948)」(オリヴィア・デ・ハヴィランド、マーク・スティーヴンス、レオ・ゲン、セレステ・ホルム)
「荒野の決闘/My Darling Clementine(1946)」(ヘンリー・フォンダ、リンダ・ダーネル、ヴィクター・マチュア、キャシー・ダウンズ、ウォルター・ブレナン、ウォード・ボンド)
「ブルックリン横丁/A Tree Grows in Brooklyn(1945)」(ペギー・アン・ガーナー、ジェームズ・ダン、ドロシー・マクガイア、ジョーン・ブロンデル、ロイド・ノーラン)
「ジェーン・エア/Jane Eyre(1944)」(オーソン・ウェルズ、ジョーン・フォンテイン、マーガレット・オブライエン、ペギー・アン・ガーナー、エリザベス・テイラー、メエ・マーシュ、アグネス・ムーアヘッド)
「わが谷は緑なりき/How Green Was My Valley(1941)」(ウォルター・ピジョン、モーリン・オハラ、ドナルド・クリスプ、ロディ・マクドウォール)