NOTE/長谷川典夫著「現代都市の空間システム」・・・(8)
小売機能から見た都市の階層関係とは、
小売機能による都市の上下的な結合関係である。
この上下的な結合関係は、具体的には、
買物を行う際の消費者の都市間の移動によって顕在化される。
これを都市間の支配従属関係、すなわち、
消費者の流出する都市が流入する都市に支配されるとみなせば、
この関係は都市間のヒエラルヒーそのものとなる。
このような、消費者の買物行動により形成される都市のヒエラルヒーを、
商業地システムと呼ぶ・・・・・
(資料写真:仙台市太白区にて本ブログ管理者2007年4月撮影)
↑
消費者の買物行動を検討すると、その行動には大きく2つのパターンがある。
①最寄り品を購入する場合の買物行動
②買回り品を購入する場合の買物行動
:
買物行動には、このような2つのパターンがあるために、
商業地システムは重層的な構造を呈する。。。
【書誌情報】
長谷川典夫「現代都市の空間システム」1992年、大明堂
*
本ブログ内関連記事
仙台市は東北地方最大の都市であり、
他都市に比べて、行政・文化。経済機能が集積している。
しかしながら、宮城県以外の東北地方の主要都市は、
仙台市との関係よりも東京との直接のつながりの方がより強いというのが実情…
(資料写真:仙台行きの新幹線に福島まで併結し東京と直結する山形新幹線)
:
ただし、地域的な経済活動である小売業の場合には事情が異なってくるようだ…
仙台市の人口(1990年)は宮城県の41%を占めているが、
小売業年間商品販売額(1988年)でみると、約50%を占めている。
宮城県内に限ると、仙台市の経済活動は他の都市を圧倒的に凌駕…
:
ふつう、
小売商圏の地域的な広がりは消費者の買物行動距離の制限を受けるため、
小売商圏が半径50~60kmを越える地域的な広がりを有することは稀・・・
↓
しかしながら、
「紳士服・洋品」の仙台市の商圏は100km近くにも及び、
石澤 孝/信州大学教育学部教授
「支店の立地動向からみた仙台市中心部における小売業の変容」
「宮城県における商業地システムの変容」
「宮城県および岩手県北上地方における小売業よりみた市町村の階層システム」
(地理学評論より、、、引用)
【p.212】
戦後の卸売流通の変貌と都市
第2次大戦後の高度成長期=大量生産方式の確立、消費市場の拡大
:
メーカーの戦略
・大量に生産した商品を確実に売り捌く
・市場の需要動向を的確に捉える・・・・・ことが必要になる。
↓
・販売部門拡充(販売会社の設立)
・元卸機能を有して流通部門に進出
・自己商品を販売する全国的組織網を確立
(全国を複数の地方・地区に分割し、それをテリトリーとする支所や地区販売会社の設立を進め、地方の流通拠点に2次卸機能を置く)
(流通経路の末端=最終卸、小売商を代理店化→組織化、系列化)
:
大型小売商、チェーンストア、ボランタリーチェーンの発達
・大量仕入れによる商品の低価格化を最優先
・生産者、1次卸と直結した流通経路の開拓
↓
2次、3次卸は大きな影響を受ける
【p.213】
都市機能に占める卸売業の位置
・卸売流通は多段階に組織化されている
・1次卸、2次卸が集積立地した都市が広い商圏を有し、都市群システムの上位階層を形成している
*
メーカーの支所は、実際には販売活動よりも情報収集や代理店など他の卸売業の管理に重点があるものでも、卸売業に分類されている。
このため大手メーカー本社が集中している東京を除くと、大手メーカー支所が集積している大阪・名古屋をはじめとする上位階層都市では、卸売業の集積が著しい。
(下位の都市階層ほど卸売業の地位が低い)
:
広域中心都市群
(全従業者に占める卸売業比率=22.5%、卸売業/小売業比=1.21)
:
県庁所在地級都市群
(全従業者に占める卸売業比率=15.9%、卸売業/小売業比=0.79)
:
県内副次都市
(全従業者に占める卸売業比率=12.2%、卸売業/小売業比=0.68)
仙台は東京・大阪を中心とする全国的企業組織網の拠点
広域中心都市である仙台は、地元企業の比率が低く、支所の大部分は他地域企業であり、しかも東京・大阪企業の支所比率が非常に高い(44.9%)。
*
通常、県庁所在地級都市では、
地元企業の比率が高くなり、県内企業組織網が中心である。
↓
卸売商の企業組織
東京・大阪-仙台-県庁所在地級都市・・・という結合関係が存在
(↑資料写真:仙台市青葉区にて本ブログ管理者撮影)
↑
東北の卸売商(他地域企業支店)における仕入れ先・販売先の地域比率
・・・・・大都市圏仕入れ比率が高いのが特徴
↑
東北の卸売商(地場本社企業)における仕入れ先・販売先の地域比率
・・・・・地元仕入れ率が若干高くなっている。。。
*
(資料出所)
長谷川典夫「現代都市の空間システム」1992年、大明堂、pp..214-217
【p.230】
都市の順位・規模法則
【p.234】
情報化時代の都市群ネットワーク
:
情報の種類(今井賢一氏による分類)
①
標準化され機械化しうる定型的情報
(=形式的情報)
コンピューターや通信による情報処理が可能
通信手段の発達によって情報に対する地理的・物理的制約が克服可能
(=強い連結のネットワーク)
1つの頂点と広く散在した末端を有する中央集権型のネットワーク
:
②
情報の存在そのものが価値を持ち、
情報の意味内容がより重要される非定型的な情報
(=意味的情報)
対面接触による伝達が主
地理的・物理的制約の克服が困難
(=弱い連結のネットワーク)
高度な情報が扱われる
非定型的情報の集積が非定型的情報の集積をよぶ集中のメカニズムが働く