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土方√
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目を丸くする私に、目を細める千景。
何でここに?!
「久しぶりだな、千亜。…何故お前がここにいる」
「それは…こっちの台詞でもあるんだけど」
急いで立ち上がれば、思った以上に足が痺れていたらしく、バランスを崩す身体。
ガクっと倒れそうになるのを千景に抱きしめるように支えられた。
「久しぶりに会ったかと思えば随分と積極的だな」
「違っ!!足が痺れて…!!」
私の反論も聞かずにフッと鼻で笑う千景。
「潤んだ目で俺を誘っているのか?積極的になったもんだな、千亜。
やはり契りは早く結ばねばならんな。早速お前の家に…」
混乱しながらも、そう言えばこういう性格だったと思い出す。
身体を離しながら不敵に見下ろす瞳を睨みつける。
「痛いから泣いてんの!!何でそんな話になってんのよ!その早とちり癖早く治しなさいよ!!ってか何でここに千景が…」
「愚問だな、俺はここの教師で剣道部の顧問だ。お前の方こそ何故ここにいる」
そういや、千景は西之邦高校の教師だったんだ。
だからどこかで聞いたことあったのか…。
妙に納得していると、突然お腹の辺りを抱えられるようにグッと引っ張られた。
千景と離れて、トンと背中に感じた温もり。
「何してやがる」
耳元近くで怒気を含んだような低い声が響いた。
途端に身体が硬直したように感じる。
鼻を掠める煙草混じりの淡い香水。
視線を上げれば、間近で土方さんの顔があって私は息を飲んだ。
土方さんが千景を睨みつけている。
「土方…。久しいな。お前は千亜とはどういう関係だ」
「…こいつは剣道部のマネージャーだったからな、合宿の手伝いに連れて来た。
…てめぇはこいつとどういう関係だ」
「千亜とは将来を誓いあった仲…。俺と千亜は従兄妹になる」
不敵な表情を浮かべる千景に私は反論する。
「は?違うでしょ!千景と将来も誓い合ったことないし!!
それに私と貴方は再従兄弟(はとこ)でしょうが!!!」
「幼い頃の約束を覚えていないのか。『いつまでも仲良くしようね』と言ったのはお前だぞ」
「何でそれが結婚の約束になるのよ!!」
「まぁいい」
「良くないから!!」
鼻で笑う千景に私は訴えた。
目を細めた千景が土方さんを睨みつける。
「土方…。貴様いつまで我妻に触れているつもりだ」
「千景の妻になったつもりは微塵もありません!!」
「はぁ…。くだらねぇな」
土方さんが大きく溜め息を吐いた。
「くだらない、だと?面白い、土方、勝負しろ。
この練習試合、我が西之邦高校が勝ったら土下座して詫びろ。そして一生千亜に近づくな」
「意味わかんない!!練習試合をなんだと思ってるの?!試合するのは部員だよ?!」
「…わかった」
土方さんの言葉に私は咄嗟に顔を見上げた。
「その代わり風間、お前が負けたら一生高橋に近づくな。その馬鹿らしい勘違いも止めろ」
お腹の辺りに回されていた腕に力が篭って、きゅっと引き寄せられる。
その動作に、意識してしまってか、心臓がうるさい。
「成立だな。結果は目に見えているがな。お前の土下座楽しみにしている。
千亜、試合が終わったらすぐさま俺の家に来い」
「行 き ま せ ん!!!」
私の言葉を鼻で笑うように背を向ける千景。
千景が立ち去るのを確認して、まだ回されている腕を意識しつつも、その表情を下から覗う。
「あの…、土方さん…。いいんですか?」
「あ?何だ、お前うちの部員たちが負けると思ってんのか」
「…思ってません」
「それでいい」
フッと土方さんの表情が緩んだ。