本論文は、BMI、運動、座位時間が妊孕性(妊娠できる力)に影響するか否かを検討したものです。
Hum Reprod 2020; 35: 676(オーストラリア)doi: 10.1093/humrep/dez300
要約:2000年に22〜27歳の女性14,247名を登録し、以降3年毎に健康状態を調査しました(ALSWHスタディ)。2015年の調査で、BMI、運動、座位時間と妊孕性との関連を検討しました(6,130名)。なお、BMIは4段階で評価し(痩せ〜18.5、標準18.5〜25、過体重25〜30、肥満30〜)、運動強度は代謝相当仕事量(Metabolic Equivalent Task: MET)を4段階で評価し(MET 0〜33.3、33.3〜500、500〜1000、1000〜)、座位時間は1日あたりの時間として3段階で評価(MET 0〜4.5時間、4.5〜8時間、8時間〜)しました。妊孕性に問題があった方(不妊症)は944名(15.4%)おられました。各種交絡因子を補正したところ、肥満(BMI30〜)の方は1.36倍不妊症が有意に増加、高運動強度(MET 1000〜)の方は0.82倍不妊症が有意に減少しました。最も不妊症率が増加したのは、肥満かつ運動しない方でした。逆に最も不妊症率が低下したのは、BMI<25かつMET1000〜の方でした。また、座位時間は不妊症との関連を認めませんでした。
解説:BMIが高い方は妊孕性に悪影響であること、長時間座っていたり運動しないと心血管疾患や癌などのリスクが高まることが知られています。本論文は、BMI、運動、座位時間が妊孕性に影響するか否かを検討したものであり、BMIと運動は妊孕性に影響し、座位時間は影響しないことをしめしています。BMI<25に保ち運動することが推奨されます。本論文では、肥満の方は運動しても妊孕性が改善しないと述べていますので、運動して痩せることが肝心だと思います。
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