装備自作(その6)・5.56ミリ機関銃ミニミ官品負い紐レプリカ(後編) | ちょんまげインプの部屋

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いらっしゃいませ、変態(いろんな意味で)の部屋へ。
これであなたも立派な変態。
今後ともどうぞよろしくっす。

(以前、ちょんまげのついたインプレッサに乗っていたのでこんなタイトルです)

※重要な資料を得て追記したので再度UPします。

 

 

(前編からの続き)

では、もったいぶらずに各部の紹介をします。

 

 

 

 

【最初の難関・紐の部分】
まずは肝心の紐(ウェビング)

ここは

「89用の負い紐に使用したビニロンと同じ素材だろう」

という点を基準にして検討開始。

ここが決まらないと、他の全てが決まらないからです。
スリングの幅ですが、当初は
「ミニミは重いし30mm幅だよね」
と踏んでいました。
64式の負い紐も30mm幅ですし、別のマニアな方からも

「30mm幅では?」

という推測を頂戴していたのですが、しつこく画像解析を重ねたところ、

「あれ?25mmじゃね?」

という疑問が…。
しかしこの紐を基準に全ての部品を探すため、後で間違っていたことが判明したら全てがパーになってしまいます。
なので、紐の幅の確認作業だけで数か月の時間を費やしてしまいました。

最後の最後で25mm幅だと断定し、“その筋の方”に念のため

「25mm幅ですか?」

とお聞きしたら

「そっすよ」

と、いともアッサリ(――;
軽いM9が30mm幅なのに…という気もしますが、ミニミ用のものには肩パッドがついているからか、と納得。
これで、過去にウチで使用実績のある89負い紐のビニロン材(亀織りの25mm幅、OD)を使うということで、まずは第一段階突破。

というか30mm幅だったらビニロン入手できない(こともありませんが、特注で最低4,000メートルからなのでムリ)ので、ミニミ構想はここでストップすることになったはず。
なので、晴れて次に進むことができました。

 

 

 

 

 

【次の難関・金属バックル】

この、紐を重ねて挟み込む金属バックル。

9mm機関けん銃の時に散々探してようやく見つけたバックルがありましたが、9mm機関けん銃の紐の幅は30mmなので、そのバックルも当然30mm幅用。
すでに述べたように、ミニミの紐は25mm幅。
しかしこのバックルは、25mm幅対応のものが市販品に存在しません(プラスチックで似た形状のものはあるにはある)。

かといって特注は、単なるコキ金具ならまだしも、バックルとなると数十万単位で飛んでいくので個人には不可能。
どうにかして25ミリ幅用のものを探せないものか…と、ここでもかなりの時間を費やしたものの、一向に見つかりません。

 

・・・が。
ミニミの画像を何度も丹念に画像解析をしてみると、なんかどうもおかしい。
…これ、ひょっとして30mm幅用のバックルを無理やり使ってるんじゃね?
そんな予測を元に、手持ちの30mm幅のバックルを25mm幅のスリングにはめて画像と比べてみると、ああ、コレだわ!
ミニミは、紐は25mm幅なのに、30mm幅用のバックルを使っていたのでした。
“その筋の方”に念のためお聞きしたところ、確かに25mm幅の紐なのに30mm幅のバックルを使っていると・・・(――;
なんでこんな変なコトしてるんだろ…。

 

でもこのバックルなら9mm機関けん銃や64式に使ったバックルが流用できます。

 

ちなみに、官品はここに意味不明な円形の突起がありますが、

 

(官品のバックル。変なマルい突起があり、さらに幅がブカブカ)
…そこは無視して既製品で妥協。

既製品といってもふつうのお店には置いてなく、さらにメッキも特注ですが・・・。
ようやく第2関門クリア!

※ただし、一部には「25mm幅用のバックルを使ってる?」と思えるような画像もあり、ひょっとしたら官品には25mm幅のものもあるのかもしれません。

※でもそうだとしても、わざわざ途中から30mm幅のバックルに換える必要性もないし…求む、情報!

 

 

 


【次の難関・HKフック】

次の難関は、スリング両端のフック金具。
ミニミ官品負い紐に使われているソレは俗に「HKフック」と呼ばれる形状のもので、その名の通りHK社が開発したものらしい。
実際にいろんなライフル用スリングに使用されているのでメジャーなはずが、小売りしているところとなると滅多にありません。
しかもミニミの官品負い紐に使われているフックは、よく見るHKフックとは細かい部分がけっこう違っていて、例えば可動部がちょっとゴツかったり。
全く同じ形状のものは見当たりません。
しかし、細かい形状の違いを追い求めるのも限界があります。
それに重いミニミとなれば、強度も必要。
ここは品質の確実なITW社のHKフックにしてしまおう…と思いましたが、扱っているミリタリーショップでは軒並み、フック1個800円台!
こんなんじゃ採用できんな~・・・

ということで、個人輸入をしたものの、関税やら送料やらで結局1個あたり700円を超えることに…。

でも第3関門クリア!

 

 

 

【次の難関・先止め金具】
さて地味な難敵が、スリング両端の先止め金具。

これがまたやっかいで、89用のもの(ボール先止め)とも、一般的なものとも違う、鉄板を折り曲げて被せてハトメで留めたものなのです。

こんな金具は、探せど探せど見当たりません。
既存の先止め金具でお茶を濁すのが最も安く済み手間もかからないのですが、どうせなけなしの防衛予算を注入して作るのであれば、半端なものより「より似てる」ほうがいいに決まっています。
なのでここは清水の舞台からバンジージャンプの気持ちで特注しました。
ステンレス板をそういう形状にレーザー抜きしてもらい、曲げ加工もしてもらい、さらに折り曲げた場合も穴の位置がずれないようにしてもらい…

ちなみに実物は左右の端が折り込まれていたりしますが、そういった加工か所が増えるだけで数万円増加してしまう(治具が必要になってしまう)ため、可能な限り最低限の加工で済むようにデフォルメしています。

で、2か所の穴を↓のようにハトメで留めていますが…。

このハトメの種類とサイズを決めるのもまた一苦労で、相当に紆余曲折を経て、ようやく決定。

(表面と裏面ではハトメのフチが若干違うのが分かります。実物もこう。ハトメに詳しい人なら「ああ、あれか」とお判りになります)

ハトメが決まらないと板の加工に入れず、でも板の厚みが決まらないとハトメの足の長さも決まらず…と、いうジレンマにはまり、ここはかなり悩みました。
特注で無駄に費用がかかったうえに、ハトメの工具も買い、作業の手間も増えてしまいました。
こんなどうでもいい部品を特注するだけで、スリング1本あたりの単価は2千円も増加しています。

でも第4関門クリア!

 

 

 

【コキ金具】

さて、次は難問ではありませんでしたが、ちょっと悩みました。
このコキ金具、89のものともちょっと形状が違うっぽいんですが・・・

いろいろ検討しましたが、89用のものは3点スリングに全部充てるために流用できず、ちょっと形状は違いますが、市販品(といっても普通にお店には置いておらず、購入は100個単位)のものを使用。

実物同様、真ん中の一本線が段付きになっています。

 

 

【次の難関・ループ】

さて、難関はまだ続きます。
微妙に困ったのが、このループ。

官品は20ミリ幅のODビニロン材(亀織り)で、その筋の方にお聞きすると、どうも止めたり外したりができない“カシメ”で留められているようです。
こんなのゴムで留めりゃええやん~とも思ったのですが、これくらいなら再現してみてもいいかな…ということで、作ってみました。
ただ、ループにしたままカシメるのはウチの工具では不可能なため、ここはつけ外しのできるホックに変更。
ああめんどくさい。
でも第5関門クリア!

 

 

 

【次の難関・肩パッド】

コイツの最大の難関は、意味不明の肩パッド。
スリング自体がかなり細身なのに、パッドばかりこんなにだだっ広くして意味があるのか…と思いますが、官品がこうなんだから従うしかありません。
材質は、帆布(はんぷ)。
しかし帆布といってもいろんな種類や色があり、それを探すのがまず大変。
ちょうどいいものがあっても、裁断が大変。
ミシンで縫うこと自体はまあできるのですが、1個や2個はまだしも、それ以上になると時間がかかってもっと大変。
・・・ということで、ここは外注することに。

 

が、それも簡単ではありません。
請け負ってくれる業者が全然ないのです。
帆布製品を扱う業者で「オーダーメード可」のところを片っ端から当たってみるものの、どこも基本はオーダーメードのトートバッグばかり!
ふざけんなトートバッグでハァハァできるか!(←身勝手)
・・・とヤケになりかけたところで、ようやくボクのたぎる想いを受け入れてくれる業者さんに巡り合いました。

 

それでも途中で

「検討しましたがやはりお受けできません(なぜだあ!)」

とか、あるいは

「材料費別途で3,500円/枚ですかね~(高すぎ!)」

となることもあり、かなりグッタリしたものです。
ようやく、レプリカというものについて理解のある業者さんに依頼できたのですが、それでも入手できる素材や数量(少量なので)の関係もあり、要望を正確に再現してもらうことはできませんでした。

ちなみに、業者さんに構造を伝えるためには自分が正確に理解していなければならないのですが、詳細画像はその筋の方のご尽力でGETできたものの、画像を見ただけでは作りがすぐには理解できません。
このため手持ちの帆布で4個も試作を重ねるという、楽をするために外注したのに地味に大変だったというオマケつき。
でも製法としては謎の部分が多く、自分で試作をして「こうだったのか」と判明した部分もあり、試作もいい経験でした。


残念ながら、諸般の事情で色味が実物よりもかなり濃くなってしまい(実際には官品も使用による擦れや退色があるのか、あるいはロットにより仕様が違うのか、色味や質感の異なる肩パッドが見受けられます)、また縫製線も一部実物と異なります。

というか、隠密を旨とする本職の現場で、あんなに目立つ色のパッドでいいのかしら。

ウチが作ったような色味にすればよかったのに…。

でも、ようやく決着!



 

しかし疲れた・・・。
ちなみに順番に書いてますけど、順番に検討して順番に壁にぶつかり順番に解決していったわけではなく、実際にはいっぺんに壁にぶつかって、2度に渡って長期とん挫していたのです。
コイツは89の3点スリングと同じ頃から計画をスタートさせていたのですが、どうせ無理だろうと諦めていたことと、肝心の3点スリングがかなりてこずったこと、あとは後発のM9や64の負い紐を優先させたことなどで、かなり遅れてしまいました。


また、事前に全ての素材の単価を予想して費用を試算してみましたが、ものすごく高額になることが判明。
それに、そもそもワシはミニミなんて持ってないし、陸自仕様ミニミなんて中古でも滅多に出ないしな~…と思っていたら、なんと昨年7月末にTOPが陸自仕様ミニミを限定再販。
こりゃあGETせねば!…となり、GETしたらやっぱり官品負い紐がないとね・・・ということで、一気に検討作業を進め、幸い“その筋の方”からもかなり詳しい情報を得ることができ、こうしてトータル2年の時間をかけて、陸自ミニミ官品風負い紐レプリカが完成したのです。


 

当初からの懸案問題は、コイツを作っても、いったいどれくらいの人が必要としているのだろうか…ということ(そもそもは、自分と知人のために少量製作をするつもりでレプリカ製作してるのですが、市販品がなく部品の最少ロットがとんでもない数なので、余った部品でいくつも製作しているのです)。
例えば89の3点スリングは、素材の最少ロットがとんでもない数だとしても、需要はあるだろうからなんとかなるか…という予想が立って計画を進めたのですが、コイツに関してはそうではありません。
ニーズがないはずだから素材も少量調達にしなければならないですが、そうなると単価がハネ上がってしまい、そうなると余計にハケなくなります。
この辺りが相当に悩んだところです。

 

 

 

でもようやく陸自の現用小銃・機関銃の負い紐についてはオールコンプリートとなり、とりあえず負い紐作りはひと段落しました。
これでしばらくは、部品探しで心身をすり減らすこともなさそうです。

(…と書いたものの、まだまだ部品探しの旅は続くのであった←?)


 

 

※追記

縁あって、うちのレプリカと実物と比較する機会に恵まれました。

そこで実物との差異や、ワシの快挙などがいくつか判明したのです。

 

―なんと、官品同一品でした―

テキトーに「これでいいや」と決めたコキ金具。

なんとコレが官品で使われているものと同じだったのでした。

特徴としては、真ん中の一本線がちょっとだけ片方にズレています。

実物に似てるものがたまたまコイツしか入手できなかったのですが、これがなんと官品そのもの。

ちなみに、89の負い紐の一部にもコレが使われています。

俺様、やるじゃん!

 

―その発想はなかった―

64にも9mm機関けん銃にも使われている、「挟み込むバックル」。

ミニミ負い紐にも使われているのですが、不思議なのが変な円盤。

左が官品。

なんの飾りかな…こういう製品なんだろな…と思ってはいたのですが、どう見ても円盤以外は既製品(とはいえ普通には売ってません)と同じ。

というわけでバックルを外してみると・・・

なんと、ヒモの端をココにカシメて留めていたのでした!

つまり、わざわざ既製品に穴を開け、負い紐をカシメていたのです。

ということは、官品は、

↑この端の金具が片側にしかついていないのです。

しかしこの金具のハトメは、実物のほうが若干大きかった・・・

 

―その他―

ちなみに関係ないですが、フック金具。

官品は↑画像右側のようにごっついですが、なぜこんなのにしたのか不明。

ちなみに本来のHKフックは丸い穴を↓のようにできますが、

官品金具は↓

できません。

まあミニミでワンポイント使用にしたら首の骨がおかしくなってしまいそうなので、この機能は要らないと思います。

 

あとは帆布(はんぷ)の肩パッド。

既述のように色味が違うほか、細かい寸法も違ってたり正しかったり。

でもこれは仕方ない・・・

でもまあ、案外自分の見立てもいいセン行ってたな、と思った次第でした!

 

 

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