golden(以下g):「さてさて、80年代に心に引っかかったレコードについて長々とおしゃべりしてきましたが。」

blue(以下b):「クロニクル、いわゆる年代記的に、個人史と時代背景をクロスさせながら、テキトーなことをダラダラと。」

g:「ちょっと調子に乗りすぎたかな(笑)、書いてるうちにあれもこれもってなっちゃったんだよ。」

b:「とりあえず50組100枚で打ち止めにしとくんがエエやろ。」

g:「最初は30くらいのつもりだったんだけど。」

b:「まぁクロニクルっていうくらいやから、それなりにいろんなジャンルをバランスよくチョイスする必要はあるわな。」

g:「ベテランも新しい世代も、売れたものも売れなかったものも、白人っぽいのも黒人っぽいのも。」

b:「他にも書き漏らしたのがぎょーさんあるな。」

g:「イエスVSエイジア、カーズVSブロンディ、ジャクソン・ブラウンVSボブ・シーガーあたりも考えたんだけど。」

b:「ABC VS スパンダー・バレエ、インエクセスVSシンプル・マインズ、ローラ・ブラニガンVSメリッサ・マンチェスターとかな。」

g:「シンプリー・レッドVSブロウ・モンキーズとか、ビリー・アイドルVSジグ・ジグ・スパトニックとか。」

b:「ジグ・ジグ・スパトニックって(笑)」

g:「ガンズ&ローゼズVSストーンローゼズ。」

b:「ただの薔薇つながりやし。」

g:「バンド・エイドVSU.S.Aフォー・アフリカVSサン・シティっていうのも考えたりはした。」

b:「チャリティ・イベントは80年代の重要トピックではあったけどな。」

g:「イーグルスやストレイキャッツで取り上げたバンド同窓対決シリーズで、モーリス・ホワイトVSフィリップ・ベイリー、スティーヴィー・ニックスVSクリスティン・マクヴィー、サウスサイド・ジョニーVSリトル・スティーヴンとか。」

b:「トミー・ショウVSデニス・デ・ヤング、デイヴ・ギルモアVSロジャー・ウォータース、トレイシー・ソーンVSベン・ワットとかもありやな。」

g:「ラヴ・アンド・ロケッツVSジーザス&メリーチェイン、10,000マニアックスVSカウボーイ・ジャンキーズ、フェアグラウンド・アトラクションVSエディ・ブリケル&ニューボヘミアンズ。」

b:「フェアグラウンド・アトラクション はすでに取り上げてたからな。」

g:「ほか、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース 、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ、ジョン・フォガティ、 エルヴィス・コステロ、ニック・ロウ、 XTC 、アズテック・カメラ 、ポーグス 、ボニー・レイット は前回すでにピックアップ済みでした。」

g:「90年代のオルタナやグランジへの強い影響という点ではソニック・ユースやリプレイスメンツとか。」

b:「でも、その辺りは当時存在すら知らんかったしなぁ。」

g:「確かに、オルタナやグランジのアーティストが影響を受けたという再評価から知ったんだった。」

b:「書きそびれてる好きなバンドやアーティストはいっぱいあるで。UB40、ダイアー・ストレイツ、ジュリアン・レノン、ビリー・ヴェラ&ザ・ビータース、、あぁ、デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ、、、」

g:「あ、カイリー・ミノーグVSリック・アストリーっていうのは?」

b:「いや、そもそも聴きもしてへんやろ!」

g:「ま、書ききれないくらいいろんな音楽を聴いてたし、聴こえてきてたってことだよ。」



b:「80年代を過ごしたのは13才〜22才、中学2年から大学卒業まで。まぁちょうどこういう音を聴きながら育ってきたっていうことやな。」

g:「13才〜23才という時期は、第二次性徴・思春期から自我の形成期にあたりますからね。」

b:「聴いてきた音楽は自我の形成に少なからず影響を与えたんやろな。」

g:「ロックの歴史的には、70年代のハードロックやプログレやブルースロックが巨大化して、パンクで一度リセットされて。そのあとの新しい進化の始まりから、進化が終焉するところまでをリアルタイムで体験した、っていうことになるんだろうね。」

b:「A.O.Rやフュージョン〜産業ロック的な流れと、ニューウェイヴ〜インディーズ〜オルタナティブ的な流れと、オーソドックスな60年代ソウルやガレージロック、フォークロックへの回帰的な流れ。80年代を経てそのあたりがごちゃ混ぜになりながら、最終的にはメインストリームがなくなってジャンルの細分化へと向かっていったのが80年代を俯瞰した大きな流れ。」

g:「90年代以降、ロックはメインストリームの音楽ではなくなってしまったもんね。」

b:「そういう意味ではロックが死んでいくのを見届けたということになるんかなぁ。」

g:「80年代っていうのは“ロックが大きな儲けになる”ことが大手資本に発見された時代でもあって。」

b:「今からは考えられへんくらい、海外の音楽は普通にヒットしてたし、誰でも知ってたからな。」

g:「MTVやタワーレコード、そういうハード面でも充実してて、普通の人がロックに接する機会が増えたしね。」

b:「商売になると、商品として成立することだけを見込んだ作り物やらコピー商品が混ざりこんだりもしてたけどな。」

g:「ま、そういう側面もあるでしょうけど、全体としてはロックの裾野が広がって、より多種多様なスタイルの音楽が発展していったわけで、いろいろと揶揄されがちな80年代だけど、音楽的にもけっこう豊かないい時代だったと思うんだけど。」

b:「上の世代の奴らがな、偉そうにしよるねんな。イーグルスを知らないのか、レッド・ツェッペリンは凄かった、ピンクフロイドの全盛期はあんなもんじゃなかった、とかなんとか。」

g:「70年代にロックを聴いていた人たちっていうのは本当にマイノリティだっただろうからね。自負心が高い。」

b:「そんな知らんし、どーでもええやん。たまたまその時代やっただけでお前の手柄ちゃうやろ、って思うねんな。」

g:「ま、確かにロックという音楽は60年代後半から70年代にピークを迎えた音楽文化だったことは違いないけどね。」

b:「70年代の名盤なんかを聴いてたらな、そりゃあ、この時代をリアルタイムで経験したかったと思うたりもするねんけどな。」

g:「でも80年代育ちの我々だって、ポール・マッカートニーやストーンズといったロック第一世代がまだまだ現役バリバリだったのをリアルタイムで経験できたし。」

b:「野球で言うと、王や長嶋の晩年を知ってる、みたいな(笑)。長嶋選手の引退試合も、王選手が756号ホームランを打ったの、テレビで観てたもんな。」

g:「王や長嶋の現役時代はちゃんと知らないとしても一応かぶってるし、掛布や原、落合や江川は全盛期を知ってるし、野茂やイチローはビッグになる前から知ってるぞ、と。」

b:「ちょっと例えが違うかもしれんわ(笑)」

g:「じゃあ、力道山は知らなくても、北の湖も千代の富士も知ってるぞ、と?」

b:「いや、それはもっと違う(笑)」

g:「まぁでも、こうやって振り返ってみると80年代は80年代で、なかなかスリリングだったんじゃないかと思うよね。」

b:「ほんまそうやで。過去の遺産の縮小再生産ではなく、ロックンロールの初期衝動的なインパクトと、音楽的探究心をキープしながら新しい時代の音楽を創造するという点では、80年代は活発な時代やったはずやで。」

g:「そう、蔑まれるような時代ではなかったよね。」

b:「ええミュージシャンがいっぱいおって、ええ音楽がいっぱいあったわ。」



g:「文化というものは純化と洗練を繰り返していくものなんですよね。」

b:「どういうこっちゃ?」

g:「例えば、めちゃくちゃ感動してもはや言葉にすらならないようなときって、純粋にただ“おぉーっ”みたいな感嘆の言葉になるじゃない。これが初期衝動なんだけど、“おぉーっ”ではそれがどのようなことでどう感動したのかまるで伝わらない。で、技術を駆使してその感動を表現する。より技巧を凝らして、例えば詩や俳句みたいなものが生まれたりするのが“洗練”。“洗練”されすぎたものを初期衝動のピュアさに戻すのが“純化”。」

b:「洗練された表現って、定型化・類型化に陥ったり、技巧のための技巧が重ねられた結果、最初の表現衝動に駆られるような感動が残らんくなったりするのはありがちやからな。」

g:「ロックの歴史の流れでいえば、80年代っていうのは、パンクが純化させたものを再び洗練させていったような時期だったのかな、と。」

b:「ひとつひとつの音をいかに魅力的に響かせるのかという音楽的洗練と、自身の表現したい世界観をどれだけ生のまま閉じ込めておくことができるのかという初期衝動の維持っていうのは、パンク以降のミュージシャンはみんな悪戦苦闘したところやろうな。」

g:「70年代の洗練の果てに失速したロックを見てきているし、セックスピストルズは洗練を拒否して解散したわけだし。」

b:「純化にこだわりすぎて自滅しないように、洗練にこだわりすぎて袋小路に入り込まないように。」

g:「そのバランスがうまく成り立った音楽はやっぱりカッコイイね。」

b:「80年代の音楽って、軽いように見えてけっこうそういうところの奥の深さってあると思うわ。」

g:「もっと再検証・再評価がなされるべきだと思うよね。」

b:「いや、まぁ、そんなんはどうでもええねんけどな。俺が気持ちよく音楽聴けたらそんでええねん。」

g:「そう言っちゃうと身も蓋もない。初期衝動の“おぉー”で終わっちゃう。気持ちよく聴けるのはなぜ?どこが?どのような?というのを追求してみようっていうのが大事なところっていう話でしょ。」

b:「まぁな。純化と洗練のせめぎあいを表現しようという手段としてgolden、blueというキャラに分けた脳内対談を繰り広げてきたわけやからな。」

g:「あ、それはネタばらし的にNGでしょ。」

b:「まぁええやろ。あとがきなんやし。」


John Lennon,Yoko Ono / Double Fantasy(1980)

Paul McCartney / Tug Of War(1982)


Journey / Escape(1981)

Chicago / Chicago16(1982)


John Couger / American Fool(1982)

Bryan Adams / Cuts Like A Knife(1983)


J.Geiles Band / Freeze Flame(1981)

Greg Kihn Band / Kihnspiracy(1983)


Corey Hart / First Offence(1983)

Paul Young / No Parlez(1983)


The Pretenders / Learning To Crawl (1983)

Joan Jett & The Blackhearts / Album (1983)


Cyndi Lauper / She's So Unuseal(1983)

Tracey Ullman / You Broke My Heart In 17Pieces(1983)


Roman Holday / Cooking On The Roof(1983)

Haircut100 / Perican West(1982)


The Police / Synchronicity (1983)

Genesis / Genesis  (1983)


U2 / War (1983)

Big Country / The Crossing (1983)


Pale Fountains / Pacific Street (1984)

Echo & The Bunnymen / Ocean Rain (1984)


The Alarm / Declarations(1984)

The Waterboys / The Pagan Place(1984)


Bruce Springsteen / Born In The U.S.A(1984)

Billy Joel / An Innocent Man(1983)


Judas Priest / Defenders Of The Faith(1984)

Whitesnake / Slide It In(1984)


Van Halen / 1984(1984)

Twisted Sister / Stay Hungry(1984)


The Style Council / Cafe Bleu(1984)

Sade / Diamond Life(1984)


Joe Jackson / Body and Soul(1984)

Elvis Costello / Goodbye Cruel World(1984)


Howard Jones / Human's Lib(1984)

Eurthyhmics / Touch(1984)


The Jacksons / Victory(1984)

Prince & The Revolution / Around The World In A Day(1985)


Glenn Frey / The Allnighter(1984)

Don Henley / Building The Perfect Beast(1984)


David Bowie / Tonight(1984)

Bryan Ferry / Boys and Girls(1985)


Scandal feut.Patty Smyth / The Warrior(1984)

Lone Justice / Lone Justice(1985)


Marshall Crenshaw / Downtown(1985)

John Hiatt / Warming Up To The Iceage(1985)


Phantom Rocker & Slick/ Phantom Rocker & Slick(1985)

Brian Setzer / The Knife Feels Like Justice(1986)


Stevie Ray Vaughan / Soul To Soul (1985)

ZZ Top / Afterburnar (1985)


Dead Or Alive / Youthquake(1985)

Pet Shop Boys / Please(1986)


Tears For Fears / Songs From The Big Chair (1985)

Scritti Politti / Cupid and Psyche '85 (1985)


Robert Palmer / Riptide(1985)

Steve Winwood / Back In The High Life(1986)


Aretha Franklin / Who's Zooming Who(1985)

Lionel Richie / Dancing On The Ceiling(1986)


Public Image Limited / Album(1986)

Big Audio Dynamite / No.10 Upping St.(1986)


Run-D.M.C / Raising Hell(1986)

Beastie Boys / Licensed To Ill(1986)


Peter Gabriel / So (1986)

Paul Simon / Graceland (1986)


Queen / Kind Of Magic(1986)

Fleetwood Mac / Tango In The Night(1987)


Tom Waits / Rain Dogs(1985)

Nick Cave & The Bad Seeds / Kicking Against The Picks(1986)


Prefab Sprout / Steve McQueen (1985)

Crowded House / Crowded House (1986)


Fabulous Thunderbirds / Tuff Enough (1986)

Georgia Satellites / Georgia Satellites (1986)


Bruce Hornsby & The Range /The Way It Is(1986)

Los Lobos / By The Light Of The Moon(1986)


R.E.M / Life's Rich Pageant(1986)

The Smithereens / Especially For You(1986)


The Smiths / Queen Is Dead(1986)

The The / Infected(1986)


Chris De Burgh / Into The Light(1986)

Chris Rea / On The Beach(1986)


The Bangles / Different Light(1986)

Belinda Carlisle / Heaven On Earth(1987)


Robbie Nevil / Robbie  Nevil(1986)

Wet Wet Wet / Popped In Souled Out(1987)


Eric Clapton / August(1986)

George Harrison / Cloud Nine(1987)


The Cure / Kiss Me,Kiss Me,Kiss Me(1987)

The Cult / Electric(1987)


Suzanne Vega / Solitude Standing(1987)

Tracy Chapman / Tracy Chapman(1988)


The Primiteves / Lovely(1988)

Transvision Vamp / Pop Art(1988)


Mick Jagger / Primitive Cool(1987)

Keith Richards / Talk Is Cheap(1988)


Robbie Robertson / Robbie Robertson(1987)

Brian Wilson / Brian Wilson(1988)


The Sugarcubes / Life's Too Good(1988)

The Pixies / Doolittle(1989)


Patti Smith / Dream Of Life(1988)

Lou Reed / New York(1989)