golden(以下g):「1982年に高校生になりました。」
blue(以下b):「“ベストヒットU.S.A”が始まって、バイトした金でステレオ買って、近所にレンタル・レコード店ができて、と音楽を聴ける環境が一気に前進したんがこの年やった。」
g:「それまでは、テレビで歌謡曲かニューミュージック、新しい情報は雑誌とラジオ、レコードなんてしょっちゅう買えるわけないから友達に借りるのがほとんどだったからね。」
b:「日本のロックも海外のロックも、聴きたいもんは山ほどあったからな。」
g:「さて、そんな1982年のビルボード年間ヒットチャートを見てみましょう。」

1.Phygical / オリヴィア・ニュートン・ジョン
2.Eye Of The Tiger / サヴァイヴァー
3.I Love Rock'n' Roll / ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツ
4.Ebony & Ivory / ポール・マッカートニー&スティーヴィー・ワンダー
5.Centerfold / J. ガイルズ・バンド
6.Don't You Want Me / ヒューマンリーグ
7.Jack and Diane / ジョン・クーガー
8.Hurts So Good / ジョン・クーガー
9.ABRACADABRA / スティーヴ・ミラー・バンド
10.Hard To Say I'm Sorry / シカゴ

b:「へぇー、こんなんやったんや。」
g:「オリヴィア・ニュートン・ジョンってそんな売れたんだったっけ。」
b:「レオタード着て踊るやつな。」
g:「サヴァイヴァーは映画『ロッキー』のテーマ。」
b:「ああいうタイプのポップでハードなロック。レコード貸してもろうたけどな、ふーん、洋楽ってこんなんやとは思うたものの、そこまでピンとは来んかった。」
g:「前回さんざんこき下ろしてたよね。」
b:「で、おぉっコレやって思ったんが、ジョン・クーガー。」
g:「年間トップ10に2曲もぶっこむくらいヒットしてたんだね。」
b:「“ジャック&ダイアン”も“青春の傷あと”も、めっちゃしびれたわ。」

John Couger / American Fool(1982)


b:「これええわ、ってなってレコード借りに行った。で、カセットテープに落として何回も聴いたわ。」
g:「レタリングとかも凝ってね。」
b:「収録時間が35分くらいしかなかったんがな、唯一欠点で。」
g:「46分テープだと余っちゃうんだよね(笑)」
b:「いやー、なんていうかな、最初のギターの音からめっちゃ痺れたんや。サヴァイヴァーとかジャーニーの軽くてキラキラしたのんとは違うやろ。」
g:「骨太で粗い。」
b:「そやねん、ほんで渋くて苦味ばしった声な。」
g:「渋いけどやんちゃっぽいっていうか、反骨心が感じられる。」
b:「女の子にキャーキャー言われるようなチャラいのとは一線を画したスタンスっていうかな。」
g:「真面目で誠実そうな印象があったよね。」
b:「真面目なだけちゃうねん。我が道を行く感ていうか、一匹狼的っていうか、無駄につるまへん感じ、日和らへん感じ。あー、俺が好きなんはこんな感じのロックやっ!って思うたんや。」



g:「ジョン・クーガーと並べるとなると、ブライアン・アダムスかな。」
b:「その翌年くらいか?“Straight From The Heart”がヒットした。」
g:「美しいバラードだけど、あの手の髪の長いチャラいバンドが演る甘いだけのバラードとは違うよね。」
b:「そやな、心の葛藤というか、悩みを抱えつつ誠実さを願うみたいな感じがあるな。」

Bryan Adams / Cuts Like A Knife(1983)

g:「その次にヒットした“This  Time”は元気なロックンロールで。」
b:「ぼってりしたアレンジやなくて、シンプルでストレートなんがええな。」
g:「元気いっぱい。」
b:「ジョン・クーガーに比べたら陰りがないっていうか、元気すぎ、爽やかすぎ、健康的すぎ、って感じはするけどな。」
g:「まぁ、そういうちょっと青臭いところも含めて、憧れたんだろうね。」



b:「ノーギミックでシンプル&ストレート。」
g:「クラス界隈で受けていたジャーニーやシカゴではなく、こっち方向がいいって思ったのはどういう心境からだったんだろうね。」
b:「15〜16才、まだまだ何にもできないくせにいっちょ前のつもりでいたあの年頃っていうのは、人と違うことを選びたがりがちやからな。」
g:「おまえらがそっちなら、俺はこっち、的な。」
b:「そうすることで自分の方向性みたいなものをつかんでいくんやろうな。」
g:「女子にキャーキャー言われるタイプではなく、孤高の一匹狼路線をとるんだ、と(笑)」
b:「まぁそういう意識をしていたわけではないやろうけど、共感しやすいものっていうのは、結局は自分はそう在りたい像やったりするからな。」