
golden(以下g):「以前どこかでさ、すぐ裸になるバンドは好かんって言ってなかった?」
blue(以下b):「あー、レッド・ホット・チリ・ペッパーズな。」g:「だとすると、イギー・ポップも嫌い?」
b:「好きか嫌いかでいうと、好きなタイプではないやろな。なんかこちらの常識とあちらの常識ではすごく隔たりがありそうな気はする。」
g:「根本的に相容れなさそう、と。」
b:「部屋でイグアナ飼ってたり、生きた小鳥をそのまま食べたりするんやろ?」g:「かなり偏見が過ぎるようです。。。」
b:「でもな、俺、このアルバム大好きやで。初めて聴いたんはもう30代も後半すぎてからやったし夢中になることはなかってんけど、例えばピストルズより前にイギー・ポップを知ってたら、ジョン・ライドンよりイギー・ポップの方がパンクやろ、って思うてたかも知れんと思うわ。」
g:「けっこうなオシ具合じゃん。」b:「いやー、なかなかパンチあるで。1曲目の“Search and Destroy”とかな、18くらいの頃やったらアンセムにしてたと思うで。なんせ、探し出してぶち壊せ、やで。」
b:「ギターはジェイムス・ウィリアムソン、元々ギタリストだったロン・アシュトンがベースに回って、ドラムはスコット・アシュトン。」
g:「ガレージ・ロックからパンク・ロックが生まれる瞬間というか、荒々しくて凶暴で、のたうちまわるようにエネルギーを放射しまくってるよね。」
b:「エネルギーの爆発力がな、半端ないな。」
g:「ピストルズのスティーヴ・ジョーンズもこのレコードを聴きながらギターを練習したとか、ジョニー・マーやサーストン・ムーア、ブラック・フランシスやカート・コバーンらがこのアルバムをリスペクトしてるとか、後世のパンク〜オルタナティヴ・ロックへ与えた影響は計り知れない、と言われています。」
b:「まぁそうやろうな。14才くらいのときにこういうの聴いたらな、頭ぶっ飛ばされてると思うわ。」g:「他にもガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュとか、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシアンテも影響を受けたとか。」
b:「スラッシュとブラック・フランシスが65年生まれ、カート・コバーンが67年、ジョン・フルシアンテは70年、ほぼ同世代やねんな。」
g:「このアルバム、リリース時にはまったく売れず、バンドはレコード会社から契約を切られ、イギー自身は再びドラッグに溺れていったらしい。」
g:「そのロックとて世間一般の中ではマイナーで、いわゆる世間でヒットしていたのはカーペンターズだったりビー・ジーズだったりっていう時代。」
b:「俺らの世代っていうのは、上の世代がそうやってハードロックやプログレッシブロックを絶対的なものとして崇めるのを横目で観ながら、パンクやニューウェイヴやオルタナが歴史を書き換えていくのをリアルで観てきた世代なわけやけどな。」
g:「もう少し下の世代になると、もう最初からオルタナが主流。」b:「オルタナが主流っていうのは語義的に矛盾があるけどな。」
g:「プログレだって早くに進歩的じゃなくなったから矛盾してるし、ニューウェイヴだってオールドになっていったわけだし、そういうものでしょ。」
b:「それはええねんけどな、歴史っていうのは書き換えられるもんやなぁって思うわ、ほんま。」
g:「歴史は勝者や時の権力者が都合のいいように書き換えるからね。」
b:「俺が育った南河内の地方では楠木正成が地元のヒーローなんやけどな、戦時中は“楠木正成は時の天皇に矢を放った反逆者”という扱いで極悪人評価やったらしい。」
g:「今では鎌倉末期の切れ者とか、室町幕府成立の影の立役者とか、かなり傑出した人物だという評価だもんね。」
b:「ロック史も同じで、ハードロック全盛時代にはパンク系の扱いはボロカスだったのに、今の目線で言えばむしろヴェルヴェット・アンダーグラウンド・ドアーズ〜ストゥージズ・MC5〜ピストルズ・クラッシュが本流で、ハードロックやプログレの方が失笑されるというか、時代の徒花扱いやもんな。」
g:「おそらく当時はクソミソな扱いだったんだろうね、このアルバム。」
b:「下手くそとか雑音とか奇怪とか意味不明とかいろいろ言われとったんやろな。」g:「いや、そこまでボロカスだったかどうかはわかんないけど。。」
g:「本名はジェームス・オスターバーグ、ミシガン州生まれ、高校生くらいまでは品のいいごく普通のお坊ちゃんだったそうだよ。」
b:「イギーっていうニックネームはイグアナから来てるって聞いたことはあるな。」
g:「高校時代にドラマーとしてバンドを結成して、ボ・ディドリーとかをカバーしていたらしい。」
b:「ほぉ。」
g:「で、ドアーズのライヴを観て、そこからクレイジーな方向へ突っ走っていったらしいね。」
b:「よく言われるデヴィッド・ボウイとの関係は?」g:「実はボウイとイギーが出会ったのはこの『Raw Power』のレコーディングでのことだったらしい。」
b:「あ、割と後やったんや。」
g:「このアルバムがまったく売れずドラッグ中毒にハマっていくイギーをボウイがサポートしたらしい。」b:「で、ボウイのプロデュースでソロをリリースしたり、ボウイが自分のアルバムでイギーの曲を取り上げたりってことになっていったんか。」
g:「『The Ideot』収録の“China Girl”とかね、ボウイので知ってたけど、聴いてみたらほぼ同じアレンジだった。」
b:「『Lust For Life』とかもちゃんと聴けてへんねんなぁ。86年やったかなぁ、『Blah Blah Blah』っていうアルバムが出たの。」
g:「伝説のイギーがスティーヴ・ジョーンズが共演してるっていうんで期待して聴いてみたけど。」b:「なんかいかにも80年代な大味なアレンジでな、あれで“こんなもんかいな”って思うてしもうてん。」
g:「この『Raw Power』では野獣のように吠えまくっているけど、私生活では穏やかな人だったりするんだろうか。」
b:「ステージであれだけ暴れまわる人って、往々にして普段は大人しいんちゃうかな。」g:「ステージに上がるとムキムキのボディを見せびらかしたくなるっていう。」
b:「そこがなぁ、どうも苦手やねんなぁ。すごい人なんやろうけど合わんねんなぁ。部屋でイグアナ飼ってたり、生きた小鳥をそのまま食べたり・・・」
g:「いや、それ、偏見だって。。。」