golden(以下g):「今日のお題は、エリック・クラプトンとジョージ・ハリスン。」
blue(以下b):「いわゆるベテランたちの悪あがきって?」
g:「いや、悪あがきというほどでもないんじゃない?むしろ、肩の力を抜いて、リラックスして年相応の音楽を演り続けてきた2人じゃないかな。」
b:「クラプトンのこの時代の作品といえば85年の『Behind The Sun』に86年の『August』。」

g:「どっちもフィル・コリンズがプロデューサーで、自分でドラムも叩いてるんだよね。

b:「ベースのネイサン・イーストにキーボードのグレッグ・フィリンゲンズというおなじみのメンツな。」


Eric Clapton / August(1986)


g:「ティナ・ターナーとデュエットしたり、けっこうポップなんだよね。」
b:「ロバート・クレイをカヴァーした“Bad Influence”なんかもクレイのヴァージョンよりもポップやしな。」

g:「ロバート・クレイもソウルフルでドロドロのブルースではないけど、クラプトンは更にホーンを入れたりしてて。」

b:「どの曲もヴォーカルをフィル・コリンズに替えるとそのまんまフィル・コリンズのアルバムになりそうなくらいポップ。シンセの使い方、ホーン・セクションの使い方、ドラムのトーンと間、、、」

g:「フィル・コリンズはこの時期、ソロとしても大活躍でヒットを飛ばしまくってたからね。」

b:「いわゆる時代の音やなー、こういうの。ポップでマイルドで。」

g:「でも、そのマイルドさやポップさは、世間が思うクラプトン像ではなかったんだろうね。この『August』もあんまりいい評価ではなかった。」
b:「俺はけっこう好きやけどな。いわゆるアダルト・オリエンテッド・ブルース・ロック的な。」

g:「何も考えずに聴き流せる感じ。」

b:「でも実はけっこうギターは弾きまくってるし、歌もけっこうソウルフルでいいよ。」



g:「実はエリック・クラプトンのレコードはなんだかんだとけっこう聴いたんだけど、グッと心をつかまれるところまではいかなくて。」
b:「そう言われるとそうやな。今までもブログの記事に書いたことがほとんどないかも知れんな。」
g:「やっぱり60年代からのスーパースターだし、当然一目置くじゃない。それで期待値が上がりすぎてるのかな、って最初は思ってたんだけど。」
b:「ヤードバーズ〜ジョン・メイオールのブルース・ブレイカーズ、クリーム、ブラインド・フェイス、デレク&ザ・ドミノス、ソロの『461 Ocean Boulevird』に『Slow Hand』。まぁキャリアそのものがロックの歴史みたいな人やからな。」
g:「そう思ってたんだけど、どうもクラプトンという人そのものが、買いかぶられすぎなんじゃないのか、って。」
b:「あ、またそういう、ファンを敵に回すような発言を。」
g:「いやいや、そういうことではなくって。クラプトンという人の本質が、ロックの歴史だとかギターの神様だとかいうことが似つかわしくないっていうか、要はクラプトンという人はただのブルース好きでギターが上手いおじさんでしかないんじゃないかって思うんだよ。」
b:「じゅうぶんディスってるやろ。」
g:「うーん、言い方が難しいな。本人も神様とかレジェンドであるよりも、ご機嫌に歌ってギター弾いてるのが一番だと思ってるんじゃないかってこと。」
b:「まぁ確かに、クラプトンが派手だったのはクリーム時代だけで、70年代以降は演ってる音楽はずっと地味ではあるな。流行に乗ることもないし、淡々とスワンピーなブルース・ロックを演ってるっていう。」

g:「自作曲にこだわるわけでもないし、呼ばれればどこででも客演してるイメージもある。」
b:「フィル・コリンズとの共演“I Wish It Would Rain Down”とかロジャー・ウォータースのアルバム“Pros and Cons Of Hitch Hiking”とかでいかにもクラプトンなソロ弾いてたし、ライオネル・リッチーのアルバムでも弾いてたしな。」
g:「で、87年のジョージ・ハリスンの5年ぶりのアルバム『Cloud Nine』でも4曲も参加しているという。」


George Harrison / Cloud Nine(1987)




g:「このアルバムは大ヒットしてたなー。」
b:「俺にとっては初めてのジョージ・ハリスンのソロやったわ。」
g:「クラプトンがフィル・コリンズ色に染まっているように、このアルバムもジェフ・リン色一色と賛否両論だった。」
b:「ヒットした当時、ジェフ・リンやE.L.Oのことはそこまでよー知らんかってんけど、後々聴いていくと確かにジェフ・リンっぽい。」
g:「ジェフ・リンっていう人はそもそもビートルズマニアで、ある意味ビートルズの本人たちよりもビートルズっぽかったりするもんね。」
b:「ロイ・オービソンを復活させ、トラヴェリング・ウィルベリーズをまとめあげ、ポールやリンゴのソロもプロデュースして、ビートルズの“Free As A Bird”や“Real Love”までやっちゃったっていう。」
g:「この“Got My Mind Set On You”なんてもろにジェフ・リンだもんね。」



g:「ジョージ・ハリスンという人も、どこかつかみどころがないキャラの人だよね。」
b:「考えてみれば、ポールやジョンとずっとわたりあってきた超重鎮レジェンドミュージシャンなんやけどな、全然そういう重さがないっていうか。」
g:「ジェフ・リンのサウンドにまるごと乗っかちゃえるくらいスタンスが軽いというか、ある意味懐が深い。」
b:「俺が俺が、っていうよりは、いろんな人と協調しながらその中で役割を果たして行くタイプなんやろうな。」
g:「ビートルズの末期には、自分の曲が認められないことに腹を立てて一度脱退したらしいので、そういう自己主張の強いタイプなのかとも思ってたけど、その時も6日で戻ってきたらしいね。」
b:「そのジョージの脱退騒ぎのときに後任として名前が挙がったのがクラプトンだったらしいけど。」
g:「ジョージ・ハリスンとクラプトンのことをネット検索すると、ほとんど全部の記事がパティ・ボイドとの関係のことだったりして、いや、世間の人ってほんとゴシップが好きなんだなぁって思ったんだけど。」
b:「ミュージシャンが誰と付き合ってようが誰と別れようがどうでもええけどなぁ。作品さえ良ければどんな変人でも構わんし、なんなら宇宙人でもええわ。」
g:「パティ・ボイドのことがあってもなのか、そういうことがあったからこそなのか、ジョージとクラプトンは晩年はめちゃくちゃ仲良しで、いろんなとこで共演してるよね。」
b:「この『August』の次のアルバム、89年の『Journey Man』ではジョージの“Run So Far”を取り上げて、ジョージも録音に参加してるし、91年には2人でツアーして日本でも演った。」
g:「87年のプリンシズ・トラストのチャリティ・ライヴでは、“While My Guitar Gently Weeps”と“Here Comes The Sun”を共演したらしいね。」
b:「その時のメンツがものすごい。ジョージ・ハリスン、エリック・クラプトンに、ジェフ・リンも参加。ピアノがエルトン・ジョンで、ドラムにリンゴ・スターとフィル・コリンズっていう。。」
g:「おー、このクラプトン&コリンズ、ジョージ&ジェフ・リンという4人が揃い踏みしてるじゃないですかっ!」
b:「85年のライヴ・エイドくらいから、こういうスーパースターのタッグが増えたな。」
g:「リンゴもオールスターバンドとか引き連れてライヴしてたしね。」
b:「あれな、ええねんけど、見方をちょっと変えると、夢グループの歌謡曲興行とやってることはあんまり変わらんねんな。。」

g:「(笑)」
b:「これくらいの頃から、ロックが懐メロ化していったというか。」
g:「それも80年代後半の大きな特徴だったかもしれないけどね。」
b:「当時クラプトンが42才、ジョージ・ハリスンが44才。まだまだ老け込む歳ではなかったと思うけど。」
g:「でも、10代から30年近く演ってきて、その時代に40超えたロックスターなんていなかったわけだからね。肩の荷を下ろしてリラックスした創造活動に入っていくのはおかしなことでもなかった。」
b:「ロックンロールが1955年に誕生してから30年と少し。そうやってロックンロールはどんどんと優雅にエレガントになっていった、そういうことなんかな。」