golden(以下g):「80年代という10年くくりのディケイドでロックの変遷を追ってきたんだけど、こうやって俯瞰していくと、80年代の初めと終わりではずいぶんと様相が異なってるよね。」

blue(以下b):「ほんまやな。便宜上80年代として括られるけど、実際のところは、79年〜85年くらいがひとつの区切りで、86年〜94年くらいまでが次の区切りという気がするな。」

g:「91年にはニルヴァーナの『Nevermind』、パール・ジャムの『Ten』、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの『Blood Sugar Sex Magik』といった時代を画したアルバムが続々リリースされて。」

b:「マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやマシュー・スイートも91年。」

b:「ビョークがソロ・デビューしたのが93年、ベック、オアシス、ウィーザー、グリーン・デイなんかが揃って94年か。」

g:「このあたりっていうのはリアルタイムでほとんど聴いてないんだけど。」

b:「当時14、15才くらいやったら夢中になったんかも知れへんな。」

g:「そんな90年代初頭のオルタナティヴやグランジやミクスチャーロックの胎動は80年代からあったわけで。」

b:「スミスやR.E.Mあたりは聴いてたけど、ほとんどはもっとアングラっぽくて聴く機会がなかったな。」

g:「今回ピックアップしたシュガーキューブスとピクシーズも、リアルタイムでは存在すら知らなかったバンドだけど。」
b:「オルタナティヴの連中が好んで影響を受けたってことで後々になって脚光を浴びたバンドやしな。」
g:「聴いたのって、2010年とかもっとあとくらいだっけ?」
b:「中古CD屋で300円で叩き売りされてたのを拾った(笑)」


The Sugarcubes / Life's Too Good(1988)

g:「90年代を代表するアーティストのひとり、ビョークが在籍していたのがこのシュガーキューブス。」
b:「ケイト・ブッシュほどではないけど、変なソプラノが入ったり情念どろどろ系っぽかったりする歌い方がどうも苦手やってん。」
g:「確かにぶっ飛んだ歌い手ではあるけど、ケイト・ブッシュよりは全然聴きやすいでしょ。一方ですごくキュートだったり、コブシきかせたうねりなんかもあったり、表現の幅が広いっていうか。」
b:「リッキー・リー・ジョーンズに聴こえる瞬間とかスージー・スーかと思うような曲もあったり、多彩ではあるな。」
g:「音楽的にはトーキングヘッズやポップグループからの影響と思われる不思議なリズム感が魅力。」
b:「まさに、80年代初頭のニューウェイヴ〜ポストパンクの影響から始まったバンドなんやろな。」





The Pixies / Doolittle(1989)

g:「ピクシーズの方は、もろパンクからの影響が強い音で、後のポップパンクやエモ、メロコアあたりにも通じるような。」
b:「ブラック・フランシスはメンバーを、“ハスカー・ドゥとピーター・ポール&マリーが好きな人”という条件で募集したらしいからな。」
g:「ハスカー・ドゥとピーター・ポール&マリー(笑)、笑っちゃうけど確かにそういう音ではある。」

b:「音はガサツでヘヴィーで、メロディーはキレイで、歌は退廃的で。」

b:「これな、当時聴いてたら、めちゃくちゃファンになってたかも知れんと思うわ。」




g:「シュガーキューブスとピクシーズ、音楽としては全然違うけどどこか共通感が感じられるのはなんだろう。」

b:「パンク〜ニューウェイヴの音を子どもの頃から浴びて育った世代がバンドを始めるとこういう音になる、っていう感じがするな。」

g:「なるほど、入口がビートルズやディープパープルではなく、トーキングヘッズやバウハウスだったりするとこうなる、と。」

b:「ビョークもブラック・フランシスも65年生まれなんやな。」

g:「ほぼ同世代。」

b:「ダイナソーJr.のJ.マスシスも65年、パール・ジャムのエディ・ヴェーダーとマシュー・スイートが64年、ジェフ・バックリーが66年、ニルヴァーナのカート・コバーンとスマッシュ・パンプキンズのビリー・コーガンが67年。」

g:「生まれた頃から物質的に豊かで、精神的には行き止まり感があった世代ということか。」

b:「環境問題やら東西冷戦、核の冬、経済的な行き詰まり、そういう中で育った世代なわけやし、夢や希望より退廃感が強く出るわけやな。」

g:「90年代以降ロックはほとんど聴いてへんねんけど、同世代の音楽という点では興味あるな。」
b:「今聴くと、けっこう感じるもんがあるかも知れへんけどな。」
g:「うん、なるほどね。ちゃんと聴いてみようかなぁ。」

b:「1年後に90年代特集の雑談やろーぜー。」