golden(以下g):「今回も、ヒットした80年代当時は好んで聴いてなかったけど、後になってじわじわと好きになったものを取り上げてみようと思って。」
blue(以下b):「で、ロビー・ネヴィル?なんかチャラいな。」


Robbie Nevil / Robbie  Nevil(1986)


g:「いや、確かに男前で、当時も女性中心にアイドル的な人気だったんだけど。」
b:「レンタルレコード屋で一緒にバイトしてた一つ上の女の子が好きでようかけてたわ。」
g:「当時は“こんなの女子供向けでしょ”って無視してたんだけど。」
b:「スティーヴィー・レイ・ヴォーンやジョージア・サテライツとは並び立たんわな。」
g:「いや、それが、けっこうかっこいいんだよ。」



b:「うーん、なるほど。けっこうソウルフルやな。」
g:「でしょ。いわゆるブルー・アイド・ソウル。」
b:「ホール&オーツとかポール・ヤングとか、あの辺りはわりと好きで聴いてたんやけどな。」
g:「このチャラいルックスで“Ce'st La Vie”なんて歌われると、なんだか薔薇色の人生応援歌みたいな感じがするけど、歌われているのは“仕事があるのはいいんだけど、朝から夜まで働き詰め。人生ってこんなものか?”みたいな内容で。」
b:「おぉ、ブルースやな。」

g:「80年代っぽいキラキラした音色ではあるけれど、生音のベースやパーカッションを活かしたリズムや、コーラスとのコール&レスポンスなんかもけっこうソウルフルなんだよね。」
b:「ヴォーカルも粘っこいしな。ま、確かに好きな感じやわ。」



g:「今聴くとけっこうかっこいいでしょ。」
b:「当時の20代前半の頃って、ルックスのええ男はみんな敵やったからな(笑)」
g:「男前でオシャレな奴って信用できなかった。」
b:「いや、こっちが一方的に敵意を持ってるだけなんやけどな。」
g:「女の子たちがキャーキャー言うっていうだけで一方的に拒否感あったよね。」
b:「いや、ほんまそう。女の子に受けてるっていうだけで聴く気もせんかったし。」
g:「当時はこういうR&B的なグルーヴってあんまりよくわかってなかったしね。」
b:「いや、男前やなかったら聴いてたかも知れんで。」
g:「男前が参入障壁を上げてたのは確かだけどね。」

b:「作り手側の意図とは違う感じで売り手側が勝手にターゲット層を決めて商売するっていうのはある話やな。」
g:「ありがちなレコード会社とマスコミ連動の戦略的マーケティング。」

b:「この時代って、レコードはアーティストの表現である以前に大金を稼げる商品だったからな。」

g:「こんなにカッコいいのにアイドル扱いされてパッと売れたあと一発屋扱いになってしまったのはもったいないよねぇ。」

b:「あ、そういうたら思い出したわ。80年代当時にスルーしてたけど実はめっちゃかっこええやん、って最近思うたグループがあって。Wet Wet Wetっていうコーラスグループ。」
g:「名前は聴いたことある気がする。」
b:「なんかエエとこの大学生みたいなお坊ちゃんたちみたいな出で立ちで、チャラいアイドルグループやと思うててんけどな、めっちゃ上手いし、ソウルフルやし。」


Wet Wet Wet / Popped In Souled Out(1987)


g:「ほんと、ソウルフル!」

b:「ポール・ヤングとかシンプリー・レッドとかのあの感じをもうちょっとソフトにした感じかな。」
g:「ドリフターズあたりのコーラスグループを80年代っぽくアップグレードしたみたいな感じやね。」
b:「全員がリードとれるみたいなクオリティーがあって、めっちゃソフィスティケートされてるねんけど、ちょっとだけ泥臭さが残ってるっていうか。」
g:「ソウルやR&Bが大好きやっていう気持ちは伝わってくるね。」



b:「このバンド、めっちゃ好みのタイプで、なんで当時の自分の耳には引っかからんかったんやろな。」
g:「ソウルとかまだそんなに聴いてへんかったやろ?」
b:「いや、ポール・ヤングもシンプリー・レッドも好きやったし、当時でもハマったと思うねんけどなぁ。」
g:「たぶん、ルックスといい曲調といい、売り手側が最初からマーケットを女子供にしぼりこんで売ろうとしてたのかもね。」
b:「『ミュージック・ライフ』とか読んでたらチェックできてたんやろか。」
g:「基本『ロッキンオン』か『ミュージック・マガジン』くらいしか読んでなかったからね、記事に登場してこなかった。」
b:「87年やとバイトばっかりしてたからTVとかもほとんど観てへんかったしな。」
g:「ま、『ミュージック・ライフ』で紹介されてたとしてもたぶん小馬鹿にして聴かなかっただろうけどね。」
b:「確かに。」
g:「ほんとはこういう音楽こそ『ミュージック・マガジン』で紹介されるべきだろうね。いや、載ってたんかも知れないけど。」
b:「どやろ。あの雑誌もかなり偏ってるからな。こういう甘ったるくて保守的なんは好きそうやないけどな。」
g:「あの当時って今よりずっと音楽ジャーナリズムが影響力持ってたよね。」
b:「今みたいに自力で情報チェックしたりでけへんかったからな。」
g:「その分、情報に振り回されたり、情報が遮断されてたり。」
b:「本来出会うべき音楽から遠ざけられて、プリンスが凄いだのストーン・ローゼズがどうだのって評論家好みの最新流行を追いかけさせられてた気がしてきたな。」
g:「その点、今はもっとフラットに自分の好きな音を探しやすい時代になってきたとも言えるね。」

b:「ええ時代やで。」
g:「聴きたいと思ったらどんな種類の音楽にでもすぐにアクセスできる。」
b:「ただなぁ、それはそれで上辺だけの好みばっかり追いかけることにもなりそうな気もするけど。」

g:「それはあるかも。」

b:「ちょっと違和感あるような音ともちゃんと向き合って聴き込むことで耳が育っていくっていう面もあったりするやん?俺らはそうやって耳が開かれてきたと思うねん。自由なんはええけど、それはそれで今の若い子たちはどうなん、って心配になるわ。」

g:「・・・そーゆーのって、典型的なおっさんのボヤきだよね。たぶん余計なお世話だと思うよ。」
b:「ガーン!いや、ほんまそうやわ。典型的なウザいおっさんやん。。」
g:「時代とともに変わっていくものですよ、そーゆーことは。」
b:「ほんまやわ。時代を隔てて今聴いてもかっこいいロビー・ネヴィルやWet Wet Wet聴いて反省しとくわ。」

g:「意味がわかりませんが、とりあえずはそれがいいんじゃないかと思います。」