大学関連のデータの集計に一区切りがつきましたのでしばらくイギリスの大学の紹介を行っていきます。大学の一般的な情報はWikipediaなどの繰り返しになりますので、今までこのブログで紹介してきましたデータを中心に書きます。それぞれのデータの根拠はページの最後の方の一覧に載せました過去の記事を参考にしてください。
今回はキングスカレッジロンドンをとりあげます。
キングスカレッジロンドン (Kings College London, KCL)
(撮影者Flaming Ferrari/Wikipediaより)
グラフで見たKCLの主な特徴
キングスカレッジロンドンは創立約180年でイングランドではオックスフォード大、ケンブリッジ大に次いで古い大学の一つです。ロンドン大学のカレッジの一つですが独立した大学として扱われます。ロンドン大学のカレッジの中では二番目に古いです。英国の研究型上位大学連合であるラッセルグループに属しています。
特徴を箇条書きにしますと次のようになります。
(1) 立地・大学の雰囲気
キャンパスはロンドンの中にいくつかあって散らばっていますが概して立地は良く、ロンドンの中心から徒歩20分のキャンパスから電車で30分のキャンパスまで様々です。立地的には最も恵まれた大学の一つです。大学構内の雰囲気や大学のシステムは都会型ですが、キャンパスによって近代的から現代的まで雰囲気が変わります。また一部宗教色のある建物も使われており、他のロンドン大学のカレッジとはやや趣が異なります。州立高校卒業生比率が72.3%と低く、裕福な家庭の学生が比較的多く集まる大学です。
(2) 学生数・教員数
教員一人当たりの学生数は11.7人でイギリスの上位大学の中ではトップレベルです。学生数は学部・大学院を合わせて約19,000人でイギリスの上位大学の中では標準的です。在学生の男女比は41:59と女子学生が多めになっています(参照元)。
(3) 入学難易度
学部入学難易度は高く、UCASの入学者平均スコアから計算した2013年度入学者の偏差値は64でイギリスで14番目です。専攻や年によって上下しますが、毎年同世代人口でだいたい英国の上位4.9%の学生が集まっています。医学、歯学、法律学、経営学が特に人気が高く難関です。なお学部入試の平均倍率はおよそ6倍です(参照元)。
(4) 成績評価・卒業難易度
最終的な卒業率は平均して93.0%、学部生の成績優等率は平均して72.6%です。学生の学力水準に対し、卒業難易度、成績評価はイギリスの中では標準的です。
(5) ノーベル賞受賞者数・研究力
ノーベル賞受賞者総数は12人でイギリスの中では8番目です。アメリカの大学と比べますと受賞者総数ではデューク大学、卒業生の受賞者数ではノースウェスタン大学とほぼ互角です。RAEで見ました大学の総合研究力はイギリスでは10番目です。経営学や歯学に強く、それぞれ英国2位、英国3位となっています。なお、研究人件費を含んだ2011年の研究費予算配分では英国で7番目に多い1億4710万ポンド(約221億円)を獲得しています(参照元)。
(6) 就職力・経済界での活躍度
卒業生の収入は初任給平均では英国5位と非常に良いです。地の利により就職はかなり有利のようです。卒業6ヶ月後時点の未就職者数は5.4%です(参照元)。一方、時価総額で世界上位500社の経営者の輩出力のランキングでは2011年のランキングでロンドンビジネススクールを除いたロンドン大学全体としてイギリス国内で8位、世界全体で92位という結果になっています(参照元)。また、2012年にNewYorkTimesが世界20カ国のトップ企業に聞き取り調査しました卒業生の採用評価では英国6位、世界38位となっています(参照元)
(7) 日本のライバル
日本で同水準の大学は選抜度に関しては、以前掲載しました英国上位12大の選抜度国際比較データの傾向から推測しますと上位国立大、上智大、理科大あたりです。研究力及び研究者育成力で同水準の大学は、ARWU分野別の研究力世界200位のデータから推測しますと理系は東北大~名古屋大学あたり、文系は日本の全ての大学を上回っています。一方、教員一人あたりの平均研究実績はARWUのPer Capita Performanceのスコアで見ますと23.2ポイントで京都大学がほぼ同水準です。また企業の採用評価に関しては、2012年にNewYorkTimesが世界20カ国のトップ企業に聞き取り調査しました卒業生の採用評価で東京大学(日本2位/世界23位)と京都大学(日本3位/世界47位)の間という結果(世界38位)が出ています。
(8) アメリカのライバル
米国で同水準の大学は選抜度では上記同様の理由からロチェスター大学などの全米総合大で選抜度上位40~44位水準です。研究力及び研究者育成力ではイリノイ大学シカゴ校です。一方、教員一人あたりの平均研究実績はARWUのPer Capita Performanceのスコアで見ますと23.2ポイントでデューク大学などがほぼ同水準です。また企業の採用評価に関しては、2012年にNewYorkTimesが世界20カ国のトップ企業に聞き取り調査しました卒業生の採用評価でニューヨーク大学(全米13位/世界37位)とペンシルバニア大学(全米14位/世界39位)の間という結果(世界38位)が出ています。
(9) 国内大学ランキング
新聞社が毎年出している国内大学ランキング表を見ますとIndependent社のランキングで2008年~2014年の7年間の平均ランキングで国内15位、Guardian社の2008年~2014年の7年間の平均ランキングで国内23位となっています。(近年授業料の急激な変動や景気変動などの国内情勢を反映し国内の大学ランキングは毎年乱高下しています。特にGuardian社のランキングは変動が激しくなる傾向があります。そのため、変動要素を減らすためにここでは平均で見ています。)
(10) 世界大学ランキング
2013年度版の世界大学ランキングではTHEのランキングで38位、QS社のランキングで19位、ARWUのランキングで67位となっています。医薬系が充実している事もあり世界大学ランキングのポジションは英国の中で6番目に高い結果になっています。
(11) 著名なOB
著名なOBはノーベル医学賞の医学者のフレデリック・ホプキンスやノーベル平和賞のムピロ・ツツなどです。
(12) 人種・国際性
学部学生の人種構成は白人が60%以下、非白人が40%以上となっています(参照元)。イギリスの全大学の非白人の人口平均が16%(参照元)である事を考えると非常にマイノリティの学生が多いのが伺えます(参照元)。研究型大学の上位20校(ラッセルグループ)の中ではLSEと並んで最もマイノリティが多い大学です。一方、留学生の割合は25%と、ロンドンの他の主要大学に比べると相対的に少なめで英国人が中心の大学です。
総合的に見ますと英国で12番目の大学だと思います。
今回はキングスカレッジロンドンをとりあげます。
キングスカレッジロンドン (Kings College London, KCL)
(撮影者Flaming Ferrari/Wikipediaより)
グラフで見たKCLの主な特徴
大学名 | Kings College London | ||
主要な所属大学連合 | ラッセルグループ / ロンドン大学 | ||
創立 | 1829年 | ||
立地 | London市内 (London中心から徒歩20分) | ||
学生数(正規のみ) | 学部 | 2012 | 1学年 平均4,263人 /全学年 12,790人 |
大学院 | 2012 | 6,475人 | |
学生の割合(学部) | 英国人 | 2012 | 81.6% |
欧州留学生 | 2012 | 7.4% | |
他留学生 | 2012 | 11.1% | |
学生の割合(大学院) | 英国人 | 2012 | 65.0% |
欧州留学生 | 2012 | 12.7% | |
他留学生 | 2012 | 22.4% | |
学部学生の出身高校 (2009) | (私立高卒) 27.7% : 72.3% (公立高卒) | ||
男女比 (2013) | (男) 41% : 59% (女) | ||
人種の多様性 (2008) | 非白人学生率 40.7% | ||
学部入学難易度 (2013) | 14位 | UCAS 463 / 換算偏差値 64 | |
学部入学難易度 (過去8年平均) | 13位 | 平均偏差値 63 | |
同世代人口比で見た選抜水準(学部) | (2013) 上位5.0% (過去8年の平均) 上位4.9% | ||
卒業難易度 | 標準的 | 学部最終卒業率 93.0% 学部成績優等率 72.6% | |
教員一人当たり学生数 (2013) | 6位 | 11.7人 | |
学生一人当たり教育支援支出 (2013) | 17位 | £1,415 (約21万円) | |
学生一人当たり施設支出 (2013) | 50位 | £407 (約6万円) | |
研究力 (2008) | 20位 | RAE 2.69 / 換算偏差値 60 | |
研究費予算配分 (2011 / 人件費込) | 7位 | £147,099,000 (約221億円) | |
ノーベル賞 | 8位 | 12人(OB 5人 教員 9人) | |
就職/進学率 (2012) | 4位 | 86.9% | |
卒業生の初任給平均 (2009) | 5位 | £24,440 (約367万円) | |
NYTimes トップ企業の採用評価 (2012) | 6位 | 世界38位 | |
Spear's 富裕層の輩出人数 (2013) | 22位 | 世界282位 | |
時価総額世界上位500社のCEO輩出力 (2011) | 8位 | 世界92位 (ロンドン大学全体) | |
日本の大学ライバル校 | 総合選抜度 | 上位国立大学及び上智大学、東京理科大学など | |
平均研究力 | 分野別順位平均: 理系:東北大学 文系:該当無し 教員当たり平均研究実績: 京都大学 | ||
採用評価 | 東京大学~京都大学 | ||
米国の大学ライバル校 | 総合選抜度 | 全米総合大学選抜度上位40位~44位水準 | |
平均研究力 | 分野別順位平均: Uni of Illinois at Chicago 教員当たり平均研究実績: Duke University | ||
採用評価 | 全米総合大学採用評価上位13位~14位水準 | ||
国内大学ランキング | Independent社 | (2014) 19位 (過去7年の平均) 15位 | |
Guardian社 | (2014) 32位 (過去7年の平均) 23位 | ||
世界大学ランキング | Times社 | 2014 | 38位 |
QS社 | 2013 | 19位 | |
上海交通大 | 2013 | 67位 | |
Times名声調査世界ランキング | 2013 | 61-70位 |
学問分野 | 全平均 | 法律 | 政治 | 経済 | 経営 | 会計 | 心理 | 哲学 | 歴史 | 古典 | 英文 | 芸術 | 言語 | 教育 |
難易度(学部) | 64 | 71 | 65 | -- | 64 | -- | -- | 66 | 67 | 62 | 65 | -- | -- | -- |
研究力 | 60 | 57 | 51 | -- | 67 | -- | -- | 70 | 62 | 64 | 63 | -- | -- | 64 |
学問分野 | 数学 | 物理 | 化学 | 生物 | 電子 | 機械 | 材料 | 土木 | 情報 | 建築 | 医学 | 歯学 | 薬学 | |
難易度(学部) | 68 | 62 | -- | 62 | -- | -- | -- | -- | 54 | -- | 71 | 68 | 60 | |
研究力 | 62 | 57 | -- | 62 | -- | -- | -- | -- | 61 | -- | 61 | 67 | 57 |
学問分野 | 社会科学 | 自然科学 | 工学 | 生命科学 | 医学&薬学 | |||||
経済学&経営学 | 数学 | 物理学 | 化学 | 情報工学 | ||||||
順位 | 101-150位 | -- | -- | 101-150位 | -- | -- | -- | 151-200位 | 51-75位 | 29位 |
キングスカレッジロンドンは創立約180年でイングランドではオックスフォード大、ケンブリッジ大に次いで古い大学の一つです。ロンドン大学のカレッジの一つですが独立した大学として扱われます。ロンドン大学のカレッジの中では二番目に古いです。英国の研究型上位大学連合であるラッセルグループに属しています。
特徴を箇条書きにしますと次のようになります。
(1) 立地・大学の雰囲気
キャンパスはロンドンの中にいくつかあって散らばっていますが概して立地は良く、ロンドンの中心から徒歩20分のキャンパスから電車で30分のキャンパスまで様々です。立地的には最も恵まれた大学の一つです。大学構内の雰囲気や大学のシステムは都会型ですが、キャンパスによって近代的から現代的まで雰囲気が変わります。また一部宗教色のある建物も使われており、他のロンドン大学のカレッジとはやや趣が異なります。州立高校卒業生比率が72.3%と低く、裕福な家庭の学生が比較的多く集まる大学です。
(2) 学生数・教員数
教員一人当たりの学生数は11.7人でイギリスの上位大学の中ではトップレベルです。学生数は学部・大学院を合わせて約19,000人でイギリスの上位大学の中では標準的です。在学生の男女比は41:59と女子学生が多めになっています(参照元)。
(3) 入学難易度
学部入学難易度は高く、UCASの入学者平均スコアから計算した2013年度入学者の偏差値は64でイギリスで14番目です。専攻や年によって上下しますが、毎年同世代人口でだいたい英国の上位4.9%の学生が集まっています。医学、歯学、法律学、経営学が特に人気が高く難関です。なお学部入試の平均倍率はおよそ6倍です(参照元)。
(4) 成績評価・卒業難易度
最終的な卒業率は平均して93.0%、学部生の成績優等率は平均して72.6%です。学生の学力水準に対し、卒業難易度、成績評価はイギリスの中では標準的です。
(5) ノーベル賞受賞者数・研究力
ノーベル賞受賞者総数は12人でイギリスの中では8番目です。アメリカの大学と比べますと受賞者総数ではデューク大学、卒業生の受賞者数ではノースウェスタン大学とほぼ互角です。RAEで見ました大学の総合研究力はイギリスでは10番目です。経営学や歯学に強く、それぞれ英国2位、英国3位となっています。なお、研究人件費を含んだ2011年の研究費予算配分では英国で7番目に多い1億4710万ポンド(約221億円)を獲得しています(参照元)。
(6) 就職力・経済界での活躍度
卒業生の収入は初任給平均では英国5位と非常に良いです。地の利により就職はかなり有利のようです。卒業6ヶ月後時点の未就職者数は5.4%です(参照元)。一方、時価総額で世界上位500社の経営者の輩出力のランキングでは2011年のランキングでロンドンビジネススクールを除いたロンドン大学全体としてイギリス国内で8位、世界全体で92位という結果になっています(参照元)。また、2012年にNewYorkTimesが世界20カ国のトップ企業に聞き取り調査しました卒業生の採用評価では英国6位、世界38位となっています(参照元)
(7) 日本のライバル
日本で同水準の大学は選抜度に関しては、以前掲載しました英国上位12大の選抜度国際比較データの傾向から推測しますと上位国立大、上智大、理科大あたりです。研究力及び研究者育成力で同水準の大学は、ARWU分野別の研究力世界200位のデータから推測しますと理系は東北大~名古屋大学あたり、文系は日本の全ての大学を上回っています。一方、教員一人あたりの平均研究実績はARWUのPer Capita Performanceのスコアで見ますと23.2ポイントで京都大学がほぼ同水準です。また企業の採用評価に関しては、2012年にNewYorkTimesが世界20カ国のトップ企業に聞き取り調査しました卒業生の採用評価で東京大学(日本2位/世界23位)と京都大学(日本3位/世界47位)の間という結果(世界38位)が出ています。
(8) アメリカのライバル
米国で同水準の大学は選抜度では上記同様の理由からロチェスター大学などの全米総合大で選抜度上位40~44位水準です。研究力及び研究者育成力ではイリノイ大学シカゴ校です。一方、教員一人あたりの平均研究実績はARWUのPer Capita Performanceのスコアで見ますと23.2ポイントでデューク大学などがほぼ同水準です。また企業の採用評価に関しては、2012年にNewYorkTimesが世界20カ国のトップ企業に聞き取り調査しました卒業生の採用評価でニューヨーク大学(全米13位/世界37位)とペンシルバニア大学(全米14位/世界39位)の間という結果(世界38位)が出ています。
(9) 国内大学ランキング
新聞社が毎年出している国内大学ランキング表を見ますとIndependent社のランキングで2008年~2014年の7年間の平均ランキングで国内15位、Guardian社の2008年~2014年の7年間の平均ランキングで国内23位となっています。(近年授業料の急激な変動や景気変動などの国内情勢を反映し国内の大学ランキングは毎年乱高下しています。特にGuardian社のランキングは変動が激しくなる傾向があります。そのため、変動要素を減らすためにここでは平均で見ています。)
(10) 世界大学ランキング
2013年度版の世界大学ランキングではTHEのランキングで38位、QS社のランキングで19位、ARWUのランキングで67位となっています。医薬系が充実している事もあり世界大学ランキングのポジションは英国の中で6番目に高い結果になっています。
(11) 著名なOB
著名なOBはノーベル医学賞の医学者のフレデリック・ホプキンスやノーベル平和賞のムピロ・ツツなどです。
(12) 人種・国際性
学部学生の人種構成は白人が60%以下、非白人が40%以上となっています(参照元)。イギリスの全大学の非白人の人口平均が16%(参照元)である事を考えると非常にマイノリティの学生が多いのが伺えます(参照元)。研究型大学の上位20校(ラッセルグループ)の中ではLSEと並んで最もマイノリティが多い大学です。一方、留学生の割合は25%と、ロンドンの他の主要大学に比べると相対的に少なめで英国人が中心の大学です。
総合的に見ますと英国で12番目の大学だと思います。
イギリスの大学の分類 | ・ イギリスの大学の4つの分類 |
入学難易度(偏差値)と研究力 | ・ イギリスの大学入学難易度と研究力のランキング ・ イギリスの大学の専攻別の入学難易度と研究力 ・ 近年のイギリスの大学の学部入学難易度の変遷 ・ 2013年度の大学入学難易度 ・ 2014年度の大学入学難易度 |
選抜度の国際比較 | ・ 英米大学の選抜度比較一覧表 ・ 選抜度で見たイギリスの大学とその国際比較 ・ ラッセルグループなど主要大学グループの難易度と選抜水準 |
研究力の国際比較 | ・ 英米大学の研究力比較一覧表 ・ イギリスの大学の研究力の国際比較 ・ イギリスの大学の研究力の国際比較 (2013年版) |
ノーベル賞受賞者数 | ・ ノーベル賞受賞者数で見るイギリスの大学 |
卒業生の初任給 | ・ イギリスの大学の初任給ランキング |
富裕層の出身大学 | ・ 富裕層を輩出する英国大学はどこか |
公立高校出身比率 | ・ 公立高校卒業生比率で見るイギリスの大学 |
成績評価と卒業難易度 | ・ イギリスの大学の成績評価と卒業難易度の傾向 |
世界大学ランキング | ・ 世界大学ランキングの問題点と信頼性 |