ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語り』の解説記事を書いていくプロジェクト。

中公文庫(手塚富雄訳)『ツァラトゥストラ』を底本としています。

 

 

 

第一部

ツァラトゥストラの序説 1 p12

ツァラトゥストラの言説

三様の変化 2 p48

徳の講壇 3  p53

背面世界論者 4  p58

肉体の軽蔑者 5  p66

喜悦と情熱 6  p71

青白い犯罪者 7  p75

読むことと書くこと 8  p81

山上の木 9  p86

死の説教者 10 p92

戦争と戦士 11 p96

新しい偶像 12 p101

市場の蠅 13 p107

純潔 14 p114

友 15 p118

千の目標と一つの目標 16 p124

隣人愛 17 p130

創造者の道 18 p134

老いた女と若い女 19 p140

まむしのかみ傷 20 p145

子どもと結婚 21 p150

自由な死 22 p155

贈り与える徳 23 p161

 

 

 

 

第二部

鏡をもった小児 24 p174

至福の島々で 25 p179

同情者たち 26 p186

僧侶たち 27 p194

有徳者たち 28 p200

賤民 29 p208

毒ぐも 30 p214

名声高い賢者たち 31 p222

夜の歌 32 p229

舞踏の歌 33 p234

墓の歌 34 p242

自己超克 35 p250

崇高な者たち 36 p258

教養の国 37 p264

無垢な認識 38 p270

学者 39 p276

詩人 40 p282

大いなる事件 41 p290

ある予言者 42 p298

救済 43 p307

対人的知恵 44 p319

最も静かな時刻 45 p326

 

 

 

 

第三部

さすらいびと 46 p336

幻覚と謎 47 p343

望まぬ至福 48 p355

日の出前 49 p363

卑小化する徳 50 p371

橄欖の山 51 p383 (橄欖:かんらん)

通過 52 p391

離反者 53 p398

帰郷 54 p407

三つの悪 55 p416

重さの霊 56 p427

新旧の表 57 p437

快癒しつつある者 58 p485 (快癒:かいゆ)

大いなる憧れ 59 p500

後の舞踏の歌 60 p508

七つの封印 61 p518

 

 

 

 

第四部

蜜の供え物 62 p530

危急の叫び 63 p538

王たちとの会話 64 p546

蛭 65 p555

魔術師 66 p562

退職 67 p578

最も醜い人間 68 p588

進んでなった乞食 69 p599

影 70 p608

正午 71 p615

挨拶 72 p622

晩餐 73 p634

高人 74 p639

憂愁の歌 75 p663

精確な知識 76 p675

砂漠の娘たちのもと 77 p682

覚醒 78 p697

驢馬祭り 79 p704 (驢馬:ろば)

酔歌 80 p714 (酔歌:すいか)

徴 81 p733 

 

 

 

ニーチェと現代 (三島由紀夫and手塚富雄) 82 p741

解説 (手塚富雄) 83 p757

 

 

結びに  84 

 

 

 

※底本では手塚富雄が「手塚富雄」と表記されている。

〇経緯

2018年の夏ごろにブルーハーツの「未来は僕らの手の中」の替え歌を作る→2020年春に本サイトにて公開→2021年春にYouTubeデビューするにあたり、その替え歌を動画投稿しようと計画する→2018年に作った替え歌の歌詞を微調整しようと考える

 

※2024年versionの歌詞:ブルーハーツ 未来は僕らの手の中 替え歌(2024年版)

 

 

 

〇替え歌「未来なき僕らの世の中」(2021年版)  原曲:真島昌利/歌詞:A倉R郎

夜よりも朝がいい 果実より葉っぱがいい

カレーパンよりアンパンが好き リズムよりスピード大好き

舐められるくらいなら しゃぶられる方がいい

お札一枚で 禁断の異世界へ

 

悪魔に気を付けろ 悪魔の名はオトリのマトリ

グミよりもチョコが好き 肉よりも野菜が欲しい

かき氷を食べるなら アイスをしゃぶりたい

支配者をあてにせず 買おう、きめよう、売り捌こう

 

未来なき僕らの世の中

 

学校も塾も要らない 粉末を握り締めたい

人骨は主より授かりし 天使の粉で粉々

粉々と突然に 昨日は砕けていく

隔世への一針 幻覚への一粒

 

 

 

〇余談

一万円札の顔が福沢諭吉から渋沢栄一に代わるとのこと。

「未来無き僕らの世の中」より「未来なき僕らの世の中」の方が読みやすいと思い、曲名も微調整した。

なお、一部のサイトでは原曲の曲名が「未来は僕等の手の中」となっている。

〇動画

Sly & The Family Stone/サンキューThank You (Falettinme Be Mice Elf Agin) (1970年)

https://www.youtube.com/watch?v=7fpjyAlrRr0

 

公式音源

https://www.youtube.com/watch?v=NOa5UOHdwnc

 

 

 

〇和訳

Looking at the devil, grinning at his gun

Fingers start shaking I begin to run

Bullets start chasing I begin to stop

We begin to wrestle I was on the top

悪魔をみている 彼の銃器を笑っている

指が揺れ始め 私は走り出す

弾丸が追跡を始め 私は足を止め始める

我々は格闘を始め 私は頂点にいた

 

I want to thank you for letting me be myself again

Thank you for letting me be myself again

私が自分自身に戻れたことを君に感謝したい

そうさせてくれて有難う

 

 

Stiff all in the collar, fluffy in the face

Chit-chat chatter trying, I say stuff me in the place

Thank you for the party, but I could never stay

Many things on my mind, words in the way

襟においては酷く堅苦しく 顔においては柔らかく

雑談を試みて 私はここに自分を詰めこめと言う

宴はありがとよ でも私は留まっていられなかった

私の心情における多くのこと この方法での言葉

 

I want to thank you for letting me be myself again

Thank you for letting me be myself again

私が自分自身に戻れたことを君に感謝したい

そうさせてくれて有難う

 

 

Dance to the music, all night long

Everyday people, sing a simple song

Mama's so happy, mama starts to cry

Papa's still singing, you can make it if you try

この音楽に合わせて踊れ 一晩中

毎日を生きる普通の人々よ この素朴な曲を歌え

母はとても幸せ 母は泣き始める

父はまだ歌っている やろうと思えば君でも出来る

 

I want to thank you for letting me be myself again

Thank you for letting me be myself again

(Oh yeah, different strokes for different folks)

私が自分自身に戻れたことを君に感謝したい

そうさせてくれて有難う

(嗚呼 十人十色)

 

 

Flaming eyes of people fear burning into you

Many men are missing much, hating what they do

Youth and truth are making love, dig it for a starter

(Now…)

Dying young is hard to take, selling out is harder

人々の激しい瞳が君に焼き付くのを恐れる

多数の男が大切なものを見失っている

彼らがしていることを嫌っている

若さと真実は情交する 

開始を合図する人のためにそれを理解しろ

(いま…)

若くして死ぬのは受け入れるのが難しい

節を曲げるのはもっと難しい

 

Thank you for letting me be myself again

I want to thank you for letting me be myself again

Thank you for letting me be myself again

私が自分自身に戻れたことを君に感謝したい

そうさせてくれて有難う

私が自分自身に戻れたことを君に感謝したい

〇『炎眼のサイクロプス』とは

2020年12月21日発売の『週刊少年ジャンプ2021年3・4合併号』に載った読切漫画。『雨の日ミサンガ』で知られる石川理武氏が原作を担当し、『アクタージュ』で知られる宇佐崎しろ氏が作画を担当した。

 

 

 

〇分析

★本作の冒頭ページは『BURN THE WITCH』#0.8の冒頭ページ(「制服が好きだ」「私が何者であるかを誰にも証明しなくて済むからだ」)のオマージュ。石川理武氏は久保帯人作品からの影響を公言している。

 

 

★サイクロプスは、ギリシャ神話に出てくる隻眼(目が片方しかないこと)の巨人の名前。ギリシャ神話由来の通称でありながら、ハンムラビ法典の一節が出てくるなどキャラ設定が混沌としている。

 

 

★石川理武氏は、主人公「(炎眼の)サイクロプス」のキャラデザインを「カッコいい」と絶賛している。

 

 

★高い構成力

あまり気づいていない読者の方々が多いかもしれないが、伏線は敷かれている。

・「アタシの作品は炎の中で溶け落ちた」(「溶け落ちた」に圏点)→テルミット反応の暗示

・「資格はなくても弁護はできるんです まぁちょっとした制限はありますが」(「制限」に圏点)→弁護士法第72条

 

 

★キーワード「可能性」

本作のキーワードは「可能性」である。館アンナの台詞「2千万円!!そんな必然性がどこにあるの!!」にある「必然性」は「可能性」と対になっている単語。

 

 

★ディテールよりも少年漫画的な勢いを重視したストーリー

本作ではディテール(細部の整合性)よりも勢いが重視されている。具体例を以下に挙げる。

 

・国選弁護士への言及がゼロ。

 

・警察が現場検証した時に展示台とスポットライトの細工に全く気付かなかったのか。(展示台は燃えた影響で証拠が残っていないとしても不自然ではないが、スポットライトに関しては警察がよほど無能じゃない限り、現場検証で細工に気づくはず。)

 

・本作では、弁護人であるサイクロプスが「犯人は被告(館アンナ)ではなくマネージャー(検察が証人として呼んだ人物)だ」と主張するという衝撃的なストーリーが展開されている。にもかかわらず、そのシーン(弁護人が「検察が証人として呼んだ人物」を犯人と主張するシーン)において、傍聴人からの「どよめき」が見られない。テルミット反応という単語ごときにどよめく傍聴人たちが弁護人の「犯人は検察が呼んできたこの証人です!」との主張にどよめかないという不自然さ。

 

・法廷に立っている警官らしき男がサイクロプスの推理を聴いて「スポットライトに細工が・・・!?おい今すぐ現場を調べてこい!!」と話しているが、裁判中に被告のそばで立っている警官はあくまで被告が暴れたりしないかを監視する仕事を行っているに過ぎず、事件の捜査員ではない。

 

・アンナは「マネージャーが証人尋問されたあの証人尋問の場」になるまで、弁護人であるサイクロプスから「マネージャーが嘘をついている」という主張を聴かされていない。基本的に弁護人は法廷で少しでも有利な判決が出るように、裁判の審議の当日までに被告と念入りな打ち合わせを行うため、審議の最中に、被告が弁護士の主張を聴いて「犯人はもしやマネージャー・・・!」と驚くというのは余りにも不自然すぎる。読者の中には(どうして審議が始まる前にアンナはサイクロプスから「犯人がマネージャーだ」と聴かされていないんだろう?)と思った方もいるかもしれない。

 

 

★リアリティーとフィクションのアンバランス

本作では六法全書や弁護士法第72条や東京第二拘置所など実在する題材が豊富に散りばめられているにもかかわらず、上記のように細部の整合性が取れていないと見られる箇所があった。実際、本作を読んで「リアリティーとフィクションのバランスが良くない」と感じた読者がSNS上でいたようだ。

少年漫画において、多少の強引な設定やストーリーは許容される傾向にある。ファンタジー要素(非科学的な要素)の強い少年漫画は膨大な数にのぼる。そのため、サイクロプスの義眼設定も工夫次第では読者に充分、許容される余地があると思われる。

 

 

★サスペンス要素

本作は表紙のカラー絵にあるようにサスペンス漫画である。

サスペンスとは「ストーリーの展開の妙によって読者に不安感や緊張感を与えるもの」である。

だが、サイクロプスは犯人が一瞬で分かるというチート能力を有しており、「犯人は一体誰なのか」といった緊張感がない。

そのためサスペンスとしての要素は、「既に読者に明かされている犯人(本読切ではマネージャー)がいかにして犯行を遂行させたのかという観点」に限定されてしまう可能性が高い。

だが、本作では「犯人がどのようにして18名もの重軽傷者を出すようなトリックを行ったのか」という謎の提示があまりされていないように思われる。

謎の提示はモブキャラに「誰も作品に触れてないのに作品が爆発して18名もの重軽傷者が出るってどんな出来事が起こっていたんだろうね?」や「状況証拠しかないけど、警察・検察が主張しているように館アンナさんが怪しいよね」などのように語らせるだけでも可能なはずである。

石川理武氏は前作『雨の日ミサンガ』のように、もう少しサスペンス要素を前面に出すべきだったのかもしれない。

 

 

★メッセージ性

本作で原作者の石川理武氏が訴えたいテーマ(メッセージ性)としては前述したキーワード「可能性」の他に、最終ページの台詞「学べ 若人」「知識は社会と戦う剣だから」「金は理不尽から己を守る鎧だから」が挙げられる。

「知識は社会と戦う剣だから」という部分はサイクロプスが六法全書を持っていることから、サイクロプスの場合は主に法知識のことを指していると考えられる。延いては、孤児が館アンナの2000万円のお陰で留学しに行けるようになったことをも踏まえているのだろう。

「金は理不尽から己を守る鎧だから」という部分は「アンナが2000万円という金額を払ったことで自分の無罪が法廷で示されたこと」を指している。

 

 

 

〇私見

筆者は石川理武氏と宇佐崎しろ氏を応援している。『週刊少年ジャンプ2021年3・4合併号』の読者アンケート1位は本作に出した。本作は主人公「サイクロプス」のチート能力について詳しく紹介されていたり館アンナが上級国民だったり(日本のような資本主義社会においては、一般論として裕福なほど可能な行動の範囲が広がる。主人公が裕福であるという設定は連載化されたときにストーリーを動かしやすいと考えることも出来る。)と後々の連載を見据えているかのような箇所が散見された。

仮に本作が連載化された場合は、以下の点に留意すべきなのかなと筆者は感じた。

 

・フィクションとリアリティーのバランス。

 

・嘘を言っている人物が一瞬で分かってしまうという主人公のチート設定を連載の中でいかに使いこなすか。(上手く使いこなせないと主人公が「レクス・タリオニス」等の呪文を叫びながら犯人を倒していく安直なワンパターン展開になりかねない。)

 

・展開の速さと丁寧さの両立。(通常のバトル漫画と異なり、サスペンス漫画は細部の整合性に丁寧なストーリー展開を心掛けないと読者に緊張感を抱かせることが難しい。)

 

 

 

 

 

 

 

〇『雨の日ミサンガ』とは

石川理武氏による読み切り漫画。

集英社公式サイト「ジャンプ+」にて2020年10月23日に掲載され、SNSなどで高く評価された作品。

無料で読めますので、初めてこの漫画を知ったという方は是非、読んでみて下さい。

『鬼滅の刃』を担当している浅井友輔氏の編集ということもあり、読者の心を打つような作品となっています。

 

 

雨の日ミサンガ - 石川理武 | 少年ジャンプ+ (shonenjumpplus.com)

 

 

石川理武氏は『週刊少年ジャンプ2021年3・4合併号』に掲載された短編漫画『炎眼のサイクロプス』の原作も務めており、ジャンプ本誌に連載を持つ日も遠くはないのかもしれません。

 

 

 

〇(未読者向けの)あらすじ

主人公「弥太郎」は中学生。

弥太郎は普段、中学校のクラスメートから嫌がらせを受けている。

或る日、クラスメートの女子生徒から自分の持ち物を川へ投げ捨てられるという嫌がらせを受けた弥太郎は、川の中に入って自分のカバンの持ち物を拾っていた。

そんななか背後から「ヤタロウ」と自分の名を呼ぶ声を聴く。

振り向くと少年の姿をした幽霊が立っていた。

弥太郎はその幽霊が自分の少年時代の姿であることに気づく。

 

その幽霊に「ヤタロウ 久しぶり」「約束まもれなくて ごめん おれ 死んじゃった」「ヤタロウ おれ うごけない たすけて」と言われ困惑する弥太郎。

すると弥太郎の姉が川の上の方からやってきて、「弥太郎?何してるの?」と叫ぶ。

姉のそばには、犬を連れたおばさんがいて、犬が突如叫び出す。

そのおばさんは、「ごめんなさいね 普段 人には吠えないのに」と語っているが、これは「(弥太郎や姉のような)人ではないもの(幽霊)が犬の近くに接近してきている」ということ。

 

幽霊は姉のいる方向に指を指し、「ヤタロウ アレとって 大事なもの」と話す。

ちょうどそのとき姉が何かの存在に気づく。

弥太郎は姉に向かって「俺の幽霊がいるんだ 子供の・・・子供の頃の俺の顔した幽霊なんだよ」と叫んでいたが、そのさなか、姉が血の付いたミサンガを発見する。

そのミサンガは幼稚園生だったときの弥太郎に対して姉があげたものだった。

それを発見した姉は弥太郎の「俺の近くに子供の頃の俺の顔をした幽霊がいる」という発言を事実として認めることにした。

 

「ヤタロウ おれの死体をさがして」「このままじゃこどもがたくさん死ぬ」と訴える幽霊を連れて、弥太郎と姉は帰宅した。

この幽霊はミサンガという「大事な物」に取り憑いている様子。

姉と弥太郎はこの幽霊とミサンガにまつわる謎に関して考察を始めた。

 

幽霊は謎解明につながりそうな発言をしていくが、謎は深まるばかり。

しばらくして弥太郎は「自分で何とかするから」と言い残し、自室にこもっていってしまう。

悩み事を自分のなかに抱え込もうとしてばかりの弥太郎を見て姉は残念そうな表情を浮かべる。

 

翌朝、自室にて起床した弥太郎は雨の中、登校する。

中学校に到着した弥太郎をあざ笑うかのような冷笑的なクラスメートの姿。

クラスLINEから除外され、皆から軽視されている自分の状況を思い、「自分って既に幽霊じゃん」と感じる。

台風が接近しているなか教室から帰宅しようとする弥太郎。

そのとき、弥太郎の前に幽霊が現れる。

昨日の夜、姉がカバンのなかにミサンガを入れていたためだ。

下校途中、幽霊と対話した弥太郎は、犬を連れて歩いているおばさんとすれ違い、そのおばさんの台詞を聴いたことで、ミサンガと幽霊にまつわる謎の真相を悟る。

 

(・・・続きは公式サイトへ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇解説(ネタバレ注意

幽霊の正体は、弥太郎が幼かったときに知り合っていた猫だった。

猫が幼少期の弥太郎の姿をしていたのは、「鏡を見て自分自身の姿を知るという経験」をする前に命を失ってしまったため。

猫が命を失ったのは、弥太郎が子供だった頃の或る雨の日のことだった。

弥太郎はマンション暮らしのため自宅に猫を連れていき、保護することが出来なかった。

そのため、豪雨の中その猫と別れねばならなかったのだが、その猫は弥太郎と別れた直後に車に轢かれて亡くなってしまった。

霊的世界(黄泉の国のような場所か)と思われる空間で、猫に謝罪する弥太郎。

しかし猫は自分たちの子供(子猫たち)を救いに来てくれた弥太郎に感謝する。

そして「ヤタロウ お前はひとりじゃない 絶対死ぬな」と話しかける。

 

 

 

 

 

 

〇本作の素晴らしい点

★景情一致

景情一致とは作中での景色と作中の登場人物の心理を合わせる技法のこと。

台風が去り、雨天が晴天となる流れは主人公である弥太郎の状況の好転に対応している。

このような叙景性と叙情性の組み合わせがしみじみとした味わいを出している。

 

 

★キャラデザ

奇抜過ぎない外見。主人公の髪の毛がやや白い色だが、幽霊の姿から判断して恐らく地毛なのだろう。

 

 

★キャラクターの人数

読み切り漫画の場合、登場人物の数を多めにしてしまうと、一人一人のキャラクターの扱いが雑になってしまいがち。本作はキャラクターの数が妥当。

 

 

★ノスタルジー

自分の幼少期を懐古するという内容となっている。ノスタルジーは人類にとって普遍的な感情であり、古今東西の文学作品で取り上げられているものでもある。ノスタルジーを醸し出す作風は一般論として幅広い層の読者から支持を受けやすい。

 

 

★構成力

クラスLINEや犬を連れたおばさんやシノビレンジャー等のように作品前半部に登場した題材が後半部にも登場し、ストーリーを進展させていくという構成となっており、構成力の高さが窺える。幽霊の暗示的な台詞は伏線となっている。本作ではタイトルにもあるミサンガが特に重要な題材となっている。

 

 

★写実性の高い題材

スマホ画面や猫など写実性の高い絵が豊富に散見される。「バーカ!!」と落書きされた数学のテキストは実物の教科書or参考書を直に見て描いたと思われるほどデッサンに忠実。

 

 

★対象年齢

本作はスマホ画面やシノビレンジャーというヒーローもの(戦隊もの)などのように中年以下の年齢層の日本人であれば普通に伝わるような題材を多用しており、ストーリーを追いやすい。

 

 

★日本語への丁寧さ

石川理武氏は日本語を丁寧に扱っている。以下で例を挙げる。

 

・幽霊の台詞文で平仮名を多用

→幼児性を表現している。

 

・幽霊の一人称が「おれ」

→中学生時点での主人公の一人称は漢字表記の「俺」だが、子供のときの弥太郎の一人称は平仮名表記の「おれ」だった。つまり、幽霊の一人称が「おれ」であることから、猫は弥太郎の口調に影響を受けていた可能性がある。

 

・「ミサンガはアイツ(弥太郎)の鞄に入れとくね」と姉から聞いた幽霊が「ヤタロウのねーちゃんもやさしい」と言う

→「ヤタロウのねーちゃんってやさしい」ではない点に注意。つまり幽霊は弥太郎を優しいと評価している。

 

 

★意外性

幽霊の正体が人ではなく猫という意外さ。

 

 

★メッセージ性

本作は「周囲に救いを求めることの大切さ」を表現している。このようなメッセージ性をストーリーに含めるのは読切漫画のページ数の制約を考えると難易度が高い。しかし、石川理武氏はたったの39ページでこのメッセージ性を込めることに成功しており、石川理武氏の力量の高さを示している。

重要なのは、「助けを求めても、状況によって相手からの助けを受けられるか否かが左右される」ということである。

本作で姉は「困ってるって声に出さないと助けたくても助けられないのよ」と述べているが、これは姉に「弟(弥太郎)への家族愛」が存在しているからである。

たとえば、2019年1月に起こった野田小4女児虐待死事件の被害女児は学校のアンケートでSOSを発したが、市の教育委員会側の失態によって十分な助けを受けることが出来ず、最悪の結末を迎えてしまった。

その点、本作においては「今まで自分のことをあざ笑ってきた男子生徒」(LINEアカウント名はカズキ)が弥太郎の「俺一人じゃダメなんだ お願いだ こいつら(子猫たち)を助けてくれ・・・」というSOSを聴き、弥太郎を救うためにクラスLINEで助けを求めるという展開となっている。

この展開を読み、「出来すぎている」と感じた読者の方もいるかもしれない。

だが、筆者はそこまで御都合主義だとは感じなかった。

弥太郎が「俺一人じゃダメなんだ」と訴えるシーンでは、カズキのそばに弥太郎の姉が立っている。

カズキは姉のことを知らなかったので、姉を「西高の背の高い女子」としか認識していなかったが、いじめの加害者が第三者の目の前では、(第三者への意識といった影響で)普段通りのいじめ行為をそこまでしないというのは、よくある現象と言えるのではないか。

なお、カズキのクラスLINEへの働きかけによって、「冒頭のページで弥太郎の靴を掴みながら弥太郎という名前を古臭いと侮蔑していた女子生徒」が子猫を引き取るというシーンがある。

この女子生徒(LINEアカウント名は「まゅ」)の改心のきっかけは弥太郎の「子猫への思いやり」に気づいたことだと読み取れる。

 

 

★久保帯人作品からの影響

石川理武氏は久保帯人作品からの影響を公言している。詳細は短編漫画『炎眼のサイクロプス』の解説記事にて。

 

 

 

 

 

 

〇改善すると良いかもしれない点

★絵の見やすさ

本作の殆どのコマはかなり見やすいと感じたのだが、猫がトラックによって轢かれる直前のシーンのコマなど、ぱっと見では何が起こっているのか少し分かりにくいと感じられたコマもあった。

 

★目の上に眉毛

漫画的表現の範囲内といえるのかも知れないが、前髪の上に眉毛が描かれているキャラが多数見られた。久保帯人氏は基本的に前髪の下に眉毛を描いており、こういった「人体に忠実な描き方」のほうが望ましいのではないだろうか。

 

★「嫌がらせ被害」の程度のブレ

弥太郎は中学校での自分を「誰にも見えず誰にも聞こえない存在」と独白している。しかし、別のコマでは「自分の所有物を川へ投げ捨てられたり、数学のテキストに落書きされていたりと明らかな犯罪被害(器物破損など)」に遭っている。「クラスで誰からも相手にされていないこと」と、器物破損などの「いじめ被害」との間には、程度にかなりの差がある。この点が気になる読者も少なくないのではないかと感じた。

「クラスで誰からも相手にされていなかったのが、クラスLINE加入のあと、多くのクラスメートと仲良く会話し合うようになりました」というのと、「クラスLINE加入のあと、今まで名前を古臭いと馬鹿にしながらバッグの中身を川に投げ捨ててきたり教科書に落書きしてきたりしていたクラスメートと仲良く会話し合うようになりました」というのでは、人間関係の好転の度合いがあまりにも異なる。

ただ、前者であれ、後者であれ、ミサンガの「願いを叶える」という効果によるものと解釈すること自体は可能だと思われる。

事実、最終ページにおいて、「(嫌がらせが)止まった理由 猫じゃなかったのかも」という弥太郎の独白に続くようにして、猫が「ヤタロウがくれたミサンガ本当に願いがかなったよ」と語っている。

 

 

 

 

 

〇私見

時代設定を江戸時代に移せば雨月物語に載っていてもおかしくないストーリーであるようにも感じられた。

ユダヤ教・キリスト教が主流な欧米では、唯一神との緊張関係のもとで「人とそれ以外の生物」の間に明確な境界をおく価値観が根強い。

肉食を禁じる仏教思想は農耕だけでは生存が難しい地域に適しておらず、欧米では「獣や虫が来世で人になることもある輪廻転生」のような宗教的概念があまり見られなかった。

一方、日本では伝統的に「人とそれ以外の動物の差をそこまで意識しない風土」がある。

猫が人の姿になりすますという本作の発想は、この日本の風土に由来しているようにも思われる。

 

前述の「改善すると良いかもしれない点」というのは個人的な見解に過ぎず、低質な漫画作品しか制作出来ていない筆者の愚考の域を出ないが、この記事の読者のうち漫画制作に興味のある方々が優れた作品を描く上で参考になればと思い、掲載した。

 

ジャンプ+」に載る漫画は多くの場合、作者or作画担当の一人だけで描かれる。本作の作画もアシスタントなしで行われた可能性が高く、その条件下でこんなにも素晴らしい作品を完成させたのだろう石川理武氏に、筆者はかなりの将来性を感じた。

 

 

 

 

note:https://note.com/a6web

 

ウェブサイト「note」にアカウントを開設しました。

主に漫画などの画像を投稿していこうと思っています。

アメーバだと投稿できる画像のデータ量に制限があるらしいため、自作の漫画はnoteに投稿していく予定です。

自作漫画の記事のURLは目次に載せていきます。

〇参考記事

ブルーハーツ「青空」の解説と英訳

 

 

〇魚拓

THE BLUE HEARTS - 青空 (Blue Sky) LIVE NHK TV [ENG SUB]

 

 

〇経緯

私がブルーハーツの「青空」という曲に出会ったのは2015年頃だった。ブルーハーツがNHKに出演した時の映像とみられる動画がYouTubeにアップされており、私がその動画をクリックしたことが全ての始まりだった。

初めて青空を聴いた時、私は「なんと素晴らしい曲なんだ」と感嘆した。

英語圏の人々にもこの曲の魅力を伝えていくべきなのではないか。そんな気持ちが段々と強くなっていった。

そして2018年頃から私は「青空の歌詞の英訳をテロップにつけた動画をYouTubeにアップする」という構想を立てるようになった。

 

 

昨年、当ブログで自作の英訳を公開したのは、そのためだ。

ところが、大学受験や自分のネット関連の知識の不十分さ等の理由で、その構想は2020年になっても実現しないままだった。

「NHKに動画投稿の許可を得る必要があるのではないか」という懸念もあった。

 

だが、2020年10月、或るネット民が青空という曲に英訳の字幕を載せた動画をYouTubeにアップロードした。

これは私の構想と合致する動画であり、この動画がアップされたことは私にとって僥倖だった。

そして、「自分と同じことを考える人っているのだな」と私は感じた。

 

 

 

 

 

 

〇解説

Wolfgang Van Halenが2020年に発表した曲。

 

 

〇動画

 

 

 

〇和訳

I’m so happy

私はとても幸せ


You’ve found a place
あなたは或る場所を見出してしまった

 

That’s better for you
あなたにとっては あっちの方が良い

 

Than this rock we’re living on
我々がそれを踏みしめて暮らしている岩よりも

 

 

I’m so nervous
私はとても不安

 

Don’t know my place
自分の居場所が分からない

 

A life without you
あなたの居ない生活

 

I’m not ready to move on
私は前に進む準備が出来ていない


No matter what the distance is I will be with you
どんなに距離があっても 私はあなたと共にいるよ

 

No matter what the distance is you’ll be okay
どんなに距離があっても あなたは大丈夫

 


I’m so tired 

私はとても疲れている


Can’t see your face

あなたの顔を見ることが出来ない


My memory of you
あなたに関する私の記憶は

 

Slowly fades when I go on
私が前に進むとき ゆっくりと薄らいでいく

 

 

I’m still cryin’
私はまだ泣いている

 

Don’t want this place

この場所を欲してはいない
 

A world without you

あなたの居ない世界


I don’t think I’ll ever move on
私はもう前に進めないと思う

 


No matter what the distance is I will be with you

どんなに距離があっても 私はあなたと共にいるよ


No matter what the distance is I will be with you
どんなに距離があっても 私はあなたと共にいるよ

 

No matter what the distance is I will be with you
どんなに距離があっても 私はあなたと共にいるよ

 

No matter what the distance is you’ll be okay

どんなに距離があっても あなたは大丈夫



No matter what the distance is I will be with you

どんなに距離があっても 私はあなたと共にいるよ


No matter what the distance is I will be with you

どんなに距離があっても 私はあなたと共にいるよ


No matter what the distance is I will be with you

どんなに距離があっても 私はあなたと共にいるよ


No matter what the distance is you’ll be okay
どんなに距離があっても あなたは大丈夫

No matter what the distance is I will be with you

どんなに距離があっても 私はあなたと共にいるよ


No matter what the distance is you’ll be okay

どんなに距離があっても あなたは大丈夫


No matter what the distance is I will be with you

どんなに距離があっても 私はあなたと共にいるよ


No matter what the distance is you’ll be okay

どんなに距離があっても あなたは大丈夫

No matter what the distance is you’ll be okay

どんなに距離があっても あなたは大丈夫


No matter what the distance is you’ll be okay

どんなに距離があっても あなたは大丈夫

 


I’m so happy

私はとても幸せ


You’ve found a place

あなたは或る場所を見出してしまった

 

 

 

 

〇私見

この曲では、私とあなたが遠くに離れてしまっていることが歌われている。

今年亡くなったEdward Van Halenと、この曲の作詞作曲者である自身(Wolfgang Van Halen)のホームビデオがMVで用いられており、自身の父親であるEdwardに捧げた曲であることは明らか。

つまり「私とあなたが遠くに離れてしまっている状況」とは「WolfgangとEdwardの死別」のことだと捉えられる。

和訳しているときに気づいたことなのだが、this rock we’re living on(我々がその上で暮らしている岩→我々がそれを踏みしめて暮らしている岩)というのは「天国と対比される現世」という意味であるように感じられた。この解釈が正しければ、この曲の歌詞はキリスト教的価値観に基づいていると言えそう。

 

 

 

〇解説

イギリスのロックバンドThe Kinksが1971年に発表した曲。

 

 

〇動画

https://www.youtube.com/watch?v=eMkBwzxA4WU

 

 

〇和訳

[Verse 1]
This is the age of machinery

今は機械の時代


A mechanical nightmare
機械の悪夢

 

The wonderful world of technology
科学技術の素晴らしい世界

 

Napalm, hydrogen bombs, biological warfare
ナパーム弾 水爆 生物兵器

 


[Verse 2]
This is the twentieth century

今は20世紀


But too much aggravation
でも苛立つことが余りにも多い

 

It's the age of insanity

これ(20世紀)は狂気の時代


What has become of the green pleasant fields of Jerusalem
エルサレムの緑豊かで楽しかった野原はどうなってしまったのか

 


[Chorus 1]
Ain't got no ambition, I'm just disillusioned

野心はなく ただ幻滅しているだけ


I'm a twentieth century man but I don't want, I don't wanna be here
私は20世紀の人間だが 私は嫌だ 私はここに居たくない



[Verse 3]
My mama said she can't understand me

我が母は私が理解できないと言った


She can't see my motivation

彼女(我が母)は私の意欲が分からない


Just give me some security
ちょっと安心感を私にくれよ

 

I'm a paranoid schizoid product of the twentieth century

私は20世紀の偏執狂的精神分裂性の産物


[Verse 4]
You keep all your smart modern writers

君は自分の聡明でモダンな作家全てを保持する


Give me William Shakespeare
私にウイリアム・シェイクスピアをくれよ

 

You keep all your smart modern painters
君は自分の聡明でモダンな画家全てを保持する

 

I'll take Rembrandt, Titian, Da Vinci and Gainsborough
私はレンブラント ティツィアーノ ダヴィンチ ゲインズバラを取っていく


[Chorus 2]
Girl, we gotta get out of here

お嬢さん 我々はここから抜け出さねばならない


We gotta find a solution

我々は解決策を見出さねばならない


I'm a twentieth century man but I don't want, I don't want to die here
私は20世紀の人間だが 私は嫌だ 私はここで死にたくない

 

Girl, we gotta get out of here

お嬢さん 我々はここから抜け出さねばならない


We gotta find a solution

我々は解決策を見出さねばならない


I'm a twentieth century man but I don't want, I don't want to die here
私は20世紀の人間だが 私は嫌だ 私はここで死にたくない



[Bridge]
I was born in a welfare state

私は福祉国家に生まれた


Ruled by bureaucracy
官僚制に支配され

 

Controlled by civil servants
文官と

 

And people dressed in grey

鼠色の服を着た連中に統制される

 

Got no privacy, got no liberty

プライバシーはなく 自由もない
 

'Cause the twentieth century people
何故なら 20世紀の人々は

 

Took it all away from me
私からそれを全て取っていったのだから


[Chorus 3]
Don't wanna get myself shot down
撃ち落されたくない

 

By some trigger happy policeman

引き金をひく幸福そうな警官に


Gotta keep a hold on my sanity

私は正気を保たねばならない


I'm a twentieth century man but I don't wanna die here
私は20世紀の人間だが 私はここで死にたくない


[Chorus 4]
My mama says she can't understand me

我が母は私が理解できないと言った


She can't see my motivation

彼女(我が母)は私の意欲が分からない


Ain't got no security

安心感なんか持ってない


I'm a twentieth century man but I don't wanna die here

私は20世紀の人間だが 私はここで死にたくない


I don't want twentieth century, man
人々よ 私は20世紀なんか求めてない

 

No more twentieth century, man

人々よ 20世紀はもう沢山だ


I don't want twentieth century, man
人々よ 私は20世紀なんか求めてない



[Chorus 5]
This is the twentieth century
今は20世紀

 

But too much aggravation

でも苛立つことが余りにも多い


This is the edge of insanity

これは狂気の瀬戸際なんだ


I'm a twentieth century man but I don't wanna be here

私は20世紀の人間だが 私は嫌だ 私はここに居たくない