〇青空とは

THE BLUE HEARTSの3rdアルバム『TRAIN-TRAIN』(1988年)収録。作詞・作曲:真島昌利。

 

 

〇動画

https://www.youtube.com/watch?v=OoXc0ZBXEx8 (削除)

https://www.youtube.com/watch?v=l0EkQzx_hZg (削除)

https://www.youtube.com/watch?v=a3GCQXCxqFE

THE BLUE HEARTS 青空 NHKver - YouTube

 

 

 

〇元々の歌詞

元々の歌詞は「こんなはずじゃなかっただろ?歴史が僕を問い詰める」の一節が「安っぽい神様たちが君をメクラにするだろう」となっていた。歌詞が変更されたのは「メクラ」が放送禁止用語とされていることが要因として挙げられる。

変更前の歌詞は「有史以来、宗教が人類に様々な災禍をもたらしたこと」や「特定の宗教を妄信してしまうことが自分の外部の存在に対する正確な認識をゆがめてしまうこと」などを簡潔に表現している。

 

真島は冒頭部の「神様にワイロを贈り 天国へのパスポートを ねだるなんて 本気なのか?」という歌詞で、いったんキリスト教への疑問を提示しているが、キリスト教は一神教なので、「安っぽい神様たち」の「神様たち」は世界中に存在する複数の宗教の複数の神々を指していると考えられる。

だとするならば、真島はキリスト教以外の宗教に対しても「特定の宗教を妄信してしまうことの危険性」を訴えているのだろう。

 

その後、恐らく自主規制によって歌詞が「こんなはずじゃなかっただろ?歴史が僕を問い詰める」へと変更された訳だが、その変更によって「人種差別や宗教対立などの社会問題が無くなってほしい」という希望のニュアンスがより強く打ち出される結果となった。

流血や悲哀に紡がれた人類の歴史を踏まえた上で「こんなはずじゃなかっただろ?」と訴えかける真島の歌詞は21世紀を迎えた今も切実さに満ちている。依然として人種差別や宗教対立などの問題を孕んでいる現代社会において、本曲は不朽の輝きを有している。

 

私は「安っぽい神様たちが君をメクラにするだろう」も「こんなはずじゃなかっただろ?歴史が僕を問い詰める」も素晴らしい歌詞だと感じている。

 

 

 

〇真島が受けた洋楽の影響

「生まれたところや皮膚や目の色で 一体この僕の何がわかるというのだろう」というサビは

英国のロックバンドThe Yardbirdsの曲Mr. You're a Better Man Than Iの冒頭部

Can you judge a man by the way he wears his hair?
Can you read his mind by the clothes that he wears?
Can you see a bad man by the pattern on his tie?
に影響を受けた可能性がある。

 

 

〇評価

身近な言葉で表現されたメッセージ性の高い楽曲。歌詞もメロディも良質。真島によるギターソロも曲調に合っており、感慨深いものとなっている。世間での評価も高く、数多くのミュージシャンによってカヴァーされている。この曲の歌詞に感銘を受けた私は自作の英訳を書くに至った。

 

 

 

 

〇英訳(自作。翻訳ミスがあればコメント欄などでご指摘を。)

 

ブラウン管の向こう側

Through a TV screen,

 

カッコつけた騎兵隊がインディアンを 打ち倒した

I watched the pretentious cavalrymen shooting and slaying the Indians.

 

ピカピカに光った銃で できれば僕の憂鬱を 撃ち倒して くれればよかったのに

I wish they had wiped out my depression with their sparkling guns.


神様に賄賂を贈り 天国へのパスポートを ねだるなんて 本気なのか?

Can it be appropriate to pay a bribe to God and desire ‟a passport to Heaven“?

 

誠実さのかけらもなく 笑っている奴がいるよ 

There exist people laughing without a bit of honesty.

 

隠している その手を見せてみろよ
I want them to show us the hands they are hiding.
 

 

*生まれたところや皮膚や目の色で 一体この僕の何がわかるというのだろう

*What on earth can you tell about my personality from my birthplace and the color of my skin or eyes?


運転手さんそのバスに 僕も乗っけてくれないか

Hey, driver!  Would you mind my getting on this bus?


行き先ならどこでもいい

I want to get it on no matter where it goes.


こんなはずじゃなかっただろ?

‟The current situation is not what it should be, is it? “

 

歴史が僕を問い詰める

History is demanding an explanation from me
 

まぶしいほど青い空の真下で*
Under the almost dazzling sky whose color is blue. *

 

(Guitar solo)


(*repeat*)

青い空の真下で 青い空の真下で 青い空の真下で

Under the blue sky    under the blue sky    under the blue sky

 

※安っぽい神様たちが君をメクラにするだろう Cheap gods will make you blind.

 

 

 

 

〇英訳の補足

「まぶしいほど青い空の真下で」はUnder the dazzlingly blue skyと訳す方が自然な英文かもしれない。

 

 

〇ナギ氏による批判

ブログ民のナギ氏はこの曲が大嫌いだと自身のブログの記事で述べている。ナギ氏によると、<この歌の主人公は、「自分が絶望しているにも関わらず絶望していない人間がこの世にいることが面白くなくて気に食わない」という人間として最悪な状態に陥ってしまっているにすぎないのである。しかもその感情を「歌にすること」を、彼氏は「恥ずかしいこと」ではなくむしろ「カッコいいこと」であると感じているらしいのだ。感受性が腐ってしまっているのではないかとしか私には思えない>のだという。私はその記事を読み、一種の衝撃を受けた。ナギ氏によるこの曲への批判とそれに対する私見はこちら。

 

 

〇追記

2020年10月、或るネット民が英訳の字幕を載せた動画をYouTubeにアップロードした。これは私が2018年頃から制作を構想していたものであり、「同じことを考える人っているんだな」と感じた。詳細はこの記事をお読みください。