第61回「Sunshine Of Your Love」(1967)/Cream | 柑橘スローライフ

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久しぶりに「ロック名曲百選」を更新します。
クリーム(Cream)の1967年のシングル曲、
「サンシャイン・ラブ(Sunshine Of Your Love)」です。




前回の時点で既に次回はクリームとしていたのですが、
ジャズピアニストのジョー・サンプル氏の逝去をきっかけとして、
ジャズやソウルのほうに一時的に強く関心が移ってしまいました。
その間に、奇しくもベースのジャック・ブルース氏が亡くなるという不幸がありました。

2014年10月25日、享年71歳。
遅ればせながら、ジャック・ブルース氏のご冥福を心よりお祈りしたいと思います。

クリームというバンドの成り立ちについては敢えて割愛しますが、
エリック・クラプトンがごく初期に在籍し、
作曲も当然ながら、それよりも、ライブによる即興性を重視した、
ロックとしては最小単位(トリオ)による伝説的ユニットです。

クリームというバンドの端的な特徴として、
作品群は基本的にブルースを基調としており、ビートルズのように、
様々な音楽ジャンルの要素を作曲作品として反映・構築させるようなタイプではなく、
むしろ、シンプルな技巧的プレイの一瞬一瞬の凄味を味わうものといえ、
作曲は、あくまでメロディや基本的なリフの提示のようなものであり、
インストルメンタルの即興の部分を主として味わうものなのだろうと思います。
(このSunshine~に関しては、即興的要素は極めて少ないですが)
また、歌いながら難しいリフを弾く、ということを楽しむのも一つであり、
特にクラプトンの典型的スタイルの端緒になったものと言えると思います。

ただ、クリームの場合、メインのリードヴォーカルは、
先頃亡くなったジャック・ブルースであったというのも特徴的で、
多くの曲では、クラプトンのあの独特のヴォイスがコーラス程度にしか聴くことができず、
クラプトンの声が好きな人には、物足りない面もあるかもしれないですね。

即興性という点では、ジャズのインプロヴィゼーションとも近いものがあり、
ドラムスのジンジャー・ベーカーとベースのジャック・ブルースが、
もともとジャズ系のミュージシャンであったということもあり、
そうしたスタイルがごく自然な成り行きであったのだと思います。
もっとも即興性を重視したとはいえ、あくまでロックであり、
基本となる部分のメロディやリフ等はしっかり作曲しており、
フリージャズのような完全な即興性の音楽とは全く違います。

また、クラプトンが「ギターの神様」と称されるようになるのも、
このクリームのごく最初の頃であって、
クラプトンという人間は、20代の前半という若さで、
早くも偶像視・英雄視されていたことになるわけですね。

この「Sunshine Of Your Love」や同じく名曲の「Crossroad」などは、
数少ないクラプトンのリードヴォーカル担当のナンバーで、
(正確にはSunshine~はブルースと代わる代わる歌うツインリード)
ファンにはたまらない初期クラプトンのヴォーカル曲ということになると思います。

クリームやクラプトンの曲はブルースの派生的な和声を基調としているので、
楽曲分析にはあまり意味が出ないとは思いますが、
私の「ロック名曲百選」は、この分析をひとつの柱にしていますので、
あえて行ってみます。

【イントロ】
知る人ぞ知る、印象的なリフで始まります。
あえてコードとして表記すると、
「D5+7 → G → G7」といったところでしょうか。
基本的には極めてロック的なリフの場面で、
(「D5+7」というのは、D7から3rd音を除くという意味で表しています)
D(Dm)キーで「1・4・1・4」という進行だと思います。

そして、ジンジャー・ベイカーのドラムスがのっけから強烈に叩いてきます。
ベイカーのドラミングは、かつてはよく「アフリカンドラム」などと言われていました。
特徴としては、タイムキーピングとしてのハイハットワークが極めて少なく、
かわりにタムタムやフロアタムなどの連打が多く、
聴感的にアフリカンのような原始的なドラミングに聞こえ、
クリームサウンドの特徴を表す重要なポイントの一つと言えます。

【ヴァ―ス】
提示されたリフに被せて、ヴォイスメロディが始まります。
このリフとヴォイスメロディをユニゾンで合わせるやり方は、
言ってみれば非常にプリミティブで、ビートルズ等ではあり得ない手法です。
通常はリフとヴォイスのメロディラインやタイミングはずらされることが一般的で、
クリームの他の曲、例えば、「クロスロード」などでもずらされていますが、
この曲は珍しくリフとヴォイスのメロディラインが同期・同調しています。

よって、流れはイントロと同じです。
そして途中で、完全4度上の一時転調を4小節だけはさみ、
また、もとのリフに戻ります。

【サビ】
I've been waiting so long で始まるサビ。
進行は「A→C→G」という極めて単純な進行。
ただし、ディグリーでは表記しにくく、
AキーのⅠ→GキーのⅣ→Ⅰという流れだと思います。
サビのラストは「A」で伸ばしていきます。
極めてロック的な「トニック間の一時転調」を活かした流れと言えますが、
全体をDキーのブルースと捉えた場合、このAはドミナント(Ⅴ)の役割に
なっているということだと思います。

【全体】
個人的には、少し残念ではありますが、
分析しても興味深いポイントを見出しにくい進行と感じました。
この曲や他のクリーム楽曲の面白さは、先にも触れましたが、
こういった「作曲」や「編曲」の上での構築性ではなく、
3人のプレイヤーの一瞬一瞬の演奏的なぶつかりあいの妙であり、
リフを主体としたプレイそのもののパフォーマンスを楽しむもので、
ストレートでシンプルな「格好良さ」を感じるべき曲なのだと思います。

ただ、それではと、この曲に限らず、
クリームの楽曲、特にライブをそういう即興性や演奏性の観点で聞いて、
ストレートアヘッドジャズの本格的なインプロヴィゼーション等と比較すると、
今度は物足りなさと言うか、アンサンブルの雑さと言うか、
リズムの崩れなどの不完全さが結構耳に付きます。

ロックという限定的な世界だけでも、彼らよりほんの少し後にデビューした、
キング・クリムゾンの1969年の「クリムゾン・キングの宮殿」等における
フリージャズ的なインプロヴィゼイションのほうが遥かに技巧性では上と言わざるを得ません。

よって、そうした観点でクリームを評価すると、
軽音楽界におけるバンドとしてのの歴史的な価値や意味は、
既に70年前後には実質的には薄れ、その頃から現在まで、
「伝説的・レジェンド・カリスマ的」という存在感だけが、
彼らの主なバリューだったのではと個人的には常に感じています。
とはいえ当時、近い世代の様々なバンド陣への影響力は、
とても大きかったことは間違いない事実だと思います。

個人的には、クラプトンは大変好きなのですが、
その理由は、どちらかというと、演奏のパフォーマンスというよりは、
彼の歌とそこに挟み込まれる絶妙なオブリガートやソロとのバランスなのです。
そのバランスにそこはかとない「味」を感じるわけです。
例えば、第27回でとりあげたBetter Make It Through Todayのような曲が典型です。

次回はビートルズの「Strawberry Fields Forever」、
次々回は同じく「Penny Lane」の予定です。
年内中には出したいと思っています。


第62回①「Strawberry Fields Forever」(1967)/The Beatles



ロック名曲百選/過去記事一覧

★第1章「ロック名曲・アトランダム編」
第1回「Sexy Sadie」(1968)/The Beatles
第2回「Ask Me Why」(1963)/The Beatles
第3回「Epitaph」(1969)/King Crimson
第4回「Speak To Me~Breath」(1973)/Pink Floyd
第5回「You Never Give Me Your Money」(1969)/The Beatles
第6回「Achilles Last Stand」(1976)/Led Zeppelin
第7回「Babylon Sisters」(1980)/Steely Dan
第8回「What A Fool Believes」(1978)/The Doobie Brothers
第9回「New Kid In Town」(1976)/Eagles
第10回「Your Mother Should Know」(1967)/The Beatles
第11回「Take It Away」(1982)/Paul McCartney
第12回「Pretty Maids All In A Row」(1976)/Eagles
第13回「I'm Not In Love」(1975)/10CC
第14回「A Whiter Shade Of Pale」(1967)/Procol Harum
第15回「Give Me Strength」(1974)/Eric Clapton
第16回「We Are The Champions」(1977)/Queen
第17回「Honky Tonk Women」(1969)/The Rolling Stones
第18回「Miss You」(1978)/The Rolling Stones
第19回「My Ever Changing Moods」(1984)/The Style Council
第20回「Hey Bulldog」(1968)/The Beatles
第21回「Here Today」(1982)/Paul McCartney
第22回「Alone Again(Naturally)」(1972)/Gilbert O'Sullivant
第23回「Good Night」(1968)/The Beatles
第24回「The Nightfly」(1982)/Donald Fagen
第25回「It's Too Late」(1971)/Carole King
第26回「Happy Xmas」(1971)/John Lennon
第27回「Better Make It Through Today」(1975)/Eric Clapton
第28回「Tell Her About It」(1983)/Billy Joel
第29回「Don't Look Back」(1978)/Boston
第30回「Don't Stop The Dance」(1985)/Bryan Ferry
第31回「Eggplant」(1975)/Michael Franks
第32回「Words」(1982)/Bobby Caldwell
第33回「Everybody Needs Love」(1978)/Stephen Bishop
第34回「Born To Be Wild」(1968)/Steppenwolf
第35回「I Keep Forgettin'」(1982)/Michael McDonald
第36回「Come On Eileen(1982)/Dexys Midnight Runners
第37回「Alive Again」(1978)/Chicago
第38回「Roxanne」(1978)/The Police
第39回「How Deep Is Your Love」(1977)/Bee Gees
★第2章「ロック名曲・ロックのルーツ編」
第40回「Rock Around The Clock」(1954)/Bill Haley & His Comets
第41回「Johnny B Goode」(1958)/Chuck Berry
第42回「Rock And Roll Music」(1957)/Chuck Berry
第43回「Long Tall Sally」(1956)/Little Richard
第44回「Heartbreak Hotel」(1956)/Elvis Presley
第45回「Blue Suede Shoes」(1956)/Carl Perkins
第46回「Peggy Sue」(1957)/Buddy Holly
第47回「Slow Down」(1958)/Lally Williams
第48回「Only The Lonely」(1960)/Roy Orbison
第49回「Wake Up Little Susie」(1957)/Everly Brothers
★第3章「ロック名曲・ロックの確立期編」
第50回「Please Please Me」(1963)/The Beatles
第51回「This Boy」(1963)/The Beatles
第52回「All My Loving」(1963)/The Beatles
第53回「Tell Me」(1964)/The Rolling Stones
第54回「Blowin' In The Wind」(1963)/Bob Dylan
第55回「Pretty Woman」(1964)/Roy Orbison
第56回「Help」(1965)/The Beatles
第57回「Here,There And Everywhere」(1966)/The Beatles
第58回「Paint It,Black」(1966)/The Rolling Stones
第59回「You Really Got Me」(1964)/The Kinks
第60回「I Get Around」(1964)/The Beach Boys



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