第34回「Born To Be Wild」(1968)/Steppenwolf | 柑橘スローライフ

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AORを一休みし、ハードロックを一曲。
カナダのハードロックバンドSteppenwolf/ステッペンウルフによる、
「Born To Be Wild(邦題:ワイルドでいこう!)」



1969年の映画「Easy Rider(イージー・ライダー)」の主題歌として、とても有名です。
テレビなどでも、何かとCMや効果音のようなものとしても使われますから、
この曲がどんなタイトルで誰の曲かということを知らなくても、
この楽曲の音そのものの認知度は、老若男女を問わず、かなり高いのではないでしょうか。
個人的にはカラオケでよく歌いました。キーも低く非常に歌いやすい曲です。
しかし、正直この曲以外はこのグループの曲というのは知らないですね。

基本的には「イージー・ライダー」に採用されたということが、
このグループの最大の幸運で、いわゆる「一発屋」というイメージは拭えません。
しかし、この曲の持つシンプルさ、わかりやすさ、ストレートさは爽快だし、
圧倒的と思われる認知度は、ロックの名曲と呼ぶに十分と思います。

この曲には「heavy metal thunder」という歌詞が出てきますが、
これが「へヴィメタ」という言葉の発祥と言われているそうです。
しかし、彼らの音楽は決してへヴィメタではないので、この逸話は若干疑問があります。
この「heavy metal thunder」という言葉そのものは、バイクか何かの用語のようです。

楽曲のほうは、強く歪ませた音質のギターのシンプルなカッティングでスタート。
E一発という感じで、ヴァ―スに入るとメロディもいきなりルート「E」の羅列で始まります。
(ルートというのは和音の根音のことです)
サビの「born to be wild」と歌う部分もなんとそのまま「E」。
細かな動きはあるとはいえ、トニック(主和音)でぶちかまし倒している曲ですよ、これは。
ここまでシンプルでストレートだと痛快と言えます。

それにしても、ピーター・フォンダ主演、デニス・ホッパー監督・主演の
「イージー・ライダー」という映画は一体何だったんだろう。
2、3回見ましたが、いまだによくわかりません。
つまり、主題というか、伝えたいテーマがよくわからないのです。
特にあの「唐突なラストシーン」。一体何なんでしょうか。

「ラストシーン」というのは、自由を求めてさらに旅立っていこうとする二人を、
守旧的な、地方の上の世代の人間がバイクもろとも爆破するというもので、
一体デニス・ホッパーは何を言いたかったのでしょうか。
「若者には自由なんてない。どうせ上の世代や保守的な人間に潰される」あるいは
「アメリカには自由があるように見えるが、本当は恐ろしい国なのだ」
とでもいったアイロニーがこの映画のテーマだったのでしょうか。
そうとしたら、この曲やバイクで大陸を横断するあの爽快感は何なのか。
単なる若者のモラトリアムやお遊びということか。
「若者の青春のひととき、モラトリアムな時期の無軌道なお遊び」を
何となく映画にしてみました、そんなところなのか。いや、そんなことはない。
デニス・ホッパーはこの時、実年齢ではあるがとっくに30歳を超えている。

もちろん、あの時代の背景、フラワームーブメントやヒッピー。そしてベトナム戦争。
ベビーブーマー世代の体制への反抗などといった状況はわかるし、若者達が自由を模索し、
既存秩序から脱却しようと、精神的自由を求めてドラッグなどにも浸かっていく。
その辺りまではよく理解できるのですが、そこから「どうなるんだ」という部分が
あの映画では描き切れていないと思うのです。あのラストで描いているのだとしたら、
「自由」よりも「守旧派や地方や国の恐ろしさ」といった、つまらない事象に主題の
比重が置かれている映画ということになってしまいます。
つまり「出る杭は打たれるぞ」みたいな、コンサバな教訓のような陳腐な主題。
それでは、あまりに夢がなさ過ぎるし、つまらなさ過ぎる。
どうせなら、「出る杭は打たれそうになるが、最期は自由を掴める、それがアメリカだ」
みたいな感じにしといたほうが、この曲やバイクの疾走感とも合致していたのにと思う。

私自身、まったく世代的にずれているし、封切り後20年ぐらいしてから初めて見て、
そもそもあまり映画にも詳しくないので、体感的に判らないだけかもしれないのですが、
あの映画の主題は一体何だったのでしょうか。
単なる「バイクによる爽快なツーリング映画」という感じで楽しむものなのでしょうか。
それにしては、それ以外のいろいろな場面が多すぎるし、ラストが悲劇的すぎる。

いや、もしかすると、これは明確にベトナム戦争への反戦がテーマなのかもしれない。
自由を謳歌できる若者達の命を、いとも簡単に理不尽に奪ってしまう戦争。
それを行っているのは、守旧派であり、上世代であり、国なのだ。
唐突なラストの爆破シーンは、ベトナムで理不尽にも散っていってる若者達を
象徴的な表現で隠喩しているのかもしれない。
書き進めていくうち、最後になって、このようなことが頭を過ってきました。
あくまで私見ですが、あの映画の主題は、何となく、この辺なのかなと思えてきました。

第35回「I Keep Forgettin'」(1982)/Michael McDonald



ロック名曲百選/過去記事一覧

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