第20回 「Hey Bulldog」(1968)/The Beatles | 柑橘スローライフ

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来る12月8日(日本時間では9日)はジョン・レノンの亡くなった日。
もう33年という歳月が流れてしまいました。

私の一番好きなビートルズナンバーは、「Hey Bulldog(ヘイ・ブルドッグ)」。
この曲は、作曲からレコーディングまで僅か1日という「やっつけ曲」なのですが、
痺れるほど格好いい曲です。
ジョンのピアノに始まり、ユニゾンでジョージのギターとリンゴのドラムス、
そして、ポールのベースと音を重ねて、前奏のリフが期待感いっぱいに盛り上がっていきます。

しかし、2小節1セットのリフを3回(6小節)繰り返した途端、
いきなり転調して、「Sheep Dog(牧羊犬)!」と歌いだします。
せっかく盛り上げたリフのリズム感や雰囲気を反故にして、
通常なら4/4拍子で8小節の前奏を突然切りあげて、ヴァ―スが進行します。
並みのバンドであれば、この前奏のリフを利用しながら、そこにメロディを乗せたりしますが、
ビートルズ、特にジョンはそうした一般的な方法や紋切り型のコード進行を殆ど使いません。
(ソロとなってからは、ジョンも基本的なポップスの循環的なコード進行が多くなりましたが)
ビートルズの面白さのひとつはそこにあると思います。

Sheepdogときたら、次はBullfrog。Childlikeときたら、次はJacknifeというように、
詩のほうは、言葉遊びと語呂の「韻」を踏んでいきます。詩そのものの意味はあまりなく、
これは英国人特有のRyming(ライミング)という「韻」の遊びなのでしょうね。
マザーグースなどの童謡に親しみながら、英国人はこうした癖を子供の頃に身につけるようです。

そして、曲のほうは同主調転調(これもビートルズらしい転調)してサビとなると、
Bm→Bm♯5→Bm6→Bm7→Em→Em♯5→Em6→Em7という進行になります。
和声に詳しい方が見ればすぐわかると思いますが、なんともいえない変な進行です。
ブリッジ(曲の連結部)などでは、こういう進行はありうると思いますが、
ビでこういうコード進行は使わないでしょうね、普通のバンドでは。
しかし、ビートルズは「変な」を「格好いい」に変えてしまいます。

何故「変な」か。
このコード進行は、サビの調性のトニックとサブドミナントの2つだけをベースとしていますが、
「4和音」の「4音目の半音上昇」の進行です(♯5のみ3音目)。
和音の中で「4音目」だけが一つずつ半音上昇する進行のため、
上昇感はあるにはありますが、遅々として晴れない、強い閉塞感を感じさせます。
しかし、何故か最後は不思議と最初のリフに開放的に解決したような感じで繋がっていきます。
ビートルズらしい、ちょっとエキセントリックな曲の構造です。

ギターソロは、ジョージ、ポール、ジョンの誰が弾いているのか未だにはっきりしない、
マニアの間でも論議を呼んでいるもののひとつで、なかなかハードです。
ポールっぽいプレイでもありますが、ジョンっぽいプレイでもあります。
個人的には、刻むような激しい16分の弾き方とスライドの多用から、ジョンだと思います。
プレイ的にジョージの線はなさそうですが、リフやバッキングはジョージでしょう。

金属質のジョンのリードヴォーカル。そして、エキセントリックで強引な進行。
また、ポールのベースラインも粒立ちが良く、躍動的。
アウトロでは、リフにのせて御大ふたりの犬の鳴き真似と馬鹿笑いのおふざけアドリブ。
ジョンとポールのツーショットの録音風景が泣かせます。
素晴らしいの一言。これぞビートルズ。これぞロックです



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