第33回「Everybody Needs Love」(1978)/Stephen Bishop | 柑橘スローライフ

柑橘スローライフ

2018年1月更新終了しましたが、検索ご来訪の方等の
過去記事に対してのコメント・ご質問等は大歓迎です。

しばらく、代表的なAORのアーティストを続けます。
今回は、AORのパイオニアの一人であるStephen Bishop/スティーブン・ビショップ。

スティーブン・ビショップは、ファーストアルバムの「Careless」や
そこからのシングル「On And On」などが有名ですが、
何といっても重要なアルバムは、セカンドの「Bish(ビッシュ)」だと思います。
但し、リアルタイムでは聴いてはおらず、私が聴いたのはリリース数年後でした。

この当時は、なんでかは知りませんが、内容と特に関係なく、いちいちへんてこりんな邦題を
つけられるディスクが多かったのですが、この「Bish」も邦題は「水色の手帖」。
あべ静江さんの「みずいろの手紙」にでもあやかろうとしたのでしょうか。
しかし、手紙が水色なのはさもありなんですが、「水色の手帖」と言われても、
どんなんだろう、という感じです。

話を戻して、このアルバムですが、
収録曲には、どれか突出した超名曲があると言うわけでもないのですが、
いずれもが「佳曲」といった感じで粒ぞろい。その中でも個性的でいい感じなのが、
「Everybody Needs Love(エブリバディ・ニーズ・ラブ)」です。



スティーブン・ビショップの音楽性には、
何か抜きんでた天才を感じるようなことは少ないのですが、彼には「独自の型」のようなもの
があり、この型が確実に「佳曲」を生み出すベースになっているように感じます。
だから、音楽にそれほど興味がないような一般の人々をも魅了するような曲がないかわり、
逆に駄作のような曲もない、こんな感じが私の彼への印象でした。
この「独自の型」というのは、言ってみればその人の信念やアイデンティティのようなもの
であり、人生全般に、そうした「型」を持つ事の重要性を示唆されているような気もします。

楽曲のほうは、ロック音楽ではよくあることですが、この曲でもサビが最初にきます。
そして、二回目以降のサビでは同時に歌われる「第二のメロディ」が出てきます。
これがこの曲の「肝」で、耳に残るなんとも言えない「格好良さ」があります。
R&Bのコール&レスポンスとも違い、完全なもう一つのメロディが出てくるのですが、
ビートルズの「ヘルプ」などにも近い、とても個性的な進行です。

個人的な事ですが、随分と以前に、ある美容関連企業のプロモーションの業務で、
4~5人のモデルを洒落た音楽にのせて、スチールを数人のカメラマンにより自由な感じで
撮影するという仕事がありまして、その時にいくつかの曲を私が用意しました。
その一曲がこの曲だったのですが、意外にも最もうまくいい感じにはまった曲でした。
何となく、モデル達をその気に躍動させるような効果がこの曲にはあったんだなと
この記事を書きながら、懐かしく思い出しました。

演奏面では、エレキギターに着目したいのですが、
この曲では、若き日のマイケル・センベロとレイ・パーカー・Jrが務めています。
まだ二人ともソロとしてブレイクする前のセッションギタリストとしての時代です。
センベロのブレイクが83年の「Maniac」、レイ・パーカーが81年の「Woman Needs Love」
や84年の「Ghostbusters」ですから、その数年前ということになります。
後々シンガーとして有名にはなりましたが、元々の彼らの仕事はセッションギタリスト。
この曲ではどちらもコーラスすらつけてないようです。

冒頭の、快活で小気味の良いコードストロークはおそらくマイケル・センベロ。
はじめの4小節だけ1本で、ベースが入る5小節目からは2本のような音に聞こえます。
2本を別々に弾いてダブルトラックとしているか、若干ディレイをかけて「2本風」に
しているかは判りませんが、実に細かな変化をさせています。
グレッグ・フィリンゲインズのゆったりしたローズと対照的に期待感いっぱいで、
「マニアック」の時代にもでてくる彼らしいプレイで、ギターは音的にはセミアコのようです。
そして、ヴァ―スなどで出てくる位相的にやや左側の艶やかなプレイがレイ・パーカー。
ビショップの歌をうまくサポートして、都会的な雰囲気を持たせています。
音的にはレスポールという感じがしますが、どうでしょうか。
このように、様々な有名サポートミュージシャンの素晴らしいバッキングプレイを
楽しめるのも、「AOR」という音楽の最大の楽しみのひとつです。

スティーブン・ビショップ。
「自分の型」を持った、AORでは忘れてはならないアーティストの一人です。

第34回「Born To Be Wild」(1968)/Steppenwolf



ロック名曲百選/過去記事一覧

第1回「Sexy Sadie」(1968)/The Beatles
第2回「Ask Me Why」(1963)/The Beatles
第3回「Epitaph」(1969)/King Crimson
第4回「Speak To Me~Breath」(1973)/Pink Floyd
第5回「You Never Give Me Your Money」(1969)/The Beatles
第6回「Achilles Last Stand」(1976)/Led Zeppelin
第7回「Babylon Sisters」(1980)/Steely Dan
第8回「What A Fool Believes」(1978)/The Doobie Brothers
第9回「New Kid In Town」(1976)/Eagles
第10回「Your Mother Should Know」(1967)/The Beatles
第11回「Take It Away」(1982)/Paul McCartney
第12回「Pretty Maids All In A Row」(1976)/Eagles
第13回「I'm Not In Love」(1975)/10CC
第14回「A Whiter Shade Of Pale」(1967)/Procol Harum
第15回「Give Me Strength」(1974)/Eric Clapton
第16回「We Are The Champions」(1977)/Queen
第17回「Honky Tonk Women」(1969)/The Rolling Stones
第18回「Miss You」(1978)/The Rolling Stones
第19回「My Ever Changing Moods」(1984)/The Style Council
第20回「Hey Bulldog」(1968)/The Beatles
第21回「Here Today」(1982)/Paul McCartney
第22回「Alone Again(Naturally)」(1972)/Gilbert O'Sullivant
第23回「Good Night」(1968)/The Beatles
第24回「The Nightfly」(1982)/Donald Fagen
第25回「It's Too Late」(1971)/Carole King
第26回「Happy Xmas」(1971)/John Lennon
第27回「Better Make It Through Today」(1975)/Eric Clapton
第28回「Tell Her About It」(1983)/Billy Joel
第29回「Don't Look Back」(1978)/Boston
第30回「Don't Stop The Dance」(1985)/Bryan Ferry
第31回「Eggplant」(1975)/Michael Franks
第32回「Words」(1982)/Bobby Caldwell


にほんブログ村 ライフスタイルブログ 緑の暮らしへ
にほんブログ村