過去分析メモ/中小地方都市における中心市街地の現況・・・(3)
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図:福島県三春町における公共施設の中心市街地への再集積(1996年)
出典:
山川 充男
「大型店立地と商店街再構築:地方都市中心市街地の再生に向けて」
2004年 八朔社 p.210
ISBN:4-86014-024-9
:
(3)本ブログ内過去記事を踏まえて、本記事作成の意義と目的
本ブログ管理者は、都市を
「個別に違う目的をもった他人同士が、出会い、触れ合い、混ざり合い、
お互いに認め合いながら、
各々の自己実現に向かって協働参画を目指す場である」
と定義したい。
:
そのような都市の実現のためには、
特に既に人口減少時代に突入している中小地方都市においては、
既成市街地に集住する形態(すなわち、コンパクトシテイ化)が望ましいと考えられる。
*
これは、中心市街地に限った事ではない。
郊外ニュータウン等においても、
歩いて行ける距離に身近な居住サービスを1箇所で受けられる集落拠点が必要。
現状のように
必要に迫られて空いている場所に点々に低密でサービス提供する形態では、
将来、自力でクルマ運転の不可能になる人の割合が増えた時に
破綻を来たす事が予想される。
(前出、青木「ちぐはぐ……」p.177‐178、275‐278)
:
それゆえ、
「コンパクトな生活圏のなかに、住居とショッピング施設、
レストランやパブ、カフェ、医療施設、スポーツ施設や図書館等の文化施設、
教育施設、映画館や劇場、行政サービス、
公園や交通機関等が総合的に整備されている。
そんな生活空間の創出を目指すべきではないか。
(青木仁「快適都市空間をつくる」中央公論新社(中公新書)2000年
p.154-155および図7-2)
*
しかしながら、青木氏の論には、そのような理想的生活圏を
①どの程度の人口規模で(最低基準人口の設定)
②どのくらいの面積範囲に
(歩行距離圏、
およびサービス提供に供する最低基準人口に満たない歩行距離圏が見込まれる
地方の場合における補助的な公共交通サービス圏と地区毎の機能分担エリアの設定)
③どのような規模の建物で(標準軒高、建蔽率、容積率の設定)・・・・・
↓
という具体的数値が欠けている。
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↓
そこで、本ブログ記事の意義は以下のようにまとめられる。
:
近年衰退が激しく利便性が損なわれている地方中小都市の中心市街地における
居住機能と、
その居住者を支援する業態、
特に日常の食料品を扱う小売商業機能も同時に再生し、
そこに住む生活弱者である高齢者をはじめとする近隣住民に生活利便の向上を与え、
良好なコミュニテイ形成を促進する機会を与えるような
美しい街並みという「舞台」を備えること。。。。。
:
それによって
低密度周辺部から居住密度の高い都市居住を促す環境整備について
一考察を試みることである。
:
言い換えれば、本記事作成の目的は、
中小地方都市における中心市街地居住の可能性を探り、
中心市街地居住が最寄品商業の活性化と、
美しい街並みの連坦に寄与する事に言及することであり、
:
さらに一歩進めて、具体的な中小地方都市の事例に基づき、
中心市街地居住を促す具体的方法(とくに数値基準の設定)に関する
基礎研究への発展を目標にしている。
京都の職住共存地区における将来イメージ像
*
巽和夫・町家型集合住宅研究会編
『町家型集合住宅-成熟社会の都心居住へ-』p.237、学芸出版社、1999年…より引用
(4)商店街における購買層となる基礎的な居住人口の必要性
● 日常食料品の買物先選択理由は「自宅に近い」の割合が高い
……商圏調査 宮城県産業経済部「宮城県の商圏」p.163 平成15年
……市民意識調査 長岡市「まちづくりアンケート」平成12年
● 日常食料品を買う場所が「自宅の近所」へ向かう傾向があることに言及
……商圏調査 三重県農林水産商工部「買物傾向調査」
……コンサルによる研究報告
㈱タカハ都市科学研究所「中心市街地の活性化」
都市研究センター「消費者視点からみる中心市街地活性化」
(久繁哲之介)
● しかしながら、中心街居住者の食品購入で郊外SCを高率支持の都市も存在
……市民意識調査 須坂市「中心市街地活性化のためのアンケート調査
(平成13年、p.8)
● 一方、スーパー、百貨店の売上構成比率から見ると、、、
……全国のスーパーの売上構成比率(日本経済新聞)
→当然のことながら、食品売上構成が高い
……東北地方の百貨店(河北新報)→買回り品の強い業態でも、30%は食品
*
但し、この調査には、大都市・仙台と中小都市・石巻や北上などが混ざっているので、
もし区別できれば
中小都市であれば、さらに最寄品売上比率は高いと思われる
(企業秘密の部類に入るので、調査は難しい)
*
にもかかわらず『都心は住宅の場所ではない
(高崎経済大 戸所教授「月刊・地理」)』という根強い信仰?が未だに残存。。。
● 仙台市内において、元気のある地場のミニスーパー(売り場面積300㎡以下)は、
人口密度100人/ha前後の地域に存在/2003年当時
……仙台市の中央部で2店舗以上出店し、地場の青果物商を原点とする
→例①…伊藤スーパー(木町、小田原)
→例②…八尾ふじ(南光台・宮町・南材木町・保春院前丁・北山)
→例③…フレッシュ黒田(南光台・南光台東・小松島)
* 平成7年国勢調査(1k㎡メッシュ統計)より 人口密度を推計
* 郊外へ展開している企業、大型店を出店している企業と、
大手の系列企業は店舗例から除く
● 繁栄している商店街の共通項…生鮮4品が強い
……鮮魚、精肉、青果、惣菜
……最近では、上記+インストアベーカリー
(池澤寛「市民のための都市再生」p.82)
● 「品揃え」の強化を消費者は要求(前出、須坂市の市民アンケート)
……郊外大型SC利用の理由「品揃えが豊富44%」(同p.10)
……中心街商店(個店)に求めたいもの「豊富な品揃え26%」(同p.11)
……中心商店街(全体)に求めたいもの
「そこに行けばほとんど間に合うような店舗構成25%」(同p.12)
● 以上の事から
……中心市街地での最寄品商業の再生には買物行動を伴う居住人口が必要
↓
元気のある地場の商業者によるミニスーパーの成立には、
競合店をまったく計算に入れないとして、
少なくとも、1k㎡メッシュで1万人=100人/ha
は必要なのではないか?
(ちなみに、当時12万都市の石巻市中心街で70人/haが現状)
:
……中心市街地居住者の日常生活支援には、少なくとも次の2点が必要
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生鮮4品+ベーカリー
について、
①「豊富な品揃え」
②「そこに行けばほとんど間に合うような店舗構成」
(上記2点が欠ければ、
たとえ近隣人口が存在しても郊外大型SCに客が流出すると考えられる)
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資料画像・・・(本ブログ管理者撮影)
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