過去分析メモ/中小地方都市における中心市街地の現況・・・(2)
田園地帯に立派な道路が通る・・・岐阜県羽島市にて本ブログ管理者2010.7.5撮影
(2)なぜ、今、中心市街地居住が必要なのか?
● 行財政効率・消費エネルギー効率の面
……地方財政の逼迫
(補助金カット、○○債の増加、長引く不況による税収の伸び悩み)
:
郊外への外延型ではなく、集住による効率化が必要
今まで長期にわたる都市資産のストックを無駄にできない
:
面積規模が拡大し、人口密度が減ると、行財政効率は悪化
(例・人口当り道路行政投資 青森9.5億円 東京4億 「県勢」2000p.281)
また、
丹保憲仁「人口減少下の社会資本整備」p.112‐113によると、
【厚生労働省社会保障人口問題研究所の中位推計のように
2100年までに人口が半減すれば市街地面積が拡大せずに現在のままの場合でも、
人口1人当たりの公共施設等の維持費を現在の2倍負担する必要が生じる。
しかし、今後の経済成長が1%程度とすれば
21世紀の100年間に所得は2.7倍にしか成長せず
人口高齢化により社会保障費用が増加することを考慮すると、
社会資本や民間建物の維持に伴う費用を2倍化する事は容易ではないと推測される】
↓
さらに、上記の点を詳細に指摘する(前掲書、pp..82‐85)…
【日本では、郊外スプロール化した都市や街区が人口減少期を迎えつつあり、
都市基盤施設の老朽化とともに利用効率が低下し、
しかも施設を維持管理する財源が乏しくなるという深刻な問題が発生しつつある。
地方都市や郊外の人口密度は、
居住地の移動を考慮すると自然減によりさらに低下するため、
資源エネルギーの供給コストや供給エネルギーに無駄が生じ、
1人当たりの都市基盤施設の維持管理費負担額が増加する。
:
他方、財政的には就業人口減少のために税収が減少し、
非効率な都市インフラを維持することがますます困難になることが予想される。
地方都市の郊外バス路線は、すでに自家用車の増加と人口減少の影響を受け、
住民が住んでいるのにもかかわらず路線廃止が現実問題になりつつある。
このような状況が道路、ライフラインなど他の都市基盤施設にも波及するか、
さもなければ高額な維持費負担を余儀なくされる。
:
一方、現状のままでは昼間人口と夜間人口の差が著しい都心では、
基盤施設の容量が昼間人口を基準に整備されているため、
夜間は都市基盤施設が十分活用されていない。
このような非効率な状況を解決する方策として、
スプロール化した人口を都心へ回帰させる方策が考えられる。
環境負荷が少なく同時に快適な都心居住を実現し、
持続可能な国土を生み出そうとする具体的方策を研究し、実行すべき時期がきている。
:
たとえば、
コンパクトな都市の交通結節点からの徒歩圏を半径500メートルと想定すると、
面積80ヘクタールに
パリ並みの1ヘクタール当たり200人が居住することが可能であれば、
約1万6000人による1単位の街が形成される。
名古屋市を例にあげれば交通結節点が20か所を超えるため、
約30~40万人が徒歩圏内に居住可能である。
これは名古屋市の人口の15~20%に相当する】
↑
(図・加茂利男「地方自治・未来への選択」p.57)
*
元来は、
市町村合併による「人口規模の利益と面積規模の不利益との相殺」の資料だが、
居住区域の外延による市街地人口密度の低下に応用可能な資料である。
その他関連資料……
遠距離通勤によるエネルギー損失、
都心基盤ストックの低利用による損失、
地方のクルマ社会による環境負荷、、、
:
巽(たつみ)和夫ほか「町家型集合住宅」p.179
青木仁「なぜ日本の街はちぐはぐなのか」p.20‐23
:
快適な都心居住の実現は、雇用機会を高めると同時に、
公共交通の結節点ごとに徒歩圏を中心としたコンパクトな都市を構築することは
資源・エネルギーの効率的な供給に有効
(丹保憲仁「人口減少下の社会資本整備」p.80)
(林良嗣・加藤博和・杉山邦夫・馬場弘一郎
「都市のストック化の提案-理念と手法」
日本不動産学会秋季大会桔梗集p.25‐28、2000年11月)
↑
■散在した生活必需施設を繋ぐ愛知県豊田市の「玄関口バス」/本ブログ内記事参照
:
何度もいうように
そこでは都市は生産機構に支配されており、
その産業要員のための住宅は都市の周辺部に置かれる。
そしてこの勤労要員は毎朝、郊外電車に乗って産業都市へと通勤する。
子供たちも同じように通学する。
職場、学校以外の生活に必要な施設は、
利用者の利便というよりは都市の中の産業施設の隙間にばらばらに配置されている。
都市住民は必要に迫られて、時には1日仕事で、
郊外電車始発ターミナルの商業拠点にある巨大デパートにまで買物に行き、
巨大病院に出かけて診察を受けなければならない。
その他の図書館や映画館、遊園地やプール、役所等の生活に必要な施設や機能は、
生活の場の近くの最寄りの立地にあることは少なく、
いくつもの交通機関を乗り継いで
やっと辿り着くことができるような遠隔地にあることが多いのである~(中略)~
やや時代遅れないい方かもしれないが、
働き手である父親たちは、長時間通勤電車に乗って職場に向かい、
生活のために働き、疲れ果てて家庭に帰ってくる。
母親と子供たちも産業都市の軋轢を避けるように
住宅という防御殻の中で父親の帰りを待っている。
そして、この住宅自体がその中に孤立した核家族をひそめながら、
相互に孤立しているようにみえる。
そこに見える都市民の姿は、都市生活を謳歌する明るい顔をした人々のそれではない。
(青木仁「快適都市空間をつくる(中公新書)」中央公論新社2000年p.151-152)
郊外大型SCの事例・・・仙台市太白区(本ブログ管理者2007年4月撮影)
● 少子高齢化、生涯学習時代への対応
(自力では郊外SCまで買物に行けない人の存在)
……(国勢調査)手助けを必要とする高齢者人口比率の増加
特に、中心街は高齢比率が高い(例・諏訪)
野口孝博「北国の歩いて暮らせる環境(まち)づくり」
(開発こうほう2002年6月)
:
その他関連資料
蓑原敬「街は要る」p.226、「成熟のための都市再生」p.40
他、前出(青木「ちぐはぐ」p.177‐178、p.275‐278)(巽p.211)
:
とりわけ、高齢社会の到来を視野に入れれば、今後当然に、
健康管理や家事代行などの生活支援サービスを
より身近な場所に必要とするようになる高齢者、
そして生産者としての役割を終え、
純粋な生活者としての時間を大量に有する高齢者人口が増える。
:
また、経済開発路線、高度経済成長路線が限界に達した今、
生産労働人口に属する成年男女にあっても、
生産を離れた生活時間の比重が増していく。
(青木仁「快適都市空間をつくる(中公新書)」中央公論新社2000年p.152)
● 他人と協働する場の減少・混住の必要性→*建築学会資料(1994年9月)
……コミニュテイの崩壊、社会的無関心な人々の増加
:
川村健一(フジタリサーチ社長)
*第143回都市経営フォーラム講演(1999年11月)
……特に郊外に住む高校生が街中での触れ合う機会の減少
仙台の実例(郊外校舎~郊外団地間スクールバス)
* 他、前出(蓑原「街は要る」p.40、巽p.212)
* 「その多様で多面的な生活の中に~都市は~」
(マンフォード「都市の文化」p.473)
● その他……都市は社会的なセーフテイネットの根幹(前出、青木p.14・24)
……中心市街地は周辺町村を含めた都市圏の「顔」であるという主張
(各地の自治体、商工会議所、TMOなど…歴史的に見ても「中心」
であり、公費で活性化されて当然である…
岩手県水沢市=現・奥州市水沢区など…既得権)
:
兵庫県三田市のアンケートでは
中心街居住者の多くが「公共が先導して」まちづくりを進める方式を支持
:
【参考】
岩手県水沢市(現・奥州市水沢区)TMOにおける「中心市街地の役割」
① 多様かつ高度なモノ・サービス・情報の提供
② 過去のストックを生かした環境負荷の低い効率的まちづくり
③ 高齢者など交通弱者にとって便利な環境の提供
④ 歴史文化の継承と新たな文化創造の場の提供
⑤ まちの顔、地域のアイデンテイテイ伝承の場
⑥ 内発型の産業・雇用の維持
:
【参考】「都市再生と新たな街づくり事業手法マニュアル」
コンパクトシテイ化の意義
① 高齢者の文化交流・買物・通院など公共交通が有る中心街が便利
② 女性の就業率向上で通勤時間短縮が育児のため必要
③ 子供の学外における社会活動機会の増加
④ 自動車交通削減による消費エネルギーと環境負荷の低減
⑤ 都市周辺部の自然環境保全がひいては地球環境を保護
:
【その他参考資料】「中心市街地居住支援シンポ」(建築学会討議資料00年7月)
*
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■過去分析メモ/中小地方都市における中心市街地の現況・・・(1)
■過去分析メモ/中小地方都市における中心市街地の現況・・・(2)
■過去分析メモ/中小地方都市における中心市街地の現況・・・(3)
■過去分析メモ/中小地方都市における中心市街地の現況・・・(4)
■過去分析メモ/中小地方都市における中心市街地の現況・・・(5)