過去分析資料/地方都市が「郊外化」すると、住みやすい?・・・(3)
↑
東京に比べたら、まだまだ密度的に余裕がありそうな仙台市内・・・・・
(仙台市若林区にて本ブログ管理者2010.5.10撮影)
③ 行財政効率改善への影響
⇒井上隆(「市街地膨張の社会的コスト」河北新報、平成10年3月11日朝刊記事p.5)
・ 商店街=生活関連型社会資本
:
中心市街地で生活する住民にとって、
中心商店街の衰退は生活利便性(すなわち住環境)の悪化を招く。
それゆえ、
中心市街地が大型生鮮品販売店の空白地帯となっていた福島県白河市では、
行政(白河市役所)が旧イトーヨーカドー店舗を買い上げ、
1階部分792㎡を、
白河市と同じ福島県南部に属する須賀川市に本社がある食品専門スーパーに
テナントとして入居させるという特別の行政投資を行なっていた
(河北新報、平成15年9月6日付朝刊記事p.9)。
↑
この点について補足すれば、
宮城県柴田郡大河原町では、JR東北本線「大河原」駅前への
町立図書館など行政サービスとの複合再開発ビル新築にあたり、
1階部分に食品主体のスーパー
(ファル…本社・盛岡市→平成15年、民事再生計画に基づき
青森県八戸市に本社がある食品専門スーパーのユニバースに吸収される)
をテナントとして入れたが、
再開発と同時に住宅を造ってスーパーの顧客となるべく
中心市街地への居住人口を増やすことをまったく考慮に入れていなかったのと、
ファル自体の業績不振・
ライバル店との競合激化という経営環境の変化による事業縮小に伴い、
結果的には僅か3年余りで撤退。
:
・ もともと低位にある下水道普及率の郊外新興住宅
(特に民間によるミニ開発)の増加によって、ますます低下
:
・ 除雪予算
特に、井上氏の住む豪雪地帯である青森市では、
除排雪面積が拡大の一途を辿り、
毎年の除排雪予算(20億円)は
国からの補助金で賄いきれないレベルに達している事を指摘。
:
・ 郊外の新市街地形成による自家用車通勤の増加が
幹線道路網の交通渋滞を生み出し、
この結果、
定時制が確保できずに信頼を失った市営バスなどの公共交通機関が衰退。
これによって、
多くの地方自治体でバス路線維持に膨大な経費を投入し、
ヤマコーバス(旧・山形交通)が僅かな路線・本数を除き撤退し、
市内の交通は「市民バス」に頼るしかない山形県米沢市…本ブログ管理者2003年撮影
:
・ 地方の生活バス路線について補足する。
最近、地方では、
一見すると一般の路線バスと何ら変わり映えのない形をしているのに、
車体側面に「契約貸切」という文字が記されているバスが郡部に多く見られるようになった
(ちなみに、普通のバスは「一般乗合」)。
:
これは、廃止路線を自治体経費で借り上げ形態
(すなわち、バス会社から見れば「貸切」)による「代替バス」として
廃止前の運営会社
(多くの場合、その子会社)に運行委託して路線を継続しているためである。
宮城県でも、宮城交通㈱から、そのような代替バスを専門に扱う子会社として
「宮交気仙沼バス」「宮交石巻バス」などが分社
(その後、「ミヤコーバス」に再集約化し、
本業で儲け頭である仙台圏を運行する「宮城交通(本体)」と、
仙台圏以外の子会社に2本建て化)している。
:
もちろん、自治体独自の住民バスを運行する場合も多いが、
どちらの場合も、
国の財政悪化・構造改革に伴う補助金カットに苦しむ地方自治体にとっては
頭の痛い出費である事には変わりはない。
:
・ 鉄道について補足
平成5年におこなわれた仙台都市圏パーソントリップ調査報告
(特定課題検討編p.117‐118)によると、
鉄道の対自動車所要時間比が1.2を超え、
かつ
駅端末時間
(「自宅→駅」+「駅→会社・学校」の往復)/他交通手段による仙台都心直通時間
の比が1.0を超えると、極端に鉄道利用率が低下する事が報告されている。
:
また、同調査報告(概要版p22―24)によると、前回(昭和57年)調査時に比較して、
仙台市中心部(青葉区のうち、昭和63年に合併した旧宮城町部分を除く地域)における
都市圏全体における発生集中交通量のシェアは27.2%から24.2%へ低下し、
代表交通手段の変化を見ると自動車比率が35.3%から46.8%へ増加した
(平成15年調査・速報値で53.5%…河北新報2003年9月10日朝刊記事p.19)。
↑
これらのデータは、
中心市街地への
一極集中を前提とした
公共交通網では、
低密度・郊外拡散型に形成
された市街地を
カバーする事が難しい、、、
現状を浮き彫りにしているといえよう。
:
・ その他、目に見えないコスト……
郊外に移転または新築した公共施設
(公立高校、病院、図書館など)に通う利用者が支払うコスト
:
ⅰ)
中心部や旧市街地から遠く離れた山ろくの高校に通う生徒達が
3年間に費やす通学コスト(時間・費用・労苦)
:
ⅱ)
特に、青森市郊外の高校通学には、冬場は自転車が使えずバスの便も悪く、
親たちが毎日交代で生徒を自家用車で送迎する無駄なコストを指摘
↑
上記について若干の補足をすれば、
宮城県でも県立図書館が仙台市中心街から自家用車による利用を前提とした
遠く離れた山ろく(仙台市泉区紫山)へ移転。
仙台市南部(太白区)に四郎丸住宅という
公営(仙台市営)の住宅団地を中心として広がった新興住宅街が存在するが、
ここから県立図書館まで行くには、
市営バス(四郎丸小学校前経由)\340
+地下鉄(長町→泉中央)\350
+宮城交通バス(宮城大学・工業団地経由)\370=片道\1060、
標準の所要時間は待ち時間を含まず片道90分掛かる。
さらに、バスの運行回数はどちらも1時間当り1~2本(標準)と、
便利であるとはとても言い難い。
この状態は、
居住地の違いはもとより、
公共交通以外に移動手段をもたない利用者に対して、
情報リテラシー(情報格差)の問題を生じかねない。
:
ⅲ)クルマ社会が支払うべき維持費と事故のリスクに対するコスト
川島令三(「鉄道はクルマに勝てるか」中央書院1998年p.20‐22)は、
自身の地方生活上の発見として、公共交通網が衰退した地方では、
クルマの損害保険・税金などの維持費はもとより、日常生活上におけるスピード違反と、
会合等出席時の「酒酔い運転」の恒常化によるリスク、
および、
各人が「普通乗用車・1名乗車」で連ねる事の無駄を指摘している。
:
なお、地方におけるスピード違反の恒常化に対しては、
一般国道13号線
(米沢~福島間)の平均時速が、
制限速度50㌔
に対して実状67㌔!
であったことが、
清水草一(「こんな高速道路はいらない」三推社/講談社2002年p.126‐128)
による現地調査において裏付けされている。
:
また、会合等出席における「酒酔い運転」の恒常化については、
(本ブログ管理者の両親の実家の在る)宮城県北部の生活習慣として、
例えば「法事」における振る舞い行動に裏付される。
同地区における生活風習として、「法事」の時には「故人の供養」と称して酒の宴を催し、
参列者へ感謝の念を示す事が常識的な「儀礼」とされている。
↓
当然、公共交通網が衰退している地域では、参列者は各々の個人持ち自家用車を、
まるで自転車でも扱うかのごとく
(場合によっては、徒歩3分のコンビニへ行くにも
3ナンバーの大型高級乗用車で乗り付けるような感覚=自転車でも扱うかのごとく)
会場へ乗り付ける。
:
地方で軽自動車が良く売れるのは、特に主婦層、若年層の多くが
そうした感覚で大きな車体に1人乗りで自動車に乗るからであって、
地方へ行くと街の衰退風景とは裏腹に、
広大な面積の割合が駐車場で埋め尽くされている光景を目にするのは、この理由による。
これは、理論ではなく、
あくまでも本ブログ管理者自らの地方都市における生活「実感」に基づく。
地方ほど、軽自動車の普及率が高いことがわかります・・・・・
:
ⅳ)地域の伝統的な「祭り」が開催できないというコミニュテイの崩壊
河北新報2003年9月11日朝刊p.25記事は、
仙台市青葉区柏木地区で復活の構想がある祭りにおける
「神輿」の担ぎ手の人選に困窮している現状を報じている。
*
柏木地区は、東北大学の付属病院に近い、仙台市の中心市街地北西部に位置し、
近年、古くからの住宅がマンションに建て替わることによって旧住民が減り、
その代わりに新住民が増えている所である。
*
本ブログ内関連記事
↓
■過去分析資料/地方都市が「郊外化」すると、住みやすい?・・・(1)
■過去分析資料/地方都市が「郊外化」すると、住みやすい?・・・(2)
■過去分析資料/地方都市が「郊外化」すると、住みやすい?・・・(3)
■過去分析資料/地方都市が「郊外化」すると、住みやすい?・・・(4)
■過去分析メモ/完全クルマ社会…郊外の一戸建ての生活って、快適?(1)
■過去分析メモ/完全クルマ社会…郊外の一戸建ての生活って、快適?(2)