みなさん、こんにちは♪
心理カウンセラー・身体心理セラピストの澤田 准です。
セッションをしていて、とても切ないのは、
親のふるまいが知らず知らずのうちに不適切養育となって
子供の健全な情緒や愛着形成、心理的安全の発達に多大なる影響を与えていることがあります。
虐待とかそういったものでなくても、無意識にしている日常的なふるまいが子どものトラウマとなり、子どもが大人になった今でも、それを再演しながら生きている、ということはよくあります。
(ちなみにその振る舞いが親のトラウマからきていて、世代間連鎖している負の遺産であることもあります)
不適切養育とは
不適切養育とは、日常の中で繰り返される子どもへの不適切な関わりによって、子どもの健全な発達が妨げられ脳にも影響が出ること。
言葉による脅し、からかい、罵倒、無視、子どもの面前でのDV、モラハラ、夫婦喧嘩....なども含まれる。
こうした成長過程での慢性的なトラウマ体験により、心身に不調が生じる「発達性トラウマ障害」になっていることがあります。
p219 「その生きづらさ、発達性トラウマ? 」花丘ちぐさ著 より一部抜粋
<兄弟格差があること>
男の子を可愛がる、女の子を可愛がる、長男を立てるなど、兄弟でその対応にあまりにも差あること
<いつも文句を言ったり、否定的なリアクションが多い>
部屋で勉強していたら、そんなに勉強しなくてもお母さんはできたわと言ったり、買ってきた服にダサいと文句を言ったり、いつもため息ばかりついているなど。
<子どもに愚痴を聞かせる>
養育者が自分の不満や不安、家族間の中での愚痴を聞かせ続けること
<子どもの呼びかけなどに答えないこと>
話しかけても、ちょっと待ってと言って放っておくことが多かったり、
子供の質問や呼びかけを自分のしていることに熱中していて気づかなかったりすること。
『過度の心配性』『必要なケアをしない』など、*他にもたくさんあります。
詳しくは、「その生きづらさ、発達性トラウマ? 」花丘ちぐさ著を読んでみてくださいね。
*上記の例は、私がセッションで多い例を書かせていただきました。
こうした関わりは、同調の欠如または情緒的ニグレクトにな繋がることもあり、
自分の存在を確かなものとして受け取ってもらえている感覚をもつことができなくなります。
たとえ、金銭的に満たされ、ほしいものは買ってもらえた、親が自分に愛情があるのはわかっている、けれど、自己の尊厳を大切にしてもらっている感じがないので、自尊感情が育ちにくく、自分を大切にするよりも、意識が外側に向いて、他人の関心や褒め言葉を得ようとしたりするかもしれません。
私たちが生まれてから大人になって人と心地よく交流することができるには、
①心理的安全...ホッとする安心感や安全感、受け入れられている感覚
②健全な自己認知.....私はわたしでいい、わたしは大丈夫だ
という感覚が備わっていることがとっても大切です!
こうした心理的な安全、健康的な自己認知のもとで、人とのコミュニケーションが容易で、温かなものになっていきます。
それではその感覚はどうやって育つか、、、それには、健全な愛着から育っていきます。
愛着とは
赤ちゃんや幼児がお母さんやお父さん(主に養育者)に向ける特別な情緒的な結びつきを感じること。
健全な愛着が育まれると、健全な自律神経系の発達が促され、
身体の感覚として安心や安全を感じてリラックスや落ち着きを感じることができます。
自分が大切にされている、受け入れられていると感じることができるので、
自尊感情が育ち、自分も相手も大切にする気持ちが育まれていきます。
またセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンやオキシトシンなど、
重要な神経伝達物質が正常に作用できるようになっていきますので、
自分を含め人との関係性において幸せや愛情を感じ、
物事に対して前向きさがあり肯定的で、何かやる時にも勇気ややる気も出てきます。
それではこうした健全な愛着を築くには、何が必要なのでしょうか?
健全な愛着を築くには
健全な愛着築いていくには、大きく3つのキーワードがあります。ひとつめは『触れられること』『スキンシップ』です。
①『触れられること』
赤ちゃんにとって触れられることは生死に関わるくらい大切なことです。
スキンシップで体に触れられたり、撫でられたり、抱きしめられたりすることで、
安心や安全の土台を育んでいきます。
そのため赤ちゃんの『触覚』は、五感の中で最も早く発達すると言われています。
赤ちゃんの皮膚は全体重の20%にもなり、皮膚感覚からたくさんの情報を脳に伝えます。
(大人は16%といわれています)
例えば赤ちゃんはぎゅっと圧をかけて抱きしめると安心するのですが、
これは皮膚の下にある『パチニ小体』が刺激され、副交感神経が優位になり、
脳に伝わってリラックスが深まっていくから。
幸せホルモンのオキシトシンも分泌され、不安が和らぎ、安心感が深まっていきます。
また『ぎゅっと圧をかけて抱きしめる』ことで、
『実在感』と『境界の感覚』が育まれていくと言われています。
皮膚がぎゅうっとされる感覚で、自分の(物体としての)一番外側の境界である皮膚を通して、『自分が存在する感覚』を身体で感じていきます。それは、私たちが『生きている』と感じる源となっていきます。
頭やお腹などを撫でる、手をにぎる、さする、トントンする、すりすりする、抱きしめる、、、
そうしたふれあい、スキンシップを通して、
赤ちゃんのさまざまな神経系が発達し、安心の土台が身体にインストールされていきます。
撫でるときは、ゆっくり撫でるのと、副交感神経系のリラックスにつながりやすくなります。
そして健全な愛着形成において二つ目に大事なキーワードは、『協働調整』です。
②協働調整
<乳児期の関わりの中で>
赤ちゃんは生まれてから、自分のことはなにひとつできません。
どんなにお腹がすいても、自分でご飯を用意することはできないし、おしっこをしたおむつを替えることはできないし、何か怖いことや不安なことがあっても、自分を落ち着かせる術を持ってきいません。
お腹がすいたよ(おっぱいほしい)、おしっこしたよ(気持ち悪いよー)、
眠いよ〜、体が暑いよ〜、寒いよ〜(何とかしてー)
寂しいよ、不安だよ〜、こわいよ〜(そばにいてよー)
赤ちゃんは泣いたり、ぐずったりして、お母さんに不快感を知らせ、
お母さんに抱っこしてもらったり、「よしよし、どうしたの」と優しく呼びかけてもらって、
自分の気持ちやニーズを聞いてもらえることで安心し、心地よさを感じます。
ゆらゆらしてもらったり、撫でてもらったり、おっぱいをもらって、おむつを交換してもらって、
気持ちをなだめ、不快な感覚を取り除いてもらうことで、赤ちゃんは落ちつき、
その様子を見てお母さんも安心し、お母さんの安心したエネルギーや体温を感じて、さらに赤ちゃんも安心を深めていく、、、そんな親子の調整のやりとりを協働調整と言います。
このときにオキシトシンが分泌されて、親子の情愛が強まっていきます。
こうした赤ちゃんとお母さん(養育者)との協働調整によって、新しい第3の自律神経といわれる腹側迷走神経系が発達していきます。 社会交流の神経ともいわれ、人の気持ちを汲み取り、理解し、人とうまくやっていく、高度な神経系が発達していきます。(この神経は妊娠6ヶ月〜25歳まで長期にわたって発達していく神経と言われています)
生後1歳半までのこうしたふれあいや同調の質が高ければ高いほど、大人になってからレジリエンシー(苦痛や困難に持ち堪える力)の能力が高く、この時期に身につけた安心や安全の感覚が、後々の神経系のベースを作っていくといわれています。
そして3つ目のキーワードは、『同調』です。
③同調
<幼児期以降の関わりの中で>
子どもにとって、何か怖いことがあった時にはなだめてもらい、落ち込むようなことがあったときは慰めてもらい、ショックがあった時には寄り添ってもらえる、、
そんなふうに自分の気持ちに同調して聞いてもらえることは、
子どもの健全な安心の感覚や自己イメージには欠かせないものです。
幼児期以降の関わりの中で、身体的な触れあいと共に、
養育者が子どもの目線に立って、子どもに眼差しを向け、
子どもの感情や気持ちにチャンネルを合わせて話をきく、、、
こうした(感情的な)同調から、親子の温かい情緒的なつながりや絆がさらに育まれていきます。
例えば子どもがコップを割ってしまった時に、
(親自身がびっくりして)カっとなって、『何してんの!』と怒るよりも、
『びっくりしたね!』『怪我しなかった?』とまずは寄り添うことで、
コップが割れた音でびっくりして、
固まって不動状態(フリーズ)になってしまったこどもの心が溶かされ、涙が出るかもしれません。
「手が滑ってしまって落ちちゃったの」と状況を教えてくれようとするかもしれないですし、
お母さんが『そうだったの』とちゃんとお話を聞いてくれているのを感じて、
さらに心が緩み、自然に「ごめんなさい」の言葉が出るかもしれないし、
次は〇〇して気をつけようと、お話ができるかもしれません。
子どもたちが必要としている経験は、
I see you, I hear you, I believe you.
あなたを見ているよ、聞いているよ、信じているよ、と寄り添い 同調すること。
子どもが、「見てもらえている、聞いてもらえている、信じてもらえている」と感じることで、
自分は理解されている、見守られている、、、受け入れられている感覚ができ、
自分を肯定的に捉え、自分を好き、自信がある、大丈夫という自己認知が育っていきます。
スキンシップや協働調整などで身体へのリアルな安心感や保護感が育まれ、
同調によって温かな情緒的なつながりが養育者との間にできてくると、、
自然に何かあっても守ってもらえる、助けてもらえると感じ、養育者や家庭がこどもの安全基地として機能してきます。
なにかあったときに、気持ちを聞いてもらえ、そのままの自分を受け入れてもらえる、緊急の避難場所があることは、子どもたちのこころのレジリエンシー(持ち堪える力)の能力を高くしていきます。
また自分を愛し、大切にする、自分を軸に考え大切にできる土台もでき、その延長線上には、同じように相手を尊重していける土台にもなっていくのです。
触れられることの欠如 同調の欠如がもたらすもの
<身体的なふれあい、協働調整の欠如>
身体で感じる安心感や心理的な安全基地の感覚が薄いため、自分や人への信頼がなく、不安が強くなるかもしれません。
人との関わりに不安を感じ、緊張しやすく、交感神経系が活性しやすい人もあれば、シャットダウンして関わりを避けることで、感じている不安や恐れをコントロールするかもしれません。
<感情的な同調の欠如>
親が仕事で忙しすぎたり、何らかの病気で子どもの心に寄り添えなかったり、養育者自身のストレスやトラウマで、子どもに十分な同調をすることができなかった場合、
親に愛があることは分かっていて、愛されていると感じていても、
ありのままの自分が受け入れられている、認められている、と感じることができなくなります。
そのため、
親から認められる『いい面』の自分しか見せないようになったり
本当の感情や気持ちを抑えるようになります。
大丈夫なふりや、強いふりをしたりするかもしれません。
ストレスがあっても、本当の気持ちを見せることができず、
一人でその気持ちを抱え、誰も自分の苦しみを分かってくれない、理解できないと
思い込むようになります。
こうした親子の間で流れる愛着のストーリーは、大人になっても繰り返されやすく、(例えば)近くにいるのに心が通いにくい、つながりにくい、ありのままの自分よりも頑張っているところを見て認めてもらおうとする関係性を再演しやすくなります。
*触れられることや同調の欠如は、それぞれ複雑に重なりあっているので、両方の影響を受けていることの方が多いです。
いつからでも調整しトラウマを癒すことができる
不適切養育だった、発達性トラウマだった、、と言うのは、とっても気づきにくいもの。
また親を悪く思いたくない、と感じる人もいるかもしれません。
不適切養育は、その親だけのものではなく、どちらかといえば、世代間で伝播されたもので、誰かひとりを悪者にしていくものではありません。また戦争や不況などの社会情勢、閉鎖的な地域などの地域性などの影響もあります。
その影響に気づいた人から、そのトラウマを後世に伝えていかず、自分の代で癒し、終わらしていくことができます。
この文章を読んで、「私はそうかもしれない」と思ったら、どうぞ安心してください。
時間はかかっても少しずつ腹側迷走神経系を育て、トラウマを癒して、本来のあなたらしさが輝く生き方にシフトしていくことができます。
あなたがもし、『自分はダメだ』『できない』『私が悪いんだ』『愛されない』と言う思いがあって不安や緊張を感じるのであれば、どうぞ信頼できるセラピストさんと根気よくセッションを積み重ねていってくださいね。
今回のお話は、日々の臨床やわたしの経験と共に、下記の本からの智慧を参考にさせていただいております。
①その生きづらさ、発達性トラウマ? 花丘ちぐささん著
②身体が「ノー」と言うとき ガボール・マテ 著
③専門家と作ったスキンシップ絵本 ぎゅ 山口創監修 はるな檸檬作・絵
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