1992年~2016年  全39作

 

夜明日出男...渡瀬恒彦、 西村あゆみ...林美穂、  神谷雅昭…平田満、 東山秀作…風見しんご、 国代義明…小林健、 馬場幸男…正名僕蔵、 係長…秋山武史→小倉一郎→増田由紀夫→佐藤二朗→徳井優、 野村忠…鶴田忍

 

夜明日出夫は元警視庁捜査一課の警部補。ある事件の関係で知り合った女性とのことを誤解されてマスコミにまで騒がれたため、刑事を辞めてタクシードライバーに転職し、妻とも別れた。別れた妻との間の一人娘が、あゆみ。
夜明さんが乗せた乗客が事件の関係者となり、その事件を元同僚の刑事 神谷や元後輩の東山らが担当、捜査の過程で夜明さんと遭遇するというのが一種の様式美となっている(後期には、あゆみちゃんの仕事先に事件関係者が、というのもお約束に)。

 

中期から後期にかけて確立していった主なお約束。
・大島蓉子さん演じる乗客とのオープニングコント
・その後、最初に乗せた乗客がだいたい犯人
・乗客に刑事を辞めた理由を問われ、「ある事件で知り合った~」と説明
・東山・国代・馬場による夜明さん強制起床イベント
・朝ごはんにメザシ、東山らがそのメザシを虎視眈々と狙う
・神谷が酒をもって夜明さんのアパートを訪問するもけんかをして帰る
・夜明さんは最初、乗客をかばうが最後は自分で真実に辿り着き自首を勧める
・あゆみちゃんのおねだりタイムでエンディング

 

第1作から第39作までの話のうち、20代の話は、フォーマットが固まってきつつあるけど30代の話ほどお約束ガチガチではなく、笑える場面と人情味とサスペンスのバランスがよくて、かなり好き。夜明けさんは2サス界の寅さんだと思う。乗客の女性に肩入れして、その人のために尽くすが、最後はお別れ。

 

第1作「 殺人化粧の女 山が動いた!?」 (七瀬なつみ)
第2作「 昼下りの危険な乗客 浴槽に美女の死体が!」 (香坂みゆき)
第3作「春呼ぶ殺人 女の死体に桜が散った…」 (大寶智子)
第4作「 幸福の代償 妻と別れたい男の殺人契約!?」 (若林志穂)
第5作「行き先のない乗客 “人を殺した”とその女は言った…」 (高橋惠子)
第6作「再会した女 湘南-松本 500キロの殺人!?」 (阿木燿子)
第7作「真夜中の殺人招待状!夢を捨てた女の危険な誘惑…」 (美保純)
第8作「愛と死の殺人迷路 東京-新潟 350kmを死体が走った?!」 (田中美奈子)
第9作「過去から来た女 時効直前 消された殺人犯!」 (洞口依子)
第10作「黒いひまわりの女」 (佐藤友美)
第11作「亡霊殺人」 (伊藤蘭)
第12作「殺意のハンドル」 (国生さゆり)
第13作「死にたがる乗客」 (秋元奈穂美)
第14作「刑事が愛した女」 (細川直美)
第15作「二つの顔を持つ乗客」 (藤真利子)
第16作「完全犯罪への抜け道」 (古手川祐子)
第17作「追跡する女乗客の秘密」 (藤田朋子)
第18作「バックミラーの殺意」 (荻野目慶子)
第19作「死体を連れた幻の乗客!?」 (中原果南)
第20作「東京〜関門海峡1,100km殺人」 (高橋ひとみ)
第21作「東京〜飛騨高山 2人の母の殺意が交差した!?」 (美保純)
第22作「会津若松〜殺人無罪の乗客」 (賀来千香子)
第23作「東京〜蔵王 死体と待ち合わせた女」 (田中美奈子)
第24作「同時殺人の乗客!! 東京〜伊豆海岸 記録された20秒間の疑惑!?」 (床嶋佳子)
第25作「東京〜宮崎日向灘 殺人画の乗客」 (東ちづる)
第26作「東京〜京都・琵琶湖 土地鑑のある乗客」 (原沙知絵)
第27作「甲州石和〜殺意の子守唄 狙われた小さな目撃者?! 密封された死体の謎」 (中山忍)
第28作「能登和倉〜午前3時の同乗者!! 深夜ラジオに届いた殺人リクエスト!?」 (とよた真帆)
第29作「塀の中からの乗客 星降る夜のアリバイ殺人!! 吸い取られたDNAと謎の記号!?」 (国生さゆり)
第30作「東京〜京都〜博多 殺人犯を追う乗客 10年目の再会と疑惑の銃弾!!」 (宮本真希)
第31作「伊豆熱川〜殺人疑惑の乗客」 (櫻井淳子)
第32作「殺人ツアーの乗客 信州松本〜仕組まれた小京都旅行!!」 (葉月里緒奈)
第33作「神戸〜九州大分 逃げた花嫁」 (若村麻由美)
第34作「飛騨高山〜殺人スクープの女!! 1年で倍返し!? 疑惑の投資詐欺で連続殺人!!」 (酒井美紀)
第35作「分かれ道の乗客 瀬戸内尾道〜“道の駅”連続殺人事件〜」 (釈由美子)
第36作「地図を失くした乗客 北陸金沢〜よく喋る死体の死亡時刻トリック!!」 (雛形あきこ)
第37作「東京〜浜松 ドライブレコーダーが録画した二重殺人の謎」 (床嶋佳子)
第38作「伊勢志摩 貝の中の殺意 真珠をめぐる同時殺人!! 魔性の女の完璧すぎるアリバイ!?」 (高岡早紀)
第39作「スキャンダルな乗客 舞台上の連続殺人!! 三人の女優が仕組んだ嘘と秘密!?」 (高橋ひとみ)

「会津若松〜殺人無罪の乗客」 (2006年)

(ゲスト)
高根沢道子…賀来千香子、 一ノ瀬圭子…大寳智子、 戸村栄介…梨本謙次郎、 戸村佐知江…赤座美代子、 戸村香織…岡室穂香、 土屋彰一…柴田光太郎、 土屋美鈴…メイサツキ、 長尾哲夫…嘉島典俊、 渡辺研一…矢島健一

オープニング。”トランクが開いている空車”という二朗からの無線に、お客さんの行先は成田に違いない、と推測し、ウキウキしながら迎車に向かった夜明さん。待ち受けていたのは蓉子さんと大量の荷物。隣町へタクシーで引っ越しをしたいという要望に、夜明さんは、「引っ越しは引っ越し屋さんに頼んでくださいよ」と抵抗するも、「乗車拒否!」と大きな声で言われて、仕方なく荷物を車内に運び込む。成田までロング、のつもりが、隣町へのショート+荷物運びの労役付きで気の毒(だけど、時間でメーター上がるはずだから、それなりに稼げるのかな?)。

元妻から、”あゆみちゃんが一人暮らしをしたいと言っているから反対しろ、あゆみちゃんが就職できないのは夜明さんが甘やかしたから”などと言われ、”別れた女房になんでこんなにぎゃんぎゃん言われなきゃいけないの”とぼやく夜明さん。オープニングから災難続きだな。

法廷。被告人である道子に無罪判決が下される。弁護人は一ノ瀬圭子。傍聴席にはあゆみちゃん、土屋美鈴、東山たちの姿。

無罪になったのにマスコミに追い回される道子。通りかかった夜明さんのタクシーに乗り込んでマスコミから逃れるが、自宅前で美鈴に待伏せされ、「ほんとはアンタがやったんでしょ」と詰め寄られる。夜明さんが間に入って争いを鎮めるが、またマスコミが集まってきて騒ぎに。夜明さんのタクシーに乗って会津若松を目指す。

道中、警視庁の神谷さんたちの場面が入り、事件に関する説明。
道子の自宅マンションで東都大学助教授 土屋彰一が殺される。道子は同じ大学に勤務する心理学の講師。彰一は美鈴という妻がいるので、美智子と彰一は不倫関係。東山たちは、別れ話のもつれで、道子が彰一を殺害したと疑い、取り調べ。道子は当初否認したが、後に犯行を認めたことから起訴。しかし、道子は公判で再び否認に転じ、凶器も出てこないなど裏付けが弱かったため、無罪判決となった。
道子に、「無罪判決になってよかったですね」と言う夜明さん。あゆみちゃんが道子の教え子で、あゆみちゃんから道子が殺人なんて犯すはずはない、と聞いていたらしい。ここで、夜明さんのいつもの身の上話。

会津若松は道子のふるさと。かつ、別れた夫 栄介と娘 香織が、姑の佐知江と暮らしている土地。今回、会津若松に来たのは香織と会うためでもある。夜明さんは、道子が泊まるホテルに二人を送って、二人とは別れるが、道子が香織に鍵を見せて何か話している様子をチラ見する。

美鈴が栄介の家を訪れ、道子はどこにいるかと問い、ここにはいない、ホテルにいる、と言われてキレる場面から、場面が飛んで、いきなり美鈴がスパナのようなもので殺害される場面へ。
美鈴の遺体は稲城市で発見される。これも東山たちが捜査。

香織の親権を巡って、家庭裁判所で争っている栄介と道子。審判で、栄介が親権者と定められる。
栄介は道子に家に戻ってきてほしい様子だが、道子は、”嫁は家を守る”という考えの佐知江と合わないから復縁は無理、という考え。ここで、道子から栄介に鍵のことを尋ねるシーンが。ただ、シーンとシーンのつながりがよく分からないままポンポン場面が飛ぶので、理解しにくい。

美鈴が殺されたとき道子は福島にいた、ということを夜明さんに確認する東山たち。神谷さんが道子を美鈴殺しの容疑者とみていると聞き、裁判所が無罪と判断した人間をまだ疑うのか、とお怒り模様の夜明さん。



めおと食堂、キタ━(゚∀゚)━!
初登場だと思う


今回、夜明タクシーにチップ箱が設置されている。「こないださぁ、タクシーで引っ越したおばさん、40円くれた」と、東山たちに嬉しそうに話す夜明さん。「40円!」とユニゾンし、微妙な笑顔を浮かべながら、「40円、うれしいですよね。健気な貯金だよ。だけど、その40円ですら、あゆみちゃんの生活費に消えちゃうんだぜ」と話し合う東山たち(やめて差し上げろ)。そして、あゆみちゃんの引っ越しを自分たちが手伝うことになった、という東山の言葉で、あゆみちゃんの引っ越しが現実化したことを知る夜明さん。

あゆみちゃんのおしゃれマンションを訪ねる夜明さん。中には、引っ越しそばを食べている神谷さんたち3人が。引っ越しそばは、神谷さんのおごり。夜明さん曰く、まずい、味音痴、ということらしい。
神谷さんたちが引っ越しの手伝いをしたのは、あゆみちゃんから道子のことを聞こうという下心もあってのこと。神谷さんたちが道子を疑うのは、司法解剖の結果、美鈴の胃の中からニシンそばが出てきたから。ニシンそばといえば会津、さらに、美鈴の遺体は車で運ばれたような形跡もあったことから、美鈴は殺される前、会津にいたのではないか→会津にいた道子に容疑が向けられた、とのこと。

日が変わって、再びあゆみちゃん宅を訪ねる夜明さん。近くを通りかかったからお昼を一緒に食べようと思って、と弁当を持参するけど、本当はあゆみちゃんのことが気になって仕方ない様子。
そんなあゆみちゃんの部屋で、あゆみちゃん以外の人間がシャワーを使っている様子がうかがわれたことから、恋人ができたんだろう、と邪推する夜明さん。シャワールームの扉をダンダンダンと叩いたところ、出てきたのは道子。ここで、あゆみちゃんが夜明さんに「表で100数えてきて」と言うのが、なんとなく好き。

道子があゆみちゃんのマンションにいたのは、殺害現場となったマンションには住む気になれず、引っ越しを探す間、居候をすることになったため。
親権を取れなかった、と聞いて、「警察が誤認逮捕をしたばっかりに。元警察官として謝ります」と頭を下げる夜明さん。第9話でもこういう言い回しがあった。夜明さんの責任感がうかがわれるセリフ。
あゆみちゃんは、あることないことを面白おかしくセンセーショナルに書くマスコミに対して憤慨。「マスコミ社会学科を卒業して、いずれはマスコミに就職する。それが私の夢だったのに、私、こんな世界に入りたくない」と言うあゆみちゃんに、「あゆみが変えればいいじゃない。あゆみがマスコミに入って。諦めちゃだめだよ、逃げたらダメだって。おかしいと思ったら、自分が変えなきゃ」と諭す夜明さん。この言葉は、いずれの世界にも通じるいい言葉だなぁと思う。

道子も、夜明さんの言葉に発奮して真相を自分で突き止めることに。手始めに出版社を訪れ、記者の渡辺に、美鈴の遺体が発見された場所へ案内してもらう。矢島健一さん、マスゴミを具現化したむかつく役。そういう役がとても似合う(褒めているつもり)。
道子は、心理学の観点から、犯人が、彰一の遺体は丁寧に扱い、美鈴の遺体はぞんざいに扱っていたことに着目。「犯行の打ち消し」っておみやさんでも出てきた。犯人は彰一には愛情を、美鈴には恨みを抱いていたのではないか、と推理。

美鈴はストーカーの被害に遭っていた。ストーカーは、長尾哲夫。これまでにも美鈴や道子の前にちらちらと姿を現していたけど、ここで正体判明。
夜道を歩いていた道子とあゆみちゃんの目の前に現れ、「お前が美鈴さんを殺したんだろう!」と道子を襲撃。道子をかばったあゆみちゃんが、左腕を複雑骨折。メイサツキさん、9係でもストーキングされていたなぁ。
翌日、長尾があゆみちゃんが入院している病院にも現れ、あゆみちゃんと道子を再び襲撃。お見舞いのために病院に来ていた夜明さんが駆けつけ、長尾を撃退。往年の狂犬っぷりを彷彿とさせるするどいパンチと上下への打ち分けが素敵すぎる。

夜明さんに、あゆみちゃんへのお見舞金を差し出す二朗。「いや、なんか気持ち悪いなぁ。ここんとこ、売上、落ちてるし」と言う夜明さんに、「なにを、言ってるんですか。それをびっくりロングで取り返すのが夜明さんじゃないですか。夜明さんの凄さは、私も会社もよく知ってますから」と励ます二朗。そんなところに東山たちがやってきて、会津までのロングをは発注。ここで見せる二朗の笑顔が素敵。

東山たちが会津に行くのは、美鈴殺しの犯人は道子ではないか、という疑いを捨てきれず、道子の足取りを調べるため。
香織が優勝したバイオリンコンサートが開催された年月日が、彰一が殺害された日と同じだったことに注目。香織に付き添って栄介も東京に出てきていたことから、彰一殺しと美鈴殺しの容疑が栄介に。栄介が、香織の親権を手に入れるため、彰一や美鈴を殺し、その容疑を道子に向けるように仕向けた、という推理だけど、唐突だな。

土産物屋さんで見つけたおきあがりこぼしのストラップを見て、道子が香織に鍵を見せて何か尋ねていたことを思い出す夜明さん。香織に、道子から何を聞かれていたのか尋ねると、香織は、バイオリンコンクールの日に道子のマンションに来たかと聞かれた、と答える。
道子が最初彰一殺しを自供したのは、香織をかばうため。香織に渡した合鍵が彰一殺しの現場にあったことから、香織が事件に関与しているのではないかと思いこんだ。しかし、香織が持っていた合鍵は栄介の手に渡っており、道子が栄介にそのことを問い詰めたところ、栄介はマンションに行き、彰一の死体を見て驚いてそのまま部屋を出た、と答える。

野口英世の生家で道子の身の上話。道子と一ノ瀬圭子は幼馴染。両親を早くに亡くした道子を圭子の両親が引き取り、二人は実の姉妹のように育った。後に、道子は別の家に養子に引き取られたが、家は近かったので、交流は続いた。道子が離婚をして東京に出た時、就職先として東都大学を紹介したのは圭子。

水子供養で有名な赤坂不動尊で圭子を見かけたことと、東都大学に道子を紹介したのが圭子だったことから、圭子と彰一の間に何か関係があったのではないか、と思いつく夜明さん。これも唐突だよなぁ。で、捜査の結果、圭子が誰かの子を妊娠し、流産していたことが判明。

道子が圭子の事務所を訪問。圭子が不在だったため、事務所内を捜索。彰一殺しの凶器の包丁を見つける。その瞬間、「お姉ちゃん、何してるの」というセリフとともに圭子登場。この場面は怖かった。

埠頭らしいところで圭子の道子に対する告白タイム。彰一を殺したのも、美鈴を殺したのも圭子。自首して、と言う道子に、拒否する圭子。圭子は、凶器の包丁を持って、どこかに行ってしまう。

美鈴の車から圭子の指紋が検出されたことから、ホシは圭子で決まり、指名手配をかけた、という神谷さんからの連絡を受けて、一件落着と安堵する夜明さん。めおと食堂を出たところで、老婦人を品川駅まで乗せる。その老婦人から1000円の心づけをもらい、嬉しそうにチップ箱に入れる。

圭子の遺体が江戸川で発見され、自殺と判断される。

神谷さんが夜明さん宅を訪問。圭子が怪しいと夜明さんが思いついたおかげで圭子に捜査の目を向けることができた、自殺されたのは残念だったけど、事件解決のお礼に、と言って、日本酒を持参。でも、その酒は、1年前のもらい物だった、というオチ。

圭子の遺体解剖の結果、圭子の体内から出てきたプランクトンが淡水性のもののみで、量も非常に少ないことが分かり、遺体発見現場の江戸川近辺の分布と符合しないことが判明。圭子は自殺ではなく、どこかで殺されてから江戸川に運ばれた、つまり自殺ではなく他殺。
神谷さんたちは道子に容疑を向けるが、道子は圭子の死亡推定時刻、品川駅にいた、その証拠にそこで夜明さんが老婦人をタクシーで送っていたのを見た、と供述してアリバイ成立。

二朗のヒントタイム。バス釣りの格好をして会社から出ようとしていたところを夜明さんが見とがめ、会話。二朗から、猪苗代湖は日本一水が澄んでいて藻が少ない、だからプランクトンも少ない、こないだ行ったときは坊主でさぁ、といつもの口調でブチブチ言いながら去っていく。

告白タイム。圭子を殺したのは道子。殺害現場は猪苗代湖。夜明さんが品川に送った老婦人は佐知江。そのことの証明は、老婦人がチップとして渡した1000円札(当時は野口英世だったんだなぁ)に佐知江の指紋がついていたこと。道子を嫌っていた佐知江が道子に協力したのは、圭子が香織に危害を加えようとしたから。
圭子が道子に罪を着せようとしたのは、彰一を奪ったことをきっかけに、昔からの愛憎・嫉妬が表出してしまったから。「いつも一緒だって言ったのに、いつもお姉ちゃんだけがいい思いをしてる」。
幼馴染の愛憎というよくあるテーマだけど、「お姉ちゃんは、私と同じでないと、いけないのよ」という言葉が、殺人者という立場にもかかっていて、この点は面白かった。

エンディング。「私、マスコミに就職する。私が変えてみせる」と力強く宣言するあゆみちゃん。「ずーっとそんなこと言って、結局、フリーターじゃない」とからかうけど、嬉しそうな夜明さん。「病院で助けてくれたとき、うれしかったなぁ」「当り前じゃない。親が子供、助けんのさ」の流れから、もうちょっと助けてほしい、就職するか永久就職するまで、と言うあゆみちゃんに、永久就職はダメだからね、と返す夜明さんでエンド。


場面場面のつながりが分かりにくいのでストーリーが理解しにくく、犯人が唐突で証拠も薄いように感じる。だからストーリーはいまいちだと思う。でも、今回は、1時間を過ぎるまでゲストヒロインが何の犯行にも関与しておらず、屈託なく捜査をしているという意味では珍しい回。「お姉ちゃんは、私と同じでないと、いけないのよ」という言葉の皮肉は面白かった。

エンディングテーマ。Kiroro 「もう少し」

「東京〜飛騨高山 2人の母の殺意が交差した!?」 (2005年)

 

(ゲスト)

松川希美子…美保純、 若林朝江…野村真美、 若林慎一…穂積ぺぺ、 若林美奈…小池里奈、 石黒勝之…篠塚勝、 藤井和男…四方堂亘、 石黒佳代…光井みほ、 石黒真弓…斉藤レイ、  沢昌三…誠直也

 

 

オープニング。今回以降、蓉子さんが単独でコントを担当。

夜明さんのタクシーに乗り込んできた蓉子さん、行先は、「西」。占い師から「西に行ったら神社があるから、そこで手を清めて口を漱いで二時間ほど静かに過ごしなさい。そしたら、あなたの運が開ける」と言われたらしい。

仕方なく言われるまま西に向かう夜明さんだけど、いつまでたっても神社は現れない。「このまま行ったら、平安神宮着いちゃいますよ」と夜明さんの皮肉も冴える。でも、ついに神社が現れ、蓉子さんは「ありがとう、運転手さん!」と言ってチップをはずみ、喜び勇んで神社に突入する。その後ろ姿がいかにもおばちゃんおばちゃんしてて、好き。

 

路上で手相占いをしている希美子。藤井に絡まれ、逃げた先の店で夕飯を食べている夜明さんに遭遇。

希美子は12年前に殺人を犯した。それを逮捕したのが夜明さん。藤井は希美子が殺害した被害者の弟。夜明さんは藤井に、希美子に付きまとうのを止めるよう注意するが、藤井は逆切れ。

 

タクシーで希美子を自宅まで送る夜明さん。希美子は「夜明さんがタクシーの運転手さんを知らなかった」と話す。

 

希美子の部屋が荒らされており、壁に「殺す」の文字が。

夜明さんは、「藤井が希美子に嫌がらせをしている。藤井を逮捕しろ」と東山に電話をするが、神谷さんから、”盗犯事件が起こったからといってこっちに連絡されても困ります。証拠もないのに逮捕できるわけないでしょう”とガチャ切りされる。それはそうだ。

 

荒らされた部屋は怖い、岐阜の飛騨高山へ行ってもらえないか、と言う希美子の願いを聞いて、岐阜へロング。

 

希美子は12年前、石黒勝之と不倫関係にあり、石黒の子を妊娠。石黒は、代々造り酒屋をやっていた佳代と結婚したが、入り婿で頭が上がらない不満から不倫に走ったということらしい。

夫の不倫に気づいた佳代が希美子のアパートを訪ね、「夫の子は産ませんよ」と包丁を片手に修羅場。もみ合っているうちに包丁が佳代に刺さって、佳代死亡。

希美子は懲役5年の刑。これに大反発していたのが藤井。刑が軽すぎる、姉を裏切った石黒も同罪だ、と二人を深く恨んでいた。

 

希美子は刑務所に入る前に娘 清美を出産。石黒は希美子に、希美子が出所するまで娘は大切に育てると約束したが、それからまもなく、希美子に何の連絡もせずに飛騨高山の酒屋を手放し行方をくらましていた。石黒に会えなくてもいいが、娘には会いたい、と語る希美子。

 

若林朝江の店を尋ねる希美子。朝江は希美子の中学時代からの親友。希美子が刑務所に入っている間も何かと気にかけ、励ましていた。

折に触れ、清美の様子を見に藤井の家を訪ねていたが、藤井は、清美を引き取ってからわずか2カ月で失踪。町を出ていく藤井を目撃した人がいたが、その時には、藤井は清美を連れていなかった、とのこと。

 

営業所に岐阜に一泊してから帰る、と電話をする夜明さん。これを受けるのが初登場の二朗。今作から、二朗が係長に。しょっぱなからテンポがおかしくて笑う。

 

で、今は、戻りの途中ですか?

え、ええ、ええ、えー!岐阜に泊まる。

それじゃ、ロングバケーションじゃないですか!

 

 

飛騨高山での清美に関する情報収集。藤井の友人  古屋登志男は、藤井が失踪する前に、藤井は、”飛騨高山にいたら石黒に殺されるかもしれない。だから家を売り払ってどこかで事業をやるつもりだけど、なにをやるにしても、 清美 が邪魔だ”と言っていた、と語る。

 

夜明さんの手相を見る希美子。「どうして刑事をお辞めになったのですか」の件はここに挿入。

さらに、「次の結婚があるとしたら、そろそろかもしれませんよ」という希美子に、「それより、金運はどうですか」と言っちゃう現金な夜明さん。「あんまりよくありませんね。近々、出費で苦労されるかもしれません」と言われ、「やっぱり」と呟くんだけど、その「やっぱり」は、やっぱりあゆみちゃんのことですよね。

 

翌朝、夜明さんは、岐阜で 清美 に関する情報収集を続けるという希美子と別れて東京へ戻ろうとする。しかし、希美子と別れた直後、悲鳴が聞こえ、希美子が何者かに車で誘拐されるところを目撃。

タクシーで追いかける夜明さんだけど、途中で見失い、気づいたら車のフロントガラスに「警察には知らせるな 東京に戻って連絡を待て!」のメッセージが。これ、いつのタイミングで置いたのか、よく分からない。

 

夜明宅の電話に逆探知の装置が取り付けられ、沢さんをはじめ岐阜県警の刑事が夜明宅に待機。そこへ神谷さんたちが登場。夜明さんが神谷さんを「だから言ったろ!こんなことになる前に、藤井の身柄を押さえろって!」と怒鳴りつけるのを聞いて驚く沢さん。「大丈夫です。夜明さんは、ちょっと特殊な民間人ですから」という東山の解説が好き。

犯人から夜明さんに電話。3000万円を持って東品川へ来い、という指示。身代金の要求があったことから、藤井の恨みによる犯行という線ではないのではないか、と言う国代に、”藤井は石黒、希美子だけではなく夜明さんのことも恨んでいた、だから夜明さんに身代金を要求した”と解説する東山。3000万円なんて夜明さんにあるわけない、と言う国代に、「あるわけないよ。3000円で苦しんでんだから。だから嫌がらせになるんだろう」と失礼で的確な解説をする東山。

”おまえがきちんと仕事をしなかったからこんなことになった、だからお前が3000万円を払え”と神谷さんに無茶ぶりする夜明さん。バカ言わないで下さいよ!と怒りながらも結局、ダミーで3000万円を用意することに。

 

そんな夜明さんたちのゴタゴタをよそに、監禁場所から自力で脱出し、保護される希美子。そして、希美子が脱出するした時刻と同じころ、石黒も殺される。

 

石黒は、東京で再婚しており、その妻 真弓は、藤井のことを含め、石黒の昔のことを何も知らない様子。真弓が知り合った頃、石黒は子どもを連れていなかった。

 

希美子が入院している病院へ見舞いに来る朝江。朝江は、高校卒業以降、希美子と会っていなかったが、東京の産科クリニックの母親学級で、偶然、再会する。でも、これは偶然が過ぎると思う。

それから、希美子が占い師に手相を見てもらっていたときに、「田舎はどこなの?」「岐阜です」という会話があり、それを石黒がそばで聞いていて、同郷のよしみで希美子に声をかけ不倫関係に、という馴れ初めもすごく雑な気がする。

 

銀行ATMから大金を引き出して、悪そうな顔で誰かに「一度会いたいんだけど」と電話をする真弓。恐喝フラグ。

 

夜明さんが家に戻ったら、あゆみちゃんが椅子にぼーっと座っている。いつもはご飯の支度をしてくれるのに、今日はしていないので、「ごはんはー?」と夜明さんが聞くんだけど、就職活動のために着ているスーツが汚れるから支度はしない、との回答(この「ごはんはー?」の声がかわいらしくて大好きだ(細かすぎて伝わらない))。

あゆみちゃん、あまりに就職活動がうまくいかないので、占い師に占ってもらったらしい。そうしたら、西村あゆみはあまりよくないけど、夜明あゆみなら、想像力に溢れ、仕事に恵まれる、という結果が出た、だから、就職するまで、お母さんと再婚してくれないか、と言い出すあゆみちゃんがアホかわいい。

 

藤井が逮捕されるが、希美子の誘拐、石黒の殺害、いずれも否認。藤井の供述に沿って裏を取ったところ、アリバイが証明されたため、藤井は釈放される。

 

藤井を釈放したことを夜明さんに報告する東山。希美子に話を聞きたいんだけど、病院を退院してから自宅にも戻っていない、希美子がどこに行ったか知らないか、と東山が夜明さんに尋ねたところへ、「どうも、すぐ夕飯作りますね」と夜明宅へ帰宅する希美子。

そこから、東山たちによる夜明さんへの事情聴取。「正座ー!」と正座させられ、事情を説明させられ、あゆみちゃんにチクられるのを必死になって止める夜明さんがかわいい。

 

うん、あのー、部屋が荒らされたままで、帰るのが怖いって。

で、引っ越し先を探すっていうから、それが決まるまで・・・

(ここで、というように手をフリフリ)

 

ちょっとちょっと、やめようよ。やめよう。

 

 

夜明さん宅で希美子の身の上話。5歳の時、郡上踊りのお祭りの夜、希美子の両親が一家心中。希美子一人が生き残る。泣き叫ぶ幼子に一切構わず踊り続ける大人たちがかなり怖い。それ以来、郡上踊りを見ていない、いつか夜明さんと一緒に郡上踊りを見たい、という希美子。

 

20年働いてきてなんで会社をクビになんなきゃいけないんだよう、と嘆く乗客に深見さん。

 

石黒の預金口座に毎月50万円の振り込みが会ったことが判明。さらに、石黒が殺された日に、全額引き出されていたことも分かる。

引き出したのは真弓と思われたが、真弓は朝江の父親の病院に顔を出した後、殺害される。

 

真弓が殺されたことで、石黒を奪われたことにより真弓を恨んでいるであろう希美子に容疑がかかる。そのことを東山が夜明さんに説明し、捜査のために岐阜に行く、と口走ったものだから、「意味が違います。意味が違います」という抵抗もむなしく、夜明さんのタクシーで岐阜へ行くことに。

 

東山たちの捜査により、戸籍上は、 清美 は生後3カ月で死亡していたことが分かる。診察した医師に聴き込みに行ったところ、死因はSIDS。過失や虐待の跡はなかったとのこと。

しかし、東山たちは、両親を心中で亡くし、引き取ってくれた叔父もなくした希美子は、家族に対する思い入れが強い、唯一の家族である清美を病気とはいえ死なせてしまった石黒に対する恨みは大きなものだったのではないか、と考え、希美子への容疑を深める。

 

タクシー代を支払いに夜明さん宅を訪問する神谷さん。こういうところはすごく律儀。神谷さんは、希美子が怪しい、夜明さんが希美子に会ったのは偶然ではなく、夜明さんは希美子に利用されたのでは、と言うが、夜明さんはいつものように反発。

 

乗客の女子高校生二人組が占いの話で盛り上がっているのを聞いて、ピンと来た夜明さん。あゆみちゃんを呼び出し、姓名判断をしてもらった占い師が誰だったかを聞いたところ、銀座の姫、こと、松川希美子。希美子はあゆみちゃんから、夜明さんが現在タクシー運転手をしていること、食事をする場所、休憩する場所など、様々なことを聞き出していた。さらに、希美子の誘拐で、希美子の腕にできたロープの痣がおかしかったことにも気づく。

 

希美子が占い師をしていたのは石黒を探すため。占い師をしていれば、占いが好きだった石黒と会えると思ったから。石黒に会おうとしたのは清美が本当に死んだのか、なぜ死んだのかを確かめるため。

石黒に会って問いただしたら、病気で死んだ、仕方なかった、と言いながら逆切れされたので、希美子は石黒の殺害を決意。それを朝江に話すと、朝江は積極的に協力を約束。希美子の部屋を荒らしたのも、希美子を誘拐したのも朝江。石黒は、どこか遠くへ呼び出して希美子が殺害する、という計画だったのに、希美子が監禁されていた場所の近くで朝江が殺害。真弓を殺したのも朝江。

朝江が石黒と真弓を殺したのは、現在、朝江の娘 美奈として育てられている子供が実は清美だ、ということをネタに恐喝されていたから。赤ん坊の頃亡くなったのは 美奈 、石黒が清美を邪魔と思っていたことを知っていた朝江は、亡くなった美奈と清美の交換を石黒に持ち掛け実行。

 

美奈 =清美を巡っての希美子と朝江のやり取りに、非常なゆがみを覚えて、モヤモヤする。だから、希美子と朝江が抱き合って泣いているのを見ても、素直に、そうだねぇとは思えないんだよなぁ。 美奈 =清美を人殺しの子にしたくなかった、というのは分かるんだけども・・・。だけど、 美奈 と希美子の場面はよかったかなぁ。

 

 

エンディング。あゆみちゃんと二人で歩いているところへ「もしもし、そなた、そこの人」と道端の占い師(梅津栄さん)に呼びかけられる夜明さん。「そなたって、俺?」「お顔に女難の相が出ておりまするぞ」「女難の相って、なに時代劇みたいなこと言ってんの。女難の相ってよく言われんの。(あゆみちゃんを指さしながら)金運もないって言われんの」。ここまでの流れが大好き。梅津さんがいいなぁ。

「何それ、全部私のせい?ひどい」と怒って先に歩いて行ってしまうあゆみちゃん。そんなあゆみちゃんを指さしながら「仕事の線、ありますかね、あの子」と聞いたら「きれいですもの、ありますぞ」という回答が返ってきて、ニコニコしながらからかうように「きれいだって」とあゆみちゃんに言う夜明さんが大好きだ。

 

 

ストーリーの根幹である希美子と朝江の物語のゆがみが大きくて、ちょっと入り込めない。東山と夜明さんのやり取りとか、あゆみちゃんと夜明さんのやり取りとか(特にエンディング、梅津さんも含めてとても好き)大好きだし、栄えある二朗初登場回なんだけど、ストーリー的にはいまいち。

 

エンディングテーマ。Kiroro 「もう少し」