「 死体を連れた幻の乗客!? 」 (2004年)

 

(ゲスト)

枝本美弥子…中原果南、 枝本君江…岡田茉莉子、 枝本明彦…池田政典、 原田比呂美…嘉門洋子、 仲倉新治…小沢和義、 安永泰三…野口貴史、 初老の男…三田村周三、  小出規夫…渡辺哲

 

 

オープニング。蓉子さんのみ復活。

乗車した初老の男性(三田村周三さん。十津川班の一員。好きだったけど、途中からいなくなってしまった)から、「娘が夫を亡くして悲しみから立ち直ってくれない。再婚を勧めても断るばかり。亡くなった夫というのが運転手さんにそっくりなので一度お見合いをしてくれないか。これは運命だ。親の口から言うのもなんだが、娘は器量よしで・・・」という内容の話をされる。

男性を家まで送ると出迎えたのは噂の娘。演じるのは蓉子さん。見たとたんに夜明さんが「運命なんて、親子で何言ってんの。ちょっと、器量がいいって、なに、どうしたの?」と言うのが、ひどいけど面白い。

 

離さない、会いたかった、会いたかった!

 

夜明さん逃走

この場面を見るといつも「牛方とやまんば」を思い出す

 

 

再婚はしないだろうな、と言いながら、なんだか寂しくなった夜明さん。あゆみちゃんに電話すると、どこに旅行に行くかでお母さんと喧嘩をしている、という話が。「旅行の行先で喧嘩してんの?こっちさ、必死になって養育費稼いでんだよ」という夜明さんが健気すぎて泣けてくる。

「お願いがあるの~」と言い出したあゆみちゃんに、「お願い?!ちょっと待って、ちょっと待って。お前のお願いで、お金のかからなかったお願いないから。切るね、切るね、切るね、切るよ!」という夜明さんが必死すぎて泣けてくる。でも、なんとなく笑顔なのがいい。

 

枝本美弥子は、京都の老舗料亭「枝もと」の若女将。夫の枝本明彦と東京出店の準備をしている。

明彦は翌日まで東京に残り、美弥子だけが新幹線で京都に帰るために店を出ると、仲倉新治が待伏せ。

 

仲倉は、強盗殺人で指名手配されている容疑者。金沢県警の小出さんが警視庁を訪れ、「仲倉が東京で目撃されたので、協力してほしい」との依頼。

小出さん=哲さんがとてもいい味を出している。三年間、仲倉を追い続けて、「東に出たと聞けば岩手へ飛び、西に出たと聞けば行って博多で捜査をする。雨にも負けず、風にも負けず」

 

愚直というかなんというか

東山と国代の無言の後頭部に可笑しみがある

 

 

夜明さんは優秀な刑事、と先輩から聞いた、是非、会いたい、と言う小出さん。「その人物は、もうここにはいません」「どちらの部署に?」「部署的には・・・車両係」「東山」のやり取りが好き。

 

仲倉が殺害される。

 

美弥子が夜明さんのタクシーに乗り込んでくる。行先は京都。明日の朝早くからお世話になった方のお葬式を手伝わなければならないので、どうしてもそれまでに京都に帰りたい、とのこと。

道中、お互いの身の上話。夜明さんはこの時点でタクシー運転手歴12年。このころはまだ、実際の時間とドラマの時間が同じだったんだなぁ。「警視庁で刑事をやっていました」「失礼ですけど、なんでお辞めになったんです?」のやり取りも。

 

京都に無事到着。ちょっと寝て、翌日の朝までに帰社すればいい、と言う夜明さんに、「うちでお休みになりませんか?」と勧める美也子。老舗料亭の広い部屋にちょっとはしゃぎながら、夜明さん就寝。

大女将の君江は、美也子がタクシーで帰ってきたことに「締めるところは締めてもらわんと」とご立腹。

 

仲倉殺害の捜査に当たる東山たち。小出さんは、三年間追い続けた仲倉が死んで、茫然自失。でも、仲倉が所持していたグルメ雑誌に掲載されていた美也子の記事を見て「その女は?!」と驚く。

 

夜明さんに京都の町を案内する美也子。一見さんお断り、は、京都の花街では女性が経営している店が多く、客とのトラブルをできるだけ避けるための生活の知恵、という薀蓄。

 

縁切り縁結び碑の穴をくぐって楽しそうな夜明さんと、それを楽しそうに見ている美也子。そこへ通りかかる比呂美、訳ありなオーラを振りまく。ザ・嘉門洋子な感じ。

 

一条戻橋まで来たところで、そろそろ帰る、と言う夜明さんを、せめて夕食だけでも食べていってほしい、と引き留める美也子。どうしてそんなに優しくしてくれるのか?と尋ねる夜明さんに、美也子は、「昨日、タクシーを何台も止めたが、京都まではちょっと、と断られ続けた、本当に困っていたところを夜明さんに救われたから」と説明する。

 

美也子お手製の夕食を食べているところへ、美也子を訪ねて東山・国代・小出さんがやってくる。ちらっと目に入るオレンジ色のタクシーに、「自分、なんか嫌な予感するんですけど」「まさかな、ありえない」と話しているところへ、夜明さん登場。「どうして、夜明さんが、ここにいるんですか?」「どうしてお前が、そこにいるんですか?」「そうですかぁ、あなたが夜明さん!」「そうだけど、あんた、誰?」のカオスっぷりが楽しい。

 

東山たちが来たのは、仲倉殺害事件に関する捜査のため。美也子は、殺害される直前の仲倉と会ったが、会っていたのは5分くらいで、自首してほしいという話をして別れた、と語る。

美也子への聴き込みが終わった後、夜明さんから東山たちへの事情聴取(タクシーの後部座席に3人押し込まれたうえで)。仲倉は、金沢で桑原シュウイチという老人の家に押し入って桑原を殺害。200万円を持って逃走。小出さんたちが仲倉の家を訪ねた際、対応に出たのが美也子。当時、美也子は仲倉と同棲し、仲倉の子を妊娠していたが後に流産。とここまで説明したところで、ギューギューづめで押し込まれていたことに、「すいません、そろそろ出ていいですか、ボーっとしてきちゃった」と発言する東山が面白い。

 

で、外へ出て、タクシーの外で話すんだけど、雲がすごくきれい。おみやさんでもこんな感じの雲が出ていた回があったなぁ。

狭苦しいタクシー内からの解放感

 

 

仲倉が殺害されたのは午後8時から10時の間。美也子が仲倉と会ったのは8時半ころ。夜明さんが美也子をタクシーに乗せたのは、10時ころ。美也子には十分犯行が可能、ということで美也子を疑う東山たち。「彼女はそんなことができる人じゃない」といつものように、美也子をかばう夜明さん。夜明さんは、美也子を守るため、東山たちの聴き込みに帯同。

 

君江からの事情聴取。美也子は3年前から枝もとの仲居をしていた。2年前、明彦は比呂美と付き合っていたが、別れて、美也子と結婚。美也子は結婚する前に、仲倉との過去を告白していた。

明彦は、美也子と結婚した後も、比呂美との関係を継続。比呂美は、探偵を雇って何かを調査している様子。「きっちり、思い知らせてやるわ」と不穏なことを言う、ザ・嘉門洋子。

 

夜明さん宅での捜査会議。美也子が仲倉とあった後、夜明さんのタクシーに乗るまでの空白の時間が気になるという東山に、物証がないし、仲倉との関係を明彦や君江に告白しているんだから動機もない、と反論する夜明さん。

聞きたいことを聞くだけ聞いて、「帰っていいよ」と言う夜明さんに、ブツブツ文句を言いながら帰る東山たちだけど、宿なしの小出さんを夜明宅へ置き去りにする、という形でリベンジ。

 

( ˘ω˘)スヤァ…

 

そして、かわいいエプロン姿で朝食cooking

 

 

奥さんが旅行先の京都で交通事故に遭ったのですぐに駆け付けたい、というお客さんを乗せて一週間に二度の京都ロングをゲットする夜明さん。

 

訳ありげに興信所の報告書を持って外出し、場面が切り替わってすぐに殺害される比呂美。

 

お客さんを送ったついでに、京都の枝もとを訪ねる夜明さん。美也子と一緒に京都の町を歩いていると、舞妓さんに扮したあゆみちゃんに遭遇。冒頭でもめていたお母さんとの旅行の行先は、京都になった、とのこと。お母さんは芸妓に化けている、と言われ、元妻が来る前に夜明さん逃走。

 

見返り美人だったのに・・・

 

驚きのあまりの変顔

 

 

美也子から夜明さんへ、帰りのタクシーに乗せてほしいとの依頼。骨とう品を東京店に運びたいのだが、前回、運送屋へ頼んだら、傷がついていた、今回は、タクシーで運んだ方がいいのではと思っていたところへ、ちょうど、夜明さんが来た、との話。

重くて大きな段ボール箱をトランクに入れ、美也子は手にツボの箱を持って、京都から東京へ。

 

晴海ふ頭で比呂美の遺体が発見される。死亡推定時刻は前日の午前中だが、朝には比呂美は京都にいた、と会社の部下が証言。美也子はそのころ京都に、明彦は東京にいた。

 

比呂美を明彦に紹介したのは、枝もとに出入りしている着物作者の安永。比呂美を捨てて美也子と結婚した明彦には憤りを覚えている様子。東山たちの聴き込みに、比呂美は最近、何度も金沢に旅行をしていた、と証言。

 

夜明さん宅での捜査会議。比呂美の死斑の出方から、比呂美は晴海ふ頭で殺されたのではなく、京都で殺されて、車で東京に運ばれた疑いが濃厚。神谷さんは、夜明さんが美也子とともに京都から東京に運んだ荷物が、実は比呂美の遺体だったのではないか、と推理。夜明さんは、自分は元刑事なんだから、持った荷物が遺体かどうかくらい分かる、と主張。

で、いつもの喧嘩。「夜明さんは、私情でものを言っているだけじゃないですか」「なにぃ」「いつもは冷静に事件を見るのに、どれだけ美也子に優しくされたか知らないけど、私情をはさむなんて、夜明さんらしくないですよ!」って神谷さんは言うけど、私情をはさまない夜明さんの方が珍しいから。

 

比呂美の遺体のそばにあったたばこの唾液を鑑定したところ、明彦のものと一致したことから、比呂美殺害の容疑者として明彦が逮捕される。明彦は否認。午前10時ころ、タクシーに乗った、そのタクシーを探してもらえれば、アリバイが証明できる、と主張。

 

雨の中、夜明さん宅前でたたずんでいる美也子。帰宅した夜明さんが美也子を家の中に入れ、きれいなタオルを渡し、暖かいものを作ろうとガスに火をつけるところまで流れるような作業。夜明さんの生活感が出て、いい。

美也子が待っていたのは、逮捕された明彦を助けてほしいと頼むため。このときの中原さん、すごく儚くて、守ってあげたくなる。これが初めての中原さんだったので、9係のシーズン11「カラフルな殺人」に出てきた彼女を見た時、かなりな衝撃を受けた。女優さんって、すごいな。

 

夜明さんが東山たちを引き連れて、品川駅でタクシー運転手に聴き込みをし、明彦が主張するアリバイの裏付けをとる。明彦は釈放されるが、美也子に対し、比呂美との仲が続いていたことを告白。

ショックを受けた美也子が夜明さん宅を訪問。夕食を作って、夜明さんに振る舞い、身の上話。美也子は仲倉の事件の後、金沢にはいられなくなり、逃げるように京都に来て、戻り橋でしゃがみ込んでいたところを明彦に救われた。結婚するとき、仲倉のことを告白し、明彦はかまわないと言ってくれたけど、心のどこかで許せず、比呂美と続いたんだろう、自分には明彦を責める資格はない、と言うが、「三年前、あのとき別の出会いがあったら、私の人生は、また違うものやったかもしれませんね」と夜明さんをジッと見つめ、儚いオーラを出す美也子。

そんないい雰囲気になったところへ、あゆみちゃん乱入。そそくさと帰る美也子。「今日、泊めてもらおうと思ったけど、やめとこっかな」「どうして?」「お化粧の匂いする」「そお?」「別に、いいですけどね。お父さんが誰と付き合おうと、お父さんの人生だもんね」「嫌味な言い方、そんなんじゃないよ」「じゃあ、どんななの?こんなの作ってもらっちゃってさ。これ食べ終わったら、私が作るのも食べてよね。せっかく買って来たんだから」「もちろん、食べますよ」。この会話と、会話のあと、ドスっと夜明さんを突き飛ばすあゆみちゃんまでの父娘感が大好き。

 

捜査のため、再び京都へ。神谷さんの指名で、夜明さんのタクシーで。

安永から、明彦と美也子との結婚を巡って、比呂美が君江とももめていた、君江が若い頃着ていた着物が加賀友禅である、との情報を得、比呂美の部下から、比呂美が探偵を雇っていた、との情報を得る。

 

比呂美が金沢で何を調べていたのかを調べるため、夜明タクシーで京都から金沢へ。東山たちは宿の心配をしていたけど、結局、男三人で車内泊に落ち着いた模様。

小出さんの案内で、美也子が仲倉と住んでいたアパート、及び、美也子の友人を訪問。美也子の友人は、”美也子は素晴らしい女性だけど、男運がない。仲倉は初めは優しかったが美也子の金を持ち出すなどろくでなしだった、美也子は仲倉と別れて一人で子供を産んで育てようと決意していたのに、流産をしてしまい、とても悲しんでいた”と語る。美也子の人生にやましいところはない、と勢いづく夜明さん。

 

仲倉が殺害した桑原シュウイチの弟のところへ、新聞記者を名乗る男が訪れていたことが判明。弟いわく、自分たち兄弟の父は色街で店をやっていたので、昔、自分たち兄弟は、ひがし茶屋街に住んでいた、そのころのことを聞かれた、とのこと。

ひがし茶屋街のお店で休憩をして、東山たちは京都に電車で戻って再調査をする、小出さんは新聞記者に関して調査をすることに。一人残った夜明さんが店を出るとき、京都の枝もとで見た招き猫と似た招き猫を発見。加州猫寺の薀蓄がひとしきり。

 

京都の枝もとにあった招き猫は君江が買ったもの。君江は夜明さんに、美也子は明彦と一緒に枝もとを守っていかなければならない大事な若女将、これ以上近づかないでほしい、とお願い。さらに、美也子に枝もとの女将が使っていた羽織を渡す場面を夜明さんが目撃。

 

桑原弟のもとに現れた自称記者は、ある女性のことを調べていた。昭和32年、ひがし茶屋街に住んでいた頃、桑原シュウイチが惚れこんでいた、当時19歳のスミエという赤線の芸者。スミエは、店の金を持ち逃げして行方をくらませた。比呂美が雇っていた探偵も、スミエのことを調べていたと思われる写真が残っていた。写真の姿かたちから、スミエは君江。比呂美が調べていたのは、君江の過去だったことが判明。

 

ヒント要員に山田アキラさん。夜明さんのタクシーに乗って、たばこを吸いながらうたたね。たばこ、たばこで、比呂美の遺体のそばに落ちていたたばこに思いを巡らせ、真相に到達。

 

比呂美が脅迫していたのは美也子ではなく君江。君江が昔、金沢の赤線で働いていたこと、店の金を持ち逃げしたことを週刊誌にばらす、それが嫌なら、美也子を追い出し、頭を下げて自分を迎え入れろ、と脅迫。

それを聞いた美也子が、君江をかばうために比呂美を殺害。君江は美也子をかばうため、美也子は夜明さんと一緒に行動させた上で、比呂美の遺体を車で東京へ運んだ。

仲倉を殺したのは君江。美也子が仲倉に会ったとき、君江はそばでその様子を立ち聞きしていた。仲倉から、金を出さないと美也子は人殺しの子を宿した女という噂を町中にばらまいてやる、と言われ、殺害。

表向きは君江が美也子につらく当たっているように見えたが、実は、君江は、自分と似た境遇の美也子にシンパシーを感じ美也子のことを大切に思っていた。美也子は美也子で、自分を救ってくれたのは明彦ではなく実は君江だということを知っており、君江のことを大切に思っていた。お互いがお互いのことを大切に思い、相手を守るために、殺人を犯した。「あんたは私なんえ、四十年前の、私なんえ」と迫力の演技にのまれていい場面のようにも感じるけど、周りの風景が明るすぎるのが難。

 

夜明さん宅で、神谷さんとしみじみ飲んでいる夜明さん。「いい女だったんでしょうねぇ。忘れた方がいいですよ。夜明さんは、幻を見たんですよ」と言う神谷さんに、「神谷、人生、何度もやり直し、聞くよな!」と明るく返す夜明さん。

あゆみちゃんはあゆみちゃんで、「再婚していいんだからね」と優しいことを言うけど、旅行の話では旅行代は出してねという話になり、「自分の旅費くらい、自分で払えよ~」と言う夜明さんに、「じゃあ、結婚資金はお願いね」と意味深なことを言い、夜明さんを動揺させて、エンド。

 

 

どこの馬の骨とも分からない嫁を嫌っている老舗料亭の大女将が、実は自分も同じような境遇で、嫁のことを大切に思っており、嫁のために殺人を犯した、嫁は嫁で、夫のために姑のいびりに耐えているのかと思いきや、夫よりも姑の方を大切に思っており、姑のために殺人を犯した。こういう構図は面白いと思うけど、君江と美也子の関係が、それほど「いがみ合っている嫁と姑」とは見えず、かといって逆に、実はお互いに大事に思っていた、という肚も見えず、メリハリがなくて、物語の筋がはっきりしない印象。桑原の話も偶然が過ぎるし、昭和30年代からの因縁というのも、浅見光彦っぽくてタクドラには合わない気がした。

だけど、さしはさまれる会話やコントは面白く、中原さんの儚げな様子や哲さんの愚直な愛嬌も、とてもよかったから、好きな回。

 

エンディングテーマ。Kiroro 「もう少し」