「 刑事が愛した女 」 (2001年)

(ゲスト)
村井早智子…細川直美、 城山賢造…本田博太郎、 城山満寿美…岡まゆみ、 野上克夫…本城丸裕、 三沢房子…紅萬子、 神崎みどり…秋元彩香、 神崎志津子…大塚良重、 奥田…深水三章

オープニング。タクシーの車内は狭い密室、風邪っぴきのお客さんを乗せると運転手さんも風邪をもらってしまう、ということを、深見さんと、蓉子さんの、ドリフばりの風邪コントで再現。蓉子さんの薬ぶちまけがひどかった。

深見さんと蓉子さんのせいで、夜明さん風邪で発熱。あゆみちゃんに病院に行くよう言われても、「寝ていれば治る」「病院は嫌い」とかわいらしいことを言って拒否。でも、寄る年波には勝てず、安静にしていても熱は上がるばかりだったので、観念して病院へ。

夜明さん、城山総合病院で早智子と遭遇。早智子は、その病院の看護師(当時は看護婦)。かわいらしくて優しい早智子に「病院も、悪くないっすねぇ」とセクハラじみたオヤジ発言をする夜明さん。その発言の罰が当たったのか、がさつそうなお局風おばちゃん看護師にチェンジして雑に扱われる。気の毒だけど、仕方ない。

病院を出たところで東山に遭遇。看護婦さんとデートで待ち合わせ、とのこと。言ったらひかれると思ってか、まだ刑事ということは話していないらしい。
お局風おばちゃん看護師の顔真似をして爆笑しながら「こんなんだろ」と東山をからかう夜明さんと、「なんでそんな不細工なイメージなんですか」と冷静に突っ込む東山が面白くて、かわいい。渡瀬さん、笑うとき声が高くなるんだよなぁ。
夜明さんのそんなからかいに反して、東山の恋人は早智子。あのかわいい看護師さんが!とばかりに言葉が出なくなる夜明さん。本作の細川さん、本当にかわいらしい。東山とお似合いのカップルなんだけども・・・。

居間で電気もつけずぼーっと座って機能停止している夜明さん。あゆみちゃんがお母さんお手製のお弁当を持ってやってくる。「お母さん、心配してたよー」というあゆみちゃんの言葉にうれしそうな様子を見せながら食べる夜明さん。あゆみちゃんも、お母さんの料理をお父さんが食べている、ということ自体が嬉しい様子。
そんなほのぼのした雰囲気が、「あいつ、俺のこと、心配してた?」という夜明さんの質問に対する「きまってるじゃない。お父さんにもしものことがあったら、養育費もらえないって、そりゃもう、お母さん心配して」という回答で台無しに。「俺の心配してないじゃん、養育費の心配してんじゃん」と拗ねた夜明さん、お弁当に蓋をして差し戻す。あゆみちゃん、もうちょっと言い方というものがあるでしょ!

横浜辺りと思われる場所でデートをしている東山と早智子。東山はそれまで自分を「公務員」としか言っていないため、早智子は東山を「区役所の職員」と誤解している。夜明さんから「(刑事って)言えばいいじゃない」と発破をかけられたこともあり、早智子に公務員は公務員でも区役所職員ではなく刑事だ、と告白する東山。ここで早智子がかなり驚く、というよりも、動揺する表情を見せるのは、伏線だったのかな。
「刑事と知ったうえで付き合ってほしい」と東山が話した直後にかかってくる呼び出しの電話。早智子が勤めている城山総合病院の院長、城山賢造の娘 江梨が誘拐された、という連絡。

身代金は1億円。それを、城山と早智子がタクシーで運べ、というのが犯人の指示。神谷さんから夜明さんに、身代金運搬タクシーの発注。行先は、つどつど犯人から携帯電話で指示があり、最終的には神戸が目的地となる。
その間、捜査本部では、江梨の行動をよく知っており、身代金の運搬役に指名された早智子が、誘拐犯の共犯ではないか、という意見が出る。

次の指示は翌日の朝に出す、という犯人からの連絡があったため、ホテル(有馬ビューホテル)で一泊する一行。
犯人の目がどこにあるか分からないから、と、変装をして夜明さんの部屋に入ってくる東山と国代。

洋風と和風

鍋の蓋を開けようとした国代へ、夜明さんの「まだ!」という言葉と制裁。どこかのインタビュー(「十津川警部が見た風景」だった記憶)で鍋奉行、とおっしゃっていたから、夜明さんというより、ここは渡瀬さんなのかもしれない。

鍋奉行降臨


捜査本部で早智子を疑う声があることから、東山が早智子と付き合っていることを「まずいですよ」と言う国代。反発する東山と喧嘩になりそうなところへ、話題をそらすためか、夜明さんが東山に早智子とのなれそめを聞く。
出会ったのは、東山が盲腸で入院したとき。忙しく、きつい仕事であるにもかかわらず、患者にはいつも笑顔で接する早智子に惹かれ、退院が決まった時、デートに誘った、とのこと。この誘い方がかわいかった。「あのー、ホントに、いろいろお世話になって。是非、そのお礼に、というとちょっと嘘になりますけど、今度よかったら、一緒に食事でも。コーヒー・・・、紅茶・・・、立ち話でもいいや」。

城山がチェックアウトの手続をしている間、夜明さんと早智子はタクシーの中で待つ。その間に、「どうして刑事を」のやり取り。夜明さんからは「あなたに、一つだけ言っておきたいことがあります。バツイチの自分が言うのは変ですけど、東山、あいつ、いいやつです」。ここで早智子がほほ笑むんだけど、ラストから振り返ると、なんだかすごく切ない気分になる。

メリケンパーク、ビーナスブリッジ、三ノ宮駅前、南京街と犯人の指示で連れまわされ、最後の 舞子海岸にたどり着いた時には疲弊しきった様子の城山。そこにかかってきた犯人の指示は、身代金は早智子に預けて城山は一人で裏の駐車場にとめてあるグレーの車に乗って待っていろ、というもの。
早智子がそのまま待っているところへ、江梨がトボトボ歩いてくる。江梨は無事だったが、手には「警察に知らせた罰だ」という紙片を持っていた。その言葉を見て、城山の下へ駆け付けようとした夜明さんだけど、その前に城山が乗っていた車が大爆発を起こし炎上。城山、死亡。

捜査本部は早智子が怪しい、と何度も早智子に電話の声を聴かせて事情聴取。東山と早智子の関係から、東山たちは早智子の捜査から外される。

夜明さん宅で捜査状況を報告する東山と国代。早智子の捜査を外されたことについて、東山は「なに?俺が悪いって言うの?そんな捜査したってしょうがないんだよ!」と国代に苛立ちをぶつける。どうして早智子を信じるのか、疑うのが刑事の仕事じゃないか、と言う国代との間で小競り合い。でも、「先輩、僕は心配しているから言っているんです」という国代の言葉が嬉しい。

神谷さんもやってきて、東山に捜査から降りろ、と告げる。もしも早智子が事件に加担していたら、刑事を辞めるしかなくなる、と言う神谷さんに、「だったら、辞めますよ」と怒る東山。
ここからの夜明さんの言葉が、いい。「東山、刑事辞めるなんて軽々しく言うんじゃない!だったら俺と同じじゃないか。俺と同じ誤ちおかしてどうするんだよ。俺が刑事辞めたのは、週刊誌に馬鹿なこと書かれ、本部の奴らにも色眼鏡で見られ、だけどそれだけじゃない、これだけは信じてくれる、そう思っていた自分の女房にも疑われたからだ。俺は刑事を辞め、離婚した。東山、お前は違う!仕事も結婚もこれからじゃないか」。



夜明さんの真摯な言葉が響いた様子の、東山の表情もよかった


早智子と別れるつもりはない、刑事を辞めるつもりもない、真犯人を必ず挙げる、と決意して捜査に当たる東山。
犯人は車の中で何度か咳をしていた、という江梨の供述から、城山総合病院に入院したことがあり、借金まみれで爆薬の知識もある野上が容疑者に浮上。さらに、城山に愛人がいたことも発覚。
筋とは全く関係ないけど、野上克夫37才に結構な衝撃を受けた。前も正平の年齢設定(第11作)に違和感を覚えたけど、今回はそれをはるかに超えたので画像付き。



うーん、37才・・・か・・・・


夜の野球場(「玉川スタジアム」と書いてあったけど、神宮球場?)で共犯らしき女性と待ち合わせをした野上がバットで撲殺される。周囲に犯人のものと思われるハイヒールの足跡が残されていた。

帰宅した夜明さん、家の中が電気もテレビもつけっぱなしのままなことに「もー」と文句を言いながら中へ入る。そこへ「いるわよ」とあゆみちゃんの声。夜明さんの風邪があゆみちゃんに移って寝込んでいる。「誰のせいかも分かるわよね」と恨みがましく言うのがかわいい。
つけっぱなしのテレビから野上殺害のニュースが流れ、夜明さんが野上の死亡を知る。

夜明さんは早智子のもとを訪れ、野上の死を告げる。そして、早智子との会話の中で、早智子が野上の入院中、飲酒している野上を咎め、それが表向きの理由で野上が退院させられたという事情を知る。だから野上は早智子を逆恨みして身代金の運搬役に指名し、神戸まで連れまわすとと同時に警察の容疑がかかるように仕向けた、というのが夜明さんの推理。

江梨の服についていた繊維片から、野上が誘拐の実行犯であることは確定。野上の殺害現場に残されていたハイヒールの足跡から野上殺害の犯人は女性、ということで、早智子が再度疑われる。
容疑者を早智子一本に絞る、という捜査方針に東山が反発。城山の愛人が怪しい、と意見したが、嫌味な上司で捜査責任者の奥田から「本部の方針に従えないというなら降りてもらってもいい」と言われ、辞表を提出。警察手帳と手錠も置いて、「捜査は一人で続けます」と言って去っていく。

心配をした神谷さんが夜明さんに電話。城山家前で待伏せて一緒に捜査。
城山家の家政婦さんに聴き込みをしたところ、城山と妻の満寿美との関係は城山の浮気が原因で冷え切っていたという情報と城山の愛人が勤めているクラブの情報を得る。
クラブで城山の愛人に聴き込み。愛人は、城山を殺したのは満寿美ではないか、と疑っている。城山の下へ、匿名で、満寿美が浮気をしている証拠写真が送られてきた、浮気の証拠を握られて離婚になったら江梨を取られるのではないか、と満寿美が思ったのではないか、というのがその根拠。

満寿美で決まり、という雰囲気になる捜査本部。
その夜、手土産をもって、神谷さんが夜明さん宅を訪れる(ただし、手土産はお礼ではなく「子供のお土産」らしい)。
一件落着を喜ぶ夜明さんに、まだ早智子への疑いを捨てきれない神谷さん。早智子のことを調べた結果、早智子の出身は和歌山、早智子の母は早智子が10歳の時に蒸発、父親も愛人を作って早智子を捨てた、その結果、児童養護施設に入所するため、和歌山から姫路に移った、というなかなかハードな半生。
彼女にはまだ何か隠された秘密があるのではないか、と心配する神谷さんに、「お前はそういう奴なんだよ。なんでも悪い方に考える。本部の方針に反対してみたものの、間違っていたら自分の出世に響く。お前みたいなのをね、ヒラメデカって言うんだよ。上ばっかり見てビクビクビクビクしてる。お前は組織に逆らえない人間なの!」。ここから始まる二人の口喧嘩。神谷さんは、家族のために慎重になっている、夜明さんみたいカッとなったら一直線じゃ家族はたまらない、と痛いところを突く。でも、結局、二人が心配しているのは東山のこと、というのが喧嘩の中で分かって、あー、いいなぁという気分になる。
最後、しみじみ家族のこと、奥さんのことを話すんだけど、神谷さんの子供は6人ということが発覚(でも、この後の作品では4人娘だったような気もする)。

居酒屋で夕食中の夜明さんの下を訪れる早智子。「東山さんはどうしているのかなぁと思って。事件があって以来、一度も会ってないんです。電話もなくて。私が疑われている以上、仕方ないんですけどね」と言う早智子に、東山はあなたの無実を晴らしたい一心で捜査している、犯人の目星がついたと言っていたから、今夜あたり電話が来るんじゃないか、と言ってあげる夜明さん。
夜明さんのタクシーで早智子を自宅へ送る途中、早智子は、自分は東山が思っているような人間ではないが、「これだけは信じてほしい」「東山さんは、救いでした」と話す。

満寿美宅のガサ入れで、野上殺しの犯人が残していった靴跡に合致するハイヒールが出てくる。捜査員が満寿美逮捕に向かったところ、「お母さんが、お母さんが」と言いながら、江梨が家から飛び出してくる。捜査員が家の中に入ったところ、服毒死している満寿美を発見。

捜査の手が伸び、逃げ切れないと観念しての自殺、という見解の捜査本部。
東山たちから報告を受けた、夜明さんは、江梨を失いたくなくて城山を殺した満寿美が、江梨を残して自殺なんかするかなぁ、と違和感を覚える。国代によれば、神谷さんも「早智子がにおう」とブツブツ言っているらしい。
ここで、夜明さんが東山に「東山どう思う?刑事としてどう思うって聞いてるんだよ」と尋ね、「これまでは、満寿美で決まりと信じていました。ですが、その満寿美が死んだわけですから、自分も、村井早智子が気になります」と絞り出すように東山が答えるのがいい。

城山が医大を出たすぐ後、勤務医として神戸で働いていた。因縁の地、神戸で手がかりを探るべく、夜明さんのタクシーで神戸へ向かう東山と国代(領収書は神谷さん)。

神戸での城山の勤務先病院で、城山が医療ミスを犯し、9歳の男の子を死亡させていたことが分かる。
被害者は神崎マサオ。家族構成は、母 神崎志津子と姉 神崎みどりの3人家族。志津子はマサオの死亡後、病院を相手に訴訟を起こしたが、3年にわたる裁判の結果、全面敗訴。敗訴後、志津子は首吊り自殺を図り、一命はとりとめたものの、後遺症が残り、何も認識できず、自由に動くこともできないような状態に。
マサオの姉 みどりは、神戸市内で喫茶店を経営。城山のことは「昔のこと」と淡白な様子で、店があるから東京になど行っていない、と落ち着いた様子。ただ、「村井早智子とっていう方、ご存知ですか」という夜明さんの質問には少し動揺した様子を見せる。

姫路の児童養護施設でも聴き込み。神崎みどりと村井早智子が、同じ施設で育ち、特に仲が良かったという情報から、二人は入れ替わったのではないか、と推理する夜明さん。
そこで、神崎志津子が入院している病院に、みどりへ、「志津子が危篤」という連絡をいれるよう依頼し、誰が駆けつけるかを待つ、という罠を仕掛ける。みどりは来ず、翌朝、早智子が駆けつけたことで、入れ替わり確信。みどりが来ない、という状況になった時の、東山の表情がとても悲しかった。

告白タイム。城山に復讐するために戸籍を交換し、看護師になった。城山の身辺を調べ上げて満寿美も浮気をしていることを突き止め、離婚問題をこじらせて、満寿美に城山殺害を決意させる。野上をお金で釣って操り、江梨の誘拐、城山の殺害を実行させる。報酬を吊り上げようとした野上を殺害し、すべての容疑が満寿美に向くように工作して、夜明タクシーというアリバイを作ったうえでカプセル入り毒薬で満寿美を殺害。

疑われるのを承知で身代金運搬役に自分自身を指名したのは、そばで城山が苦しむ姿を見たかったから。神戸で城山を殺害したのは弟が死に、母がいるこの街で復讐を果たしたかったから。
それほどの恨みを生み出した根源は、14歳の時、首を吊った母を発見してロープから降ろしたときの母の重さ、冷たさが忘れられないから。
東山と出会って、復讐はやめようと一度は思ったけど、昔の医療ミスのことをなんとも思っていない城山の言動を目撃してしまい、怒りが再燃したから。
14歳でその経験は強烈だよなぁと、すごく早智子に同情してしまう。なぜ江梨のことを考えなかったのか、自分と同じ境遇の子を作り出してしまったんだ、と夜明さんは言うけど、それはちょっと弱いと思う。

でも、東山の気持ちを思ってのフルスイングビンタは、びっくりしたけどよかったし、そこからの東山と早智子のやり取りがすごくいい。
東山と出会って、母や弟を思う気持ちとの間で悩み、苦しんだ。「東山さんが刑事だと知っていたら、付き合うことはしませんでした。あなたを裏切ることは」「俺が、もっと早く言うべきだった。そうすれば、引き留めることができた」。
手錠を、という形で前に差し出された早智子の手を包んで、「手錠持ってないから」と下げさせる東山が切ない。デートの時、”まじめに働く優しい早智子”の象徴として、手がクローズアップされていたから、なおさら切なかった。



悲しい


エンディング。「東山さん、しばらく立ち直れないだろうなぁ」と東山に同情的なあゆみちゃん。「私、慰めに行ってあげようかなぁ」と言うあゆみちゃんに、「お前まさか、東山に」と心配症を発動する夜明さん。でも、あゆみちゃん曰く、刑事はお父さんだけでこりごりらしい。「嫌な言い方。お前さぁ、最近、しゃべり方まであいつに似てきたね」「あっ、そうだ、お母さんがね、風邪の時はいつでもお料理、作るって」「馬に餌食わせるみたいに」「感激しながら食べてたくせに」「感激なんかしねぇよ。風邪ひいたって、だーれがあいつの作った料理なんか」(くしゃみ)でエンド。

東山、2回目の主役回。この回は、とても好き。犯行動機の重さと、それに見合った業の深さと、東山の恋心と優しさがとてもいい。 「俺が、もっと早く言うべきだった。そうすれば、引き留めることができた」辺りでいつも泣く(´;ω;`)

エンディングテーマ。ZARD 「promised you」