「  完全犯罪への抜け道 」 (2002年)

(ゲスト)
永峰千鶴子…古手川祐子、 岡部昌江…渡辺梓、 堀内則文…田山涼成、 岡部清志…木下ほうか、 秋津彰一…下塚誠、 堀内美奈…三国由奈、 秋津茜…小笠原茉莉、 高橋…青島健介、 城ノ島…片桐竜次、 三田…河西健司

オープニング。珍しく蓉子さんも深見さんの登場せず、関西風おばちゃんとのコント。新幹線に間に合わないと焦っているおばちゃん、後部座席から前の助手席に無理やり移動した挙句、夜明さんの足を手でギューっと押してスピードを出させる荒業。でも、ネズミ捕りに捕まって車を止められて、2人の警察官から事情聴取を受ける。一人は「夜明警部補ではありませんか?」だけど、もう一人は「刑事だった人が交通規則を守らないなんて」とご立腹。夜明さんが、お客のおばちゃんが無理やり、と説明しようとしたとたんに、おばちゃんとんずら。「俺じゃねー」と叫んでも聞く耳持たない警察官ともみ合いながらフェイドアウト。今回、コントの切れはいまいち。

夜、流しの営業で堀内美奈を乗せた夜明さん。美奈は自宅までの道中、携帯電話の相手とずっと口論をしている。美奈の様子から、相手がいったんは美奈の家に行くと約束をしておきながら、それを反故にしたらしいということが分かる。
この口論の中で、美奈が「ざけんなよ!」というセリフを言うけど、いかにも言い慣れていない風のぎこちないイントネーションが妙に耳に残る。

翌朝、美奈が自宅で絞殺死体となって発見される。第一発見者は父親の堀内則文。美奈と堀内は父一人子一人の二人家族。昨晩は、堀内が出張で不在。翌日、帰宅した堀内が美奈の遺体を発見。
美奈、シリーズトップクラスの死に顔の怖さ。目をガッと見開いて、顔色が悪くて。画像を張りたかったけど、閲覧注意になってしまいそうなので自粛。しかしこの娘さん、美人さんなのにこんな表情になって、将来大丈夫だったのかな、と心配になってググってみると、すっかり美しくなって女優を続けているようだったので安心した(公式→http://abp-inc.co.jp/member/marina-kozawa)。貫地谷さんと同じ事務所に所属してるんだ。ご縁だな。

美奈殺しの容疑者として美奈の高校の担任である岡部清志が逮捕された。岡部は美奈と付き合っていたらしい。公判で被疑事実を否認。夜明さんは美奈が携帯で話をしている様子を目撃していたので、裁判所に証人として呼び出される。
千鶴子は岡部の弁護人。岡部の妻 昌江に、岡部は犯行時刻、家にいたとの証言をさせた後、夫婦の不仲(アルコール、ギャンブル、DV)も供述させ、昌江が嘘をついてまで岡部をかばう証言をするわけがない、と印象付ける。さらに、夜明さんには、美奈の様子から、美奈の通話相手が美奈の家に行くつもりがあったと思ったかどうかと尋ね、「行くつもりはなかったと思います」という証言を引き出し、裁判官の心証を無罪に傾ける。しかし、昌江の証言はともかくとして、夜明さんの証言はなぁ。まさに「憶測を求めるもの」だから、意味ないんじゃないのかなぁ。千鶴子の有能さを示そうとしたんだろうけど、なんだか空回りな感じ。

裁判後、神谷さんたちに”弁護人の口車に乗ってあんな証言をして~”と責められる夜明さん。岡部は美奈と付き合っていただけではなく、美奈に300万円の借金もあった。その金は、美奈が父の預金を無断で引き出して調達。すぐに返すという岡部の言葉を信用しての行為だったが、岡部はその約束を破って返さない。このような金銭上のトラブルに加え、美奈の遺体に岡部の毛髪が付着しており、神谷さんたちは岡部は黒と思っている。

千鶴子はヤメ検の弁護士。神谷さんは、千鶴子が検察官だったとき、一緒に捜査をしたことがある。

美奈は岡部以外の複数の男性とも付き合っていたことも判明し、結局、岡部は無罪になる。捜査はやり直し、ということでもう一度夜明さんに事情を聴きに来る神谷さん。ここで神谷さんが夜明さんに見せる美奈の写真が怖い・・・。
美奈が無罪になったショックで堀内は仕事を辞めた。堀内のためにも犯人を挙げたい、という神谷さんに、担任と付き合い、親の金を勝手に引き出し、複数の男性と交際していたた美奈について「親の心子知らず、か」と言う夜明さん。ここからお互いの子供の話になり、神谷さんの娘について「お前の娘は化粧してもしょうがねぇもんな」と腐す一方で、あゆみちゃんを「品行方正。あゆみ、大人だよ。恋してもおかしくない年頃なのに男なんか見向きもしないで、大学院で勉強一筋。品行方正って書いたらああいう風になるね」と自慢。どうしたの、夜明さん、前回、合コン行きまくってたの忘れたの?

男性の乗客が電話で「ディナーはフレンチでいいよね。あゆみちゃん、オマール海老好きだもんね」と言っているのを聞いて、ピクッと反応する夜明さん。その客が、「あっ、いたいた。運転手さん、ここで止めて」と言って、乗り込んできたのはあゆみちゃん。
お互いに知らないふりをしてしばらく走っていたけど、あゆみちゃんが男とフレンチのディナーを食べるということが許せない夜明さんの表情が険しくなって「大学院出ても、この不景気じゃ、なかなか就職は大変だよね。あゆみちゃん、結婚、考えたことないの?あのさぁ、こんなこと言うのなんだけども、今度、一度お父さんと会わせてくれないかな?」という一言で爆発(今、あなたの目の前にいる人殺しの目をした人がお父さんですよ!)。車を急停車させて、「降りろ!降りろ!」を連呼して強引に二人を降ろす。

翌日、夜明さん宅であゆみちゃんと大げんか。昨日の男は大学院の講師。美奈のことで、”生徒と付き合う教師”への嫌悪感がストップ高になっている中で、「結婚を前提に交際してほしい」と言われた、というあゆみちゃんの言葉に切れる夜明さん。売り言葉に買い言葉でさらにヒートアップ。「勝手な時だけねぇ、父親面しないでよ!」というあゆみちゃんの言葉に夜明さんのビンタが飛ぶ。「嫌い!」とあゆみちゃんは飛び出し、夜明さんはドアに向かって味噌汁(インスタント)を投げる、という、シリーズ中、もっともはげしい喧嘩に。

でも、一人暮らしの悲しさで、投げた味噌汁の後始末を自分でしながら東山に電話をする夜明さん。あゆみちゃんと仲直りしたくて、仲介のお願い。第8作でも仲直りの仲介、頼んでたなぁ、と懐かしくなった。
そんな会話を脇で聴いていた神谷さん。先日娘を腐された恨みを晴らそうと、最高の煽り顔で電話に介入。この煽り顔が人をイラっとさせる要素に満ち満ちていて、とても面白い。



「夜明さん、品行方正なあゆみちゃんが、どうかしたんですか」


一週間後、夜明さんに千鶴子から迎車の指名。千鶴子の事務所に迎えに行くと、昌江が相談中。岡部は相変わらずアルコール、DV夫で、離婚にも応じてくれないので離婚の裁判をしたいという依頼だが、千鶴子はこれを断る。

夜明さんを指名したのは、裁判で有利な証言をしてくれたお礼とのこと。行く先は、群馬県新田郡藪塚温泉。この道中で、「どうして刑事をお辞めになったのですか」の会話。今回のテーマソングはイエスタデイ。そこかしこで流れる。

藪塚温泉へ来た目的は、離婚して夫が引き取っている娘 秋津茜に会うため。岡部の弁護を引き受けたのは昌江が茜の小学校の担任だった、という縁。離婚のときどうして娘さんを引き取らなかったのか、という夜明さんの問いに対し、娘は重荷、娘がいたら仕事が思うようにできない、と答える千鶴子。でも言葉とは裏腹に、茜に会ったら、お互いにとても嬉しそうで、楽しそうな様子を見せる。

岡部を堀内が刺殺。「事件の夜、岡部が部屋に来て、人を殺したと言って凶器のネクタイを隠していった」という匿名の手紙と血がついたネクタイが送られてきて、岡部が真犯人だったと確信したための犯行。
しかし、その送られてきたネクタイを調べたところ、美奈のものではなく、血も人間の血ではないことが判明。堀内は、嘘の手紙に操られて岡部を殺した、という結果になる。

堀内は、千鶴子に弁護を依頼する。堀内にとっては当てつけ。岡部を無罪にしたことを後悔させるために弁護を依頼したんだ、と言う堀内に、「私の仕事はあなたの弁護をすることであって、後悔することではありません」と、ぴしゃりという千鶴子はかっこいい。

夜明さん宅に集まって事件の話。娘は重荷、という言葉がひっかかったのか、千鶴子に好意を持てない夜明さんと、「あの人は、人間的にも立派な女性です」と、千鶴子に好意的な神谷さん。そんな神谷さんの千鶴子の好意を「子供4人もいて、よく言うねぇ」「神谷、だいたい、ああいう、プライドの高い、鉄の女に弱いんだよ」とからかう夜明さん。神谷さんは、奥さんも鉄の女タイプらしい。それから、神谷さん、前は6人の子持ちだったけど、本作以降は4人の子持ちに。

手を汚さずに岡部を殺したいと考えていた人物として、離婚でもめていた昌江が容疑者に。

堀内と千鶴子のやり取りは結構見ごたえがある。仮に、岡部が皆殺しの真犯人だったとしても、自分は同じように弁護をした、どんな人間にも守られるべき人権がある。証拠のない人間を有罪にはできない。子供を奪われた悲しみがどれほどのものか、自分にはよくわかる。堀内も、人殺しだけど守られるべき人間。

夜明さんに千鶴子から再びロングの指名。今度は、藪塚温泉で茜をピックアップして一緒に日光へ。日光に行ったのは堀内の妹に会って、情状証人として法廷に出てもらえないかとお願いをするため。
千鶴子が堀内の妹と話をしている間、夜明さんと茜が会話。東京よりも群馬の方がいい、東京では、どうして弁護士は悪い人の味方ばっかするのか、とママの悪口を言われてたから、と話す茜に、弁護士バッジの天秤を正義の味方と言い、「お母さんは正義の女神」と言ってあげる夜明さん。優しい。

茜と日光観光を楽しんだ後、藪塚温泉へ送る。別れ際、千鶴子に「先生が来ても、私、ママに会っていいんだよね」と言う茜。

藪塚温泉で一泊する千鶴子と夜明さん。温泉と豪華料理を堪能する。夜明さんが茜にかけた「正義の女神」という言葉に感謝する千鶴子。警察が不祥事を起こすたびにあゆみちゃんに嫌な思いをさせた、そのときの思いと重なるものがあった、と話す夜明さん。

翌朝、昌江が遺体となって発見される。
それまでの捜査で、昌江に恋人がいたこと、その恋人は生徒の父兄である可能性があることが判明。夜明さんは、「先生が来ても、私、ママに会っていいんだよね」という茜の言葉から、昌江の恋人は千鶴子の別れた夫ではないか、と推理する。

東山に言われ、しぶしぶ夜明さんの家にやってきたていのあゆみちゃん。夜明さんも本当は嬉しいくせに初めはそっけない態度。でも、夜明さんの方から「殴ったのはよくない。謝る。ごめん」と謝り、それに助けられてあゆみちゃんも「私も、ごめんなさい」と謝ることができた。夜明さんとあゆみちゃんは、等身大の、どこにでもいそうな、親子あるあるを見せてくれるのが、好き。



お互いに、ごめんなさい。かわいいなぁ。

と、丸く収まりそうだったのに、東山からの電話で夜明さんの頭が捜査モードになり、あゆみちゃんの相談も上の空で聴いていたことにあゆみちゃんがオコ。でも、あゆみちゃんの相談内容がまた、就職厳しいから留学しようかな、だったので、夜明さんもオコ。で、結局、喧嘩再発で、帰れ帰れ、となったけど、あゆみちゃんが部屋に入ってからすぐに外したイヤリングがヒントタイム。

美奈が殺されたときイヤリングをしたままだったことから、美奈が殺されたのは美奈の自宅ではなく、岡部の家だったのではないか、という推理。これで岡部のアリバイが崩れる。
また、美奈の首に出血があったことは報道されていなかったことから、堀内に送り付けられたネクタイに血がついたいたのは捜査資料を読むことができる人物、すなわち千鶴子ではないか、と推理する夜明さんとそれに反発する神谷さん。いつもの構図と逆パターン。

堀内と千鶴子の会話。堀内はだいぶ千鶴子に心を許している様子。千鶴子の「人を殺して、後悔しない人間などいません」というセリフは、自分に向けてのものだろうな。

藪塚温泉で、昌江が殺された日の千鶴子の行動を捜査。タクシー会社で聴き込みをしたところ、千鶴子らしい女性を夜、日光へ送ったというタクシー情報あり。そのタクシーの運転手がなぜか深見さん。今回はまじめな役。
日光からは東京へ深夜バスが出ていたため、これを使えば、夜、夜明さんと夕食をとった後でも、東京に行き、昌江を殺害して藪塚温泉へ戻ることは可能。ただ、昌江のマンション最寄り駅である浅草橋周辺で聴き込みを行っても、千鶴子の目撃情報は得られず。

夜明さんからのアドバイスで防犯カメラも確認対象に広げた結果、千鶴子らしい女性が、女の子とぶつかり、その女の子を助け起こした、という証言が得られる。

藪塚温泉で告白タイム。千鶴子らしい女性が千鶴子であることは、千鶴子が女の子を助け起こしたときに、千鶴子がしていた手袋にその女の子の指紋が残されたことで証明される。手袋をして自分の指紋を残さない準備はしたのに、その手袋についた指紋が証拠になる、というのは逆の発想で面白いなぁと思ったし、娘を思い出させる女の子に手を差し伸べたやさしさが命取りになったのは皮肉でまた面白いなぁと思った。

岡部を殺させるために堀内に手紙とネクタイを送ったのは千鶴子。岡部を殺したのは、真犯人である自分を弁護士が無罪にしたと公表する、と千鶴子をゆすったため。昌江を殺したのは、昌江が秋津と再婚することで茜を奪われてしまうと思ったから。
岡部殺しの動機はともかく、昌江殺しの動機はちょっとなぁ。夜明さんは、自分のことより、茜のことを思ってでしょ、という感じで言うけど、結局、自分のためだし。


エンディング。卒業後の進路について、結婚を抜け道にするようなことはしない、と言うあゆみちゃんだけど、ウエディングドレスを窓越しに凝視。抜け道ってないんだよ、人生の渋滞に巻き込まれても、まっすぐ前向いて、と親子でわちゃわちゃしながらエンド。


わちゃわちゃがかわいい


千鶴子の昌江の殺害動機がどうもひっかかってしまうけど、千鶴子と堀内のやりとりは見ごたえがあったし、人を殺して後悔しない人間はいない、というセリフも皮肉が聞いててよかった。夜明さん親子の大げんかと神谷さんの最大級の煽り顔は必見。古手川さんもすごくきれいだった。

エンディングテーマ。ZARD 「promised you」