「 東京〜関門海峡1,100km殺人 」 (2005年)

 

(ゲスト)

須磨幸恵…高橋ひとみ、 須磨公彦…金田明夫、 須磨葉子…奥田佳菜子、 須磨咲子…奥田綾乃、 須磨キク…市川千恵子、 野田修次…石丸謙二郎、 三隅昇…上杉祥三、 篠崎…山崎一

 

オープニング。蓉子さんも深見さんも登場しない。神谷さん回であることを象徴するように、物語は警視庁からスタート。

神谷さんは、来月の警視昇進選考に向け、上司へのゴマすりに勤しんでいる。

そんな神谷さんへ、高校時代の同級生である須磨公彦から、”東京に出てきているから会えないか”という電話がかかってくる。神谷さんは、”先約があるから会えない、今度、同窓会には出るから話ならそこで聞くよ”とお断り。その先約というのは、上司の接待。国代:「自分なら友達に会う方を選びますけどね。あーやって、友達なくしていくんでしょうね」、東山:「神谷に友達いねぇもん」と上司をディスりまくる。「あっ、一人だけ。全然ウマが合わないのに、友達だっていう人、いるわ」という流れで、場面は夜明さんへ。

 

「不景気だなぁ。なんかびっくりするような長距離の客、いねぇかな」というフラグセリフを吐く夜明さんに、ロングの神様が遣わしたのが須磨葉子(14歳)。山口県下関まで、と言う葉子に、夜明さんは、「下関に行くんだったら、新幹線で乗って行きなさい。タクシーだったらいくらかかると思ってんの?」と番組の根幹にかかわる言葉を投げる。

 

それでも、夜明さんは、お金がないという葉子を心配して、交番に連れて行ったり(でもお巡りさんが不在)、ラーメンを食べさせたり、と人の好さが滲み出る対応。挙句、家に電話もしてあげて、母親である須磨幸恵から”目を離したら、またいなくなってしまうかもしれない、心配だからタクシーで下関まで連れてきてほしい。料金は必ず払うから”と頼まれ、断れず、引き受けることに。

この仕事のせいで、あゆみちゃんと翌日に会うはずだった予定をキャンセル。あゆみちゃんの誕生日で、フグをご馳走してあげる予定だったらしい。あゆみちゃん、ちょっとお怒りだけど、ほしいバッグがあるからそれで許してあげる、と現金な対応。お値段は、フグ2匹分らしい。単位がフグになっちゃってるのが可笑しい。

 

葉子が一人で東京に出てきた理由は、失踪した父親を捜すため。

 

葉子を送り届けた先は、団地。出迎えた幸恵が「どれだけ心配したと思っているの!」と一発ビンタ。

 

場面は変わって、「山口県立長府西高校同窓会」。

久しぶりに同窓会に出席した神谷さん。須磨に関し、経営していた会社が乗っ取られ失踪した、ということを初めて聞き、驚く。乗っ取ったのは、同じく同級生の野田が勤めている西日本コーポレーション。

 

「ごくらく~、ごくらく~」と宿泊するホテルの大浴場に入っている夜明さん。そこへ「夜明さん!」と驚きの声を上げて神谷さん登場。

神谷さんは両親がすでに亡くなっているので、同窓会に出席してもホテル泊。そのため、夜明さんと遭遇したらしい。「同窓会終わったの?」「二次会に出る気になれなかったもので」「お前付き合い悪いもんな」と言いながら、神谷さんの表情から「なんか、あったか?」と気づく夜明さんは、やっぱり神谷さんの唯一の友達だと思う。

 

ホテルの部屋で神谷さんの話を聞いてあげる夜明さん。須磨から電話が来たとき、会ってやるべきだった、と後悔を口にする神谷さん。夜明さんが「須磨」という言葉に反応し、夜明さんが送ってきた葉子の父親が、神谷さんの同窓生である須磨であることが判明。

 

その直後、須磨が停車している車の運転席に座っていたが、その車が爆発・大炎上する映像。

 

翌朝、夜明さんと神谷さんが夜明さんのタクシーで須磨の家へ。神谷さんが「須磨の家はこっち」と夜明さんを案内した先は、夜明さんが葉子を送り届けた団地とは似ても似つかない大きな旧家。幸恵は長府毛利五万石の代々家老の家柄で、須磨はそこへ入り婿した、と説明する神谷さんだけど、その伝統と格式の須磨家が売却されていたことにショックを受ける。

 

夜明さんの案内で、葉子を送り届けた先を訪れ、幸恵と再会する神谷さん。神谷さん、須磨、野田、三隅は高校時代、同じ剣道部に属していた。部員は、顧問が開いていた道場にも通っており、その道場にいたのが幸恵。

須磨の会社が乗っ取られた経緯を幸恵が説明。須磨の会社はもともと居酒屋を20店舗ほど展開していた。野田の口利きで西日本コーポレーションと業務提携し、野田と三隅が会社に入り込む。しかし、提携後、西日本コーポレーションは須磨に赤字会社を押し付け、その会社が3億円の不渡りを出し、須磨は経営権を放棄させられ、会社から追い出された。

それでも須磨は、家を手放してお金を作り、やり直そうとしたが、そのお金を野田が三隅が持ち逃げ。それで心が折れ、須磨は失踪。

 

爆発・炎上した車に炭化した遺体が残された件について捜査する東山と国代。近くに残されたカバンから須磨公彦の免許証が出てきたことにより、東山が幸恵に電話。神谷さんが代わりに出て対応。幸恵とともに東京へ戻り、遺体を確認。

 

遺体の損傷が激しいため、遺体からの同定はできないが、須磨がガソリンを購入した形跡があること、遺留品、遺書らしきメモがあったことから、須磨が自殺をしたとして事件扱いにはならなかった、と夜明さんに報告する東山たち。神谷さんは、ショックを受けてしょげている、とも。

 

翌朝、出勤準備中の夜明さんの下へあゆみちゃんが訪ねてくる。プレゼントは?と言うあゆみちゃんに、下関土産の「ふく饅頭」を渡す夜明さん。誕生日のお祝いをお饅頭で済ませようとしてるんじゃないでしょうね、と警戒し、バッグは?とキョロキョロ部屋を見回すあゆみちゃんが、現金だけどかわいい。

 

野田に会い、須磨が死ぬ原因を作ったことを責める神谷さん。「神谷よぅ、お前、須磨と20年会ってないそうじゃないか。お前こそ、それでも友達なのか」「俺は須磨を裏切ったりしない」「きれいごと言っても、仕方ないだろ。立場が変わり、利害が変われば敵になる」。俺は仕事をしただけ、と言って去る野田。

学生時代の同級生って、日常的な付き合いが継続していると、大人のしがらみによって関係が変質する場合がある。疎遠である方が、何かあれば学生時代の人間関係(思い出補正もあるし)に戻って助け合える、そういうことなのかもしれない。

 

幸恵から夜明さんに迎車の指名。須磨が亡くなった場所へ案内してほしいという依頼。

神谷さんがショックを受けていること、事情を知っていたらきっと須磨に会いにいってたはずであること、を幸恵に話す夜明さん。こういう友情、いいなぁ。

車内でさらに「どうして刑事をお辞めになったのですか」の話。娘が一人いるので、葉子ちゃんのことを放っておけなかった、と話す夜明さん。夜明さんの行動の原点にはあゆみちゃんがいることが多い。そういう夜明さんが好きだ。

 

幸恵に誘われて、幸恵とお茶する夜明さん。幸恵は、昔、神谷さんのことが好きだった、神谷さんは高校を卒業後上京、家を守らなければならない自分は山口を出ることができなかった、と夜明さんに告白。

だけど、須磨ほど誠実な人はいない、須磨と結婚して幸せだった、とも話す幸恵。今は、小倉のクラブで働いて、生活費を稼いでいるとのこと。

 

野田が殺される。

 

夜明さん宅を訪れる東山たち。眠っている夜明さんの布団を引っぺがして、野田が殺されたことを報告。

続いて神谷さんも駆け付け捜査会議。野田の携帯に、三隅から”会いたい”というメールと、それを拒否する野田のメールが残されていたことから、神谷さんは三隅が怪しい、須磨も自殺ではなく三隅が殺したのではないか、と推理。

これに対し、須磨は自殺以外に考えられない、それよりも野田殺しは幸恵が怪しい、と口にした東山を「ばか!」と怒鳴りつける。こういう点(かばい芸)でも、今回は、神谷さんが主人公回だなぁ。

野田の死亡推定時刻が、幸恵が夜明さんと一緒にいた時間だったことから、幸恵は容疑者から外れる。

 

野田と三隅の関係がどうだったのか、野田を恨んでいる人物がいないか下関で捜査する、という東山の話を聞いて、ヨシッと張り切る夜明さんだけど、今回は新幹線で行く、ときっぱり拒否する東山たち。

拒否されても、神谷さんのことが心配で(でも、幸恵さんと葉子ちゃんの様子を見に来ただけ、とか言っちゃうけど)、仕事を休んで東山たちにくっ付いて新幹線で下関へ行ってしまう夜明さん。他人が運転するタクシーに乗り込む夜明さんが見られる貴重な回。

 

東山たちが須磨の同級生たちに聴き込んだ結果、幸恵が須磨に多額の保険をかけていたこと、野田と幸恵が二人きりで会っていたこと、が分かる。

 

須磨家を訪れ、線香をあげる夜明さん。狭い団地ながら掛け軸がかけられていたり、応対するキクの様子がとても上品だったりと、さすが旧家という雰囲気が感じられて、いい。

須磨の写真の隣に高校生くらいの女の子の写真。キクや葉子から、その女の子は葉子の姉の咲子で、2カ月前にいじめが原因で自殺した、という説明がある。

さらに、葉子は、野田や三隅と会ったことはあるが、三隅の幸恵や咲子に対するねっとりとした視線のせいか、あの二人は嫌い、と話す。

 

”いろいろあって大変だったね、何かあったら電話して、自分にも娘がいるから相談に乗ってくれると思う”と言って、メモ帳に挟んでいるあゆみちゃんの写真を葉子に見せる夜明さん。この回、夜明さんと葉子の交流もいいんだよなぁ。

 

あゆみちゃん(天使だった頃)

 

 

事件当日、野田の携帯に幸恵らしい人物が電話をかけた痕跡があり、同級生たちの話と合わせ、幸恵に再び疑いがかかる。

 

関門海峡を渡って門司でも捜査。東山の推理は、野田にいいようにされる須磨に愛想をつかした幸恵が野田と関係を持ち、須磨が自殺することを見越して保険に加入させた。須磨は自殺、野田は痴情のもつれで幸恵が殺した、というもの。バカ言ってんじゃないよ、と夜明さんはいつものように否定。

 

野田のバスローブから女性の毛髪が採取され、DNA鑑定の結果、幸恵のものと断定される。

それを聞いた神谷さんは居ても立ってもいられず、自ら、聴き込み。そんな神谷さんを夜明さんが見つけ、「お前ひとり、現場に出たからって、状況、変わるわけじゃないだろ」と説得。「現場に出るのが刑事だ、そう言ってたの、夜明さんじゃないですか!」「立場が違うだろ、立場が、お前!」とさらに説得するけど、神谷さんの暴走は止められず、神谷さん一人で下関の幸恵の下へ。

 

幸恵は野田殺しを否定。関門海峡を巡っての、幸恵と神谷さんの会話がいいなぁ。そういうこと、よくある。

 

夜明さんと神谷さんが屋台でしんみり話。幸恵は初恋の人だった、という神谷さんの話を聞くときの、夜明さんの表情がとても優しい。

 

お前の口から、そんな言葉、聞くとはな

私にだって、初恋くらい、ありますよ

 

 

それでどっぷりと私情をはさんでいるわけだ、という夜明さんの言葉に、「夜明さん、私はこれまで、人を疑うことばかりしてきました。白は灰色、灰色は黒と言う、それが刑事です。でも、今度ばかりは信じたいんです。幸恵さんは、人殺しをするような人間じゃない」と返す神谷さん。好きにしろよ、俺、もう、何にも言わない、と突き放すように言う夜明さんだけど、口調は優しい。

 

神谷さんの聴き込みの結果、野田の殺害現場近くで、三隅らしき男の目撃情報を得ることができる。さらに、三隅の銀行口座に野田から何回か多額の振り込みが。三隅が野田を揺すり、そのことで争いになり三隅が野田を殺害した、という線が浮上。

 

夜明さんとあゆみちゃんの友情談義。親友はいるけど、その友情が将来どうなるかは分からない、女は嫉妬の生き物だもん、と言うあゆみちゃんに、「お前、冷めたこと言うねぇ」と引き気味の夜明さん。やっぱり、女性の方が現実的なのかなぁ。

親子で鍋。残念ながら、河豚ではなく、鱈。鱈の身を箸で掴んで、「あぁ、これが河豚だったらなぁ」と言うあゆみちゃんに、「お前、鱈に失礼だろう」と言う夜明さん。このセリフ、すごくツボで好き。

 

キャッチボールをしている男の子が左利きなのを見て、須磨の家で見た写真に写っていた三隅が左利きだったことを思い出す夜明さん。それで、野田殺しは三隅ではない、ということに気づく。さらに、野田と三隅が同じような体形であることにも気づき、車の中の遺体は、須磨ではなく三隅だったのでは、ということに思い至る。

それでも、神谷さんは、須磨は人殺しをするような人間ではないし、幸恵もそれに手を貸すような人間ではないと夜明さんの推理を強く否定。

 

葉子から夜明さんに、誰かがお金を家に投げ込んだ、それを持ってお母さんが出て行ったきり帰ってこない、お母さんの様子が変だった、と助けを求める電話。

お金を投げ入れたのは須磨、そのお金は三隅が持ち逃げしたのを取り返したもの、須磨は下関にいて、幸恵は須磨を追いかけて出て行った、というのが夜明さんの推理。

 

翌日の朝、昇進試験の面接があるにもかかわらず、神谷さんは夜明さんのタクシーで下関へ行こうとする。それを制止し、神谷さんを置いて、東山と国代と一緒に下関へ行く夜明さん。このときのやり取りがとてもいい。

「神谷、お前、何かっこうつけてるんだよ。お前、娘が4人もいて、今まで一生懸命働いてきたんじゃないか。出世の道、選んで何が悪いんだよ。面接受けろよ。面接受けて警視になれ。警視になって、俺に威張れ!須磨のことは、俺たちで何とかする」

 

このセリフを受ける神谷さんの表情が、また、良いなぁ

 

 

野田と三隅を殺したのは須磨。幸恵は、初めは須磨が生きていることを知らなかったが、須磨に頼まれて野田殺害に協力。野田に電話をして会う約束を取り付け、須磨がかわって野田に会いに行き、野田を殺害。

須磨が野田と三隅を殺害した本当の理由は、長女咲子が二人に乱暴され、それが原因で咲子が自殺をしたから。

 

「何で野田や三隅は俺のことを。あの二人が裏切ったりしなければ」と嘆く須磨に、「裏切ったといえば、あなたはどうなんですか。あなた神谷を裏切った。神谷に電話をしたのは、自殺を匂わすためだった。神谷の気持ちはどうなるんです。神谷言ってました。須磨はどんなつらいことにも音をあげない。歯を食いしばって耐える強い男だって」と、神谷さんのために言ってあげる夜明さんがいい。

 

須磨逮捕の現場に神谷さんも駆け付け、須磨を一発殴る。その上で、「お前も俺を殴れ。お前と、会っておくべきだった。もっとお前と、会っておくべきだった」と言う神谷さん。

夜明さんに謝る幸恵に、「失ったものより、葉子ちゃんのことを考えるべきでした」と言う夜明さん。「須磨の家が重荷だったのかもしれない」と言う幸恵に、「あなた、生まれ育ったこの町を、そしてご家族を、誰より愛していらした」と言ってあげる夜明さん。神谷さんも、夜明さんも、優しくていいなぁ。

 

波止場で夜明さんと神谷さんが二人で初恋や故郷について語り合う。その後、昇進試験・階級に話が及んで口論しながらも、最後、神谷さんが夜明さんに心からの感謝。

 

夜明さん、ありがとうございました

 

 

夜明タクシーの助手席に神谷さんが乗り、慌てて追いかけてくる東山たちを見て笑いあう夜明さんと神谷さんが、最高にいい。

 

 

エンディング。あゆみちゃんに呼び出され、お目当てのバッグを買わされる夜明さん。道端にフグ料理の店があるのを見て、「あれっ?偶然!こんなとこにこんなお店あったんだ!」とフグ料理食べたいアピールをするあゆみちゃん。「ハンドバッグの上にふぐなんて、嫌だからね」と拒絶する夜明さん。「父親だったらフグくらい食べさせろー」と詰め寄るあゆみちゃんに、「定休日、定休日」と楽しそうに言いながら逃走する夜明さんでエンド。

 

 

神谷さん回。神谷さんと夜明さんの友情がとてもいい。シリーズ初めの頃は、こんないい関係になるとは思わなかったけど、人間関係を積み重ねて行けるのは、長期シリーズの強みだなぁと思う。葉子と夜明さんの関係も好きだし、事件もそれほど違和感のない話だったし、いつもは気になる黄昏のビギンもノスタルジックな雰囲気に合っていたし、「もう少し」の入りもいいし、で、好きな回。



エンディングテーマ。Kiroro 「もう少し」

「 死体を連れた幻の乗客!? 」 (2004年)

 

(ゲスト)

枝本美弥子…中原果南、 枝本君江…岡田茉莉子、 枝本明彦…池田政典、 原田比呂美…嘉門洋子、 仲倉新治…小沢和義、 安永泰三…野口貴史、 初老の男…三田村周三、  小出規夫…渡辺哲

 

 

オープニング。蓉子さんのみ復活。

乗車した初老の男性(三田村周三さん。十津川班の一員。好きだったけど、途中からいなくなってしまった)から、「娘が夫を亡くして悲しみから立ち直ってくれない。再婚を勧めても断るばかり。亡くなった夫というのが運転手さんにそっくりなので一度お見合いをしてくれないか。これは運命だ。親の口から言うのもなんだが、娘は器量よしで・・・」という内容の話をされる。

男性を家まで送ると出迎えたのは噂の娘。演じるのは蓉子さん。見たとたんに夜明さんが「運命なんて、親子で何言ってんの。ちょっと、器量がいいって、なに、どうしたの?」と言うのが、ひどいけど面白い。

 

離さない、会いたかった、会いたかった!

 

夜明さん逃走

この場面を見るといつも「牛方とやまんば」を思い出す

 

 

再婚はしないだろうな、と言いながら、なんだか寂しくなった夜明さん。あゆみちゃんに電話すると、どこに旅行に行くかでお母さんと喧嘩をしている、という話が。「旅行の行先で喧嘩してんの?こっちさ、必死になって養育費稼いでんだよ」という夜明さんが健気すぎて泣けてくる。

「お願いがあるの~」と言い出したあゆみちゃんに、「お願い?!ちょっと待って、ちょっと待って。お前のお願いで、お金のかからなかったお願いないから。切るね、切るね、切るね、切るよ!」という夜明さんが必死すぎて泣けてくる。でも、なんとなく笑顔なのがいい。

 

枝本美弥子は、京都の老舗料亭「枝もと」の若女将。夫の枝本明彦と東京出店の準備をしている。

明彦は翌日まで東京に残り、美弥子だけが新幹線で京都に帰るために店を出ると、仲倉新治が待伏せ。

 

仲倉は、強盗殺人で指名手配されている容疑者。金沢県警の小出さんが警視庁を訪れ、「仲倉が東京で目撃されたので、協力してほしい」との依頼。

小出さん=哲さんがとてもいい味を出している。三年間、仲倉を追い続けて、「東に出たと聞けば岩手へ飛び、西に出たと聞けば行って博多で捜査をする。雨にも負けず、風にも負けず」

 

愚直というかなんというか

東山と国代の無言の後頭部に可笑しみがある

 

 

夜明さんは優秀な刑事、と先輩から聞いた、是非、会いたい、と言う小出さん。「その人物は、もうここにはいません」「どちらの部署に?」「部署的には・・・車両係」「東山」のやり取りが好き。

 

仲倉が殺害される。

 

美弥子が夜明さんのタクシーに乗り込んでくる。行先は京都。明日の朝早くからお世話になった方のお葬式を手伝わなければならないので、どうしてもそれまでに京都に帰りたい、とのこと。

道中、お互いの身の上話。夜明さんはこの時点でタクシー運転手歴12年。このころはまだ、実際の時間とドラマの時間が同じだったんだなぁ。「警視庁で刑事をやっていました」「失礼ですけど、なんでお辞めになったんです?」のやり取りも。

 

京都に無事到着。ちょっと寝て、翌日の朝までに帰社すればいい、と言う夜明さんに、「うちでお休みになりませんか?」と勧める美也子。老舗料亭の広い部屋にちょっとはしゃぎながら、夜明さん就寝。

大女将の君江は、美也子がタクシーで帰ってきたことに「締めるところは締めてもらわんと」とご立腹。

 

仲倉殺害の捜査に当たる東山たち。小出さんは、三年間追い続けた仲倉が死んで、茫然自失。でも、仲倉が所持していたグルメ雑誌に掲載されていた美也子の記事を見て「その女は?!」と驚く。

 

夜明さんに京都の町を案内する美也子。一見さんお断り、は、京都の花街では女性が経営している店が多く、客とのトラブルをできるだけ避けるための生活の知恵、という薀蓄。

 

縁切り縁結び碑の穴をくぐって楽しそうな夜明さんと、それを楽しそうに見ている美也子。そこへ通りかかる比呂美、訳ありなオーラを振りまく。ザ・嘉門洋子な感じ。

 

一条戻橋まで来たところで、そろそろ帰る、と言う夜明さんを、せめて夕食だけでも食べていってほしい、と引き留める美也子。どうしてそんなに優しくしてくれるのか?と尋ねる夜明さんに、美也子は、「昨日、タクシーを何台も止めたが、京都まではちょっと、と断られ続けた、本当に困っていたところを夜明さんに救われたから」と説明する。

 

美也子お手製の夕食を食べているところへ、美也子を訪ねて東山・国代・小出さんがやってくる。ちらっと目に入るオレンジ色のタクシーに、「自分、なんか嫌な予感するんですけど」「まさかな、ありえない」と話しているところへ、夜明さん登場。「どうして、夜明さんが、ここにいるんですか?」「どうしてお前が、そこにいるんですか?」「そうですかぁ、あなたが夜明さん!」「そうだけど、あんた、誰?」のカオスっぷりが楽しい。

 

東山たちが来たのは、仲倉殺害事件に関する捜査のため。美也子は、殺害される直前の仲倉と会ったが、会っていたのは5分くらいで、自首してほしいという話をして別れた、と語る。

美也子への聴き込みが終わった後、夜明さんから東山たちへの事情聴取(タクシーの後部座席に3人押し込まれたうえで)。仲倉は、金沢で桑原シュウイチという老人の家に押し入って桑原を殺害。200万円を持って逃走。小出さんたちが仲倉の家を訪ねた際、対応に出たのが美也子。当時、美也子は仲倉と同棲し、仲倉の子を妊娠していたが後に流産。とここまで説明したところで、ギューギューづめで押し込まれていたことに、「すいません、そろそろ出ていいですか、ボーっとしてきちゃった」と発言する東山が面白い。

 

で、外へ出て、タクシーの外で話すんだけど、雲がすごくきれい。おみやさんでもこんな感じの雲が出ていた回があったなぁ。

狭苦しいタクシー内からの解放感

 

 

仲倉が殺害されたのは午後8時から10時の間。美也子が仲倉と会ったのは8時半ころ。夜明さんが美也子をタクシーに乗せたのは、10時ころ。美也子には十分犯行が可能、ということで美也子を疑う東山たち。「彼女はそんなことができる人じゃない」といつものように、美也子をかばう夜明さん。夜明さんは、美也子を守るため、東山たちの聴き込みに帯同。

 

君江からの事情聴取。美也子は3年前から枝もとの仲居をしていた。2年前、明彦は比呂美と付き合っていたが、別れて、美也子と結婚。美也子は結婚する前に、仲倉との過去を告白していた。

明彦は、美也子と結婚した後も、比呂美との関係を継続。比呂美は、探偵を雇って何かを調査している様子。「きっちり、思い知らせてやるわ」と不穏なことを言う、ザ・嘉門洋子。

 

夜明さん宅での捜査会議。美也子が仲倉とあった後、夜明さんのタクシーに乗るまでの空白の時間が気になるという東山に、物証がないし、仲倉との関係を明彦や君江に告白しているんだから動機もない、と反論する夜明さん。

聞きたいことを聞くだけ聞いて、「帰っていいよ」と言う夜明さんに、ブツブツ文句を言いながら帰る東山たちだけど、宿なしの小出さんを夜明宅へ置き去りにする、という形でリベンジ。

 

( ˘ω˘)スヤァ…

 

そして、かわいいエプロン姿で朝食cooking

 

 

奥さんが旅行先の京都で交通事故に遭ったのですぐに駆け付けたい、というお客さんを乗せて一週間に二度の京都ロングをゲットする夜明さん。

 

訳ありげに興信所の報告書を持って外出し、場面が切り替わってすぐに殺害される比呂美。

 

お客さんを送ったついでに、京都の枝もとを訪ねる夜明さん。美也子と一緒に京都の町を歩いていると、舞妓さんに扮したあゆみちゃんに遭遇。冒頭でもめていたお母さんとの旅行の行先は、京都になった、とのこと。お母さんは芸妓に化けている、と言われ、元妻が来る前に夜明さん逃走。

 

見返り美人だったのに・・・

 

驚きのあまりの変顔

 

 

美也子から夜明さんへ、帰りのタクシーに乗せてほしいとの依頼。骨とう品を東京店に運びたいのだが、前回、運送屋へ頼んだら、傷がついていた、今回は、タクシーで運んだ方がいいのではと思っていたところへ、ちょうど、夜明さんが来た、との話。

重くて大きな段ボール箱をトランクに入れ、美也子は手にツボの箱を持って、京都から東京へ。

 

晴海ふ頭で比呂美の遺体が発見される。死亡推定時刻は前日の午前中だが、朝には比呂美は京都にいた、と会社の部下が証言。美也子はそのころ京都に、明彦は東京にいた。

 

比呂美を明彦に紹介したのは、枝もとに出入りしている着物作者の安永。比呂美を捨てて美也子と結婚した明彦には憤りを覚えている様子。東山たちの聴き込みに、比呂美は最近、何度も金沢に旅行をしていた、と証言。

 

夜明さん宅での捜査会議。比呂美の死斑の出方から、比呂美は晴海ふ頭で殺されたのではなく、京都で殺されて、車で東京に運ばれた疑いが濃厚。神谷さんは、夜明さんが美也子とともに京都から東京に運んだ荷物が、実は比呂美の遺体だったのではないか、と推理。夜明さんは、自分は元刑事なんだから、持った荷物が遺体かどうかくらい分かる、と主張。

で、いつもの喧嘩。「夜明さんは、私情でものを言っているだけじゃないですか」「なにぃ」「いつもは冷静に事件を見るのに、どれだけ美也子に優しくされたか知らないけど、私情をはさむなんて、夜明さんらしくないですよ!」って神谷さんは言うけど、私情をはさまない夜明さんの方が珍しいから。

 

比呂美の遺体のそばにあったたばこの唾液を鑑定したところ、明彦のものと一致したことから、比呂美殺害の容疑者として明彦が逮捕される。明彦は否認。午前10時ころ、タクシーに乗った、そのタクシーを探してもらえれば、アリバイが証明できる、と主張。

 

雨の中、夜明さん宅前でたたずんでいる美也子。帰宅した夜明さんが美也子を家の中に入れ、きれいなタオルを渡し、暖かいものを作ろうとガスに火をつけるところまで流れるような作業。夜明さんの生活感が出て、いい。

美也子が待っていたのは、逮捕された明彦を助けてほしいと頼むため。このときの中原さん、すごく儚くて、守ってあげたくなる。これが初めての中原さんだったので、9係のシーズン11「カラフルな殺人」に出てきた彼女を見た時、かなりな衝撃を受けた。女優さんって、すごいな。

 

夜明さんが東山たちを引き連れて、品川駅でタクシー運転手に聴き込みをし、明彦が主張するアリバイの裏付けをとる。明彦は釈放されるが、美也子に対し、比呂美との仲が続いていたことを告白。

ショックを受けた美也子が夜明さん宅を訪問。夕食を作って、夜明さんに振る舞い、身の上話。美也子は仲倉の事件の後、金沢にはいられなくなり、逃げるように京都に来て、戻り橋でしゃがみ込んでいたところを明彦に救われた。結婚するとき、仲倉のことを告白し、明彦はかまわないと言ってくれたけど、心のどこかで許せず、比呂美と続いたんだろう、自分には明彦を責める資格はない、と言うが、「三年前、あのとき別の出会いがあったら、私の人生は、また違うものやったかもしれませんね」と夜明さんをジッと見つめ、儚いオーラを出す美也子。

そんないい雰囲気になったところへ、あゆみちゃん乱入。そそくさと帰る美也子。「今日、泊めてもらおうと思ったけど、やめとこっかな」「どうして?」「お化粧の匂いする」「そお?」「別に、いいですけどね。お父さんが誰と付き合おうと、お父さんの人生だもんね」「嫌味な言い方、そんなんじゃないよ」「じゃあ、どんななの?こんなの作ってもらっちゃってさ。これ食べ終わったら、私が作るのも食べてよね。せっかく買って来たんだから」「もちろん、食べますよ」。この会話と、会話のあと、ドスっと夜明さんを突き飛ばすあゆみちゃんまでの父娘感が大好き。

 

捜査のため、再び京都へ。神谷さんの指名で、夜明さんのタクシーで。

安永から、明彦と美也子との結婚を巡って、比呂美が君江とももめていた、君江が若い頃着ていた着物が加賀友禅である、との情報を得、比呂美の部下から、比呂美が探偵を雇っていた、との情報を得る。

 

比呂美が金沢で何を調べていたのかを調べるため、夜明タクシーで京都から金沢へ。東山たちは宿の心配をしていたけど、結局、男三人で車内泊に落ち着いた模様。

小出さんの案内で、美也子が仲倉と住んでいたアパート、及び、美也子の友人を訪問。美也子の友人は、”美也子は素晴らしい女性だけど、男運がない。仲倉は初めは優しかったが美也子の金を持ち出すなどろくでなしだった、美也子は仲倉と別れて一人で子供を産んで育てようと決意していたのに、流産をしてしまい、とても悲しんでいた”と語る。美也子の人生にやましいところはない、と勢いづく夜明さん。

 

仲倉が殺害した桑原シュウイチの弟のところへ、新聞記者を名乗る男が訪れていたことが判明。弟いわく、自分たち兄弟の父は色街で店をやっていたので、昔、自分たち兄弟は、ひがし茶屋街に住んでいた、そのころのことを聞かれた、とのこと。

ひがし茶屋街のお店で休憩をして、東山たちは京都に電車で戻って再調査をする、小出さんは新聞記者に関して調査をすることに。一人残った夜明さんが店を出るとき、京都の枝もとで見た招き猫と似た招き猫を発見。加州猫寺の薀蓄がひとしきり。

 

京都の枝もとにあった招き猫は君江が買ったもの。君江は夜明さんに、美也子は明彦と一緒に枝もとを守っていかなければならない大事な若女将、これ以上近づかないでほしい、とお願い。さらに、美也子に枝もとの女将が使っていた羽織を渡す場面を夜明さんが目撃。

 

桑原弟のもとに現れた自称記者は、ある女性のことを調べていた。昭和32年、ひがし茶屋街に住んでいた頃、桑原シュウイチが惚れこんでいた、当時19歳のスミエという赤線の芸者。スミエは、店の金を持ち逃げして行方をくらませた。比呂美が雇っていた探偵も、スミエのことを調べていたと思われる写真が残っていた。写真の姿かたちから、スミエは君江。比呂美が調べていたのは、君江の過去だったことが判明。

 

ヒント要員に山田アキラさん。夜明さんのタクシーに乗って、たばこを吸いながらうたたね。たばこ、たばこで、比呂美の遺体のそばに落ちていたたばこに思いを巡らせ、真相に到達。

 

比呂美が脅迫していたのは美也子ではなく君江。君江が昔、金沢の赤線で働いていたこと、店の金を持ち逃げしたことを週刊誌にばらす、それが嫌なら、美也子を追い出し、頭を下げて自分を迎え入れろ、と脅迫。

それを聞いた美也子が、君江をかばうために比呂美を殺害。君江は美也子をかばうため、美也子は夜明さんと一緒に行動させた上で、比呂美の遺体を車で東京へ運んだ。

仲倉を殺したのは君江。美也子が仲倉に会ったとき、君江はそばでその様子を立ち聞きしていた。仲倉から、金を出さないと美也子は人殺しの子を宿した女という噂を町中にばらまいてやる、と言われ、殺害。

表向きは君江が美也子につらく当たっているように見えたが、実は、君江は、自分と似た境遇の美也子にシンパシーを感じ美也子のことを大切に思っていた。美也子は美也子で、自分を救ってくれたのは明彦ではなく実は君江だということを知っており、君江のことを大切に思っていた。お互いがお互いのことを大切に思い、相手を守るために、殺人を犯した。「あんたは私なんえ、四十年前の、私なんえ」と迫力の演技にのまれていい場面のようにも感じるけど、周りの風景が明るすぎるのが難。

 

夜明さん宅で、神谷さんとしみじみ飲んでいる夜明さん。「いい女だったんでしょうねぇ。忘れた方がいいですよ。夜明さんは、幻を見たんですよ」と言う神谷さんに、「神谷、人生、何度もやり直し、聞くよな!」と明るく返す夜明さん。

あゆみちゃんはあゆみちゃんで、「再婚していいんだからね」と優しいことを言うけど、旅行の話では旅行代は出してねという話になり、「自分の旅費くらい、自分で払えよ~」と言う夜明さんに、「じゃあ、結婚資金はお願いね」と意味深なことを言い、夜明さんを動揺させて、エンド。

 

 

どこの馬の骨とも分からない嫁を嫌っている老舗料亭の大女将が、実は自分も同じような境遇で、嫁のことを大切に思っており、嫁のために殺人を犯した、嫁は嫁で、夫のために姑のいびりに耐えているのかと思いきや、夫よりも姑の方を大切に思っており、姑のために殺人を犯した。こういう構図は面白いと思うけど、君江と美也子の関係が、それほど「いがみ合っている嫁と姑」とは見えず、かといって逆に、実はお互いに大事に思っていた、という肚も見えず、メリハリがなくて、物語の筋がはっきりしない印象。桑原の話も偶然が過ぎるし、昭和30年代からの因縁というのも、浅見光彦っぽくてタクドラには合わない気がした。

だけど、さしはさまれる会話やコントは面白く、中原さんの儚げな様子や哲さんの愚直な愛嬌も、とてもよかったから、好きな回。

 

エンディングテーマ。Kiroro 「もう少し」

「 バックミラーの殺意 」 (2004年)

(ゲスト)
島田貴美子…荻野目慶子、 島田誠吉…長門裕之、 高見沢恵一…升毅、 島田春江…愛川裕子、 掛川秀美…牛尾田恭代、 尾崎治雄…中村繁之、  川上康利…不破万作

オープニング。蓉子さんも深見さんも登場しない。
電話のベルに起こされる夜明さん。掛けてきたのはあゆみちゃん。はじめは寝ぼけ声だった夜明さんも、「お父さん、助けて!すぐ来てお願い。お父さん、助けて!」という切迫したあゆみちゃんの声と電話の後ろから聞こえてくるガラスが割れるような音に目を覚ます。
でも、大急ぎで駆け付けたら、相談の内容は、”下着が盗まれるから、元警察官のスキルを発動して、張り込みをしてほしい”というもの。無言電話もかかってくるらしい。警察に相談してもらちが明かない、もう、嫌になったから留学したい、と頼むあゆみちゃんに、「お前さぁ、お父さん、助けてって、助けてって、来たじゃない、ヘルプしてって、お金のことばっかだな、お前」という夜明さんの言葉に、深く頷いてしまう。
そのあと、あゆみちゃんから元妻も来る予定と聞いて逃げ出す夜明さん。いすの後ろからひょいって逃げ出すんだけど、アラカンとは思えない身のこなしで、すごいなぁと思う。逃走の過程でお客さんにぶつかり、お客さんがトレイを落とす。電話で聞こえたガラスが割れるような音もお客さんがトレイを取り落とす音だったんだな、と種明かし。



ひょいっ


ブツブツ文句を言いながら歩いて帰る途中で島田さんと会い、話をする夜明さん。島田さんは夜明さんがタクシードライバーになったときに指導してくれたベテランのタクシー運転手で、今は個人タクシーをしている。
島田さんは、自分はもう年だから引退する、ついては個人タクシーの営業権を夜明さんに譲りたい、と語る。試験とかありますし、と躊躇する夜明さんを、「大丈夫だよ、夜明さんなら」と励ましてくれる。

島田が引退を決めたきっかけの一つとなったのは娘の結婚。音楽雑誌の会社に勤めていて、ピアニストと結婚することになった、娘との関係は良好ではないけど、娘のために一生懸命働いてきた、新婚旅行はアメリカなので成田空港まで自分のタクシーで送ってあげて、それで幕を引きたい、と嬉しそうに話す島田さん。

タクシー運転手になって10年か、としみじみ振り返る夜明さん。定年がない個人タクシーに魅力を感じている様子だけど、その理由が”養育費も払えるし”なのが健気すぎる。
個人タクシーの試験は、法令と地理。「やるぞー、夜明タクシー、 夜明タクシー、 夜明タクシー」とやる気満々だったけど、問題集の厚みを見て、「明日から、やろ」。受験生あるある


港区の埠頭に放置されていたタクシーの中で島田さんの遺体が発見される。

東山に電話をして、島田さん殺害事件の捜査状況を確認する夜明さん。民間人には話せない、と東山は断るが、今回は、神谷さんが夜明さんに捜査協力を要請。
埠頭で夜明さんがタクシーの実況見分をする場面、タクシードライバーならではの気づきが面白い。灰皿にたばこが1本も残されていなかったこと、半分開いていた窓、チューニングがあっていないラジオ、後部座席右側を向いているバックミラー。

島田さんが夜明さんを指導する回想場面の後、島田さんは恩人、必ず犯人を挙げてくれ、と東山に頼む夜明さん。回想場面では夜明さんの表情が初々しく、タクシードライバーになりたて感が出ていて、役者さん、すごいなと思った。

神谷さんからの電話に、感謝の意を伝える夜明さん。知り合いが殺害されたから夜明さんに気を使って捜査に参加させてくれたのだろう、と思ってのことだけど、東山と国代が横から手をブンブン振って否定。神谷さんは近々警視の昇進試験を受ける、その際、迷宮入りの事件を抱えて評判が落ちるなんてことがないように、夜明さんの力を借りて事件を解決し、点数稼ぎをしようとしているんだ、と二人で力説。

国代まで必死に手をブンブンw


真相を知って仏頂面になりながら現場を去ろうとする夜明さんとすれ違う貴美子。荻野目さん、私にとっては武蔵坊弁慶の玉虫で、可憐で賢くて一途なイメージがしみ込んでいるんだけども、サスペンス界ではいつも怖くてきつい感じの役どころでつらい。本作でも、登場早々、怨念めいたものを感じる。

島田さんの告別式。焼香を終えて帰る夜明さんを追いかけてきた貴美子との会話で、貴美子と夜明さんが10年前に一度会っていることが分かる。会った理由は、貴美子が付き合っていた男から暴力を受け、島田さんが元警察官であった夜明さんに相談したため。島田さんは貴美子を「男にだらしがないからだ」と責め、貴美子は貴美子で島田さんに猛反発。ここの場面も含めてだけど、長戸さんと荻野目さんのキャラの濃さからか、対立が深すぎ、というか島田さんの振る舞いがひどすぎ、ラストで美しく昇華しきれなくて困る。
焼香に以前同じ職場にいたという尾崎も登場。貴美子がじっと睨むんだけど、目力が半端ない。



ビームか何か出てもおかしくない



島田さんは以前、横浜で貿易商をしていたが、会社が倒産し、タクシードライバーに。そのころ、妻が病死したこともあって、島田さんと貴美子との親子仲は良くなかった。婚約者である高見沢を紹介した際の島田さんのセリフが「馬鹿野郎、貴美子。何が結婚だ。俺は許さんぞ。貴美子、お前はまだ、大人になってないよ」「貴美子、お前、ほかの男とは手を切ったんだろうな」。前者はともかく、後者は引くなぁ・・・。

寝起きの夜明さんに、テンション高く下着泥棒が捕まった報告をするあゆみちゃん。犯人は、近所の大学生だったらしい。
そして、寝起きの夜明さんから「あのさぁ、一人でガンガンガンガンガンガンガンガンしゃべんないでくれる。俺、起きたばっかなんだから」と抗議を受けると、いきなり「私、お父さんには感謝しています」としおらしいことを言い出す。何のことかと思たら、夜明さんが個人タクシーに向けて勉強しているのを知って「養育費は安泰」と思ったらしい。
個人タクシーを目指したきっかけを夜明さんから聞くと、「受けるべき」「お父さんなら大丈夫。私、応援する」と夜明さんを後押しするあゆみちゃん。根は、すごくいい子なんだけども…。
下着泥棒は捕まったけど、無言電話の犯人はまだ捕まっていないらしい。

探偵に呼び出される貴美子。島田さんから、高見沢の素行調査の依頼を受け、報告書を作成した、島田さんが亡くなったので、貴美子に渡したいという用件。”そんなものは見たくない”、と突き返す貴美子。

夜明さんに貴美子から迎車の指名。本作から係長が交代。小倉一郎さんから増田由紀夫さんへ。小倉さんと二朗の間に挟まれて、ちょっと影が薄い係長。
貴美子を会社のある赤坂から自宅がある葉山まで送る。コーヒーでも、飲んでいきません?という貴美子に誘われて貴美子の自宅に上がり、お互いの身の上話。「どうして刑事をお辞めになったのですか」はいつもどおり。貴美子は島田さんとの確執の原因を語る。母が入院しても浮気をしてろくに見舞いに来なかった、会社倒産に当たって母との思い出が詰まったピアノを守ってくれなかった、挙句、父の負担になりたくなかったために母は自殺した。「父は、家族の気持ちなんかどうでもいいんです。自分本位で、横暴で」と現在も、父を憎んでいるという気持ちを吐露。

高見沢が自宅で死亡。第一発見者は貴美子。死亡推定時刻は午後11時から深夜0時の間。その時間、貴美子には夜明さんと一緒だったというアリバイがある。
貴美子の父である島田さん、貴美子の婚約者である高見沢が相次いで殺されたことから、警察は、貴美子に恨みがある者の犯行か、と考えている。

高見沢は、1年前は、横浜のクラブで演奏するピアノ弾きだった。そのクラブに通っていた貴美子に才能を見出され、クラシック界にデビュー。
高見沢がクラブでピアノを弾いていた頃の仕事上のパートナーであり、恋人でもあったのが 掛川秀美。秀美は、仕事と恋人を奪った貴美子を恨んでいると思われる。一方、貴美子の方も、高見沢と付き合うまで男関係が派手で、恨みを買ってもおかしくない状況ではあった。

島田さんは10年前にもタクシー強盗に遭っていた。

島田さんの告別式に来ていた尾崎は半年前まで貴美子と付き合っていたが、貴美子に振られてストーカーチックな行動を繰り返すようになった。そのことを知った島田さんが、職場で尾崎に暴行して騒ぎに。そのせいで尾崎は会社を辞め、新しく起こした事業もうまくいっていない。貴美子を恨んでいる急先鋒として有力な容疑者に。

尾崎を逮捕。東山は、公務執行妨害って言うけど、あれは公務執行妨害じゃないよなぁ。尾崎の言い分の方が正しいと思う。
尾崎は警務部長の親戚。ということで、神谷さんに話があり、神谷さんは尾崎を釈放。
それを知った夜明さんが神谷さんに激怒するんだけど、そのときの演出が変というか、ふざけすぎというか・・・。あの変な効果音、いらないと思う。
出世のために尾崎を釈放した、と夜明さんは神谷さんを責めるけど、神谷さんは、そのこととは関係ない、証拠がないから尾崎を釈放した、と主張。一般論として出世はしたい、夜明さんがあゆみちゃんのために個人タクシーを目指すのと一緒で、4人の娘のために、娘が結婚するとき花嫁の父として警視でありたい、と言う神谷さん。「この年になって、勉強すんのは、楽じゃないよな」とボソッという夜明さんがいいなぁ。

貴美子が会社を休んでいると聞いて、鎌倉に客を送ったついでに貴美子の自宅へ様子を見に行く夜明さん。
貴美子の部屋から高見沢の写真が消えており、貴美子は、最初から高見沢には愛情はなく才能を独占したかっただけ、愛情なんて信じられない、そのことを教えてくれたのは父だ、と話す。さらに、夜明さんに縋りつき、「助けて。夜明さん、あたたかい」と魔性をいかんなく発揮する貴美子というか荻野目さん。夜明さんは、島田さんの代わりに貴美子を守る、と言って部屋を去る。

尾崎のアリバイが立証される。

夜明さん、新しい男とホテルに入りそうになっていた貴美子を発見。「義理の兄貴だ、文句あるか!」と貴美子を奪い取り、無理やりタクシーに乗せる。
「次から次に男を変えて!」と貴美子に説教する夜明さんだけど、気分が悪そうな貴美子の様子を見て、江ノ島で休憩。貴美子が気分が悪くなったのは車酔いのため。子供の頃から車酔いをしやすいらしい。

秀美が高見沢に、貴美子は出世のための道具じゃなかったのか、なぜ結婚するのか、と詰め寄っていたとの証言により、秀美が一連の事件の有力容疑者に浮上。

神谷さんは、島田さんが遭遇した10年前のタクシー強盗が気になる。10年前の事件では、島田さんが犯人に頭を強く殴られたせいで、犯人の顔を見たはずなのに記憶が飛んだ。そのせいで、犯人の顔を思い出せず、現場に指紋が残っていたにもかかわらず迷宮入りに。
2度も強盗に遭うのは不自然ではという東山に対し、夜明さんが「俺だって、そういうのあるよ」と答える。ボールペン1本で強盗を捕まえた第8作のことかな。

東京から横浜へ向かう客を乗せ、客のリクエストでラジオを流し、横浜近くでチューニングがあわなくなったことにヒントを得て真相に到達。
島田さんを殺したのは高見沢。高見沢は10年前に島田さんを襲ったタクシー強盗の犯人だった。島田さんは、高見沢を紹介されたときからもやもやしたものを感じ、興信所に調査を依頼。高見沢と貴美子をタクシーに乗せた際、バックミラー越しに高見沢の顔を見たことで、どうしても思い出せなかった10年前の強盗犯の顔を思い出し、そのことに気づいた高見沢に殺される。
高見沢を殺したのは貴美子。島田さんが殺される直前に電話で高見沢が強盗だった、と教えられ、興信所の調査結果を見て、島田さんを殺したのは高見沢、と確信。高見沢から自白を引き出した後、殺害。

貴美子がとっかえひっかえ男を変えたのは、父親の愛情に飢え、父親の愛情を求めたため。島田さんは貴美子に深い愛情を持っていたけど、父親の不器用さで、それをうまく伝えられなかった。島田さんが死んで、貴美子は初めて父親の自分に対する愛情の深さを知った。
というようなまとめになるんだろうけど、「父親は、自分の思っていることをうまく相手に伝えることができない。思ってるだけじゃ伝わらない。でも、いざとなったら娘を守る。それが男親です」って夜明さんのセリフが、島田さんの所業とうまく結びつかなくて、うーん、と思ってしまう。

無言電話の犯人はあゆみちゃんのバイト先の同僚。あゆみちゃんが一人で抗議に行ったと聞いて、現場のレストランへ急行する夜明さん。
ストーカーから「お父さん」と言われたことに、「馬鹿野郎!てめえにお父さんなんか言われる筋合いねぇだろ!立てこらぁ!」と激怒し、殴りかかろうとしたところへあゆみちゃんがカットインしてビンタをかます。



あゆみちゃんの見事なカットイン



崩れ落ちるストーカー(若干嬉しそう…)


夜明さん:立てますぅ?

ここまでの流れがとても好き。


親子2人でコーヒーをまったり飲んでいると、表に停めていた夜明さんのタクシーがレッカー移動される。
「ウソウソウソ!」と言いながら慌てて駆け付け、ミニパトに乗っている婦人警官に「明日で、3年間無事故無違反(個人タクシー資格の要件)なんだから、頼むよ」と懇願するも拒否される。ミニパトのボンネットに乗ってさらに土下座する夜明さん。


トリッキー土下座

個人タクシーの夢を壊したことを謝るあゆみちゃんと、いいよいいよと言ってあげる夜明さん。ビンタすごかったね、という話から、「殴るときさ、グーは絶対ダメだよ」と楽しそう。「お父さんがそばにいてくれたから戦えた」と言ってネクタイを直してあげるあゆみちゃん。留学したいからそんなに優しくするんだろう、と夜明さんは言うけど、この会話の間、ずっと二人とも笑顔で、和んだ空気のままエンド。

本当はお互いに愛情を持っているのに、感情表現が下手すぎで対立してしまった父と娘、父を殺した犯人が自分の婚約者であると知って、父への愛情ゆえに婚約者を殺害するという、悲しい愛情表現。とか、こんな感じの物語になるはずだったんだろうけど、いかんせん、島田さんの行為がひどすぎて、「愛情を持っているけど感情表現が下手で拗れた」というレベルに収まらず、物語の根本が壊れてしまっているように思う。「大人になれない」→「大人になったね」も、そのせいであまり効かなかった。
推理の経過はタクシードライバーならではの視点も見えて面白かったし、オープニングとラストのあゆみちゃんと夜明さんのシーンは本当に好きだし、個人タクシーへの挑戦という大事な回なんだけど、メインのストーリーがちょっとなぁと思う、とても残念な回。

 

 

エンディングテーマ。Kiroro 「もう少し」