「 追跡する女乗客の秘密 」 (2003年)

(ゲスト)
鳴海久美子…藤田朋子、 浜野弘子…高木りな、 高橋香織…永田めぐみ、 中川公彦…神保悟志、 神辺光雄…宇梶剛士、 松田豊…温水洋一

オープニング。前回に引き続き蓉子さんも深見さんも登場しない。いきなり本編の内容と絡むコント。
中年男性を尾行している久美子が夜明さんのタクシーに乗り込む。夜明さんの元刑事スキルのおかげで尾行は成功し、中年男性が愛人とラブホテルに入るところをきっちり撮影。久美子がその場で依頼主(男性の妻)に電話で報告したところ、依頼主がふらふらしながらスクーターでやってきて、ホテルの部屋に特攻。ホテルの備品をまき散らしながら路上でキャットファイト。ここまでの展開、軽快でお気楽な音楽とも相まって、すごく楽しい。



コルァー、でてこーい、ここにいることは分かってるんだぁー



お手本のようなキャットファイト


警官が臨場して事情聴取。「夜明警部補ではありませんか」と言われ、事情聴取に協力するようお願いされるが、痴話げんかに事情聴取もないだろう、仕事があるからと断り、逃げるように去る夜明さん。しばらく走って、料金を精算しなかったことに気づき、車を急停車。「バカバカバカ、夜明のバカァー」と泣きそうな顔で言う夜明さんがかわいい。

弘子の部屋にストーカーから電話。弘子はすぐに久美子に報告。「心配しないで、後で必ず行くから」と励ます久美子。

車庫に戻って洗車中の夜明さん。お客さんが連れていた犬が車内で粗相をした後始末。「困りますよ、この稼ぎ時に車庫に戻られちゃ」と文句を言う小倉さんに、「そんなこと言ったってしょうがないだろ、俺がさぁ、うんちしたわけじゃないんだから。お客さんの犬が、車の中でうんちしちゃったんだから」。この会話が、なんとも間抜けで好き。
小倉さんがガミガミ言うのは、先日の料金取忘れの件もあるため。「あなた何年タクシードライバーやってるんですか」とさらに説教する小倉さんに、洗車用のブラシで小倉さんの靴を磨くという攻撃に出る夜明さん。小倉さんが係長の時って、実力行使の場面が多い。小倉さんのキャラクターだろうか。

そんなところへ久美子から夜明さんへのご指名。久美子の職業は探偵。先日の尾行の際、乗務員証で夜明さんの名前を確認しており、未払いだった料金を支払った上、先日のお詫びとお礼を兼ねての貸切。今日は、ストーカーに悩む女性(弘子)の家を見張る仕事。
張り込みの中で、「どうして警察を辞められたのですか」のやり取りと、久美子が警察に不信感を持っているようなセリフ。
弘子の家の前に不審な車。久美子が写真を撮ろうと近づいたところで急発進。車のナンバーの撮影には成功。

ストーカーの存在に、弘子は精神的に限界な様子。それを見て、夜明さんも調査に協力するため、東山に電話をして不審車のナンバーを知らせ、その車について調査するように依頼。寝ていたところを起こされた東山、ストーカーは所轄の生活安全課の管轄、と渋るけど、最後は協力させられる。このときの東山のアイマスク、馬鹿馬鹿しくて大好き。



背中で仕事をするケンコバさん


殺人事件発生で臨場する東山。被害者は松田豊。車の中で死亡。その車のナンバーが、夜明さんから調査依頼を受けたナンバーだったことから「あらぁ、まただ。夜明日出夫」と諦めたように呟く東山。

翌朝、あゆみちゃんが朝ごはんを作る炊事の音で目を覚ます夜明さん。「ごめん、起こしちゃった?」と言うあゆみちゃんに、「いやいや、もうさ、起きようと思ってたんだ」と答える夜明さんの口調がとても優しくて、大好きな場面。
そんな、ほんわか幸せな雰囲気で始まった朝の風景だけど、あゆみちゃんのバイト話から雲行きが怪しくなる。あゆみちゃんのバイト先は週刊誌の編集部。忙しいので徹夜は当たり前で、普段は始発で帰るという労働環境。お母さんが反対するのでお父さんから何とか言ってくれないか、という相談だけど、当然、夜明さんも「反対!」。「始発っていうのはね、乗って、行くもんなの。始発で帰るって何言ってんだい」とごもっともな意見。さらに週刊誌はあることないこと書く、という過去のトラウマまで発動して親子喧嘩勃発。

そんなところへやってくる東山と国代。殺された松田が借りたレンタカーのことを、なぜ夜明さんが調べていたのかを尋ねる。
夜明さんから久美子の情報を得て、久美子、次いで弘子から事情聴取。弘子は松田のことを全く知らず、ストーキングされる心当たりがない。

松田は元警察官だが、現在の職業はトップ屋。警察官時代のコネを使ってゴシップネタを収集し、三流週刊誌に売り込むフリーライター。

夜明さんに久美子から再度の指名。房総へのロング。「真紅な海が呼んでるぜ、なぁんて映画、昔あったなぁ」と、ノリノリのセリフと音楽でお兄さんの映画をさりげなく宣伝して、嬉しそうに車を走らせる。

久美子のリクエストで明神岬に立ち寄る。崖の上から花束を海に投げ入れ手を合わせる久美子。崖の上から夜明さんが待つタクシーに戻る途中で、男に襲われ、頭と腕に傷を負う。
かかった医者に一日安静にしていた方がよい、と言われ、鴨川で一泊することに。夜明さんがホテルで部屋を取り、会社に連絡を入れ、久美子の元に戻ると、久美子が男性ともめている。夜明さんが近づくと男性はそのまま立ち去り、久美子は昔の知り合いと説明。

ホテルの部屋が一部屋しか取れなかったため、一緒の部屋で泊まることになった夜明さんと久美子。部屋がメゾネットタイプで階が分かれている上、この二人はまったく色っぽい感じがせず、親子のようなので、妙な安心感がある。

松田が殺される2日前に、松田の預金口座に200万円の振り込みがあったことから、神谷さんは、松田が掴んだネタで誰かをゆすっていたのではないかと推理。
その200万円の振り込みが、千葉銀行鴨川支店で行われていたことから、東山たちが同支店へ聴き込みに。防犯カメラに振り込んだ男の姿が写っていたが、顔は分からず。
帰り道、大雨に降られて路上に立ち往生している東山たちのところへ夜明タクシーが通りかかる。松田殺しの捜査状況を尋ねる夜明さんに、民間人には教えられないと拒否する東山。その仕返しか、送ってやるよ、と乗せておきながら、途中の、1、2時間に1本しか電車が来ないような中途半端な駅で二人を降ろす夜明さん。ひどい。「いいんですか、あの人たち?」と心配する久美子に、「大丈夫でしょ。走るか泳ぐかして帰るでしょ」と答える夜明さん。さらにひどい。

東京に帰る途中、看護師である弘子が勤める病院に寄って、久美子の頭の怪我の診察をしてもらう。結果は異状なし。
この時、弘子と着メロの話。久美子からの電話には”少年探偵団”の着メロを設定した、と嬉しそうに話す弘子。ただ、ストーカーである松田は死んだはずなのに、昨日また、ストーカーから電話があった、という話も。
夜明さんが携帯を持たない話はここで。理由は「束縛されているみたい」だから。

夜明さんがゴミ出しに家を出たところで、タクシーから降りるあゆみちゃんを目撃。送ってきたと思われる若い男性が「じゃあね、あゆみちゃん。オ・ヤ・ス・ミ。僕の夢でも見てね(投げキス)」なんてことしたもんだから、夜明さん、「僕の夢でも見てねって、バカじゃないの。ナニコレ(投げキス)、ナニコレ(バイバイ)」と身振り手振りを交えながら激怒。さらに漂う酒の匂いも鋭く感知しガミガミ説教。お疲れ様の乾杯しただけ、大人なんだからいいでしょ、バカみたい、と反発するあゆみちゃんと最後は子どもの喧嘩に。あゆみちゃんの態度もよろしくないけど、夜明さんも過保護で大人げない。

東山たちは松田に関する情報を収集するため、再び行きつけのバーに。バーテン(今回はここに深見さん)から、松田が神辺という男と2人で来て、カネの分配でもめていた、という情報を得る。

久美子から夜明さんに、再び貸切の依頼。今回の仕事はある会社の従業員の身元調査。対象者の名前は今田次郎。
仕事が終わった後、鴨川のお礼、という名目で、夜明さんをカフェに誘い、その後さらに自宅でイタリアンをご馳走する、と申し出る久美子。夜明さんと一緒に自宅に戻ったところ、部屋の中は何者かに荒らされていた。警察に連絡しようという夜明さんに対し、「警察は頼りにしていませんから」と言う久美子。ことあるごとに久美子の警察不信が挿入される。

夜明さん、東山たちと会って、久美子のことを話したり、捜査状況を聞き取ったり。
そして、鴨川で松田を見たという目撃情報が出たので、これから鴨川へ捜査に行く、という東山たちに、送るよ、と申し出る夜明さん。公務員を送ると賄賂になるのでは?と言う東山に、「心配すんなよ、料金さ、ちゃんと取るから」と答える夜明さん。「絶対乗らない、電車大好き、な」と言いあう東山たちがかわいい(けど、結局、夜明さんに連れ去られる)。

鴨川での捜査。松田が会っていたのは、県会議員の中川公彦。中川は、鴨川のホテルで久美子ともめていた男性だった。
中川は松田と会っていたことを認め、松田から鴨川に戻りたいので就職の世話をしてほしいと頼まれたと供述。
さらに、松田がバーでもめていた神辺の情報を収集する中で、数年前に鴨川で、神辺光雄という男が婦女暴行事件を起こしていたことが判明。神辺は、看護学生だった高橋香織をレイプ、香織はそのショックで自殺。神辺は以前から香織をつけ狙っていて、家族が交番に相談をしたが、担当した警察官が真剣に取り上げなかった結果、事件が起きてしまった。この警察官が松田。
香織が自殺した後、警察の対応が批判され、松田は責任を取らされて退職。さらに、中川は香織の姉と婚約をしていたが、香織の事件をきっかけに別れ、香織の姉は鴨川を出て行った。

東山たちとの夜明宅での捜査会議が終了し、仲直りのために夕飯を食べにくる(作るのは夜明さん)あゆみちゃんを待っているところへ、あゆみちゃんが「ストーカー!」と言いながら駆け込んでくる。東山たちが取り押さえた不審な男は神谷さん。
神谷さんが持ってきた情報は、神辺の犯行の被害者、高橋香織の姉は高橋リョウコ、現在は、鳴海久美子という偽名を使って探偵をしている、というもの。

そこへ、久美子から夜明さんに「人を殺した」という電話が。神谷さんたちと一緒に久美子の家に急行したところ、久美子の部屋で死んでいたのは神辺。
取り調べの中で、久美子は、待伏せしていた神辺にレイプされそうになり、抵抗するために花瓶で頭を殴ったら神辺が動かなくなった、と供述。4年前の事件も、神辺が狙っていたのは実は久美子で、香織はその身代わりになったという事情があった。
神辺が使っていたデジカメから、久美子をつけ狙っていた写真や久美子を襲った時の写真が出てきたため、正当防衛が認められ、久美子は釈放される。

釈放された久美子を迎えに行ってあげる夜明さん。労わる夜明さんに、探偵の仕事に戻る、と言って弘子に電話をする久美子だが、電話は通じない。弘子が勤める病院に連絡しても、無断欠勤をしているという回答。弘子の自宅に行っても不在。溜まっている新聞の様子から、昨晩から家に帰っていない様子。

松田に200万円を振り込んだのは中川であることが判明。中川はその事実を認め、振り込んだのは、前回の選挙で選挙法違反を行ったことをばらす、と脅されたから、と話す。

神谷さんは、妹を死に追いやった神辺と松田を憎んでいる久美子が怪しいのでは、と思っているが、夜明さんは強く否定。

弘子が遺体となって発見される。その直後、男が「女の子の首を絞めて殺した」と自首。犯行時刻は、久美子が襲われた時刻とほぼ一緒。
男は、弘子のストーカー。変な着メロがなったから殺した、人ってあんなに簡単に死んじゃうんですね、と罪の意識をまったく感じていない様子。男の名前は今田次郎。以前、久美子が従業員の身元調査、と言って調べていた人物。

今田が聞いた着メロが少年探偵団だったことから、久美子が神辺に襲われたことになっていた時刻に、久美子が弘子に電話をかけていたことが分かる。さらに、夜明さんが、久美子が神辺に襲われたときの写真はセルフタイマーで撮ることが可能ということに気づいた結果、神辺は久美子を襲っておらず、正当防衛は久美子の偽装、という結論に。

明神岬で告白タイム。松田を殺したのは久美子。弘子の家の前で夜明さんと一緒に張り込んでいた時に見た不審な車を運転していたのは松田ではなく中川。神辺殺しは正当防衛ではなく、計画的な殺人。
久美子は香織が自殺した後、事件を忘れようとしたのに、松田と神辺が、香織をレイプしたときの写真をネタに久美子を恐喝しようとした。久美子はきっぱりと断ったが、その後、松田は中川のところへ行き、同じネタで恐喝。香織を妹のようにかわいがっていた中川から200万円をゆすりとった。それを知った久美子は松田と神辺を許すことができず、犯行を計画・実行。中川は途中で久美子の犯行と気づいたが(鴨川のホテルでもめていた場面)、久美子と香織を守るため、200万円は選挙法違反で脅し取られたと供述。
「誰も守ってあげられなかった。香織も、弘子ちゃんも、誰も救ってあげられなかった」と泣き崩れる藤田さんの熱演につられて、いつも貰い泣く。中川が最後までいい人で、一人じゃないって夜明さんのセリフで、そうだね、よかったね、ってなる。

エンディング。相変わらず編集部でバイトを続け、帰宅時間が遅いというか早いというか、というあゆみちゃん。いろんな人が送ってくれるから大丈夫、というあゆみちゃんに、送り狼になっても知らないから、と不機嫌な夜明さん。いざというときはこういうものがある、と取り出した防犯ブザーを、「こんなおもちゃで身が守れるか?」とバカにする夜明さんだけど、鳴りだした防犯ブザーにうろたえ、周囲に「親子ですから」と必死にアピールし、「あゆみ!」と怒鳴ってエンド。


事件にまとまりがあり、意味がない場面があまりなく、伏線をきちんと回収するので、最後まで気持ちよく見ることができる。久美子の明るく頼りがいのある探偵、というキャラクターに好感が持てるし、犯行も、ずっと恨んで、というよりクズ被害者が自分たちから仕掛けてきて、こらえきれずに成敗、という感じなので、非情に同情できる。なにより、妹を守り切れなかった後悔から、弘子(看護師ということで香織を重ねているところが多分にあったと思う)を守り切ろうとしたのに守れなかった、しかもその原因は、香織の復讐を果たそうとして弘子のことを後回しにしてしまったから、というのが切なく、久美子の慟哭が胸に迫る。とても好きな作品。


エンディングテーマ。ゴスペラーズ 「北極星」

「  完全犯罪への抜け道 」 (2002年)

(ゲスト)
永峰千鶴子…古手川祐子、 岡部昌江…渡辺梓、 堀内則文…田山涼成、 岡部清志…木下ほうか、 秋津彰一…下塚誠、 堀内美奈…三国由奈、 秋津茜…小笠原茉莉、 高橋…青島健介、 城ノ島…片桐竜次、 三田…河西健司

オープニング。珍しく蓉子さんも深見さんの登場せず、関西風おばちゃんとのコント。新幹線に間に合わないと焦っているおばちゃん、後部座席から前の助手席に無理やり移動した挙句、夜明さんの足を手でギューっと押してスピードを出させる荒業。でも、ネズミ捕りに捕まって車を止められて、2人の警察官から事情聴取を受ける。一人は「夜明警部補ではありませんか?」だけど、もう一人は「刑事だった人が交通規則を守らないなんて」とご立腹。夜明さんが、お客のおばちゃんが無理やり、と説明しようとしたとたんに、おばちゃんとんずら。「俺じゃねー」と叫んでも聞く耳持たない警察官ともみ合いながらフェイドアウト。今回、コントの切れはいまいち。

夜、流しの営業で堀内美奈を乗せた夜明さん。美奈は自宅までの道中、携帯電話の相手とずっと口論をしている。美奈の様子から、相手がいったんは美奈の家に行くと約束をしておきながら、それを反故にしたらしいということが分かる。
この口論の中で、美奈が「ざけんなよ!」というセリフを言うけど、いかにも言い慣れていない風のぎこちないイントネーションが妙に耳に残る。

翌朝、美奈が自宅で絞殺死体となって発見される。第一発見者は父親の堀内則文。美奈と堀内は父一人子一人の二人家族。昨晩は、堀内が出張で不在。翌日、帰宅した堀内が美奈の遺体を発見。
美奈、シリーズトップクラスの死に顔の怖さ。目をガッと見開いて、顔色が悪くて。画像を張りたかったけど、閲覧注意になってしまいそうなので自粛。しかしこの娘さん、美人さんなのにこんな表情になって、将来大丈夫だったのかな、と心配になってググってみると、すっかり美しくなって女優を続けているようだったので安心した(公式→http://abp-inc.co.jp/member/marina-kozawa)。貫地谷さんと同じ事務所に所属してるんだ。ご縁だな。

美奈殺しの容疑者として美奈の高校の担任である岡部清志が逮捕された。岡部は美奈と付き合っていたらしい。公判で被疑事実を否認。夜明さんは美奈が携帯で話をしている様子を目撃していたので、裁判所に証人として呼び出される。
千鶴子は岡部の弁護人。岡部の妻 昌江に、岡部は犯行時刻、家にいたとの証言をさせた後、夫婦の不仲(アルコール、ギャンブル、DV)も供述させ、昌江が嘘をついてまで岡部をかばう証言をするわけがない、と印象付ける。さらに、夜明さんには、美奈の様子から、美奈の通話相手が美奈の家に行くつもりがあったと思ったかどうかと尋ね、「行くつもりはなかったと思います」という証言を引き出し、裁判官の心証を無罪に傾ける。しかし、昌江の証言はともかくとして、夜明さんの証言はなぁ。まさに「憶測を求めるもの」だから、意味ないんじゃないのかなぁ。千鶴子の有能さを示そうとしたんだろうけど、なんだか空回りな感じ。

裁判後、神谷さんたちに”弁護人の口車に乗ってあんな証言をして~”と責められる夜明さん。岡部は美奈と付き合っていただけではなく、美奈に300万円の借金もあった。その金は、美奈が父の預金を無断で引き出して調達。すぐに返すという岡部の言葉を信用しての行為だったが、岡部はその約束を破って返さない。このような金銭上のトラブルに加え、美奈の遺体に岡部の毛髪が付着しており、神谷さんたちは岡部は黒と思っている。

千鶴子はヤメ検の弁護士。神谷さんは、千鶴子が検察官だったとき、一緒に捜査をしたことがある。

美奈は岡部以外の複数の男性とも付き合っていたことも判明し、結局、岡部は無罪になる。捜査はやり直し、ということでもう一度夜明さんに事情を聴きに来る神谷さん。ここで神谷さんが夜明さんに見せる美奈の写真が怖い・・・。
美奈が無罪になったショックで堀内は仕事を辞めた。堀内のためにも犯人を挙げたい、という神谷さんに、担任と付き合い、親の金を勝手に引き出し、複数の男性と交際していたた美奈について「親の心子知らず、か」と言う夜明さん。ここからお互いの子供の話になり、神谷さんの娘について「お前の娘は化粧してもしょうがねぇもんな」と腐す一方で、あゆみちゃんを「品行方正。あゆみ、大人だよ。恋してもおかしくない年頃なのに男なんか見向きもしないで、大学院で勉強一筋。品行方正って書いたらああいう風になるね」と自慢。どうしたの、夜明さん、前回、合コン行きまくってたの忘れたの?

男性の乗客が電話で「ディナーはフレンチでいいよね。あゆみちゃん、オマール海老好きだもんね」と言っているのを聞いて、ピクッと反応する夜明さん。その客が、「あっ、いたいた。運転手さん、ここで止めて」と言って、乗り込んできたのはあゆみちゃん。
お互いに知らないふりをしてしばらく走っていたけど、あゆみちゃんが男とフレンチのディナーを食べるということが許せない夜明さんの表情が険しくなって「大学院出ても、この不景気じゃ、なかなか就職は大変だよね。あゆみちゃん、結婚、考えたことないの?あのさぁ、こんなこと言うのなんだけども、今度、一度お父さんと会わせてくれないかな?」という一言で爆発(今、あなたの目の前にいる人殺しの目をした人がお父さんですよ!)。車を急停車させて、「降りろ!降りろ!」を連呼して強引に二人を降ろす。

翌日、夜明さん宅であゆみちゃんと大げんか。昨日の男は大学院の講師。美奈のことで、”生徒と付き合う教師”への嫌悪感がストップ高になっている中で、「結婚を前提に交際してほしい」と言われた、というあゆみちゃんの言葉に切れる夜明さん。売り言葉に買い言葉でさらにヒートアップ。「勝手な時だけねぇ、父親面しないでよ!」というあゆみちゃんの言葉に夜明さんのビンタが飛ぶ。「嫌い!」とあゆみちゃんは飛び出し、夜明さんはドアに向かって味噌汁(インスタント)を投げる、という、シリーズ中、もっともはげしい喧嘩に。

でも、一人暮らしの悲しさで、投げた味噌汁の後始末を自分でしながら東山に電話をする夜明さん。あゆみちゃんと仲直りしたくて、仲介のお願い。第8作でも仲直りの仲介、頼んでたなぁ、と懐かしくなった。
そんな会話を脇で聴いていた神谷さん。先日娘を腐された恨みを晴らそうと、最高の煽り顔で電話に介入。この煽り顔が人をイラっとさせる要素に満ち満ちていて、とても面白い。



「夜明さん、品行方正なあゆみちゃんが、どうかしたんですか」


一週間後、夜明さんに千鶴子から迎車の指名。千鶴子の事務所に迎えに行くと、昌江が相談中。岡部は相変わらずアルコール、DV夫で、離婚にも応じてくれないので離婚の裁判をしたいという依頼だが、千鶴子はこれを断る。

夜明さんを指名したのは、裁判で有利な証言をしてくれたお礼とのこと。行く先は、群馬県新田郡藪塚温泉。この道中で、「どうして刑事をお辞めになったのですか」の会話。今回のテーマソングはイエスタデイ。そこかしこで流れる。

藪塚温泉へ来た目的は、離婚して夫が引き取っている娘 秋津茜に会うため。岡部の弁護を引き受けたのは昌江が茜の小学校の担任だった、という縁。離婚のときどうして娘さんを引き取らなかったのか、という夜明さんの問いに対し、娘は重荷、娘がいたら仕事が思うようにできない、と答える千鶴子。でも言葉とは裏腹に、茜に会ったら、お互いにとても嬉しそうで、楽しそうな様子を見せる。

岡部を堀内が刺殺。「事件の夜、岡部が部屋に来て、人を殺したと言って凶器のネクタイを隠していった」という匿名の手紙と血がついたネクタイが送られてきて、岡部が真犯人だったと確信したための犯行。
しかし、その送られてきたネクタイを調べたところ、美奈のものではなく、血も人間の血ではないことが判明。堀内は、嘘の手紙に操られて岡部を殺した、という結果になる。

堀内は、千鶴子に弁護を依頼する。堀内にとっては当てつけ。岡部を無罪にしたことを後悔させるために弁護を依頼したんだ、と言う堀内に、「私の仕事はあなたの弁護をすることであって、後悔することではありません」と、ぴしゃりという千鶴子はかっこいい。

夜明さん宅に集まって事件の話。娘は重荷、という言葉がひっかかったのか、千鶴子に好意を持てない夜明さんと、「あの人は、人間的にも立派な女性です」と、千鶴子に好意的な神谷さん。そんな神谷さんの千鶴子の好意を「子供4人もいて、よく言うねぇ」「神谷、だいたい、ああいう、プライドの高い、鉄の女に弱いんだよ」とからかう夜明さん。神谷さんは、奥さんも鉄の女タイプらしい。それから、神谷さん、前は6人の子持ちだったけど、本作以降は4人の子持ちに。

手を汚さずに岡部を殺したいと考えていた人物として、離婚でもめていた昌江が容疑者に。

堀内と千鶴子のやり取りは結構見ごたえがある。仮に、岡部が皆殺しの真犯人だったとしても、自分は同じように弁護をした、どんな人間にも守られるべき人権がある。証拠のない人間を有罪にはできない。子供を奪われた悲しみがどれほどのものか、自分にはよくわかる。堀内も、人殺しだけど守られるべき人間。

夜明さんに千鶴子から再びロングの指名。今度は、藪塚温泉で茜をピックアップして一緒に日光へ。日光に行ったのは堀内の妹に会って、情状証人として法廷に出てもらえないかとお願いをするため。
千鶴子が堀内の妹と話をしている間、夜明さんと茜が会話。東京よりも群馬の方がいい、東京では、どうして弁護士は悪い人の味方ばっかするのか、とママの悪口を言われてたから、と話す茜に、弁護士バッジの天秤を正義の味方と言い、「お母さんは正義の女神」と言ってあげる夜明さん。優しい。

茜と日光観光を楽しんだ後、藪塚温泉へ送る。別れ際、千鶴子に「先生が来ても、私、ママに会っていいんだよね」と言う茜。

藪塚温泉で一泊する千鶴子と夜明さん。温泉と豪華料理を堪能する。夜明さんが茜にかけた「正義の女神」という言葉に感謝する千鶴子。警察が不祥事を起こすたびにあゆみちゃんに嫌な思いをさせた、そのときの思いと重なるものがあった、と話す夜明さん。

翌朝、昌江が遺体となって発見される。
それまでの捜査で、昌江に恋人がいたこと、その恋人は生徒の父兄である可能性があることが判明。夜明さんは、「先生が来ても、私、ママに会っていいんだよね」という茜の言葉から、昌江の恋人は千鶴子の別れた夫ではないか、と推理する。

東山に言われ、しぶしぶ夜明さんの家にやってきたていのあゆみちゃん。夜明さんも本当は嬉しいくせに初めはそっけない態度。でも、夜明さんの方から「殴ったのはよくない。謝る。ごめん」と謝り、それに助けられてあゆみちゃんも「私も、ごめんなさい」と謝ることができた。夜明さんとあゆみちゃんは、等身大の、どこにでもいそうな、親子あるあるを見せてくれるのが、好き。



お互いに、ごめんなさい。かわいいなぁ。

と、丸く収まりそうだったのに、東山からの電話で夜明さんの頭が捜査モードになり、あゆみちゃんの相談も上の空で聴いていたことにあゆみちゃんがオコ。でも、あゆみちゃんの相談内容がまた、就職厳しいから留学しようかな、だったので、夜明さんもオコ。で、結局、喧嘩再発で、帰れ帰れ、となったけど、あゆみちゃんが部屋に入ってからすぐに外したイヤリングがヒントタイム。

美奈が殺されたときイヤリングをしたままだったことから、美奈が殺されたのは美奈の自宅ではなく、岡部の家だったのではないか、という推理。これで岡部のアリバイが崩れる。
また、美奈の首に出血があったことは報道されていなかったことから、堀内に送り付けられたネクタイに血がついたいたのは捜査資料を読むことができる人物、すなわち千鶴子ではないか、と推理する夜明さんとそれに反発する神谷さん。いつもの構図と逆パターン。

堀内と千鶴子の会話。堀内はだいぶ千鶴子に心を許している様子。千鶴子の「人を殺して、後悔しない人間などいません」というセリフは、自分に向けてのものだろうな。

藪塚温泉で、昌江が殺された日の千鶴子の行動を捜査。タクシー会社で聴き込みをしたところ、千鶴子らしい女性を夜、日光へ送ったというタクシー情報あり。そのタクシーの運転手がなぜか深見さん。今回はまじめな役。
日光からは東京へ深夜バスが出ていたため、これを使えば、夜、夜明さんと夕食をとった後でも、東京に行き、昌江を殺害して藪塚温泉へ戻ることは可能。ただ、昌江のマンション最寄り駅である浅草橋周辺で聴き込みを行っても、千鶴子の目撃情報は得られず。

夜明さんからのアドバイスで防犯カメラも確認対象に広げた結果、千鶴子らしい女性が、女の子とぶつかり、その女の子を助け起こした、という証言が得られる。

藪塚温泉で告白タイム。千鶴子らしい女性が千鶴子であることは、千鶴子が女の子を助け起こしたときに、千鶴子がしていた手袋にその女の子の指紋が残されたことで証明される。手袋をして自分の指紋を残さない準備はしたのに、その手袋についた指紋が証拠になる、というのは逆の発想で面白いなぁと思ったし、娘を思い出させる女の子に手を差し伸べたやさしさが命取りになったのは皮肉でまた面白いなぁと思った。

岡部を殺させるために堀内に手紙とネクタイを送ったのは千鶴子。岡部を殺したのは、真犯人である自分を弁護士が無罪にしたと公表する、と千鶴子をゆすったため。昌江を殺したのは、昌江が秋津と再婚することで茜を奪われてしまうと思ったから。
岡部殺しの動機はともかく、昌江殺しの動機はちょっとなぁ。夜明さんは、自分のことより、茜のことを思ってでしょ、という感じで言うけど、結局、自分のためだし。


エンディング。卒業後の進路について、結婚を抜け道にするようなことはしない、と言うあゆみちゃんだけど、ウエディングドレスを窓越しに凝視。抜け道ってないんだよ、人生の渋滞に巻き込まれても、まっすぐ前向いて、と親子でわちゃわちゃしながらエンド。


わちゃわちゃがかわいい


千鶴子の昌江の殺害動機がどうもひっかかってしまうけど、千鶴子と堀内のやりとりは見ごたえがあったし、人を殺して後悔しない人間はいない、というセリフも皮肉が聞いててよかった。夜明さん親子の大げんかと神谷さんの最大級の煽り顔は必見。古手川さんもすごくきれいだった。

エンディングテーマ。ZARD 「promised you」

「  二つの顔を持つ乗客 」 (2001年)

(ゲスト)
水嶋怜子…藤真利子、 水嶋初江…正司歌江、 水嶋正幸…近童弐吉、 沢井誠…春田純一、 田之倉隆三…中山仁、 田之倉和代…江口ナオ、 藤田克彦…神田利則、山内祥一郎…成瀬正孝、 青井里美…伊藤美紀

オープニング。タクシーで急患を運ぶときは、あらゆる面で細心の注意が必要。
深見さんと蓉子さんの詐欺夫婦、枕をお腹にいれて妊婦を装い、病院到着時のどさくさに紛れてタクシー代をちょろまかそうとするが、枕の穴から出たそば殻が大量にタクシーに残ったことで夜明さんに気づかれ、御用。
道中の車内でのやり取りが面白かった。「生まれる、生まれる」と叫ぶ蓉子さんに、よせよ、タクシーの中で生まれたら子供が不憫だろ!と返す深見さん。二人でヒー、ヒー、フーとラマーズ法を実践。でも、それ、生まれちゃうやつじゃないの?
臨場した警察官との「夜明警部補ではありませんか」、「被害届、適当に書いといて」のやり取りの後、おばあちゃんが停車中のタクシーに乗っているのを発見。客ゲットと思いきや、徘徊中のおばあさんで、そっちに警察官が対応している隙に、深見さんたちは逃げようとするし、とカオスな状況に。「商売になんねぇよ」と夜明さんが愚痴るのも無理ない。

今回、いつものテーマソングが復活。やっぱりこれでないと。

稼ぎが少ないことを愚痴っている夜明さんに迎車の指示。横浜までのお客さんと聞いて「一万円コース、ラッキー」と喜び勇んで向かった先は、怜子がママを務めるクラブ「砂の城」。客(成瀬さん演じる山内)が体調を崩したので、タクシーで横浜までお願いしたい、との依頼だったのだけど、一緒に乗り込んだ怜子が、山内の容体を心配にして、横浜ではなく麻布で降りることに。「横浜・・・じゃなくて、麻布・・・ですよね」と落胆する夜明さんに、「ごめんなさいね」という謝る怜子。

青井里美と同棲していた「松井秀喜」が鈍器で殴られて死亡。「松井秀喜」は偽名。里美は1年くらい前に大阪で知り合って付き合うようになり、半年前、一緒に東京に出てきたが、本名は知らないままだった、という。身元の手がかりは、「松井」が言っていた「遠州の人間はやらまいか」という言葉。

大同交通では介護タクシーの導入を検討しており、すでに運用を始めている浜松タクシーに夜明さんが研修に行くことに。
命じられた当初は嫌々だった夜明さんも、いざ出発してみると、「うなぎ食って、温泉に入って、あと何食うかなぁ」と結構ノリノリに。

研修で、介護タクシーに設置されているいろいろな装置を見学する夜明さん。さらに、「一度試着してみて下さい」と、大人用紙おむつを渡される。これが後のカオスの元に。

浜松タクシーの運転手で、介護ヘルパーの資格を持ち、夜明さんを案内してくれる沢井。女手一つで育ててくれたお母さんが脳溢血で倒れて、寝たきりになり亡くなった、という経験があるから、介護は他人ごとではない、という思いで、親身になってやっている。ブラックが定番の春田さんが珍しくホワイト。

沢井のタクシーの無線に、徘徊老人の保護要請の連絡。中田島砂丘を、初江が、犬のぬいぐるみを引きずりながら歩いているところを保護。 初江は怜子の姑。 怜子も駆け付け初江が保護されたことに安どした様子を見せる。夜明さんは、怜子が、”横浜までラッキー→麻布かよ”の客だと気づくが、怜子が初対面であるかのように振舞うので、空気を読んで、それに合わせる。

初江は、4年前に転んで足を骨折したことがきっかけで認知症を発症。怜子は、初江を施設に預け、ウィークデーは東京で働いているが、週末になると浜松へ帰って初江を家に引き取り、世話をしている、との沢井の説明。沢井は怜子が水商売をしていることを知らない。さっき怜子が夜明さんと初対面のようにふるまったのは、水商売をしていることを知られたくないから。
そんなところへ、現れる東山と国代。4日前に殺された「松井秀喜」は、怜子の夫で、初江の息子である水嶋正幸であることが判明。怜子が遺体を引き取りに行くことになる。

夜明さんの指示に従って、ホテルで待っている東山と国代。「オレンジ色がやってくるでしょう」という東山の言葉に合わせるように、窓の外に現れる夜明タクシー。「はい、来ましたぁ」。車から降り、窓ガラスの外に立って、ダラララララと両手でドラムのように窓ガラスを叩いた上でこっちに来い、と手招きする夜明さん。

分かりにくいけど、 ダラララララ

子供がやったら怒られるやつ

「早く乗れよ」「俺、仕事が終わって、東京に帰るところだから。ついでだから」と甘い言葉で誘い出す。そして、結果がこれ。

前に夜明さん、東山、国代の3人。後ろに怜子1人という無理な態勢。

警察に怒られるやつ。
そして、当然のように、ピッ、ピッっと上がっていくメーター。

タクシーの押し売り。ひどい。

狭苦しい車内で「松井秀喜」=水島正幸にたどり着いた経緯を説明する東山。遠州=静岡出身というところから、静岡県警に問い合わせたところ、捜索願が出されていた正幸にたどり着いた、とのこと。

怜子が遺体を正幸と確認。
正幸はもともと浜松市内で小料理屋をやっていたが、手を広げすぎ、借金で首が回らなくなったため、東京へ逃亡した。借金の時効が完成する5年逃げ切ったら戻ってくる、と言って出ていったが、出ていてから全く連絡がなく、不安になったので逃亡から1年後に捜索願を出した、という怜子の説明。

正幸殺しの第一の容疑者は、里美に言い寄っていた藤田克彦。ストーカーチックな行動と、犯行の前に、仕事を休んでいたことから、最有力な容疑者に。

捜査中の東山と国代のもとへ、田之倉隆三が訪れる。水嶋正幸が殺された、と報道で知って訪ねて来た、妻の和代を探してほしいという依頼。田之倉によれば、正幸は、東京へ、和代と一緒に逃亡したらしい。
正幸は、怜子という妻がありながら、和代と一緒に逃げ、その後、和代を捨て、里美に乗り換えた、ということになる。「水嶋っていうのはいったいどういう男なんですかね。女房がいるのに次から次へと女を作って」という東山の言葉が、すごくごもっとも。

怜子の店「砂の城」を訪れて、意味ありげな視線を怜子に送る田之倉。

夜明さん宅を訪れる神谷さんたち一行。神谷さんはタクシー代をお支払い。支払った分、元を取らないと言わんばかりに事件の相談をする。
和代が正幸と逃亡する際、2000万円を持ち出した。そのこともあり、和代と正幸の関係は地元では噂になっていたから怜子が知らなかったはずはない、そんな不誠実な正幸を怜子が黙って待ち続けたというのは不自然、怜子が怪しい、と言う神谷さんに対し、証拠がないのに決め打ちするのは物事を柔軟に考えられない証拠、老化現象だ、と非難する夜明さん。

そんなところへ、合コン帰りでほろ酔い気味のあゆみちゃんがやってくる。「お前遊ばすために大学院やってんじゃないぞ」「親の話を聞け」と怒る夜明さんに、「固いこと言わないの」「私は、残り少ない青春時代を精一杯生きてるの。今は親のことなんか考えたくないの」とわたままに反発する。これは悪いあゆみちゃん。
でも、バン、と扉を閉めて夜明さんの寝室?に入ったところで、夜明さんが研修でもらった大人用紙おむつを発見。「ごめんなさい、私、知らなかった。お父さんが、こんなことになってたなんて」「お父さん、ごめんなさい」と泣きながら謝るところがかわいい。これは良いあゆみちゃん。

「紙おむつ!」という東山と国代のユニゾンの後の、夜明さんの必死の否定と、皆さんの気まずそうな慰めが面白い。

神谷さん:私も時々ちびるときあるけど、そこまでは・・・(ちびるんだw)
東山・国代:恥ずかしくないです、恥ずかしくないです
あゆみちゃんが泣き崩れて、カオスの最高潮に



夜明さんに怜子から迎車の指名。浜松へ帰るのにタクシーを使いたいとのこと。事件の筋とは関係ないけど、正幸の葬儀に初江は参列させなかったことについて、「知らなくていい悲しみも、あると思うんです」という怜子の言葉にちょっと考えさせられた。
怜子の店は、名前が「砂の城」、店で提供した粗品が砂時計、店に貼ってある写真が砂丘の写真、と、怜子の地元(浜松、中田島砂丘)に対する強い思い入れがちりばめられている。

里美に対するストーカー行為を理由に藤田が逮捕される。
東山たちが、これで正幸殺しも解決か、と思ったところへ、神谷さんから「浜名湖で田之倉和代が自殺したらしい」という連絡。

浜松までの途中休憩で、怜子が夜明さんに「どうして刑事をお辞めになったんですか」と尋ねるいつもの会話。さらに、怜子の初江に対する献身に関する会話。「実の親じゃない、他人だからできるのかもしれません。介護って、そういうものでしょ」という怜子の言葉を、夜明さんは否定した上で「あなたは家族を大切にする人なんです」と言う。この夜明さんの言葉、怜子を励まそうとしてのものだけど、犯行動機を言い当てたものであり、後の「見透かされた気分になった」という怜子の言葉は、なるほどなぁ、皮肉だなぁと思った。

浜名湖に一同集合。浜名湖に浮かんでいるボートに、田之倉和代の遺書と血痕のついたペンダントが残されていたことから和代は自殺したものと考えられたが、遺体はあがらない。

神谷さんの命令で怜子の周辺を捜査する東山たち。車で来ている、と抵抗する東山たちを無理やりタクシーに乗せて、捜査に同行する夜明さん。タクシーの押し売り、今回も絶好調。
周辺への聴き込みから、初江は息子の正幸よりも嫁の怜子の方をかわいがっていたこと、和代の正幸への入れ込みようが半端じゃなかったこと、が分かる。

和代の遺体はあがらないが、鑑定の結果、ペンダントに付着していた結婚は正幸のものと判明。
さらに、警視庁に匿名の探偵から手紙が届く。その内容は、田之倉から依頼を受けて正幸と和代の所在を突き止め報告をした直後に正幸が殺された、というもの。これにより、正幸、和代いずれの殺人についても、田之倉が最有力容疑者に。

浜松に来たので、研修で世話になった浜松タクシーへお土産を持って挨拶に行く夜明さん。しかし、体調を崩し、浜松タクシー自慢の介護タクシーでホテルへ搬送される。
ホテルでの、夜明さんとの会話の中で、正幸と田之倉に対する嫌悪をあらわにする沢井。正幸は怜子を不幸にしたから、田之倉は金もうけのために何人もの人間を不幸にしてきたから、というのがその理由。

夜になり、ホテルで寝ている夜明さんの下へあゆみちゃんと東山・国代がやってくる。浜松タクシーに聴き込みに行ったとき沢井から夜明さんのことを聞いて、あゆみちゃんに連絡をしたとのこと。みんな優しいなぁ。
と思ったら、夜明さんの部屋になぜか並べてあった豪華料理を目の前に対した東山たち、寝ている夜明さんをそっちのけで(一応、食べていいですよね、と声はかけるけど)食事開始。みんなひどいなぁ。

その夜、田之倉がナイフで刺されて死亡。品川埠頭で遺体が発見される。

翌朝、夜明さんが泊まっているホテルへ、怜子がお弁当持参で見舞いにきて、あゆみちゃんと遭遇。怜子をぴったりマークし、監視の目を送って、「お父さんこそ、静岡に何しにきたのよ」と不機嫌になるあゆみちゃん。だけど、夜明さんとの別れ際には「お父さん、いつも言っているけど、好きな人ができたら結婚していいのよ。病気になった時、一人じゃ寂しいでしょ」と言ってあげるくらいには大人になった。
さらに、具合が悪くなったらすぐ電話して、と夜明さんに自分の携帯電話を貸してあげる。やさしい。

弁当の容器を返しに怜子を訪ねた夜明さん。怜子は初江と一緒にアルバムを見ていた。水嶋家が以前飼っていたが4年前によそへ譲った紀州犬タローの写真や、正幸と怜子がバイクにまたがっている写真など、さりげなくヒントタイム。さらに、初江の手首に拘束したような跡がチラリ。これもヒントタイム。

怜子の母は怜子が生まれて間もなく死亡、父も怜子が6歳の時に死亡。怜子の父の死因は砂丘での凍死。ここの夜明さんと怜子の会話の一部がかみ合っていない。なんでスルーしたのかな。

田之倉殺しに関しても怜子に疑いの目を向ける神谷さん。しかし、夜明さんへのお見舞いで浜松にいたことが立証されること、犯行時刻が深夜零時ころであることから東京から浜松へ移動する手段としてはタクシーしかないところ、それらしいタクシーはないことから、怜子のアリバイ成立。

怜子のアリバイを崩すため、殺害現場である品川埠頭周辺で聴き込みを行う東山たち。怜子の目撃情報はなかったが、沢井が乗っている介護タクシーの目撃情報が出る。
沢井が乗っていたタクシーのタコグラフを入手して、夜明さんに会いに行く東山たち。タクシーを止めて居眠り中の夜明さん、起こされたので3割増しな、というのはちょっといくら何でも理不尽すぎて引く。
東山たちの依頼は、田之倉殺しの犯人が行ったと思われる移動をしたら、沢井のタクシーのタコグラフと一致するか、という実験。結果は、一致。沢井の母は、田之倉の地上げで心労が重なり病死した。そのため、沢井は田之倉を恨んでおり、動機もある。

沢井を取り調べたところ、田之倉殺しを自供。

しかし、まだ怜子への疑いを捨てきれない神谷さんと、怜子をかばう夜明さん。
その会話の流れで、親の介護の話に。夜「年は取りたくねぇなぁ。親の世話するのもつらい、子の世話になるのもつらい、と」、神「人間は、親への愛情よりも子への愛情の方が強いのかもしれません」、夜「親に冷たく、子に甘く、かぁ」。本作は、本筋よりも脇道の会話で考えさせられるセリフがある。

また道端で居眠りしている夜明さん、携帯電話の着信音で起こされる。あゆみちゃんが貸してくれた携帯電話が鳴っていたもので、出たところ、若い男から合コンの誘い。

たちまち人殺しの目になる夜明さん。

するわけないだろ、殺すぞコラ!


そんな物騒なセリフの直後、犬を連れた女性がタクシーに乗り込んでくるが、メーターを倒した直後、犬が暴れだす。原因は、夜明さんのタクシーが禁煙車ではないから。犬は匂いに敏感、ということがヒントタイム。

夜明さんの推理:
田之倉殺しの怜子のアリバイは、怜子が浜松・東京間をバイクで往復すれば崩れる。水嶋家にあったバイクの、車検の時の走行距離と現時点の走行距離を比較すると、浜松・東京の往復距離と一致した。初江の手首に拘束したような跡があったのは怜子が浜松を離れる間、初江が一人になってしまうから。
タローを手放したのは犬小屋の下に和代の遺体を埋めるため。和代は正幸と失踪したのではなく、5年前に死亡していた。

「あなたの代わりに自供した沢井さんの気持ち考えたら、証拠が出る前に、あなた罪を認めるべきだ」という夜明さんの説得に応じて告白タイム。
怜子の父は、当時地面師だった田之倉に騙され、借金を背負わされて、自殺。家族をなくし、家族に強い憧れを抱きながら成長した怜子は、26歳の時、恋人に裏切られ、自殺しようとしたところを初江に助けられる。怜子はそのまま初江が経営する居酒屋で働き、正幸と出会って結婚。家族を取り戻した、という喜びの大きさが、正幸が象徴する家族への執着を生み、殺害へとつながってしまうのは皮肉。

和代の死亡は、正幸が失踪したことを知って水嶋家へ押しかけてきた和代を、初江が突き飛ばしたところ、打ち所が悪く死亡してしまったもの。
「今度は私がお母さんを守る」と、怜子は遺体はタローの犬小屋の下に埋め、隠ぺい。ペンダントはこの時に入手。このことを忘れたい気持ちが強かったから、初江は認知症になったのかもなぁ。

逃亡から5年経ち、正幸からの連絡に喜び勇んで駆け付けた怜子に告げられたのは、「東京でやり直したい」という身勝手な言葉。おまけに、浜松の家を売ってくれ、「おふくろはホーム、俺は東京、家なんかあっても仕方がないからなぁ」という言葉が怜子の逆鱗に触れ、発作的に撲殺。それにしても、正幸は徹頭徹尾クズい。

田之倉は、怜子が和代を殺したと考え、怜子を脅迫。怜子は、昔の憎しみもあって、田之倉を殺害。

夜明さんの説教は今回はあまり響かなかったけど、自首前に怜子が初江に会いに行ったとき、初江が怜子の手を握って「怜子さん、いつも、いろいろ、ありがとう」と言ったのには、少しウルッと来た。

エンディング。「お父さんが寝たきりになったら、私が面倒を見てあげるからね」と健気なことを言うあゆみちゃんに、「俺、ポックリ逝くって決めてんだもん」「あゆみは、自分のことだけ考えてりゃいいんだよ」と返す夜明さん。だけど、本日の予定、合コン3件、と聞いて、「お前、自分のことだけ考えすぎ」と前言撤回。さらに、かかってきた携帯電話に出て、「お前んところなんか行かねえよ、行くわけねえだろ、バカ、くそったれ」で、携帯電話を放り投げてエンド。

早くに家族を失ってしまったことから、新しく「家族」を手に入れたと思った喜びが、犯行の根底にあるのは皮肉で悲しくて興味深かったけど、正幸があまりにもクズいので、正幸に執着する怜子にあまり感情移入できないのが残念。ラストの初江は、べただけど、怜子の家族への思いが報われたような感じがして、よかった。介護を巡るセリフとか、小ネタとかも面白かったので、嫌いではない。でも、正幸がなぁ・・・。

エンディングテーマ。ZARD 「promised you」