「 追跡する女乗客の秘密 」 (2003年)
(ゲスト)
鳴海久美子…藤田朋子、 浜野弘子…高木りな、 高橋香織…永田めぐみ、 中川公彦…神保悟志、 神辺光雄…宇梶剛士、 松田豊…温水洋一
オープニング。前回に引き続き蓉子さんも深見さんも登場しない。いきなり本編の内容と絡むコント。
中年男性を尾行している久美子が夜明さんのタクシーに乗り込む。夜明さんの元刑事スキルのおかげで尾行は成功し、中年男性が愛人とラブホテルに入るところをきっちり撮影。久美子がその場で依頼主(男性の妻)に電話で報告したところ、依頼主がふらふらしながらスクーターでやってきて、ホテルの部屋に特攻。ホテルの備品をまき散らしながら路上でキャットファイト。ここまでの展開、軽快でお気楽な音楽とも相まって、すごく楽しい。

お手本のようなキャットファイト
警官が臨場して事情聴取。「夜明警部補ではありませんか」と言われ、事情聴取に協力するようお願いされるが、痴話げんかに事情聴取もないだろう、仕事があるからと断り、逃げるように去る夜明さん。しばらく走って、料金を精算しなかったことに気づき、車を急停車。「バカバカバカ、夜明のバカァー」と泣きそうな顔で言う夜明さんがかわいい。
弘子の部屋にストーカーから電話。弘子はすぐに久美子に報告。「心配しないで、後で必ず行くから」と励ます久美子。
車庫に戻って洗車中の夜明さん。お客さんが連れていた犬が車内で粗相をした後始末。「困りますよ、この稼ぎ時に車庫に戻られちゃ」と文句を言う小倉さんに、「そんなこと言ったってしょうがないだろ、俺がさぁ、うんちしたわけじゃないんだから。お客さんの犬が、車の中でうんちしちゃったんだから」。この会話が、なんとも間抜けで好き。
小倉さんがガミガミ言うのは、先日の料金取忘れの件もあるため。「あなた何年タクシードライバーやってるんですか」とさらに説教する小倉さんに、洗車用のブラシで小倉さんの靴を磨くという攻撃に出る夜明さん。小倉さんが係長の時って、実力行使の場面が多い。小倉さんのキャラクターだろうか。
そんなところへ久美子から夜明さんへのご指名。久美子の職業は探偵。先日の尾行の際、乗務員証で夜明さんの名前を確認しており、未払いだった料金を支払った上、先日のお詫びとお礼を兼ねての貸切。今日は、ストーカーに悩む女性(弘子)の家を見張る仕事。
張り込みの中で、「どうして警察を辞められたのですか」のやり取りと、久美子が警察に不信感を持っているようなセリフ。
弘子の家の前に不審な車。久美子が写真を撮ろうと近づいたところで急発進。車のナンバーの撮影には成功。
ストーカーの存在に、弘子は精神的に限界な様子。それを見て、夜明さんも調査に協力するため、東山に電話をして不審車のナンバーを知らせ、その車について調査するように依頼。寝ていたところを起こされた東山、ストーカーは所轄の生活安全課の管轄、と渋るけど、最後は協力させられる。このときの東山のアイマスク、馬鹿馬鹿しくて大好き。

背中で仕事をするケンコバさん
殺人事件発生で臨場する東山。被害者は松田豊。車の中で死亡。その車のナンバーが、夜明さんから調査依頼を受けたナンバーだったことから「あらぁ、まただ。夜明日出夫」と諦めたように呟く東山。
翌朝、あゆみちゃんが朝ごはんを作る炊事の音で目を覚ます夜明さん。「ごめん、起こしちゃった?」と言うあゆみちゃんに、「いやいや、もうさ、起きようと思ってたんだ」と答える夜明さんの口調がとても優しくて、大好きな場面。
そんな、ほんわか幸せな雰囲気で始まった朝の風景だけど、あゆみちゃんのバイト話から雲行きが怪しくなる。あゆみちゃんのバイト先は週刊誌の編集部。忙しいので徹夜は当たり前で、普段は始発で帰るという労働環境。お母さんが反対するのでお父さんから何とか言ってくれないか、という相談だけど、当然、夜明さんも「反対!」。「始発っていうのはね、乗って、行くもんなの。始発で帰るって何言ってんだい」とごもっともな意見。さらに週刊誌はあることないこと書く、という過去のトラウマまで発動して親子喧嘩勃発。
そんなところへやってくる東山と国代。殺された松田が借りたレンタカーのことを、なぜ夜明さんが調べていたのかを尋ねる。
夜明さんから久美子の情報を得て、久美子、次いで弘子から事情聴取。弘子は松田のことを全く知らず、ストーキングされる心当たりがない。
松田は元警察官だが、現在の職業はトップ屋。警察官時代のコネを使ってゴシップネタを収集し、三流週刊誌に売り込むフリーライター。
夜明さんに久美子から再度の指名。房総へのロング。「真紅な海が呼んでるぜ、なぁんて映画、昔あったなぁ」と、ノリノリのセリフと音楽でお兄さんの映画をさりげなく宣伝して、嬉しそうに車を走らせる。
久美子のリクエストで明神岬に立ち寄る。崖の上から花束を海に投げ入れ手を合わせる久美子。崖の上から夜明さんが待つタクシーに戻る途中で、男に襲われ、頭と腕に傷を負う。
かかった医者に一日安静にしていた方がよい、と言われ、鴨川で一泊することに。夜明さんがホテルで部屋を取り、会社に連絡を入れ、久美子の元に戻ると、久美子が男性ともめている。夜明さんが近づくと男性はそのまま立ち去り、久美子は昔の知り合いと説明。
ホテルの部屋が一部屋しか取れなかったため、一緒の部屋で泊まることになった夜明さんと久美子。部屋がメゾネットタイプで階が分かれている上、この二人はまったく色っぽい感じがせず、親子のようなので、妙な安心感がある。
松田が殺される2日前に、松田の預金口座に200万円の振り込みがあったことから、神谷さんは、松田が掴んだネタで誰かをゆすっていたのではないかと推理。
その200万円の振り込みが、千葉銀行鴨川支店で行われていたことから、東山たちが同支店へ聴き込みに。防犯カメラに振り込んだ男の姿が写っていたが、顔は分からず。
帰り道、大雨に降られて路上に立ち往生している東山たちのところへ夜明タクシーが通りかかる。松田殺しの捜査状況を尋ねる夜明さんに、民間人には教えられないと拒否する東山。その仕返しか、送ってやるよ、と乗せておきながら、途中の、1、2時間に1本しか電車が来ないような中途半端な駅で二人を降ろす夜明さん。ひどい。「いいんですか、あの人たち?」と心配する久美子に、「大丈夫でしょ。走るか泳ぐかして帰るでしょ」と答える夜明さん。さらにひどい。
東京に帰る途中、看護師である弘子が勤める病院に寄って、久美子の頭の怪我の診察をしてもらう。結果は異状なし。
この時、弘子と着メロの話。久美子からの電話には”少年探偵団”の着メロを設定した、と嬉しそうに話す弘子。ただ、ストーカーである松田は死んだはずなのに、昨日また、ストーカーから電話があった、という話も。
夜明さんが携帯を持たない話はここで。理由は「束縛されているみたい」だから。
夜明さんがゴミ出しに家を出たところで、タクシーから降りるあゆみちゃんを目撃。送ってきたと思われる若い男性が「じゃあね、あゆみちゃん。オ・ヤ・ス・ミ。僕の夢でも見てね(投げキス)」なんてことしたもんだから、夜明さん、「僕の夢でも見てねって、バカじゃないの。ナニコレ(投げキス)、ナニコレ(バイバイ)」と身振り手振りを交えながら激怒。さらに漂う酒の匂いも鋭く感知しガミガミ説教。お疲れ様の乾杯しただけ、大人なんだからいいでしょ、バカみたい、と反発するあゆみちゃんと最後は子どもの喧嘩に。あゆみちゃんの態度もよろしくないけど、夜明さんも過保護で大人げない。
東山たちは松田に関する情報を収集するため、再び行きつけのバーに。バーテン(今回はここに深見さん)から、松田が神辺という男と2人で来て、カネの分配でもめていた、という情報を得る。
久美子から夜明さんに、再び貸切の依頼。今回の仕事はある会社の従業員の身元調査。対象者の名前は今田次郎。
仕事が終わった後、鴨川のお礼、という名目で、夜明さんをカフェに誘い、その後さらに自宅でイタリアンをご馳走する、と申し出る久美子。夜明さんと一緒に自宅に戻ったところ、部屋の中は何者かに荒らされていた。警察に連絡しようという夜明さんに対し、「警察は頼りにしていませんから」と言う久美子。ことあるごとに久美子の警察不信が挿入される。
夜明さん、東山たちと会って、久美子のことを話したり、捜査状況を聞き取ったり。
そして、鴨川で松田を見たという目撃情報が出たので、これから鴨川へ捜査に行く、という東山たちに、送るよ、と申し出る夜明さん。公務員を送ると賄賂になるのでは?と言う東山に、「心配すんなよ、料金さ、ちゃんと取るから」と答える夜明さん。「絶対乗らない、電車大好き、な」と言いあう東山たちがかわいい(けど、結局、夜明さんに連れ去られる)。
鴨川での捜査。松田が会っていたのは、県会議員の中川公彦。中川は、鴨川のホテルで久美子ともめていた男性だった。
中川は松田と会っていたことを認め、松田から鴨川に戻りたいので就職の世話をしてほしいと頼まれたと供述。
さらに、松田がバーでもめていた神辺の情報を収集する中で、数年前に鴨川で、神辺光雄という男が婦女暴行事件を起こしていたことが判明。神辺は、看護学生だった高橋香織をレイプ、香織はそのショックで自殺。神辺は以前から香織をつけ狙っていて、家族が交番に相談をしたが、担当した警察官が真剣に取り上げなかった結果、事件が起きてしまった。この警察官が松田。
香織が自殺した後、警察の対応が批判され、松田は責任を取らされて退職。さらに、中川は香織の姉と婚約をしていたが、香織の事件をきっかけに別れ、香織の姉は鴨川を出て行った。
東山たちとの夜明宅での捜査会議が終了し、仲直りのために夕飯を食べにくる(作るのは夜明さん)あゆみちゃんを待っているところへ、あゆみちゃんが「ストーカー!」と言いながら駆け込んでくる。東山たちが取り押さえた不審な男は神谷さん。
神谷さんが持ってきた情報は、神辺の犯行の被害者、高橋香織の姉は高橋リョウコ、現在は、鳴海久美子という偽名を使って探偵をしている、というもの。
そこへ、久美子から夜明さんに「人を殺した」という電話が。神谷さんたちと一緒に久美子の家に急行したところ、久美子の部屋で死んでいたのは神辺。
取り調べの中で、久美子は、待伏せしていた神辺にレイプされそうになり、抵抗するために花瓶で頭を殴ったら神辺が動かなくなった、と供述。4年前の事件も、神辺が狙っていたのは実は久美子で、香織はその身代わりになったという事情があった。
神辺が使っていたデジカメから、久美子をつけ狙っていた写真や久美子を襲った時の写真が出てきたため、正当防衛が認められ、久美子は釈放される。
釈放された久美子を迎えに行ってあげる夜明さん。労わる夜明さんに、探偵の仕事に戻る、と言って弘子に電話をする久美子だが、電話は通じない。弘子が勤める病院に連絡しても、無断欠勤をしているという回答。弘子の自宅に行っても不在。溜まっている新聞の様子から、昨晩から家に帰っていない様子。
松田に200万円を振り込んだのは中川であることが判明。中川はその事実を認め、振り込んだのは、前回の選挙で選挙法違反を行ったことをばらす、と脅されたから、と話す。
神谷さんは、妹を死に追いやった神辺と松田を憎んでいる久美子が怪しいのでは、と思っているが、夜明さんは強く否定。
弘子が遺体となって発見される。その直後、男が「女の子の首を絞めて殺した」と自首。犯行時刻は、久美子が襲われた時刻とほぼ一緒。
男は、弘子のストーカー。変な着メロがなったから殺した、人ってあんなに簡単に死んじゃうんですね、と罪の意識をまったく感じていない様子。男の名前は今田次郎。以前、久美子が従業員の身元調査、と言って調べていた人物。
今田が聞いた着メロが少年探偵団だったことから、久美子が神辺に襲われたことになっていた時刻に、久美子が弘子に電話をかけていたことが分かる。さらに、夜明さんが、久美子が神辺に襲われたときの写真はセルフタイマーで撮ることが可能ということに気づいた結果、神辺は久美子を襲っておらず、正当防衛は久美子の偽装、という結論に。
明神岬で告白タイム。松田を殺したのは久美子。弘子の家の前で夜明さんと一緒に張り込んでいた時に見た不審な車を運転していたのは松田ではなく中川。神辺殺しは正当防衛ではなく、計画的な殺人。
久美子は香織が自殺した後、事件を忘れようとしたのに、松田と神辺が、香織をレイプしたときの写真をネタに久美子を恐喝しようとした。久美子はきっぱりと断ったが、その後、松田は中川のところへ行き、同じネタで恐喝。香織を妹のようにかわいがっていた中川から200万円をゆすりとった。それを知った久美子は松田と神辺を許すことができず、犯行を計画・実行。中川は途中で久美子の犯行と気づいたが(鴨川のホテルでもめていた場面)、久美子と香織を守るため、200万円は選挙法違反で脅し取られたと供述。
「誰も守ってあげられなかった。香織も、弘子ちゃんも、誰も救ってあげられなかった」と泣き崩れる藤田さんの熱演につられて、いつも貰い泣く。中川が最後までいい人で、一人じゃないって夜明さんのセリフで、そうだね、よかったね、ってなる。
エンディング。相変わらず編集部でバイトを続け、帰宅時間が遅いというか早いというか、というあゆみちゃん。いろんな人が送ってくれるから大丈夫、というあゆみちゃんに、送り狼になっても知らないから、と不機嫌な夜明さん。いざというときはこういうものがある、と取り出した防犯ブザーを、「こんなおもちゃで身が守れるか?」とバカにする夜明さんだけど、鳴りだした防犯ブザーにうろたえ、周囲に「親子ですから」と必死にアピールし、「あゆみ!」と怒鳴ってエンド。
事件にまとまりがあり、意味がない場面があまりなく、伏線をきちんと回収するので、最後まで気持ちよく見ることができる。久美子の明るく頼りがいのある探偵、というキャラクターに好感が持てるし、犯行も、ずっと恨んで、というよりクズ被害者が自分たちから仕掛けてきて、こらえきれずに成敗、という感じなので、非情に同情できる。なにより、妹を守り切れなかった後悔から、弘子(看護師ということで香織を重ねているところが多分にあったと思う)を守り切ろうとしたのに守れなかった、しかもその原因は、香織の復讐を果たそうとして弘子のことを後回しにしてしまったから、というのが切なく、久美子の慟哭が胸に迫る。とても好きな作品。
エンディングテーマ。ゴスペラーズ 「北極星」







