「 殺人化粧の女 山が動いた!? 」 (1992年)

(ゲスト)
小百合…七瀬なつみ、 平松妙子…横須賀昌美、 小山田光児…趙方豪、 星野直司…遠藤憲一、 あき…高島礼子、 池上…伊藤洋三郎、 えみ…矢沢美樹、  宇山…でんでん、 水木良平…森下哲夫

オープニングコントはなく、いきなり本編。タクシーを走らせる夜明さん。小百合がタクシーを止め、客を流し込む。「今日は帰さへんで」と客が小百合に絡んだのを夜明さんが助けてタクシーを発車させる。この間、ずっと夜明さんは無言。タクシーの会社はなじみの大同交通ではなく、イースタン(第3作目まで)。

 


やっぱり大同交通じゃないと落ち着かない。

小百合が勤めるクラブ「CROSS」のバーテン池上。伊藤洋三郎さん、若いなぁ。このころはまだ演技がぎこちない。若くて細くて青い感じ。

やくざ風の二人組を乗せてタクシーを走らせる夜明さん。名前を「芸名か」と聞かれ、「偽名や芸名で免許取れねぇよ」と言い捨てる。これが夜明さんの最初のセリフ。やさぐれ感満載でひたすら渋い。

やくざ二人組、気を悪くしたせいか、お金を払わずに降車。追いかけて料金を請求し喧嘩を吹っ掛けられるも、あっという間に二人を撃退する夜明さん。鋭い眼光がただ者ではないと感じさせる。


闘気ムンムンな夜明さん。

止めに入った兄貴分(やくざ)が夜明さんの素性を説明。3年前まで警視庁捜査一課の警部補だった。「捜査でかかわりのあった女性とのことを誤解されて」の件に関する回想が挿入されるけど、のちにこの話がクローズアップされる第11話での再現とは、全く違う話になっている。初期の話では、 「捜査でかかわりのあった女性」は夜明さんに敵対心むき出しで夜明さんも女性に対し優しくない。濡れ衣じゃないですか辞めないでください、と引き留める東山に「言い訳すんのも疲れたよ」と言って去っていく夜明さん。

テーマソングが流れる中、土ワイ懐かしのスタッフキャスト紹介。七瀬さんは変わらないなぁ、高島さんはずいぶん洗練されたなぁ、と眺める中で、インパクトが大きかったのは音楽の長谷部徹さん。なぜこの写真をチョイスしたんだろう...。ウィキ情報だけど、長谷部さん、一橋大学経済学部、東京大学大学院医学系研究科(精神衛生学教室)修士課程修了。すごい経歴で驚いたけど、一番驚いたのは奥様が風祭ゆきさんということ。風祭さんと言えばセーラー服と機関銃で渡瀬さんとご縁のある方。いろんなところでつながっているんだなぁ。

夜明さんのタクシーに乗り込む小百合とあき。イヤな客にチップをもらった、パッと使いたいから横浜までタクシーでドライブしたいとのこと。横浜の埠頭で停車しブラブラしているところで地面に書かれたかかしを発見。それで遊ぶ夜明さんと小百合。かかしは懐かしいなぁ。帰り道、眠った小百合の寝言が「山が動いた」。

CROSSのママ、平松妙子が千葉勝浦の別荘で死亡。この別荘は、妙子のパトロン大場真一郎(頭師孝雄)が妙子に与えたもの。第一発見者は大場。会社や妻に内聞にしてほしい、という大場の頼みをあっさり「うん、そうはいかんでしょ」と拒絶する地元刑事の宇山。でんでんの飄々とした味が出ていて、いいなぁ。

CROSSの従業員たちに妙子死亡時のアリバイを確認する東山。コンビを組む刑事は川原和久(伊丹)さん。小百合たちのアリバイはタクシーでの横浜ドライブ。アリバイタクシー第1号。このころはまだ、「また、また夜明さんですか」のやり取りはなし。

電話のベルで起こされる夜明さん。「はい、夜明です」という言葉に、「夜明じゃないわ、もうお昼よ」と怒るあゆみちゃん。このときはまだ中学生。



まだあどけなさが残る。かわいいなぁ (´▽`)

あゆみちゃんとの面会日にケーキをご馳走し、「何か買ってほしいものない?」と申し向ける夜明さん。「お父さん、私の養育費送るの大変だから」と遠慮するあゆみちゃん。焼き肉おねだりのあゆみちゃんとはまるで別人のように健気(´;ω;`)。会話の中で、「あゆみ、お前、俺のことどうしてお父さんと言うのかな。ママって言うくせに」と尋ねる夜明さん。自分では分からないけど、気が付いたらそうなっていた、と答えるあゆみちゃんに「分かるような気がする」と返す夜明さん。あゆみちゃんにとって、夜明さんは甘える対象ではなかったということなのかな~。

夜明さん宅へ来た東山の話で、神谷さんが警部になり7係に配属になったということを初めて知る夜明さん。神谷さんの悪口は昔からスラスラ出てくる。でも、このころの神谷さんはツンツンしているからなぁ。

夜明さんからの捜査への突っ込みに思わず「夜明さんには関係ないことです。もう上司じゃないんですから」と言ってしまう東山。初期にはまだ、警察を辞めたことに関する苦みが残っている。でも、そんなしんみりピリッとした空気を一変させるロング強要。第1弾は千葉勝浦までのロング。夜明さんの焼酎一気のさせ方がえげつない。これも時代だなぁ。


ドボドボ。

ピッとメーターが上がるのを気にする東山。だけど、金額は13,140円。まだまだかわいいものです。合計は3万超えてたみたいだけど、それでもまだまだ。

勝浦の別荘ででんでんがお出迎え。夜明さんを現役の刑事(警部補)と勘違い。夜明さんの疑問は、なぜ妙子がすんなりベッドに手足を縛りつけられたのかということ。現場を見ている表情が、十津川警部のようだった。

別荘の周りをウロウロしていた池上を確保。ここのセリフがすごくぎこちなくて、「~当然でしょう!」が変なイントネーションで耳に残る。洋三郎さん、若いなぁ。

CROSSであきに聴き込みをする夜明さん。高島さん、軽いけど気立てがよさそうなホステスでかわいらしい。バブルの名残が感じられる装い。

妙子のことは小百合がよく知っているのではないか、というアキの話から、小百合の自宅を訪ねる夜明さん。小百合の本業はソーイングアーティスト(お針子さん)。妙子はもともとそちらのお客さんだったが、バイトでホステスをしないかと誘われたとのこと。妙子の過去について何か知らないか、と尋ねられ、「私、昔話嫌いなんです。昔話して何になりますか」と吐き捨てるようにいう小百合。

夜明さん、東山に電話をしたけど、電話に出たのは神谷さん。慌てて電話を切り、「神谷だよ、神谷。きざな言い方。どちら様でございますか」。神谷さん、東山に夜明さんから電話があったことを告げる。言い方が、まだ冷たい。そこへでんでんから「夜明警部補」に電話が。夜明さんが現場をうろうろしていることに気づく神谷さん。でも、神谷さんから夜明さんに、東山を乗せた河口湖行が発注される。口調はツンツンしているけど、すでに第1作から神谷さんは夜明さんのこと、警察を辞めてもったいない、と思っているのかな。

河口湖にて、妙子が10年前に関わった事故があるということが判明。水木良平とその2人の子供が乗った手漕ぎボートの転覆事故。原因は、乱暴な運転のモーターボートがわざと突っ込んできたこと。子供が2人亡くなり、水木自身もけがを。モーターボートを運転していた無軌道で乱暴な若者が星野。モーターボートにはほかに、妙子と小山田が乗っていたが、罪に問われたのは運転をしていた星野だけ。星野役のエンケンさんは、若いけど、あまり今と変わった印象は受けない。

東山の情報で、ボート事故のその後が。刑期を終えた星野を水木が殺害。「あのもう、忘れません、あのこと」とか言われたら、そりゃ、殺したくなるよなぁ。「ゴキブリだぁ」。

で、刑期を終えた水木が妙子を殺したのかな、と夜明さんも思うし視聴者も思ったところで、東山「刑務所に入って1年後に病死しました」。夜明さんも「お前なぁ、もっと手際よくトントントントンと話せよ」と言いたくなる。水木の奥さんも水木病死のすぐ後に自殺。被害者側で生き残ったのは水木の娘でボートには乗っていなかった水木令子。被害者側で生き残っているのが小山田光児。

小山田と妙子との間に金銭トラブルがあったらしいことから、小山田が妙子殺しの有力容疑者に。となったところで、小山田、病院の窓から落下して死亡。

目撃者の証言から小山田は自殺と判断されるが、その目撃者というのが小百合。小山田は、自分が起こした交通事故の被害者のお見舞いで病院に来ていた。小百合は小山田に頼まれて同伴したが、病室でいきなり小山田が喚いて窓から飛び出したとのこと。最近、小山田はノイローゼのようになっていたらしい。目撃者は小百合のほか、交通事故の被害者、福原(木田三千雄)がいたが、福原は事故が原因で痴呆状態になっており何も証言はできない。ただ、ベッドを動かされたときに口にした言葉「山が動いた」がヒントになって夜明さん、真相に気づき始める。

真相に気づき始めた夜明さん、小百合をタクシーに乗せるために東山が犠牲に。「お前の使う経費は俺たちの税金なんだから、無駄遣いしたらダメ。帰りは電車で帰んなさい」。言っていることはえげつないけど、口調はかわいい。

小百合は、水木令子だった。妙子と小山田を殺したのではないか、と疑う夜明さんに、「父は、ゴキブリを殺して自分も罪になりました。ゴキブリを殺して罪を受けるようなこと、私はしません」と強く否定。「山が動いた」だけでは小百合の心は動かず。でも、そのあと、自室でソーイングをしながら、不安と反発心で思い詰めた表情を浮かべる小百合。七瀬さん、いいなぁ。

それから調査を重ね、証拠をつかんだ夜明さん、小百合を誘い出す。待ち合わせ場所に小百合が現れたと気づいたときの夜明さんの表情がいい。望んでいたことであり、望んでいなかったことであり・・・。

かかしで遊んだ横浜の埠頭で夜明さんの推理披露。はじめは否定していた小百合も、ガムテープの微物で観念。「あなた指紋を残さないように気を付けたが、何しろ慌ててて、怖かった。こんな小さなところまでとても気が回らなかった」という夜明さんのセリフに、小百合がどこにでもいる普通の女の子なのに、運命のいたずらで殺人を犯すことになったというやるせなさを感じた。

「タクシーはいくらでもあるのに、元刑事さんのタクシーに乗ってしまったのが、私の運命だったんですね。私、家族を次々亡くして一人になった時、みんな忘れて生きなきゃって思いました」。でも、平松妙子に会ってしまった。日々、楽し気に暮らしている彼女を見て、許せないと思いつめるようになった。最後、夜明さんに縋りついて泣く小百合を抱きしめてあげながら、夜明さんも泣き顔。いい場面だった。

また電話で起こされる夜明さん。「夜明じゃないわよ、もうお昼よ」と怒るあゆみちゃん。エンディングはおねだり(まだかわいい感じの)でエンド。


第1作目でまだこなすべきお約束、というものがないため、事件に集中して楽しめる。事件もごちゃごちゃしておらず、シンプル。過去を忘れて生きてきたのに、追いかけてきた過去に捕らわれ、殺人を犯してしまう。ゴキブリを殺してなぜ罰を受けなければならないのか、という反発心と、それでも人を殺してしまったという不安と、二つの感情で揺れ動く普通の女の子を七瀬さんが好演していたと思う。今も大いに活躍中の俳優さん、女優さんの懐かしの姿も楽しめる作品。