「春呼ぶ殺人 女の死体に桜が散った… 」 (1994年)

 

(ゲスト)

若宮承子…南田洋子、 麻生洋子…大寳智子、 陣ノ内千秋…小島なおみ、 陣ノ内洋介…斉木しげる、 神保愛美…広田恵子、 浅見…片桐竜次、  若宮直樹…三浦賢二、 中川慶子…中川真弓、 小田島…木村栄

 

 

オープニング。タクシー会社係長初登場。一人目の係長は秋山武史さん。石原プロの方で、早くに亡くなった方らしい。

 

神谷さんに城南署に呼び出される夜明さん。承子を岩手県一関へ送ってほしいという依頼。一関のゴルフ場造成地で承子の姪が亡くなったので、その現場に駆け付けたいとのこと。ゴルフ場造成に絡んで怪しい連中につけ狙われていることも夜明さんに依頼する理由。ボディーガード替わり。いったんは断った夜明さんだけど、認知症が進んだ様子を見せる承子を放っておけず、結局、神谷さんの頼みを引き受けることに。

 

土ワイ名物キャストスタッフ紹介。今回は、南田さんのかわいらしさが際立っていた。昔は、いろいろなタイプのおばあさん女優がいたけど、今後はどうなっていくんだろうなぁ。

 

かわいらしくて上品そうなおばあさん。 本作では大金持ち。

「お金ならあります」を嫌味なく言えるスキルの持ち主。

 

 

一関へ向かう途中、ゴルフ場開発会社に雇われたならず者に尾行される夜明タクシー。一度は巻いたけど、回り込まれていちゃもんを付けられる。この時タクシーにぶっかけられる飲み物、ココア?コーヒーにしてはドロドロしすぎてるし。ならず者のくせにかわいいもの飲んでる。ならず者の一人に山田アキラさん発見。渡瀬さん作品には必ずと言っていいくらいに出演しているなぁ。

 

ならず者を撃退しているときに現れたのがゴルフ場開発会社 ソエニア開発の小田島と中川。ゴルフ場開発のために承子が持っている土地を売ってほしいと迫る。「脅迫すれすれの言い方」って夜明さんは言うけど、ならず者たちはドストレートな脅迫を繰り返していた。もうちょっとオブラートに包んでいただきたい。承子はボケたふりで対応。

 

途中休憩の喫茶店で、神谷さんに電話を入れる夜明さん。今夜、あゆみちゃんと食事の約束をしているのに道が混んでいて一関まで行ったら約束に間に合いそうにないという苦情。「はいはい」と軽く受け流す神谷さんに「お前としゃべってると腹立ってくんね」と夜明さんご立腹。あゆみちゃんはクラブ活動をしていて、今日の予定もやっと空けさせたということらしい。でも、なんだかんだで引き返せない夜明さんは、人がいいし、事件が好きなんだろうな。

 

同じ喫茶店で、承子にタバスコ掛けホットケーキを食べさせられ、ダンスを強要される夜明さん。ボケたふりのためだろうけど、結構な罰ゲーム。ダンスはだんだん楽しくなってた様子だけど。

 

ソエニア開発へ聴き込みに来た東山。一関で亡くなった千秋は、先月、ソエニア開発にゴルフ場用地として10万坪の土地を売却。でも、承子が土地を売らないせいで正式な工事にかかれない、殺すなら承子を殺したいよ、と不穏なことを言う小田島。1千万の会員権で東山を買収しようとする中川。今回、なんというか、悪がいろいろとストレートすぎる。

 

一関の所轄刑事 浅見さんは夜明さんと旧知の仲。千秋の遺体と対面する承子。傍らにいた洋介をハンドバックで殴り「嫌い」と一言。ボケを隠れ蓑にすごく自由。千秋の遺体の口の中から、寒桜の花びらが発見される。遺体発見現場には桜がなかったことから、遺体の移動があったのではないかという疑いが。夜明さんを「日暮さん」と呼ぶ承子。「日暮さん」と言えば、4年に1度の人しか思い浮かばないから、それはやめていただきたい。

 

千秋の幼馴染、洋子のもとを訪ねる承子と夜明さん。夜明さんの名前が、洋子のツボに。名前ネタ、初期にはよく出てきたけど、後期にはほぼスルーだった。夜が明けて日が出る、というのは確かに両親狙ったな、としか思えない。

 

千秋は金持ち。両親を早くに亡くし、家庭に対する憧れからか、大学を出てすぐに結婚。だけど、結婚相手の洋介は千秋の財産目当て。結婚してわずか半年で、千秋が持っていた不動産の多くを売却。千秋も洋介は財産目当てで自分と結婚したのではないかという不安を抱き、死の前に、洋子に電話で相談していた。

 

あゆみちゃんに電話する夜明さん。今、一関にいる、と告げられ、一生懸命練習してお父さんが好きなだし巻き卵を作ってあげたのに、とあゆみちゃん激怒。電話をガチャ切り。もやもやしている夜明さんのところへ、承子を連れ去ろうとした男が現れたものだから、有無を言わさず引きはがし、ボディに一発。でも、実はその男は承子の息子の若宮直樹(三浦賢二)。虫の居所とタイミングが悪かった。ご愁傷様です。

 

東京に帰ってあゆみちゃんのだし巻き卵を食べたい夜明さんと、一緒に千秋の死に関する調査してほしい承子。そこへ現れる東山と浅見さん。浅見さんと夜明さんは剣道大会で知り合ったらしい。一緒に酒を飲もう、という言葉では翻意できなかったけど、千秋は自殺ではなく殺人らしい、という言葉には思わず反応してしまう夜明さん。だし巻き卵への道は遠い。

 

浅見さんは、洋介が千秋殺しの犯人ではないかと疑っている。そこで、千秋の実家(すごいお屋敷)を訪ねた浅見さん、夜明さん、東山の3人、洋介と洋介の前妻の愛美が口論しているところに出くわす。慰謝料の金額でもめているらしい。「かわいそうね、せっかく結婚したと思ったら死んじゃって。かわいそうね」。

 

洋介は、千秋の死亡推定時刻、東京にいたのでアリバイ成立。

 

洋子のところへ、千秋の遺書が配達されてくる。「私、急に死にたくなりました。私は昨日、想像もつかないような恐ろしい体験をしました。私は地獄に突き落とされたのです。」という内容。遺書が入っていた封筒の消印は三島、平成6年2月21日の18時~24時。

 

あゆみちゃんに電話をして、寒桜のことを調べてもらおうとする夜明さんだけど、あゆみちゃんは夜明さんが約束を破ったことを怒っていて、愛想がない。ドリカムのCDを買ってやるから、と言っても、欲しくない、と言われ、「じゃあさ、お父さんが好きなサイモンとガーファンクルの・・・知らない。お前、卒業っていう映画・・・知らない、あっ、もしもし、切るなよ、あゆみ」という切ない会話を聞かされる東山、承子、洋子の3人の居たたまれないような空気が痛い。で、見るに見かねて受話器を取り上げた東山も「いやぁ~、あゆみちゃん、お父さんにそういう冷たい言い方はよくないなぁ。お父さんね、一人で寂しく生きてるんだから、泣いちゃうよ」とさらに切ない話で収拾がつかず。一応、花の調査を頼むことはできたけど、夜明さんの元奥さんも電話に出て(声はナシ)、あゆみちゃんにあまり電話をしないようにという話があった様子で、重い空気が漂う。

 

遺書が出てきたことで千秋の死は自殺と決まり、捜査本部は解散。残る謎は、なぜ死体が動かされたのか、ということ。

 

あゆみちゃんの電話で、千秋の口に入っていた花びらは、河津桜ではないか、ということが判明。あゆみちゃんの機嫌も治ったようでよかった。

 

東京へ戻るタクシーは東山が運転、夜明さんは隣で仮眠。道中、夜明さんのことをあれこれ東山に尋ねる洋子。インターセプトしようとする東山。「お一人で暮らしているんですか?」「はい、自分、まだ一人もんですよ」「夜明さん」「あっ、夜明さんっすか。きれいな人と一緒ですよ(・∀・)ニヤニヤ」。

 

途中、検問が入り、あわててメーターを切って回送車に偽装する東山。現在のドラマで多分これはやれないだろう。この表現が特別面白いとは思わないけど、ドラマが正しくあらねばならなくなったことで、失ってきたものがいろいろあるんだろうなぁ。

 

晩御飯を作らせてほしい、と夜明さんの家に押し掛ける洋子。そのことに裏があるのではないかと疑う夜明さん。それでもグイグイくる洋子に、警察を辞めることになった一件から、女性が怖いんです、と告白する。「一つだけ聞いていいですか。警察でアリバイ聞かれましたか?」「ええ。私アリバイがないの。一人暮らしだから家にいたって言ってもアリバイにはならないでしょう?」「なりません」「私、ホテルに泊まります。人を疑いすぎよ、夜明さん」。利用されているのではないか、という警戒心で洋子を傷つけるけど、傷ついた洋子を見て、これまた傷つく夜明さん。初期の夜明さんは、結構ナイーブ。直後に来たあゆみちゃんに妙なテンションで対応。でも、ようやくありつくことができただし巻き卵はおいしかった模様でよかった。

 

千秋の葬儀に愛美が乱入。洋介に悪態をつくけど、ちょっと噛んでたせいで迫力がいまいち。「女ったらし。亡くなった人の財産で葬式あげ、あげるなんて最低!」。洋介は30億以上の財産を相続したのに、自分がもらった慰謝料はたったの2000万円だった、バカヤローという言い分。ずいぶん身勝手な言い分だな。

 

乱れた雰囲気の中、承子たちも洋介へ、千秋の財産は若宮家のものだから返せ、と詰め寄るが、受け流される。結婚して半年で次々と千秋の不動産を売却し、約20億のお金に変えた。千秋名義の預金にしてあるというけど、千秋が亡くなった今、相続人である洋介のものに。それにしても、あからさますぎるよなぁ。夜明さんじゃなくとも「あなたには動機がありすぎる」と言いたくなる。

 

夜明さん,洋介の弁護士から、愛美が洋介からもらった結婚指輪をまだしていたと聞き、洋介、愛美のいさかいは表向きだけで、裏ではつながっているのではないかという疑惑が。

 

夜明さん、「男所帯で汚いのはみじめですから、休みの日は掃除とか洗濯とか」小まめにしているらしい。偉いな。確かに夜明さんのアパート、いつの時代も狭いけど、きちんとしている。で、今度こそは夜明さんに夕食をご馳走しようとする洋子。承子は退散しようとするが、空気を読めない東山は「一緒に食事なさる?」という社交辞令を真に受けて「すいません、いただきます」と元気なお返事。でも,承子のステーキをご馳走するという言葉であっさり「すいません、いりません!」。この頃の東山は軽い若者、という感じ。承「洋子さん、頑張って」、洋「嫌だわ、何を頑張るの」、東「夜明さん、頑張って」という流れは面白かった。でも、その後の東山の一言で千秋の死亡現場が分かったため、結局、夕食はご一緒できず。

 

千秋の思い出の地は伊豆の城ケ崎。みんなでタクシーで城ケ崎へ行きホテルで聴き込み。半年前、洋介と千秋が泊まったホテルに愛美も泊まっていたことが判明。朝になるのを待って河津桜を探すことになったけど、係長の秋山さんは、捜査にかまけて戻らない夜明さんにご立腹。「すると、戻るのが明日の昼過ぎになるってことですか?!あなたはタクシー会社の乗務員でしょう!」。それを受けて東京に帰る、と言う夜明さんに承子はタクシー会社を辞めて自分の運転手にならないか、と誘う。だけど,夜明さんは「タクシーの方が気楽ですから」とお断り。「いろんな町、いろんな人間、自由でしょ」。夜明さんはそういう気持ちでタクシーに乗ってたんだなぁ。

 

そんな帰るムードの夜明さんに神谷さんから電話が入り、「これはよく仕組まれた完全犯罪です。それで、どうしても、あなたの考えが聞きたいんです。東山では心配なんです」。東山が言うように、神谷さん、いろいろ下心があるかもしれないけど、夜明さんのことを買っているのは嘘じゃないと思う。

 

翌朝、城ケ崎のホテル近くで河津桜発見。千秋自殺の現場は城ケ崎と確定。

 

謎が解けたと言う夜明さん。東山ではなく神谷さんに話す、と言ったことに東山反発。「夜明さん、そんなにあの神谷に褒められたいんですか。もう警察を辞めて欲も得もないはずじゃないですか。あの神谷ですよ。カネも名誉も、そんなものと無縁の人生を送りたいって夜明さんがおっしゃ・・・」というタイミングで神谷さん登場。この回以降,何回か,神谷さんの悪口を東山が言っている途中で神谷さんが現れ、東山がごまかす(ごまかしきれない)という展開があり。今回は、神谷=髪や(バーバー)。

 

めおと食堂ではない大衆食堂で夜明さん、神谷さん、東山がお食事。洋介と愛美はなぜ刑法に触れてまで千秋の遺体を城ケ崎から一関まで運んだのか。ポイントは遺書、という夜明さんのことばですべてを察する神谷さんと、分からない東山。洋介と愛美を自白に追い込む役を夜明さんにお願いする神谷さん。その代わり、ご飯代は神谷さんのおごり(でも、まわりまわって東山に付けられる)。

 

洋子が洋介、愛美へそれぞれ電話をし、もう1通、遺書が出てきた、と告げ、2人を城ケ崎へ呼び出し、告発タイム。洋介と愛美は、わざと千秋に自分たちの不倫現場を目撃させ、千秋を自殺に追い込んだ。遺体を城ケ崎から一関に運んだのは、千秋が残すであろう遺書を発見させないため。自殺の場合、遺書は自宅か自殺現場に残される、という経験則があるから、自殺現場を動かせば遺書が見つからないだろう、という理屈なのかな。遺書を隠したいのは自殺の動機が明らかにならないように。動機が明らかになると千秋の財産を相続できないから(そうなのかなぁ?)。

いまいちすっきりしないけど、ナイフを取り出した愛美からナイフを取り上げ、洋介に突き付けた夜明さんの動きがさすがだったので、いい告発タイムだった。

 

「夜明さん、千秋、喜んでいるでしょうか。あの子、陣ノ内に、自分の愛情がどれほど深いか、死んで証明したかったんだと思います。それだけで、よかったのかもしれません」、「男と女のことは、私、よくわかりません。でも、悪いものは悪いんです」。千秋の気持ちはそうだったかもしれないけど、相手はそんなことへとも思わない人間だから、これでよかったんだと思う。夜明さんの考え方も、シンプルでいいな。

 

帰り、夜明さんは「用事があるから」と言って、承子や洋子を途中の駅まで送り、一人でタクシーで東京へ。洋子から「夜明さん、私が怖いのね。東京まで一緒だと、あなたのアパートに私がついていくと思ってるんでしょう。いくじなし」ときつい一言。この回の夜明さんは女性に臆病。以降の回ではあんまりそんなことはないので、そういう意味では異色回かなぁ。

 

 

エンディング。

 

色違いのセーターを着て、並んでハンバーガーを食べる父娘。あゆみちゃんにボーイフレンド疑惑。「ダメだよお前、ダメよ。だって、まだ17だよ、お前、フケツだよ、フケツ!」「なんでフケツなの、いいじゃん」とかじゃれあっている二人がかわいくてしかたない。フケツって言葉、すごく懐かしい。そんな風に言ってたんだよなぁ。

 

 

原作ベースの話は、中期後期とは違って人情味薄目。夜明さんの刑事時代の面影と神谷さんのキャラ変遷と東山の軽さとあゆみちゃんの成長を楽しむ。遺書は自宅か自殺現場に、っていうのはそんなに絶対なのかなぁ、遺体移動の動機がそれって苦しくないのかなぁとか、精神的に追い込んだとはいえ、「故意に死に至らしめた」っていうことになるのかなぁとか、いろいろとモヤモヤするところがあるけど、南田さんのかわいらしさは見ていて楽しかった。