Twin Peaks : The Return PART 18

監督/脚本/制作総指揮:デヴィッド・リンチ

脚本/制作総指揮:マーク・フロスト

カイル・マクラクラン

2017年9月3日放送(米国)

 

①第18章 ストーリー覚え書き(ネタバレ)

 

ブラックロッジ。椅子に座ったダギー・ジョーンズが燃え上がる。

金色の玉に、「電気」と言いながらフィリップ・ジェラードがクーパーからもらった髪の毛を置くと、クーパーの化身が出現する。「ここはどこなんだい?」

 

赤いドアを開けて、クーパーの化身が家に帰り、ジェイニー・Eとサニージムに迎えられる。クーパーの化身は「おうち」と呟く。

 

夜の森の中、ローラの手を引くクーパー。水たまりとシカモアの木の場所に近づき、電気音がして、振り返るとローラは消えている。

森に響き渡るローラの悲鳴

 

クーパーはブラックロッジにいる。

ジェラード「これは未来か。それとも過去か

ジェラードが消え、クーパーはローラの出現を待つが現れない。顔を上げるとジェラードが赤いカーテンの前で呼んでいる。クーパーは立ち上がってジェラードを追いかけ、別の部屋に移る。

 

そこには進化した腕がいる。

進化した腕「私は腕だ。私はこんな音がする」吸い込むような音。「それは通り沿いの家に住んでいた少女の物語なのか?

黒いドレスを着たローラが近づき、クーパーに耳打ちする。

ローラは悲鳴をあげ、飛んで行ってしまう。

 

 

クーパーは次の部屋へ。リーランドがいる。

リーランド「ローラを探せ

 

次の部屋へ。そこは森の中だ。12本のシカモアの木が水たまりを囲んでいる、グラストンベリー・グローブ。ダイアンが立っている。

ダイアン「あなたなの?」クーパー「そうだ。本当に僕だよ」

 

昼、砂漠の中の道。クーパーが車を運転している。助手席にはダイアン。

道沿いに、いくつもの鉄塔と電線が見えてくる。

ダイアン「本当にこれでいいの? そうしてしまったら、この先どうなるか」

クーパー「ちょうどその地点に来た。そう感じるんだ。ちょうど430マイルになる」

クーパーは車を停め、降りる。鉄塔の前に立ち、腕時計を見て、また車に戻る。

クーパー「ここで間違いない。キスしてくれ

キスするクーパーとダイアン。

クーパー「ここを越えれば、すべてが変わるだろう

また車を発進させる。電気音とスパーク。

 

車は夜の道路を走っている。

クーパーはモーテルに車を停める。クーパーが車を降りて建物に入っている間、ダイアンはモーテルの入り口に立つもう一人の自分を見る。

 

 

クーパーとダイアンは1号室へ。ダイアンは電気をつけるが、クーパーは明かりを消すように求める。

ダイアン「これからどうするの?」クーパー「僕のそばに来るんだ

クーパーとダイアンはセックスをする。

プラターズの「My Prayer」が流れる。

 

朝、クーパーが目覚めると、ダイアンの姿がない。サイドテーブルにはメモが残されている。

リチャードへ これを読む頃には私はいない。どうか探さないで。私はもうあなたがわからない。この関係がなんだったにせよ、もう終わり。リンダ

クーパーは外に出るが、建物は昨夜とは別のものに変わっている。クーパーは乗ってきたのとは違う車に乗って立ち去る。

 

車はテキサス州オデッサの町を走っている。クーパーは「ジュディのコーヒーショップ」を見つけ、車を停める。

店に入ると、クリスティというウエイトレスがコーヒーを注ぎに来る。クーパーはウエイトレスは他にいるかと尋ね、クリスティはいるがもう三日も休んでいると答える。

3人のカウボーイがクリスティにちょっかいを出し、クーパーは止めに入る。カウボーイたちは銃を持ち出すが、クーパーは簡単に3人をノックアウトしてしまう。

カウボーイたちに銃をつきつけ、クーパーは厨房のポテトフライを上げてカウボーイたちの銃を油の中に放り込む。

クーパーはクリスティに、もう一人のウエイトレスの住所を紙に書くよう求める。

 

 

クーパーは1516番地の家にやってくる。

家の前には6のナンバーの電柱があり、電気音がしている。

クーパーが訪ねると、ローラ・パーマーが出てくる。だが彼女はキャリー・ペイジと名乗り、ローラ・パーマーなんか知らないと言う。

クーパーはキャリーに、君はツイン・ピークスのローラで父はリーランド、母はセーラだと告げる。セーラの名を聞くと、キャリーは表情を変える

クーパー「母親の家に連れて行きたいんだ」

キャリー「こっから逃げ出さないといけないんだ。いろいろあってね」

 

 

キャリーはクーパーと一緒に行くことを承知し、クーパーを家にあげる。家の中では、椅子に座った男が死んでいる。男の眉間には銃で撃ち抜かれた痕があり、壁には血が飛び散っている。

白い馬の置物が飾られている。

電話が鳴っているが、キャリーは無視する。「コート持って行った方がいい?」

 

 

キャリー「この腐ったオデッサの町からは出られそうね」

キャリーを助手席に乗せて、クーパーは夜の道を行く。

ヘッドライトがつけてくるように見えるが、やがて何事もなく追い抜いていく。

キャリー「オデッサの家、ちゃんとした家にしようとしたのよ。もうずっと昔、あの頃は若くて何もわかっていなかった」

 

ガソリンスタンドで給油し、さらに走る。

やがて橋を渡り、車はダブルRダイナーの前を通る。

クーパーは見覚えがないか尋ねるが、キャリーは「ない」と答える。

やがて、パーマー家の前に車を停める。

 

クーパーはパーマー家のドアをノックする。

出たのは、知らない女性だ。彼女はセーラ・パーマーなど知らず、ここは彼女と夫の持ち家だと語る。家の前の持ち主はチャルフォント夫人。彼女の名前はアリス・トレモンド

 

 

呆然として、クーパーは通りに戻る。

クーパー「今は何年だ?」

キャリーはセーラの声を聞く。「ローラ…

キャリーは悲鳴をあげる。

 

 

ローラ・パーマーが、クーパーに耳打ちをしている。

 

②第18章 レビュー

 

最後は、やはりリンチ。一筋縄ではいきませんでした。

 

前回の第17章までは、これまでになくわかりやすい、明快な筋立てで進んでいたと思います。

ダギーからボブが現れフレディーにやっつけられるのも、ナイドがダイアンだったのも、その後謎の音に導かれフィリップ・ジェフリーズとの対面から過去のツイン・ピークスに向かうのも、いろいろと謎めいているとは言え、ストーリーの解釈はそれほど難しくないものになっていました。

それは、ほとんどいつものリンチらしからぬと言えるくらいだったと思います。

 

なので、最終回もついついそれまでと同じモードで見はじめてしまったら…まるで違いました。

最後の最後で、いつものリンチが出現です。

何がどうなってるんだか、さっぱりわからない。

 

これまでの明快な筋道を引き継いでいるのは、冒頭のクーパーの化身が作られてジョーンズ家に帰るところまで。

ちょうど旧シリーズ最終回で、ブラックロッジに舞台が移ると同時に通常の解釈が通用しなくなったのと、よく似ていますね。

 

いろんな謎が置き去りで投げっぱなし、とも言えるんだけど、でも考えてみれば、基本的なストーリーとしては、前回第17章でほぼすべて解決しているとも言えますね。

 

ボブがとりついたクーパー=ダギー・ジョーンズの問題は、ダギーがルーシーに撃たれ、フレディーがボブを倒して、ダギーはロッジに転送されて消滅して解決。クーパーは一人に戻りました。

 

ダイアンについては、化身だったダイアンが消え、ナイドが実はダイアンだったという事実が判明して、クーパーとダイアンがめでたく抱擁して解決

 

フィリップ・ジェフリーズの行方については、コンビニエンス・ストアの上の部屋で蒸気を吐くポットになってました、で解決

 

オードリーについても、第16章のラスト・シーンで解決、ということなんでしょう。ヒントを総合するとどうやらオードリーは昏睡状態で夢を見ていたようで、それ以上は想像で補え、ってことでしょうね。

 

クーパーの狙った「一石二鳥」についても、「過去に戻ってローラ・パーマーを救おうとした」というところまでは明確でしょう。

そしてそれは、半分は成功した(湖畔の死体は消えた)が、もう半分は失敗した(座標の位置へ連れていく途中で、ローラを見失ってしまった)。

 

今回の冒頭でダギー(化身)がジェイニー・Eの元に戻ることで、ラスベガス編も解決。今回のシリーズの基本的なストーリーはほぼきれいに解決したと言っていいでしょう。

そこから後は、クーパーが言った通り「カーテンコール」。

 

この最終回はこれまでのシリーズのムードから言えば異色だったけれど、しかし描かれているテーマ的には、むしろいつものリンチに戻ったとも言えます。

クーパーとダイアンがリチャードとリンダという別人に、ローラ・パーマーはキャリー・ペイジという別人になっている。

人が突然、別人に変わる。これは「ロスト・ハイウェイ」「マルホランド・ドライブ」「インランド・エンパイア」という最近の映画において、繰り返し描かれてきたテーマです。

だから、ツイン・ピークスは27年間48エピソード(と映画)という長い旅を経て、いよいよ真の「リンチ・ワールド」にたどり着いたのだ…という、そんな解釈もできてしまいます。

 

終わってみれば、第17章の時点では信じられないくらい、多くの謎がばらまかれた状態で終わったわけですが、しかしなんだかホッとした気分もあります。

いや、なんか、あのままのムードですべて解決して終わったら、ツイン・ピークスの世界がいよいよ完全に閉じて「終わり」になってしまうようで、なんだか寂しいなあ…と思っていたんですよ。

謎を残したことで、世界は閉じなかった。開かれた状態で終わった。

まだ、どこかへつながっていく可能性が残された。それがとても嬉しいと感じるのです。

 

謎の考察」の方も、あと一回で終えられる気はまったくしないです。

まだまだ書くことがありそう。その点でも、嬉しいですね。

この先、第18章および、シリーズ全体を通しての考察もしていきたいと思っています。よろしければもう少し、お付き合いください。

 

後編(第18章 謎の考察)はこちらです。

 

死刑囚の主人公が獄中で別人に変身します。

 

ナオミ・ワッツ(ジェイニー・E)の主人公が目覚めてみると別人に。

 

ローラ・ダーン(ダイアン)の主人公の女優が演じていた役に入れ替わってしまいます。

 

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