Twin Peaks : The Return PART 13

監督/脚本/制作総指揮:デヴィッド・リンチ

脚本/制作総指揮:マーク・フロスト

カイル・マクラクラン

2017年8月8日放送(米国)

 

①第13章 ストーリー覚え書き(ネタバレ)

 

ラッキー7保険会社に、ミッチャム兄弟と3人娘とクーパーが、列を組んで踊りながらやってくる。

ミッチャム兄弟はブッシュネルに感謝のしるしの贈り物を届ける。

アンソニーは隠れている。ダンカン・トッドに電話すると、1日でなんとかしろと命令される。

 

ジョーンズ宅に、ミッチャム兄弟からの贈り物のBMWと、サニー・ジムの遊具セットが届く。

 

その夜、遊具セットで遊ぶサニー・ジムを、ジェイニー・Eがうっとりと見つめている。

「まるで天国にいるみたい」

 

モンタナ州西部。町外れの倉庫にダギー・ジョーンズがやってくる。

仲間たちとともにその様子を監視カメラ画像で見ていたレイは、「俺が殺した奴です」と言う。

銃を持った男たちに取り囲まれるダギー・ジョーンズ。グループのボスであるレンゾは、ダギーにアームレスリングの勝負を求める。彼は14年間負けなしで、レンゾに負けた者は彼の手下にならなければならない。

ダギーは「俺が勝ったらレイをもらう」と要求する。

アームレスリングの勝負。ダギーはレンゾの腕をへし折って勝利し、顔面パンチでノックアウトする。

 

 

ダギーは逃げようとしたレイの足を撃ち、俺を殺すよう指令したのは誰だと尋ねる。

レイはフィリップ・ジェフリーズだと答える。「連中が欲しいものをあんたが持ってる」からだ。

「殺した後であんたにはめるよう言われた」と言って、レイは指輪を取り出す。ダギーはそれをレイにはめさせる。

ダギーは「俺の欲しいもんは持ってるな?」と聞いて、レイはポケットから座標を書いた紙を取り出して渡す。

ジェフリーズの居場所を聞くダギー。レイが「ダッチマンて店だ」と答えるやいなや、ダギーはレイを撃ち殺す。

レンゾの手下の男たちに混じって、リチャード・ホーンがその様子をモニターで見ている。

指輪は消え、レイの死体はブラックロッジへ。指輪は黒いテーブルの上に戻される。

 

ラスベガス市警。フスコ刑事たちが取り調べで大暴れする女の声を聞いている。

指紋照合の結果、ダグラス・ジョーンズは2日前にサウスダコタの刑務所を脱走していて、しかも行方不明のFBI捜査官であることがわかる。

「そんな馬鹿な」とフスコたち。

 

アンソニーが市警のクラーク刑事を訪ね、検知されない毒薬を求める。クラークは5000ドルを要求する。アンソニーが去った後、クラークは同僚の刑事と話す。

「ありゃダメだ。誰かを毒殺したいらしい」「トッドさんに知らせよう」

 

夜、シャンタルとハッチはユタ州をドライブしている。

 

ジェイニー・EはBMWのオープンカーでクーパーを会社へ送る。幸せそうなジェイニー・E。

クーパーが来るのを待ち構えていたアンソニーは、コーヒーをおごると言う。

クーパーがコーヒーショップのチェリーパイに気を取られているうちに、アンソニーはコーヒーに毒薬を入れる。

戻ってきたクーパーがアンソニーの肩に触れていると、やがてアンソニーは泣き出して、本当にすまない!と懺悔を始める。

 

ダブルRダイナー。シェリーベッキーと電話で話している。

スティーブンがもう2晩帰らないらしい。シェリーはチェリーパイをごちそうするとベッキーを誘う。

 

アンソニーはブッシュネルに、これまでダンカン・トッドのために働いていたことを告白する。

ブッシュネルは、ダンカン・トッドと2人の汚職警官のことを証言するなら酌量すると話す。

 

ダブルRにボビーが来る。シェリーに会いに来たようだが彼女はもう上がったようだ。

ノーマとエドが同じテーブルで話している。ボビーもそこに座るが、やがてウォルターが来て、ノーマとキスをする。エドとボビーは別の席に移る。

ウォルターはダブルRの5つの店舗のうち3つで黒字になったとノーマに話す。だが、この本店が赤字だ。パイに金がかかりすぎているためだ。

ノーマは契約に従ってパイのレシピを提供しているが、他店舗のはレシピ通りに作っていないと言う。

ウォルターは店名を「ノーマのダブルR」に変えるべきだと言い、ノーマを食事に誘う。そのようすをエドが見つめている。

 

ネイディーンの無音カーテンレール店に、ジャコビーがやってくる。

ネイディーンはドクター・アンプに心酔していることを伝える。

 

セーラが自宅の居間で、モノクロテレビのボクシングを見ている。

テーブルには酒瓶が並び、灰皿には吸殻が山のようになっている。

電気音が鳴り、テレビは同じ映像を繰り返し流している。セーラは気にもかけず同じ映像の繰り返しを見続ける。

 

オードリーとチャーリーの会話。

自分がここにいないみたい、他の場所にいて別人になったみたいとオードリーは訴える。

君がすべきことはロードハウスに行ってビリーを探すことだとチャーリー。

オードリーはロードハウスがどこにあるのかわからない。

ふざけるのはよせ、とチャーリーは言う。「でなきゃ君の物語も終わりにさせる

私の物語ってなに?」とオードリー。「それって通り沿いの家に住んでいた少女の話?」

家にいたいけど出かけたい、とオードリーは言う。「助けてチャーリー。ここはまるでゴーストウッドよ」

 

ロードハウス。司会がジェームズ・ハーリーを紹介する。

ギターの弾き語りで、「Just You」を歌うジェームズ。

客席で、腕に「7663」の刺青がある女がステージを見て涙を流している。

 

 

ビッグ・エドのガソリンスタンド。エドが一人、ぼんやりとスープを飲んでいる。

エドはマッチで紙を燃やす。

 

②第13章 レビュー

 

今回のトピックはダギー・ジョーンズの腕相撲とアンソニーの改心。

あとはダブルRの日常風景でしょうか。今回も派手な出来事の少ない、地味な展開です。

総じて、クライマックスの展開へ向けていろいろとつなぎの回という印象でしょうか。

 

のっけから、常軌を逸したミッチャム兄弟のパレード。こういうハチャメチャなギャグも時々入れてくるんですよね…。

 

ジェイニー・Eが幸せそうで微笑ましいんだけど、でも彼女が出会って結婚したダグラス・ジョーンズは既に第3章で消えていて、今いるのは別人のクーパーなんですよね…。

クーパーが記憶を取り戻したら、彼女の幸せも終わってしまうのかな。

 

ダブルRが描かれ、エドがノーマに熱い視線を向けているけどノーマはクールで、ボビーがいて、シェリーがいて…そしてジェームズが女の子はべらせて歌う

旧シリーズのツイン・ピークスのイメージが色濃い回とも言えますね。

ドナはどうしてるのかな…ララ・フリン・ボイルは出られないだろうなあ…。

そんな中で、オードリーは一人だけ別世界に隔離されているようですね。

 

前回から、チェリーパイが前面に出てきています。

シェリーがベッキーにすすめるクリームたっぷりのチェリーパイ、ノーマ秘密のレシピで作られた「自然素材の」チェリーパイが食べたくなりますね。

 

③第13章 ネタバレ考察

 

ミッチャム兄弟とブッシュネルが和解して、ダンカン・トッドに使われるアンソニーはいよいよ窮地になりました。

しかし、顧客から高級車だのもらうのは賄賂にならないんですかね。しかも相手は犯罪絡みの人物なのに。

 

モンタナ州サウス・ダコタ州の西に位置します。レイは昔の仲間?のつてを頼って、そこに逃げていたようですね。

リチャード・ホーンもそこに逃げ込んでいました。ツイン・ピークスのあるワシントン州モンタナ州の西にあたります。

ちなみにラスベガスはそれらの州の南側、ネバダ州の南部。サウスダコタからラスベガスに向かうシャンタルとハッチはユタ州に入っていました。

 

ダギー・ジョーンズが腕相撲に強いのはどういうわけでしょう。

ボブが取り憑いてるゆえの超能力? リーランドは別に普通の腕力しか持っていませんでしたが。

それとも、FBIで訓練を受けたクーパーの肉体の力でしょうか。クーパーが腕力があるという描写も、これまでは特にありませんでした。

ややご都合主義な気もします。

 

フィリップ・ジェフリーズがレイを使ってダギーを殺そうとしていたことが明らかになりました。

ダギーは第2章でジェフリーズと通信していましたし、仲間であるような描写が再三されていました。しかし、どうやらジェフリーズはまた別の思惑で動いているようです。

 

レイが座標を入手した相手として、ウィリアム・ヘイスティングスの美人秘書ベティの名前を挙げています。

第9章で、バックホーンのマックレー刑事の口から、彼女が爆殺されたことが知らされています。犯人はレイでしょう。

しかし、なぜかこのベティだけは一切姿を見せず、劇中に登場していません。

 

レイのポケットから、指輪が出てきました。

第3章で、ラスベガスのダグラス・ジョーンズ氏が消え失せるときに彼の指から落ちた指輪です。この指輪はかつてテレサ・バンクスからローラ・パーマーへ、それからアニー・ブラックバーンへと受け継がれました。間を取り持ったのは、小人あるいはフィリップ・ジェラードです。

レイは刑務所を出る寸前に、看守からもらったと言っています。ダギーを殺したら指輪をはめろと指示されていました。

ダギーはレイに指輪をはめさせ、殺すと、指輪とともにレイの体はブラックロッジへ移動します。

そこから、指輪は死者の魂をブラックロッジへ送り込む働きをしているようです。

 

第8章では、ダギー・ジョーンズが撃たれても、森の男たちがやってきて彼を蘇らせてしまった。

もし指輪を身につけていたら、蘇ることはなく、ダギーはブラックロッジへ送られていたのかもしれません。それは、ボブがブラックロッジに戻ることを意味します。

それを画策したのがジェフリーズであるということは、彼はボブをロッジへ戻し、体をクーパーに戻すことを意図しているということになります。

フィリップ・ジェフリーズはクーパーの側についているということになりますね。

 

ダギー・ジョーンズはジェフリーズの狙いをはねのけ、レイから座標を手にいれることに成功しました。ようやく、彼は「欲しいもの」を手に入れました。

しかし、なんで彼はレイを使わねばならなかったんでしょうね。自分でウィリアム・ヘイスティングスやベティから座標を入手することはできなかったのかな。

 

リチャード・ホーンが、モニター越しではありますが初めてダギー・ジョーンズと出会いました。

この二人の関係が、終盤の焦点となってきそうな雰囲気です。

 

ブッシュネルが言っていた「二人の汚職警官」が登場しました。

ダンカン・トッドが支配するラスベガスの犯罪組織が、少しずつ明らかになってきました。それに敵対するのがミッチャム兄弟、という構図です。

 

トニーことアンソニー・シンクレアが遂に改心し、すべての悪事を告白します。

彼はダンカン・トッドに使われ、長年ブッシュネルを裏切っていました。

ブッシュネル&ミッチャム兄弟vsダンカン・トッド&汚職警官の構図になっていきそうです。

 

ボビーとシェリーエドとノーマはそれぞれどうなってるんでしょう。

シェリーはシェリー・ブリッグスだし、結婚関係は良好であるようにも見えますが、レッドの存在がやや不吉な影になっています。二人の家庭の描写は今のところ出ていません。

ノーマはノーマ・ジェニングスですね。彼女の夫ハンク・ジェニングスは麻薬取引や殺人未遂などで逮捕され、今シリーズでも出てきませんが、まだ結婚関係は解消されていないのでしょうか。

エドはネイディーンとまだ結婚関係にあるようですが、二人が一緒にいるところは今回一切出てきません。エドは昔と同じくガソリンスタンドを経営していて、ネイディーンは彼女の夢だった無音カーテンレールの店を開いたようです。エドとネイディーンは別居しているのでしょうか。

エドは未だにノーマに恋しているようです。一途な人だなあ…。

 

ノーマはダブルRダイナーをチェーン展開して、既に5つの店舗を成功させているようです。

この25年でもっとも成功したのは実はノーマなのかもしれませんね。

ウォルターはノーマのビジネス上のパートナーであるようですが、しかし友人以上の関係でもあるようで、エドをやきもきさせています。変わりませんね〜。

 

ノーマはダブルRダイナーの歴史は50年と言っています。

設定によれば、ノーマ・ジェニングスがダブルRをオープンしたのは1969年4月。2019年で50年だから、ほぼ50年と言えますね。

えっ50年…と思って調べてみたら、ノーマ役のペギー・リプトンさんってもう70歳なんですね。美人だからそんな年に全然見えなかった。すごいなあ。

 

セーラのシーンは怖い…。

酒と煙草にまみれた孤独な部屋で、延々と繰り返す同じ映像を見続ける老女。

彼女が救われる日は来るのか…。

 

オードリーとチャーリーの会話は、いよいよ彼女がいるのが通常の世界ではないことを示しているようです。

「自分がここにいない」と訴えるオードリー。彼女は25年前からずっと病院で昏睡状態のままなのでしょうか? この世界は彼女が見ている夢?

夢の世界が現実とほとんど等価に描かれるのは、「マルホランド・ドライブ」はじめリンチの作品ではおなじみです。

あるいは、彼女は既に死んでいてこれは黄泉の世界である可能性もあります。「マルホランド・ドライブ」には死者の地獄めぐりという側面もありました。

 

通り沿いの家に住んでいた少女の話」とはローラ・パーマーのこと、「ツイン・ピークス」という物語そのもののこと?

メタな発言になってきました。

チャーリーはそのような様々な物語の「作者」であるということでしょうか。

チャーリーが書くことでオードリーの物語はかろうじて続いており、彼が書くことをやめると「終わってしまう」のでしょうか。

 

ジェームズが「Just You」を歌い、ドナとマデリーンがコーラスをしたのは旧シリーズの第9章。リンチ監督によるエピソードでした。

ドナもマデリーンもいないけれど、やっぱり女の子二人がコーラスしてくれます。髪の毛薄くなったけど、ジェームズはあいかわらずモテますね。

 

旧シリーズ第9章より、若かりしジェームズ、ドナ、マデリーンの歌

 

ジェームズの歌を聴いて泣いている女の子は、レネ

第2章でジェームズがロードハウスに姿を表すシーンで、シェリーの友達の一人として登場していました。

 

最後は無音のままエドのシーンの長回しですが、意味はよくわからないですね。

 

「Just You」収録のサントラ。

 

旧シリーズサントラの第2弾。旧バージョンの「Just You」収録。

残念ながら絶版のようです。

 

旧シリーズのコンプリートボックス

 

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