Twin Peaks : The Return PART 15

監督/脚本/制作総指揮:デヴィッド・リンチ

脚本/制作総指揮:マーク・フロスト

カイル・マクラクラン

2017年8月20日放送(米国)

 

①第15章 ストーリー覚え書き(ネタバレ)

 

金色のシャベルを担いで、誇らしげに歩くネイディーン。エドのガソリンスタンドを訪ね、エドとノーマの幸せにために身を引くことをエドに告げる。

あなたを自由にしてあげる。私なら大丈夫。これでクソを掘って外へ出るの」

 

ダブルRダイナー。オーティス・レディングの「愛しすぎて(I’ve been loving you too long)」が流れている。

喜び勇んだエドが駆けつけるが、ノーマはウォルターの元へ。落胆してコーヒーを注文するエド。

だがノーマは店のフランチャイズ展開を断り、エドと抱き合い、キスをする。感動して見守るシェリー。

 

夜の道路、車を走らせるダギー・ジョーンズ。時折電気音がしている。

闇の中、コンビニエンス・ストアに車をつける。森の男が店の前に立って待っている。

 

 

中に入ると、真っ黒な顔をした別の森の男がいる。ダギーは「フィリップ・ジェフリーズを探してる」と言う。

森の男がレバーを引くと、光のスパークが起こり、仮面を被った赤スーツの男(Jumping Man)が見える。

 

三人目の森の男が現れ、ダギーを真っ暗な部屋に導く。森がオーバーラップする。

階段を上がり、ドアを抜けると水たまりのある中庭のような場所だ。虫の声が聞こえている。

汚れたガウンの女がやてきて、逆再生の声で「あなたのためにドアの鍵を開けてあげる」と言う。

 

8号室に入ると、奥の壁がめくれるようにして、モノクロの空間が現れる。

蒸気を吹き出す黒い物体

フィリップ・ジェフリーズの声が「ああお前か」と言う。

ダギー「レイに俺の殺しを依頼したな」

ジェフリーズ「レイに電話はした」

「つまり依頼したんだろう。5日前に俺に電話したか」

「お前の番号を知らない」

「じゃああれは別の誰かか」

「昔はよく話した」

「そうだ」

 

1989年の映像。フィラデルフィア支局に現れたジェフリーズが「ジュディのことは話さない」と言っている。

 

 

ダギー「1989年、お前はFBIのフィラデルフィア支局に現れジュディに会ったと言った

ジェフリーズ「と言うことは、お前はクーパーか?

ジュディとは誰だ。ジュディは俺に何か用があるのか」

「直接ジュディに聞いたらどうだ。俺からお前に教えよう」

黒い物体から数字が出てくる。485514…

 

 

「ジュディとは誰だ」

お前はジュディにもう会ってる

「どういう意味だ」

電話のベルが鳴る。ダギーが電話を取ると、彼はコンビニエンス・ストアの外の公衆電話に立っている。

 

リチャード・ホーンがダギーに銃を向ける。

「農場で見て、すぐにわかった。FBIだろう」

「なぜそう思う」

「写真で見た。母親が持ってた写真だ。母親の名はオードリー・ホーン

ダギーは一瞬でリチャードをノックアウトする。

「二度とふざけた真似はするな。トラックに乗れ。おしゃべりしよう」

ダギーはメールで「ラスベガスは?」と送信する。

 

ダギーが車で立ち去ると、コンビニエンス・ストアの窓が光り、煙が吹き出てきて、そして消える。

 

昼間の森の中。犬を連れた男シリルが散歩している。

大木の根元では、スティーヴンとガーステンが抱き合っている。スティーヴンは銃を持っている。

スティーヴンは「俺がやった」と言うが、ガーステンは「そうじゃない。彼女よ」と言う。スティーヴンは自殺しようとしている。

シリルが来て、ガーステンは慌てて木の陰に隠れる。しばらくすると、銃声が聞こえる。

シリルがカールに、スティーヴンのことを伝える。

 

ロードハウス。ZZトップの「Sharp Dressed Man」がかかっている。

ジェームズとフレディーがやって来て、ジェームズはレネーに声をかける。同じ席にいたチャックが立ち上がり、「俺の女房に話しかけんな」とジェームズを殴り倒す。

フレディーが緑の手袋をした拳で殴ると、チャックは卒倒する。

 

ラスベガスのFBI。ウィルソンがダグラス・ジョーンズ夫妻を連れてきたと報告する。ヘッドリーが見に行くと、大勢の子供たちがいる。

 

ダンカン・トッドロジャーを呼んで、アンソニーの動向を聞く。そこへシャンタルがやって来て、ダンカンとロジャーを射殺する。

電話に出たシャンタルは「あと一人やるだけ」と答える。

 

ツインピークス警察署の留置所に、ジェームズとフレディーが収監される。ナイドは鳥のような声を立てている。

 

ハッチはシャンタルに、国家は殺人を責められないのに、なぜ殺し屋だけが罪になるのかと愚痴る。シャンタルはもう長いこと拷問できてないと不満を言う。

 

ジェイニー・Eクーパーにチョコレートケーキを振る舞う。「どんどん夢が叶っていくわ。本当よ」

クーパーがテレビのスイッチをつけると、「サンセット大通り」が流れる。

登場人物のデミルが「ゴードン・コールに言え」と言うと、クーパーは激しく反応する。

床に倒れたクーパーは、コンセントにフォークを突っ込む。停電が起きて、ジェイニー・Eは悲鳴をあげる。

 

丸太おばさんがホークに電話をかけ、「私死ぬの」と告げる。ホークは「残念だ、マーガレット」と答える。

「あなたは死を知ってる。変化があるだけよ。終わりじゃない。ホーク、時間なの。少し怖さもある。手放すことが怖いのよ。私が言ったことを忘れないで。あれに気をつけて。ブルーパインマウンテンに出てる月の下のあれよ。ホーク、丸太が金色に変わってる。風がうめいてるの。私死ぬわ。おやすみ、ホーク」

ホークは「おやすみマーガレット」と言って電話を切る。切った後、「さよならマーガレット」と呟く。

 

空には半月が出ている。ホークに呼ばれ、フランク、ボビー、アンディ、ルーシーが会議室に集まる。ホークは「マーガレット・ランターマンが今夜亡くなった」と告げ、皆は追悼を捧げる。

夜の森で、小屋の明かりが消える。

 

オードリーがもう電話を待っていられないと、外に出て行こうとしている。だが、チャーリーがコートを着て、出て行く準備ができていると言うと何かと理由をつけて出ようとしない。

「昔のあなたは今みたいには全然見えなかった」とオードリーは言う。「あなた誰なの?

チャーリーがコートを脱いで座ると、オードリーは飛びかかる。「心の底からあなたが大嫌い

 

ロードハウス。

ザ・ヴェイルズ(The Veils)が「Axolotl」を演奏している。

二人の屈強なバイカーが、「人を待ってるの」というメガネの少女ルビーをどかして席を奪う。

ルビーは床に四つん這いになって、やがて叫び出す。

 

②第15章 レビュー

 

まさかのエドとノーマのハッピーエンド

 

まさかの「コンビニエンス・ストア」本当に登場。

 

ダギーとリチャード・ホーンが遂に合流。

 

スティーヴンまさかの衝撃展開。

 

ダンカン・トッドあっけなく最後。

 

そしてクーパーが遂に

 

丸太おばさん、涙のお別れ

 

今回も盛りだくさんですね。それぞれのパートが急展開を見せ、物語が終わりへ向かおうとしていることを伺わせます。実にいろいろなことが語られて、見応えのある回になっています。

 

フィリップ・ジェフリーズが声だけ登場しますが、残念ながらデヴィッド・ボウイの出演は叶わず、ネーサン・フリッツェルという人の吹き替えになっています。

 

アリシア・ウィットのガーステン・ヘイワードが再登場。最初出たときはまさかスティーヴンの浮気相手の女がガーステンだとは気づかなかった。少女の頃のイメージと違いすぎるんだもの。

 

スティーヴンとガーステンのところに通りかかる犬の散歩の男シリルを演じているのは、リンチとコンビでツイン・ピークスの生みの親であるマーク・フロスト

 

丸太おばさんは…すごいですね。鼻にチューブ、髪も抜け落ちた状態で出演して、「私死ぬの」と語っている。

演じるキャサリン・コールソンががんのために亡くなったのは2015年9月28日

このシーンが撮影されたのがいつかわかりませんが、もう本当にリアルな時期だったんじゃないでしょうか。

もしかしたら、ホークたちの追悼シーンは彼女の死を受けて撮影されたのかもしれません。

しかし、本当に自分の死期を悟りながら、死んでいく女性の役を演じている。キャサリン・コールソン、すごい人です。

これをやらせるリンチもすごいけど。イレイザーヘッド以来の、長年にわたる信頼関係あってのことでしょうね。

 

リンチの追悼の言葉は以下のとおり。

「今日、私は大切な友人のひとりであるキャサリン・コールソンを失いました。キャサリンは、まさに純金のような人物でした。彼女はいつも友人たちのそばにいて、全ての人々、家族、そして仕事への愛に溢れる人物でした。彼女は疲れを知らない働き者でした。彼女は笑いのセンスがあり、笑うことが好きでしたし、周りを笑わせることが大好きでした。彼女はスピリチュアルな人で、長年に渡り超越瞑想を実行していました。そして、彼女は丸太おばさんでした

 

③第15章 謎の考察(ネタバレ)

 

エドとノーマの仲はハイスクール時代から。二人は恋仲だったのに、ハンク・ジェニングスに騙され、誤解からエドはネイディーンと結婚してしまいました。新婚旅行で狩猟に出かけたエドは銃の暴発事故を起こし、ネイディーンは片目を失います。この罪悪感から、エドはネイディーンと別れることができなくなってしまいました。

 

旧シリーズでは、無音カーテンレールの発明に失敗して絶望したネイディーンが自殺をはかり、そのショックで精神が少女に退行。怪力も得てしまい、なぜか女子高生になってマイク・ネルソンに恋をするという、奇々怪々なコメディが展開されていました。

その隙にエドはノーマと復縁に向かい、ハンクが逮捕されたこともあって、すべては丸く収まるかに見えた…ところでネイディーンがいきなり記憶を取り戻し、マイクと破局、エドの元に戻ってしまい、すべては元の木阿弥となったのでした。

 

それから25年。ドクター・アンプことドクター・ローレンス・ジャコビーのおかげで、ネイディーンはすっかり生まれ変わり、エドは晴れて自由に。ハイスクール時代から数えれば実に50年越しに、ハッピーエンドを迎えることになったようです。

…とはいえ、旧シリーズでどんでん返しとなったのも最終章。まだまだ予断は許さない…のかな?

 

このシーンで流れているのはオーティス・レディングの「愛しすぎて(I’ve Been Loving You Too Long)」のライブ・バージョン。1969年のモンタレー・ポップ・フェスティヴァルからの音源です。

モンタレー・ポップ・フェスティヴァルは1969年6月16日から18日の3日間、カリフォルニア州モンタレーで開かれた大規模な野外コンサートです。多くの出演者の中でも、ジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョプリン、それにオーティス・レディングの演奏は名演として語り継がれています。

 

 

第8章で1945年の核実験の中に出現した「コンビニエンス・ストア」に、ダギー・ジョーンズがたどり着きました。

旧シリーズ第2章で小人によって初めて言及され、映画版でフィリップ・ジェフリーズの証言の中で描かれた、別世界の住人が現実世界において住まう場所、です。

第8章で多くの森の男が出入りしていたように、複数の森の男がそこに属しているようです。

 

スパークの中に姿が見える白い仮面に赤いスーツの男Jumping Manと呼ばれています。映画版に登場していましたが、何の説明もなく、ぴょんぴょんと跳ねるように歩くだけで、特に何をするでもない謎のキャラクターです。

 

 

モノクロの部屋に出現する黒い物体は、第8章巨人の城にあった釣鐘型の機械と似ていますが、同じではないようです。

フィリップ・ジェフリーズの声が聞こえますが、これはこの装置を使ってどこかと通信しているという意味なのか、それともこの装置自体がフィリップ・ジェフリーズなのか…?

5日前」というのは、第2章でダギーがダーリャを殺した後、ジェフリーズらしき相手と通信した時のことでしょうか。それがジェフリーズでなかったなら、いったい誰なのでしょう。

 

ジュディのことは話さない」のジュディは映画版の時から謎でした。猿なんじゃないか、なんて声もありましたが…。

ジェフリーズは、ダギーは既に会っていると言います。ジュディとかジュディスという名前の人物はこれまで出て来ていません。ダギーが会ってる中で名前不明の女といえば、さっき会った鍵を開けてくれた女? まさかね。

 

リチャード・ホーンはどこからどうやってコンビニエンス・ストアに辿り着いたのか。遂にダギーと対面することになりました。

ついでに、リチャードの母親がオードリーであることもいきなり判明。クーパーの写真を、オードリーが持っていて息子のリチャードが見たのか。

リチャードがクーパーに銃を向ける理由が、あるということでしょうか。

 

バックホーンでダイアンが「ラスベガスは?」のメールを受け取ったのは、第12章のこと。ゴードンがワインを持ち込んでタミーを正式にチームに迎え、ダイアンが「Let's Rock」と言った後のことです。

ということは、ダギーの時間軸ではこの日はまだ9月30日

 

スティーヴンとガーステンの会話も謎めいていて、よくわからないですね。何があったのでしょう。

俺がやったというスティーヴン。そうじゃない彼女よと言うガーステン。彼女とはベッキー?

あなたは何もしてない、ハイになってたのよ、とガーステン。彼らは何か犯罪でもしでかしたのか。そこにベッキーがからんでいるのか。

でもなんだか二人の会話は噛み合っていなくて、いきなりスティーヴンが「俺は高卒だ」と言いだしたり、「俺はもう死んでいる」とか、「サイがいる場所」とか、「トルコ石だ」とか。

銃声は、スティーヴンが自殺したという意味なのか。

 

ロードハウスはなぜかライブではなく、ZZトップのレコードをかけています。「Sharp Dressed Man」は1983年の曲で、大ヒット・アルバム「Eliminator」からシングルカットされています。

 

 

第13章でジェームズが歌った時に涙を流していたレネーにジェームズが話しかけますが、彼女にはチャックという夫がいて、ジェームズは殴られてしまいます。

チャック? チャックという男の名前もオードリーとチャーリーの会話の中に出ていました。ビリーとティナが最後に会ったという話の出どころがチャックで、ただしチャックは「イっちゃってるから」信用できない。また、チャックがビリーのトラックを盗んだということでした。

このチャックは、オードリーの話に出てくるチャックなんでしょうか。

 

ダンカン・トッドとロジャーが、あっさりとシャンタルに射殺されました。

ダギーがシャンタルに命じていた「ベガスでダブルヘッダー」というのは、マーフィー所長とクーパーでダブルという意味じゃなくて、ベガスのダンカンたちとクーパーでダブルという意味だったんですね。

 

クーパーがテレビで見るのは「サンセット大通り」。1950年公開の、ビリー・ワイルダー監督の古典的名画です。グロリア・スワンソンが年老いた往年の大スターを壮絶に演じました。

これは、リンチのお気に入りの映画です。リンチは、「マルホランド・ドライブ」を「サンセット大通り」のリメイクであると語っています。

画面に映ってるのはハリウッドの巨匠監督セシル・B・デミル。本人役での出演です。彼の「ゴードン・コールに言え」というセリフを聞いて、クーパーは何かを思い出します。

リンチはもともと、この映画に登場するこの役名から自分が演じる人物の役名を決めていました。

 

丸太おばさんの感動的なカーテンコール。

ブルーパインマウンテンに出てる月の下のあれ」とは、エクスペリメント・マークですね。ホークの「生ける地図」に出ていました。

 

 

オードリーとチャーリーの会話第12章から続いていますが、一向に時間は経過していないですね。ビリーを探しにロードハウスに行く寸前で時間が止まっています。

やはり、オードリーとチャーリーのパートは他の部分とは異なる時空であると考えるべきなんでしょう。

オードリーは以前自分が別人みたいだと言っていましたが、チャーリーに対しても別人だと言っています。

 

ロードハウスで演奏するザ・ヴェイルズ(The Veils)はヴォーカル/ソングライターのフィン・アンドリュースを中心にした英国ロンドン出身の4人組ロック・バンド。2004年デビュー。フィン・アンドリュースは元XTCのバリー・アンドリュースの息子。

Axolotl」とは「アホロートル」で、いわゆるウーパールーパーのことです。

眼鏡っ子のルビーは…なんでしょうね。謎です。

 

 

 

 

 

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