Twin Peaks : The Return PART 16

監督/脚本/制作総指揮:デヴィッド・リンチ

脚本/制作総指揮:マーク・フロスト

カイル・マクラクラン

2017年8月27日放送(米国)

 

①第16章 ストーリー覚え書き(ネタバレ)

 

夜の道路。助手席にリチャードを乗せて、ダギー・ジョーンズがトラックを走らせている。

俺はある場所を探してる」とダギー。「3つの座標を手に入れたが、そのうち二つが一致した」

それは荒れ地にある岩の上だ。ダギーはリチャードに、座標に近づくとピーピー鳴る携帯を持って岩に登るよう指示する。

俺の方が25も年上だよな

 

その様子を、丘の上からジェリー・ホーンが見ている。

 

リチャードが岩に登り、座標の地点に来ると、電気がリチャードを貫き、リチャードの体は消滅してしまう。

ダギーは「じゃあな、息子よ」と言って立ち去る。その際に、メールを打つ。

:-)ALL.」送信できない。時刻は午前2時5分。

 

昼、ランスロットコート。ダグラス・ジョーンズの家の前に、ハッチとシャンタルが車を停める。

「今朝鳥の声を聞いたか?」「うるさかったからね」

2台の黒い車がやって来て、ヘッドリーとウィルソンらFBIの面々がジョーンズ家を訪ねる。留守とわかって、彼らはラッキー7保険会社へ向かう。

 

クーパーは病院にいて、昏睡状態になっている。ジェイニー・Eとサニージムが寄り添っている。

ブッシュネルが、昏睡状態だが脈や呼吸に異常はないと告げる。

ミッチャム兄弟が花を持ってお見舞いに来る。キャンディはフィンガーサンドイッチをサニージムに振る舞う。

 

バックホーンで、ゴードンは電子装置を見つめている。

 

サニージムがトイレに行き、ジェイニー・Eがついて行く。

ブッシュネルに、フィルからFBIが会社に来たと電話がある。

 

ミッチャム兄弟がリムジンで乗りつけ、ジョーンズ家に食料を運び込む。

車を停めた会計士が、車を入れられないとハッチらに文句を言う。

シャンタルが汚い言葉で罵ると、会計士は無言で車を発進させ、ハッチらの車を押し始める。

シャンタルが会計士を撃ち、会計士も銃を持ち出して撃ち返し、銃撃戦になる。

ハッチらは逃げようとするが、会計士の掃射でハッチとシャンタルは蜂の巣に

見張っていたFBIが会計士をホールドアップする。

ミッチャム兄弟は呆れている。

「‘ここのご近所はどうなってんだ?」「みんないろいろとストレスを抱えてんだよ」

 

病室に謎の音が聴こえてきて、ブッシュネルは部屋を出て行く。

椅子に、ブラックロッジのフィリップ・ジェラードの顔が現れる。クーパーががばっと起き上がる。

「目を覚ましたな」「完全に目覚めた」

ジェラードは「もう一人は帰ってこなかった」「まだ外にいる」と伝え、クーパーに指輪を渡す。

種は持ってるか?」とクーパーが聞くと、ジェラードは金色の玉を見せる。

クーパーは「もう一つ作ってもらいたい」と言って、自分の髪の毛をジェラードに渡す。

 

 

ジェイニーEとサニージムが戻ってくる。クーパーはテキパキと指示を出して、自分で退院を決めてしまう。

「ジェイニー・E、今すぐドクターを呼んでもらえると助かる。ブッシュネル、そこのサンドイッチを取ってくれ腹ペコだ。

ブッシュネル、その左脇のホルスターに入れてる32口径のスナブノーズを貸してもらいたいんだが」

クーパーはブッシュネルを通じてミッチャム兄弟に電話をかけ、「ワシントン州スポケーンへ飛びたい」と伝える。

クーパーはブッシュネルにメモを託し、ゴードン・コールという男から電話があったらこれを伝えるよう頼む。

「あなたは尊敬すべき人物だ。あなたの親切と良識ある振る舞いは忘れない」

「FBIはどうするんだ?」

私がFBIだ

 

ジェイニー・Eの回したBMWを運転して、クーパーはカジノへ向かう。

 

ダイアンは「:-)ALL.」のメールを受け取る。時間は16時31分。

ダイアンは動揺して、「覚えてる。ああクープ、覚えてる」と言う。そして、返信で座標を送る。

バッグの中の銃を確認して、ダイアンはゴードンたちのいる部屋へ。

クーパーが訪ねて来た夜のことを話しに来た」とダイアンは言う。

「音信が途絶えて3、4年経ったある夜のこと。ノックもなしに彼は入ってきた。

まず抱きしめ合い、それからソファに座って話をした。彼はFBIの現状を聞きたがった。尋問されている気がした。

彼はキスをしたが、私はなにかがおかしいと感じ、怖くなった。彼はそれをわかっていて、笑った。私は彼にレイプされた。

その後、外に連れ出された。連れて行かれたのは、古いガソリンスタンドだった。

私は保安官事務所にいる。彼に座標を送った。なぜって、私は私じゃないから

ダイアンがバッグから銃を取り出し、アルバートとタミーが先に撃つと、ダイアンは消えた。

タミーは驚いて、「今のが本当の化身

 

ブラックロッジ。ダイアンがソファに座っている。

ジェラードが「誰かが作ったのだ、お前を」と言うと、ダイアンは「わかってるわよ、クソッタレ」と答える。

電気音とともにダイアンの顔が割れ、金色の玉が飛び出した後、ダイアンの体は消える。

 

 

ミッチャム兄弟のカジノで、クーパーはジェイニー・Eとサニージムに告げる。

「しばらく遠くへ行くことになった。君たちと過ごせて本当に楽しかった。心が満たされた。ダギー…私は必ず帰ってくる」

あなたはダギーじゃないのね?」とジェイニー・E。「嘘だ」とサニージム。クーパーは「君のパパだよ」と言ってサニージムを抱きしめ、君たち二人のことを愛していると告げる。「赤いドアから帰ってくる。そしてずっとそばにいる」

ジェイニー・Eはクーパーにキスをして、「あなたが誰でもいい。ありがとう」と告げる。

 

リムジンの中で、クーパーは自分がFBI捜査官であること、ツインピークス保安官事務所へ行かねばならないことを話す。ミッチャム兄弟は警察関係は苦手だと言うが、クーパーは「君たち兄弟が黄金のハートを持っていることは私が保証する」と言う。

 

ロードハウス。MCがエドワード・ルイス・セバーソンを紹介する。

オードリーとチャーリーが入ってくる。チャーリーはマティーニを注文する。

歌が終わると、MCがアナウンスする。「それではここで踊っていただきましょう、オードリーのダンス!

客がスペースを空け、オードリーはフロアの中央で踊り始める。やがて喧嘩が持ち上がる。「モニーク! 俺の女房に何しやがる!」

オードリーはチャーリーにここから連れ出してと叫ぶが、そこで突然世界が切り替わる。オードリーは鏡に映った自分の顔を見ている。

 

 

② 第16章 レビュー

 

クーパーいよいよ復活。いろんなことが終息へ向かって動いていて、もうすぐ終わりであることを感じさせます。こうなると、寂しくなりますね。

 

リチャード、ダイアン、オードリー、指輪や金の玉など、これまで小出しにされてきた様々な謎も一気に種明かしされそうな勢いです。

明確な解決のつくことの少ないリンチ作品としては珍しく、すべての謎が解けてスッキリ終わるかもしれないと思わせます。

とは言え、最後にまだもう一波乱あるかもしれないけど。

 

ハッピーエンドに終わるのかどうなのかも、気になりますね。

旧シリーズは完全なるバッドエンドでした。

メインのクーパーのストーリーだけでなく、いくつかのサイドストーリーもそのほとんどがバッドエンドに終わりました。

 

しかし、最初はなんじゃこりゃと思ったダギーとジェイニー・Eとサニージムのファミリー・ドラマでしたが、気がつけばすっかり感情移入していました。

ジェイニー・Eにもサニージムにも、幸せになって欲しいものです。

 

③ 第16章 謎の考察(ネタバレ)

 

ダギーが入手した3つの座標とは、レイから死の間際に聞き出したもの、フィリップ・ジェフリーズが蒸気と一緒に数字として吐き出したもの、それからあと一つは?

ダイアンから?と思いましたが、ダイアンがメールで座標を送るのはこの後、ダギーが送ったメールを受け取ってから。

だからこの時点ではダギーはダイアンからの情報は受け取っていないはず。

あと一つは?

 

一致した二つというのは、レイとジェフリーズから入手したものでしょう。

そしてそれは偽の座標で、罠だったということですね。レイもジェフリーズもダギーを殺そうとしていましたから。

それを予想して、リチャードに行かせたということですね。なんてヒドい奴だ…。

 

その様子をジェリーが見ているということは、ダギーたちは既にかなりツインピークスに近づいてるということですね。

ジェリーはリチャードに気づいたはずですね。ジェリーはリチャードにとって祖父の弟、大叔父にあたるので。

また、ジェリーはクーパーの顔も知ってるから、ダギーにも気づいたはずです。

 

リチャードが電気に打たれて消えてから、ダギーがサラッと「じゃあな、息子よ」と言います。

やっぱり…リチャードはダギーとオードリーの間にできた息子だったんですね。

その二人の接触は…第7章で語られた、失踪前のクーパー(ダギー)がICUにいたオードリーを訪ねた時しか考えられない。

ということは、ダギーは昏睡状態にあるオードリーをレイプして、妊娠させた!

なんてヒドい。

オードリーが本当にまだ目覚めていないなら、彼女は昏睡状態のままリチャードを産んだ?

リチャードの名前は誰がつけたんでしょう。ベン・ホーン? ベンを演じているのは、リチャード・ベイマーですが。

 

リチャードは死んだんでしょうか…そんな重要キャラがこうまであっさり退場するとは、信じがたい気がしますが。

 

気になったのは、ダギーの「俺の方が25も年上」というセリフ。

ん? ダギーの失踪直前にオードリーが妊娠したなら、リチャードが25歳というのはわかりますが、クーパーが当時25歳というのでない限り、25も年上とはならないですよね。旧シリーズ当時のクーパーはさすがにそんなに若くはなかったと思うけど。どういうことかな?

 

前回コンセントに鍵を突っ込んだクーパーは、感電して昏睡状態で入院中です。

コンセントから出てきたクーパーは、本能的にコンセントに戻ろうとしたんでしょうか。

コンセントの扉をキーで開けて戻った、と思うと象徴的です。

 

第3章で、消えたダグラス・ジョーンズから出てきた金の玉。それはどうやら、化身を作るための“種”だったようです。

髪の毛と金色の玉を使うことで、その髪の毛の持ち主の化身を作ることができるということでしょう。そして化身が消えれば、金の玉が残る。

クーパーはもう一つ作ってもらいたいと言って、ジェラードに自分の髪の毛を渡しました。ジェイニー・Eとサニージムのために、自分の化身を用意したのでしょう。

化身を作る主体はジェラードであるようです。「もう一つ」という言い方をするということは、ダグラス・ジョーンズを作ったのもクーパーだったのでしょうか。

それより問題はダギーですね。ダギー・ジョーンズも化身なのか?

 

クーパーの復活とともに、おなじみの「ツイン・ピークスのテーマ」が流れ始めます。

クーパーはダグラス・ジョーンズでいた間の記憶も完全に覚えているようです。テキパキと確信を持って行動を決めていく様子は頼もしいですね。

スポケーンはシアトルに次ぐワシントン州第2の都市で、ワシントン州東部に位置しています。ツイン・ピークスに行くための、空路での目的地となるのでしょう。

 

「:-)ALL.」のメールを受け取ったダイアンはゴードンの殺害に動き出します。この文面が、ダギーとあらかじめ決められた合図だったのでしょう。

ダイアンが立ち上がるとともに流れ出す曲はマディ・マグノリアスの演奏する「American Woman(David Lynch Remix)」。

第1章のダギー・ジョーンズの初登場シーンでも流れていた曲です。

 

ダギー・ジョーンズが、ダイアンをレイプしていたことが明らかになりました。

オードリーに続いて、ダイアンも…ということになるのでしょうか。

ダイアンが連れて行かれた「ガソリンスタンド」というのは、明らかにコンビニエンス・ストアのことでしょう。

そこで、化身のダイアンが作られたようです。

本物のダイアンがどうなったのか…「保安官事務所にいる」のでしょうか。

 

ダグラス・ジョーンズに続いて、ダイアンの化身もブラックロッジで消滅し金の玉に戻りました。

顔が割れるのは化身の特徴でしょうか。

ブラックロッジのローラや、セーラ・パーマーは蓋を開けるように顔が開いていましたが…。

 

クーパーはツインピークスの保安官事務所を目指すようです。

ダイアンが入力した座標は、ツインピークスを指していました。座標が示す場所は、ツインピークスの保安官事務所であるようです。

座標を得て、ダギーもそこへ向かうでしょう。ツインピークスの保安官事務所で、皆が出会うことになりそうです。

 

ロードハウスで「エドワード・ルイス・セバーソン」が紹介されますが、これはエディ・ヴェダー(Eddie Vedder)の本名です。

エディ・ヴェダーはパール・ジャムのヴォーカリスト。アメリカでもっとも影響あるロック・ミュージシャンの一人と言えるでしょう。

わざわざ本名でアナウンスされたのも、このロードハウスがリアルでないということの印でしょうか。

曲は「Out Of Sand」。ツイン・ピークスのために書かれた新曲です。

 

ツイン・ピークスの代表的イメージと言える、オードリーのダンスが紹介されます。

ここにきて、ロードハウスはいよいよ「現実でない」世界であることが明らかにされてきました。MCがオードリーのダンスを紹介するのも、ジェームズが「Just You」を歌ったのも、考えてみれば現実ではあり得ないことだったと言えます。

今回に限らず、ロードハウスのシーンはことごとく何らかの夢やビジョンだったのかもしれない。

 

 

そして、ついにオードリーが目覚めたようです。ここはいったい…?

 

旧シリーズでの”オードリーのダンス”

 

「Out Of Sand」収録

 

「American Woman(David Lynch Remix)」「Audrey's Dance」収録

 

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