Twin Peaks : The Returnn PART 3

監督/脚本/制作総指揮:デヴィッド・リンチ

脚本/制作総指揮:マーク・フロスト

カイル・マクラクラン

2017年5月28日放送(米国)

 

①第3章 ストーリー覚え書き(ネタバレ)

 

暗い空間を飛ばされていくクーパー。

紫の海を見下ろす建物に落ちる。扉を入ると、目を塗りつぶされた、赤いドレスの女(ナイド Naido)がいる。

ナイドはクーパーの顔に触れる。ドアを叩く音がして、ナイドはしいっとジェスチャーをする。壁のボードには「15」の数字。

 

ナイドに導かれ、クーパーは梯子を登る。外に出ると、そこは宇宙に浮かんだ四角い箱の上。ナイドが黒い塔のレバーを引くと、電気が流れ、彼女は宇宙へと飛ばされてしまう。

宇宙に浮かぶガーランド・ブリッグス少佐の顔。「青いバラ

 

クーパーは部屋に戻る。壁のボードの数字は「」になっている。暖炉の前に赤い服の女、アメリカン・ガールがいる。

 

ダギーが車を運転している。2時52分。

 

3のボードに近づくクーパー。アメリカン・ガールは「あなたがそこに着く時には、あなたは既にそこにいるだろう/早く!急いだ方がいい。私のママが来る」クーパーはボードに吸い込まれる。

 

ダギーはめまいを感じている。暴走し、横転する車。2時53分。赤いカーテンが見える。

 

ラスベガス、シカモア通りの部屋。黒人の女ジェイドとともに、黄土色のジャケットのダギー・ジョーンズがいる。ダギーの左腕はしびれている。指には大きな指輪。ジェイドがシャワーを浴びに行くと、ダギーは苦しんでうずくまり、吐く。赤いカーテンを見たダギーは、消える。

 

運転席のダギーはコーンを吐く。

 

ブラックロッジ。黄土色のジャケットのダギーが座っている。片腕の男フィリップが言う。「誰かが作ったのだ、お前を。ある目的のために。だがおそらくもう目的は達成されている」

「こいつは変だ」とダギーが言うと、指輪が落ちる。彼は細くなり消えていく。黒い石になり、最後には金色の玉になる。

フィリップは落ちた指輪を拾い、テーブルの上に置く。

 

シカモア通りの部屋。コンセントから黒い煙が出てきて、横たわったクーパーになる

床に横たわったクーパーを見て、ジェイドは驚く。「そのスーツどこで買ったの?髪もかつらだったの?」

ジェイドと部屋を出るクーパーだが、靴を忘れている。ジェイドに靴を履かせてもらうクーパー。ジェイドは自分の黄色いジープにクーパーを乗せて出かける。クーパーはポケットにグレートノーザンホテル315号室の鍵があることに気づく。

 

赤い車で、ジェイクとジーンが見張っている。ジェイクが銃で狙っているが、クーパーが鍵を拾っていたので見逃す。ジーンは残されたダギーの車に爆弾を仕掛ける。

 

シカモア通りの向かいの家で、ヤク中の母親が「119」と繰り返している。ウィスキーで薬を飲む母親を、少年が見守っている。

 

横転したダギー・ジョーンズの車に、パトロール警官が近づいていく。運転席に近づくと警官は咳き込んで倒れる。

 

ツインピークス警察署で、ホークが丸太おばさんから聞いたヒントに従い、「クーパー捜査官に関係したもの」を探す。アンディとルーシーが手伝うが、「なくなったものは見つからない」と言って混乱する。ルーシーは証拠品のうさぎのチョコを食べちゃったことを告白する。

 

森の中、シャベルをスプレーで金色に塗るジャコビー。

 

ジェイドはクーパーをカジノホテルに送り届ける。クーパーはおうむ返ししかできない。

カジノへ行ったクーパーは、浮かぶ赤いカーテンに導かれてスロットマシーンで次々と大当たりを引く。

 

FBIフィラデルフィア支部。ゴードン・コールに電話がかかり、クーパーが現れたことを知る。ゴードンはアルバートタミーとともににラスベガスへ向かうことを決める。

 

ロードハウス。ザ・カクタス・ブロッサムスの演奏する「Missisisippi」。

 

②第3章レビュー

 

冒頭から、リンチワールド全開で続く異世界描写。「インランド・エンパイア」でリンチ組入りした裕木奈江が出てきて、異常極まる世界が展開されます。異世界の中継ステーションみたいな場所で、何かと何かをつなぐ装置らしきレバーを引くと火花が散って何かが起きる…というような描写は「イレイザーヘッド」を思い出させます。

 

クーパーとダギー・ジョーンズの入れ替わりがどうなるのかと思っていたら、唐突にもう一人のダギー・ジョーンズが登場してびっくり。カイル・マクラクランはこれで3役を演じることになります。

 

暗喩とイメージに満ちた異世界描写を展開させておきながら、現実世界での入れ替わりは「コンセントから出てくる」という驚きの直接的描写になるのがリンチらしいというかなんというか。

 

いよいよリンチ本人のゴードン・コールと、懐かしのアルバート・ローゼンフィールドが登場です。アルバートを演じたミゲル・フェラーは残念ながら放送直前の2017年1月19日に亡くなっています。

 

今回はそのミゲル・フェラーと、ガーランド・ブリッグス少佐を演じたドン・S・デイヴィスに捧げられています。デイヴィスは2008年に亡くなっています。

 

今回はタミー・プレストンという女性捜査官がゴードンとアルバートに帯同します。タミーを演じるクリスタ・ベルは歌手でもあり、「インランド・エンパイア」でリンチと共同作業をしています。その後、彼女のアルバムをリンチがプロデュースしたり、リンチの音楽番組で彼女が歌ったりと関係が深まっています。

 

カジノのシーンで、「ウォーキング・デッド」のジョシュ・マクダーミットが出演しています。ほんの少しだけの出演。

 

③第3章 謎の考察(ネタバレ)

 

裕木奈江が演じる「ナイド(Naido)」は演じた裕木奈江によれば「まぶたを縫い閉じられて」いるとのこと。ナイドは「内道」で「外道」の逆の意味、とウィキペディアに書かれているが本当かな。それならば、彼女は悪に対するアンチテーゼ的な存在ということになりますが…。

 

青いバラ」は劇場版ではゴードン・コールが送ったFBIの暗号の中に含まれていました。「青いバラ」の意味だけは説明されませんでした。

 

アメリカン・ガールを演じているのは旧シリーズでロネット・ポランスキを演じたフィービー・オーガスティン。ロネットはローラといっしょにボブに襲われ、生き延びて鉄橋を歩いた少女ですが、このアメリカン・ガールがロネットなのか、それともまったくの別人としてのキャスティングなのかは不明です。

 

シカモアの木の下」はツインピークスの森からブラックロッジへの入り口となる場所の目印でした。今回は「シカモア通りの家」が入れ替わりの場所となります。

 

黄土色のジャケットのダギー・ジョーンズが初登場。今回以降、二人の別人のダギー・ジョーンズが出てくるのでややこしいですが、リンチは混乱がないよう丁寧に描き分けていますね。シュールなイメージをばらまいていても、基本のストーリーのところではしっかりわかりやすいのがリンチの手腕だと思います。

ダギーは「左腕がしびれた」と言っています。これはローラやテレサ・バンクスが死の直前に腕がしびれていたのと呼応しています。

 

フィリップ・ジェラードの説明によれば、黄土色のジャケットのダギー・ジョーンズは、ボブが取り憑いたダギー・ジョーンズがクーパーと入れ替わらせるために作ったダミーということになるようです。そっくりの人物という意味では、ドッペルゲンガーであるとも言えます。

いったいどうやって一人の人間を作るようなことができたのかは不明ですが、鍵はダギーがはめていた指輪かもしれません。

 

 

ダギー・ジョーンズがはめていた指輪。金色の縁取りに緑の石がはまり、石にはひし形に二つの線がついたような図形が描かれています。

似た図形が最初に出てきたのは旧シリーズの第2シーズンで、ふくろうの洞窟に残された古代の壁画としてでした。それはふくろうをかたどるものとされ、ブラックロッジへの道を示すものとされていました。

 

指輪が登場したのは劇場版で、殺害後持ち去られたテレサ・バンクスの指輪としてでした。

1988年2月16日、ディア・メドウのトレイラー・パークで、チェスター・デズモンド捜査官はテレサのトレイラーの下に指輪が落ちているのを発見。それを最後に、消息を絶ちます。

 

突然フィラデルフィアに出現したフィリップ・ジェフリーズは、「指輪、指輪…」と口走っています。

 

ローラ・パーマーが指輪を見るのはその1年後、夢の中でのことです。トレモンド婦人からもらったドアの絵の下で眠ったローラは、ブラックロッジの夢を見て、そこで小人がテーブルから指輪を取るのを見ます。クーパーは「指輪を取ってはいけない」とローラに言います。

目覚めたローラはベッドの隣にアニー・ブラックバーンが寝ているのに気づき、彼女から「良いデイルはロッジにいて出られない。日記に書いておいて」と聞かされます。アニーが消えた後、手元を見たローラはそこに指輪があるのに気づきますが、実はそれも夢で、目覚めると指輪は消えています。

 

さらに、リーランドに近づいたフィリップ・ジェラードが、指輪を見せつけます。ローラは、それがテレサ・バンクスのしていた指輪と同じものであることを思い出します。

 

最終的に映画からカットされましたが、劇場版の最後を締めくくるのも本来は指輪に関するシーンでした。第29章の後、病院に運び込まれたアニーが、ローラが夢で見たセリフをつぶやきます。再び意識を失ったアニーの手から、看護婦が指輪を抜き取って自分の手にはめてしまいます。

この映画からのカットシーンは、リンチによって再編集され、「もうひとつのローラ・パーマー最期の7日間」として公開されました。なかったことではなく、映画と「The Return」をつなぐリンクとして、リンチ自ら正式に採用しなおしたと言っていいと思います。

 

この指輪の模様は、旧シリーズではふくろうとされていました。

しかし、ひっくり返して見ると…

これは、エクスペリメントではないですか!

 

左がふくろう、ひっくり返すとエクスペリメント?

 

ダギーが見せたカード。エクスペリメント?

 

第8章から。エクスペリメントの頭部。

 

両方のダギーが吐くのは、クリームコーンであると思われます。

クリームコーンが初めて登場したのは、旧シリーズの第9章。シャルフォンことトレモンド婦人とその孫ピエールに出会ったドナは、ピエール少年がマジックでクリームコーンを消すのを見ます。

 

クリームコーンはボブや小人など、異世界の住人の食べ物であり、「痛みと苦しみ」であるとされています。「ガルモンボジーア」と呼ばれることもあります。

 

第2章で、進化した腕が「253」と言っていました。これはクーパーとダギーの入れ替わりの時刻を示していたようです。

 

ロードハウスで演奏するのはカクタス・ブロッサムズ(The Cuctus Blossoms)。2001年デビューのアメリカのカントリー・デュオ。今回演奏の「Mississippi」は2016年の3枚目のアルバム「You’re Dreaming」に収録されています。

 

 

You’re Dreaming You’re Dreaming
 
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