Twin Peaks : The Return PART 5

監督/脚本/制作総指揮:デヴィッド・リンチ

脚本/制作総指揮:マーク・フロスト

カイル・マクラクラン

2017年6月4日放送(米国)

 

①第5章 ストーリー覚え書き(ネタバレ)

 

(ラスベガスの)ダギーの車を見張り中のジーンはロレインに電話し、まだダギーの車が停まったままだと伝える。この仕事は昨日のうちに済ませるべきだったとロレイン。

ロレインが「ARGENT 2」と送ると、暗い場所で丸い皿にのった黒い装置に赤いランプが灯る。

 

検死中のコンスタンスは首なし死体の胃から指輪が見つかったと報告する。指輪に彫られた文字は「ダギーへ 愛を込めて ジェイニー・E

 

独房にいるダギー・ジョーンズは鏡の中に、ボブに取り憑かれたクーパーのビジョンを見る。「まだ俺と一緒か。それでいい」

 

マイク・ネルソンがスティーヴンを呼び出し、どうしようもない履歴書を突き返す。

 

フランクは電話でハリーを励ます。フランクの妻のドリーが押しかけて、水道管の水漏れについて文句をまくしたてる。

 

ジェイニー・Eは緑のジャケットを着たクーパーを会社へ送る。

ラッキー7保険会社に着いたクーパーは途方に暮れているが、フィルに連れられてオフィスへ向かう。クーパーはフィルが買い込んだコーヒーが欲しくて仕方がない。「やけにうまい」とクーパー。社長のブッシュネルとの会議に参加したクーパーは、同僚のトニーが嘘をついていることを見抜く。だがその指摘はブッシュネルを怒らせ、家でやってくるようにと大量の事件資料を渡されてしまう。

 

カジノで、クーパーの大勝ちの責任を問われ、支配人のバーンズがオーナーのミッチャム兄弟にリンチを受けて追放される。ピンクのショーガールのコスチュームを着た3人娘が、その様子をつまらなそうに見ている。

 

放置されたままのダギーの車をチンピラたちが盗みにきて、爆発が起こる。

 

ジェイドは車にグレートノーザンホテル315号室の鍵が落ちているのに気付き、そこに書かれた指示の通りポストに放り込む。

 

シェリーの娘ベッキーがR&Rダイナーを訪れ、シェリーに金を無心する。心配するノーマ。ベッキーはスティーブンに金を渡す。スティーブンとコカインを分け合ったベッキーはハイになる

 

 

会社を出たクーパーは、夜が更けるまで会社の前の銅像を見上げて立ち尽くしている。

 

ジャコビーは午後7時になるとドクター・アンプとしてネット放送を開始する。大企業が毒を撒き散らしていると告発し、金色のシャベルを29ドル99セントで売っている。ジェリー・ホーンネイディーンがそれを観ている。

 

バージニア州アーリントンの国防総省。ガーランド・ブリッグス少佐の指紋が一致するデータがあったと報告するシンディ。デイヴィス大佐はこの25年で16回目だと言う。シンディはサウスダコタへ行くことを告げ、デイヴィスは本物ならFBIへ報告せねばならないと言う。

 

ロードハウス。トラブル(Trouble)による演奏「Snake Eyes」。

席で煙草を吸うリチャードは禁煙を注意されるが、店のボディガードに金を掴ませて黙らせる。隣の席のシャーロットが火を借りにくるが、リチャードは暴力的にあしらう。

 

タミーはかつてのデイル・クーパーの写真と、刑務所にいるダギー・ジョーンズの写真を見比べる。指紋に注目するタミー。

 

刑務所のマーフィー所長はダギーに電話を与え、一件電話をしていいと言う。「誰に電話をかけようか。ミスター・ストロベリーにしようかな」ダギーが電話をかけると警報が鳴り響く。「牛が月を飛び越えた

 

アルゼンチン、ブエノスアイレス皿に乗った小さな物体が赤いランプを灯し、一瞬で小さな物体に変わる。

 

クーパーはまだ会社の前にいる…。

 

②第5章レビュー

 

フランクの妻ドリーが登場。一方的にフランクをけなしまくるドリーと、それを悲しげに黙って聞いているフランク。コミカルでそれでいて悲劇的な、リンチ演出が際立っています。ドリーを演じるのはキャンディ・クラーク。若かりし頃には「アメリカン・グラフィティ」でふわふわした美少女デビーを演じていた人です。

 

前回でナオミ・ワッツとのホームコメディが始まったのに続いて、今回からは会社コメディ編がスタートです。

何もわからないクーパー(ダギー)がめちゃくちゃな行動をしながら、なぜか社長に認められる…なんて、実に王道のサラリーマン喜劇と言えます。

 

コーヒーを飲んで、クーパーの懐かしの「Damn Good」が登場。「すげえうまい」とか訳されてましたが、今回の吹き替えでは「やけにうまい」になっていました。ジョージアの缶コーヒーのCMもやってましたね。

 

同僚のトニーを演じるトム・サイズモアは「プライベート・ライアン」や「ブラックホーク・ダウン」の俳優ですが、暴行や薬物で逮捕暦があります。怪しい背景のありそうなトニーにぴったりな感じ。

 

カジノの支配人バーンズに制裁を加えるロドニー・ミッチャムを演じるのは「プリズン・ブレイク」のロバート・ネッパー。バーンズを追放するブラッドリー・ミッチャムを演じるのはジョン・ベルーシの弟のジム・ベルーシ

バーンズが殴られているのを、壁際で退屈そうに見ている3人の女の子たちがいいですね。いかにもリンチらしい配置です。

 

R&Rダイナーも久しぶりです。ノーマが経営者でシェリーがウエイトレスをしているのは25年経っても変わらず。旧作とはずいぶんテイストの違うThe Retuenですが、こういうシーンを見ると懐かしくなります。

 

ノーマを演じるペギー・リプトンは最近では映画「僕のワンダフルライフ」に顔を見せていました。

 

そのR&Rダイナーのコック、トードを演じているマーヴ・ロザンドは、出演シーンの撮影後の2015年9月21日に亡くなっています。奇しくも、丸太おばさんのキャサリン・コールソンが亡くなる一週間前でした。今回のエピソードは彼に捧げられています。

 

③第5章 謎の考察(ネタバレ)

 

ダギー・ジョーンズの車に爆弾を仕掛け、暗殺を企んだジェイクとジーンの上役として、ロレインという女が登場します。しかし彼女も誰かに使われている模様。

クーパーとの入れ替わりが済んだ直後の時間を狙って殺すことを狙っていたのだとすれば、殺したい対象はクーパーであって、黒幕の第一の容疑者は(刑務所の)ダギー・ジョーンズでしょう。「どちらかは死ななければならない」からです。

 

ロレインが打ったテキストは「ARGENT 2」と読めますが、おそらくは「Argentina(アルゼンチン)」のことでしょう。

それに呼応して黒い装置のランプがつくその場所は、冒頭のシーンでは表示されませんが、最後にもう一度登場するシーンでは「ブエノスアイレス」と表示されます。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスといえば、再三言及されているフィリップ・ジェフリーズがいる場所です。

となると、ロレインの黒幕はフィリップ・ジェフリーズでしょうか。フィリップとダギーは通じ合っていますが、協力しているようにも、反目しているようにも見えています。

 

ルース・デヴェンボートの頭部と同時に見つかった男の遺体の胃の中から指輪が。そこに書いてあったのは「ダギーへ 愛を込めて ジェイニー・E」。ここで唐突に、接点のなかったバックホーンの事件とラスヴェガスのダギー・ジョーンズ夫妻がつながりました。まだその意味はさっぱりわかりませんが。

 

前回のボビーに続いて、彼とコンビだったマイク・ネルソンが登場。彼は順調にキャリアを重ねて、何かの会社の社長になっているようです。スティーヴンをぼろくそに言うだけの偉そうな役で、もう一つおいしくない役なのは、旧シリーズでの影の薄さを引きずっているのでしょうか。ボビーとセットで出てくるので出番だけは多いマイクですが、ネイディーンの相手役とか、いまいちパッとしない役回りでした。

 

カジノのオーナーのミッチャム兄弟は後に再登場してきます。ピンクのコスチュームの3人娘も同様。3人の名前はキャンディ、サンディ、マンディ。

 

シェリーの娘ベッキーと、そのろくでもなさそうな旦那のスティーブンが登場していますが、シェリーの夫が誰なのかは明かされていません。クレジットではシェリーとしか書かれていません。旧シリーズ終了時点で付き合っていたのはボビーでしたが…。

ベッキーは脇役と思われますが、どうしようもない境遇の彼女のハイな笑顔は今回のベストカットです。

 

第1章から引っ張ってきたジャコビーの行動の謎がようやく明かされます。ネット放送でDJをやってシャベルを売ってるという、しょーもない真相でしたが…。思えば、旧シリーズでもドクター・ジャコビーは最初からいわくありげに事件に絡んできて、しかし実のところ大してなんでもなかった…というようなキャラクターでした。

 

トラブル(Trouble)デヴィッド・リンチの息子ライリー・リンチが在籍するインストルメンタル・バンド。ライリーはギター担当。サックスはアレックス・サング・ホイタイ、ドラムはリンチの多くの音楽作品に関わってきたディーン・ハーレー。

 

いかにもヤバそうなリチャードですが、クレジットではリチャード・ホーンと表記されています。ということは、彼はホーン家の一員。誰の息子でしょうか。まだ出てきていない、オードリー?

 

ダギー・ジョーンズはいろんなシーンで、携帯電話を操って電子装置に影響を与えたり、やけにデジタルに長けたハッカーのような(見た目に似合わない)動きを見せています。刑務所で電話をかけて所内の警備装置を狂わせますが、この準備として第2章で刑務所のシステムにアクセスしていたり、細かな動きをしています。

牛が月を飛び越えた」はマザー・グースの歌詞。それに呼応して、ブエノスアイレスの装置が作動します。ここで、クーパー暗殺を狙ったロレインとダギー・ジョーンズが(フィリップ・ジェフリーズを介して)繋がったわけです。

 

 

 

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