Twin Peaks : The Return PART 17

監督/脚本/制作総指揮:デヴィッド・リンチ

脚本/制作総指揮:マーク・フロスト

カイル・マクラクラン

2017年9月3日放送(米国)

 

 
第17章レビューの後半です。字数が制限を超えたので2つに分けました。
 
③第17章 謎の考察(ネタバレ)
 

極めてネガティブな力、ジャオデイ。ジュディという単なる女性の名前と思われていたものは、なんだか大掛かりなことになってきました。

これまでに出てきているネガティブな力といえば、キラー・ボブであり、エクスペリメントエクスペリメント=ジュディでしょうか。インディアンの伝説の、悪魔的存在?

 

フィリップ・ジェフリーズはもうこの世の存在ではない。ということは、彼はどこかにいてあの装置を通して通信しているわけではなく、あのコンビニエス・ストアの上の部屋にいた蒸気を吐く装置がジェフリーズそのものであったということでしょうか。

ジェフリーズは人間であることをやめてしまって、装置に魂を移してしまった?

 

1石で2羽の鳥をねらう」は第1章で”消防士”の言葉として出てきていました。

日本のことわざ「一石二鳥」ですね。「一つの行為で二つの利益を得ること」。

ウィキペディアによると、これは実は17世紀のイギリスのことわざ「kill two birds with one stone」の訳語だそうです。

クーパーがねらっている「一石二鳥」とは何か。

ブリッグス少佐とクーパーによる計画によって、ダギーを倒し、同時にローラを救う、ということでしょうか。

あるいは、ナイドが鳥の声を出していることから、ナイド(ダイアン)が1羽目の鳥、ローラが2羽目の鳥ということでしょうか。

 

レイ・モンローは情報屋で、ゴードンにダギーの情報を流していたようです。レイはダギーの指示でウィリアム・ヘイスティングスの秘書を殺したりもしていますから、ゴードンの側というわけでもなく、両方から利益を得て立ち回ろうとしていたのでしょう。

 

ジェリー・ホーンが保護されたのはワイオミングでした。ツイン・ピークスの近くじゃなく、そんなところでさまよっていたんですね。

リチャードとダギーがいたのはワイオミングだったことになります。ワイオミング州はモンタナ州の南で、ツイン・ピークスのあるワシントン州からはかなりの距離があります。

 

ダギーは森の中、ナイドが発見された水たまりのそばにやってきました。

ダギーがここを目指してきたということは、座標が示す場所はここだったということですね。

フランクやホークたちが見つけたブリッグス少佐のメモの数値もこの場所の座標だったのでしょう。彼らはもう1枚のヒントを使ってたどり着き、ナイドを発見しましたが。

 

渦巻きが出現して、ダギーは第8章に出てきた”消防士”の劇場に飛ばされます。

第14章ではアンディが同じ場所から”消防士”の城に飛ばされていましたね。

その場所でダギーは檻に入れられていて、消防士の操作でツイン・ピークス保安官事務所に飛ばされることになります。

ということは、ダギーをここに誘い込んだのも消防士の作為であったということになりそうです。

 

ダギーは何かを手にいれるためにブリッグス少佐の座標を求めていたはずですが、しかしそれ自体がクーパーとブリッグス少佐が組んで仕掛けた、ダギーをはめるための罠だったようです。

 

ダギーは何らかの「ネガティブな力」を手にいれることを欲していて、それがおそらくエクスペリメント。(あるいはジュディ?)

そして、座標の位置に達すればそれが手に入る。ということかと思っていましたが、どうやらクーパーの方が上手だったようです。

 

ただ、劇場の映像は最初、パーマー家が映し出されていました。

それを消防士が操作して、保安官事務所の前の道に変えたのです。ということは、座票が示す場所は本来はパーマー家へ通じていたということでしょう。

現在のパーマー家にいるのは、セーラ・パーマー。これまで描かれた異常性から考えるに、ジュディ(ジャオデイ)の第一の候補は彼女ではないでしょうか。

その場合、消防士はダギーがジュディの元にたどり着くのを阻止して保安官事務所に導いたということになります。

 

ダギーをクーパーと思い込んでしまうアンディでしたが、まっ先に何かがおかしいことに気づくのもアンディでした。

コーヒーをすすめられて断るななんて、クーパー捜査官であるはずがない!

アンディが見る、「ルーシーの両肩に手を置いて連れてきて、走って立ち去るシーン」は第14章で消防士の城に飛ばされた時に見ていたビジョン。これは、ルーシーにダギーを撃たせるために、フランクの部屋の前まで連れてきたということでしょうか。ルーシーが持っていた銃は、チャドが持っていたもの?

しかし現実のアンディはこの時は留置所にいたはずで、ルーシーのところまで走ってまたダッシュで戻ってきた…とは思いにくいです。

ルーシーをフランクの部屋に導いたのはなんなのか。アンディを使った”消防士”の力でしょうか。

 

いつも理解の遅いルーシーでしたが、この土壇場で最速の理解で最高のファインプレーを見せたのはルーシーでした。

今シリーズではアンディとルーシーが大活躍していますね。

 

撃たれたダギーを治療するために3人の森の男が現れるのは第8章と同じ。

ただし、今回はボブは隕石みたいな塊になって、ダギーの体を離れて直接攻撃に出ました。到着したクーパーに誘い出された?

クーパーを殺さないと、どっちかがドッペルゲンガーになってしまうから、ですかね。

 

 

フレディーは一応第2章で登場していましたが、紹介されたのは第14章。ロンドンで渦巻きに吸い込まれ、消防士から啓示を受けた唐突な新キャラクターでした。

重要な役割になるとは思っていましたが、ここまで最重要な役回りとは…。クーパーにかわってボブを倒してしまうのだから。

ダギーを撃ち殺すのがまさかのルーシーで、ボブを破滅に導くのがまったく無名なモブみたいなキャラクター、というのもリンチの狙いであるのかもしれません。

 

指輪をはめた死体がブラックロッジに転送されるのは第13章のレイと同じ。

レイは死体がロッジに転送されていましたが、ダギーはそのまま消滅してしまいました。

 

グレート・ノーザン・ホテル315号室は、旧シリーズでクーパーが泊まっていた部屋です。ここでクーパーは撃たれ、回復しました。

この部屋の鍵は失踪時にクーパーのスーツのポケットに入っていて、クーパーはそのまま25年間ロッジで鍵を持ち続けていたようです。

第3章でダグラス・ジョーンズと入れ替わったクーパーのポケットに鍵はそのまま入っており、彼はジェイドの車にそれを落としました。ジェイドは第5章でそれに気づき、鍵の裏に書かれていた「そのままポストに入れてね」との指示に従ってポストに放り込みました。その結果、鍵はグレートノーザンホテルに郵送され、第7章でベン・ホーンの元に。

これは一般的なシステムなのかな? 調べると昔はあったみたいな記載もありましたが、今もよくあることなのかどうなのかはよくわかりませんでした。

第12章で、リチャードのひき逃げを伝えるために訪れたフランクに、ベンは「ハリーに渡してくれ」と言って鍵を渡しました。クーパー捜査官の思い出の記念品として。

フランクはまだハリーに鍵を送ってはおらず、ここにきてようやく鍵はクーパーの手に戻ったということになります。

 

 

クーパーがナイドを見たシーンから、画面全体にクーパーの顔がオーバーラップし、その後しばらく続きます。

これは、クーパーが再び分裂していることを意味しているようにも見えます。

画面上で、見かけ通りに皆と話をしているクーパーと、それをどこかバックグラウンドのようなところから見守っているクーパー。

それは、ちょうど夢の中の世界と夢を見ている人の関係にも似ています。

オーバーラップしたクーパーの唯一のセリフは「僕らは夢の中に生きている」です。やはり、これらすべてが夢の中である可能性はありそうです。

 

ナイドはダイアンでした

第16章で話された経緯(失踪後3、4年してクーパーが訪ねてきて、ダイアンをレイプした。ダイアンはコンビニエンス・ストアに連れて行かれ、そこで化身と入れ替わった)の後、本物の方のダイアンは目と言葉を奪われナイドという別人にされて、異世界に閉じ込められていた…ということのようです。

第3章でクーパーを助けてナイドは宇宙へ飛ばされましたが、これはクーパーを愛するダイアンが彼を助けていたということになります。

 

 

この先変わりゆくものもいくつかある。過去が未来を決める」このクーパーのセリフは、この後の展開を暗示しているようです。

この後、クーパーは過去を変えようとします。過去が変われば、未来(皆が集まっている今ここ)も変わるはずです。

 

グレートノーザンホテルの謎の音は、第7章から描写されています。ベンとビバリーがその出どころを探っていましたが、判明しませんでした。

第14章で、謎の音がボイラー室から発していることに、ジェームズが気づいています。

 

ボイラー室の奥にある部屋は、客室ではなさそうなのでクーパーの泊まっていた315号室ではなく別の部屋と思われます。しかし、鍵は一致しました。

その奥で待っていたフィリップ・ジェラードのセリフは、シリーズの象徴ともいうべき代表的な詩。旧シリーズ第2章が初出になります。

原語では以下の通り。

Through the darkness of future’s past,

the magician longs to see.

One chants out between two worlds.

Fire Walk With Me.

 

(直訳)

未来の過去の暗闇を通して、

魔術師は見ることを欲する。

2つの世界の間で詠唱する、

火よ 我と共に歩め

 

未来の過去。これからクーパーはローラが殺された夜に行くことになるのですが、それはまさに「未来の過去」ですね。過去だけど、クーパーがこれからそこに行ってやろうとしていることは未来だから。

 

第15章でのダギーと同じように、クーパーはコンビニエンス・ストアの上の部屋でフィリップ・ジェフリーズと対面します。

ジェフリーズはやはり、この謎の機械装置に姿を変えていると見るべきでしょうか。

消防士の城の劇場には、よく似た装置が無数に置かれている部屋もありました。これは失踪した人々が成り果てる機械の体みたいなもの…なのかな?

 

ゴードンが覚えていてくれるだろうとジェフリーズが言う、「正式じゃない方」とは何でしょう。

ゴードンが覚えているのは当然、人間の姿のフィリップ・ジェフリーズ(デヴィッド・ボウイの姿の方)でしょうから、現在のジェフリーズによれば、人間の姿の方が「正式じゃない方」であるということになります。

つまり、この蒸気を吹く黒いポットのような物体こそが、「正式な方」のジェフリーズである、ということですね。

 

 

 

フィリップ・ジェフリーズの装置はエクスペリメント・マークを吐き出し、その模様は形を変えて8の字に変わります。

8の字の中には黒い点があって、移動しています。

「君はこれを頼んだか?」と言ってジェフリーズはこのマークを出しますが、意味は判然としません。

 

1989年2月23日はローラ・パーマーが殺された日。旧シリーズ序章は1989年2月24日に始まることになります。

ジェフリーズが「明確に」と言ってクーパーがこの日付を告げるということは、ジェフリーズはクーパーを過去へ送る能力を持っているということでしょうか。

それも計画のうちなのだとしたら、その能力を得るために、ジェフリーズは人間であることをやめた?

すべてはローラ・パーマーを救うために?

 

モノクロで描かれるローラ・パーマーのシーンは、映画「ローラ・パーマー最期の7日間」からのフッテージです。

映画でも、森の中で混乱状態に陥ったローラは何かを目にして叫びをあげます。ローラが何を見たのかは明かされませんでしたが、まさか25年後のクーパーだったとは!

 

この夜、ローラはジェームズと別れた後で予定通りレオ、ロネット、ジャック・ルノーと合流し、ジャック・ルノーの山小屋で乱行パーティーにこうじることになります。彼らは雑誌「官能の世界」を通じて知り合った、ローラの売春相手です。

そこへボブにとりつかれたリーランドがやってきます。リーランドはジャック・ルノーを殴って気絶させ、不審を感じたレオはローラとロネットを縛ったまま放置して逃げ出してしまいます。

残されたローラとロネットに、ボブの本性を現したリーランドが襲いかかります。リーランドはローラとロネットを森の奥の廃列車に運びます。

ロネットはなんとか逃げ出しますが、ローラはリーランド/ボブに殺され、ビニールに巻かれた全裸死体として川に流され、翌朝に湖畔に流れ着いて、釣りに出たピートに発見されることになります。

 

そう決まっていた過去に、クーパーが干渉しました。ローラはレオたちと合流することなくクーパーに連れ出され、ということはリーランドに殺されない。旧シリーズのすべてが変わってしまうことになります!

 

2月24日の朝。湖畔のパッカード家で、気だるく化粧をするジョシー・パッカード。これは旧シリーズ序章のファースト・シーンです。

ジョアン・チェン演じるジョシーも旧シリーズのビジュアル・イメージを象徴するキャストでした。ん? ジョシー…ジョディ…ジャオデイ…まさか…?

ジョシーはパッカード製材所をめぐる陰謀でベン・ホーンやキャサリンと騙し合いを演じたあげく、クーパーを撃って捜査をかく乱したり、最後は旧シリーズ第23章でトーマス・エッカートを射殺し、自身も命を落としました。

ジョシーの死の場面で、クーパーはボブと小人を見ています。

 

ローラの死体を見つけたために釣りをすることができなかったピートですが、死体が消えたことで、ついに釣りをすることができました。

 

 

まさかの(ローラ・パーマーまでさかのぼっての)ハッピーエンド?

いや、でもセーラ・パーマーの異常は変わっていない。ローラが死ななかったなら、セーラの現在も変わっているはずなのに。

クーパーが手を握っていたはずのローラはいつの間にか消えて、森に悲鳴が響き渡ります。

やはり、過去を変えることはできなかったのでしょうか。

 

エンドクレジットの歌は、ツイン・ピークスといえばやはり欠かせないジュリー・クルーズです。

The World Spins」は旧シリーズ第14章で、ロードハウスのステージで歌われていました。

この時、クーパーは誤ってベン・ホーンをローラ殺害犯として逮捕し、その頃パーマー家ではリーランドがマデリーンを殺害していました。そして、ロードハウスのステージには巨人(消防士)が現れ、「また起こっている」とクーパーに告げていました。

つまり、クーパーが失敗し、悲劇が繰り返されたシーンで歌われた曲です。今回と共通しています。

 

ローラはどうなったのか?

クーパーはどうなるのか?

セーラやオードリーなど、残った謎の行方は?

クーパーが出会うというジュディとは?

ここまで来てもなお、続きが気になって仕方がない。次がいよいよ最終章です!

 

旧シリーズ第14章でのThe World Spins

 

「The World Spins」収録のジュリー・クルーズのアルバム。ツイン・ピークスの楽曲が満載!

 

これも「The World Spins」収録

 

終盤のローラとジェームズのシーンのオリジナルはこの映画から

 

ジョシーやピートのシーンのオリジナルは旧シリーズ序章から

 

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