Twin Peaks : The Return PART 12

監督/脚本/制作総指揮:デヴィッド・リンチ

脚本/制作総指揮:マーク・フロスト

カイル・マクラクラン

2017年7月30日放送(米国)

 

①第12章 ストーリー覚え書き(ネタバレ)

 

バックホーンのホテルで、ゴードンが自宅から持ってきたワインを囲んで、ゴードン、アルバート、タミーが集まっている。「FBIに乾杯!

 

アルバートが、タミーに「青いバラ」について説明する。

1970年、軍のブルーブック計画が封印された。20年間UFOを調査してきて、実在する証拠がなかったからだ。

数年後、軍とFBIが協力して極秘チームを立ち上げ、ブルーブック計画の残した謎につながる不可解な事件を調査し始めた。

事件に関わった女性が死ぬ前に発した言葉から”青いバラ事件”と呼ばれるようになった。

この事件は、それまでと違う道を進まない限り答えにたどり着けない。

 

チームリーダーはフィリップ・ジェフリーズ。メンバーはアルバートクーパーチェット・デズモンドの3人だった。アルバート以外のメンバーが説明なく姿を消しているので、新しいメンバーを加えるのを躊躇していた。

だが、彼らはタミーを新たなメンバーに加えることを決心した。

「やらせてください」とタミー。

 

ダイアンがやってきて、ロックを求める。

「ちょうどよかった。ダコタは今も氷河期だ」とアルバート。

ゴードンはダイアンにも青いバラ特捜班への協力を求めた。

「クーパーと組んでいたから、青いバラについても深く知っているはずだ」

ダイアンは指を2本立て、「さあやろうぜ(Let’s rock)」と言う。

 

 

ジェリー・ホーンが森から走って出てくる。

 

スーパーで、セーラ・パーマーが酒を買っている。

レジで、セーラはビーフジャーキーに目を奪われる。レジの少女にジャーキーについて尋ねているうちに、セーラのようすがおかしくなる。

「あなたの部屋は以前と違うようね。男たちが来る。警告してるのよ。何かが起きる。私に起きたように。気分が悪い…セーラ、だめ、やめて。こんなことやめて」

 

ファット・トラウト・トレーラーパーク。カールは「9:30(絶対に起こすな!)~5:30」という看板を出している。

カールはクリスコルに声をかけ、血を売るのはもうやめろと言う。

 

サニージムはクーパーをキャッチボールに連れ出すが、クーパーは突っ立ってるだけだ。

 

ホークがセーラを訪ねる。セーラは自分に何が起きたかわからないと言う。

家の中で物音がする。セーラは「キッチンにちょっとね」と言う。「まったくもう、なんて嫌な話なんだろう」

 

ダイアンは一人でマティーニを飲んでいる。

メールを受け取る。「ラスベガスは?

ダイアンは「まだ聞いてこない」と返事する。

 

フランクベン・ホーンを訪ねる。

フランクは、男の子をはねて死なせた犯人はベンの孫のリチャードだったと伝える。ミリアム・サリヴァンを殺そうとしたことも。

「あいつはまともだった時がない」とベン。

ベンはフランクに315号室の鍵を渡し、ハリーに渡してくれと言う。

 

ベンはベバリーに、リチャードは父親を知らないと言う。

ベンは父親に買ってもらった、大好きだった自転車を思い出す。

ベンはベバリーに、ミリアムの治療費は全額負担すると伝える。

 

アルバートがゴードンの部屋を訪ねると、ゴードンは赤い服のフランス女性と抱き合っている。

彼女はお母さんの友達を訪ねてきた、とゴードン。「娘さんを探してる。お母さんはカブ農場を持ってる。だから言ったんだ、娘さんはカブバックするって」

アルバートはダイアンがメッセージをやりとりしたことを伝える。

「突き止めよう。だが、今夜のところは素晴らしきボルドーワインに戻らせてもらうとしよう」

 

 

ハッチとシャンタルが、マーフィー所長の帰りを待っている。

ハッチは拷問しなくていいか気を使うが、シャンタルは腹が減ったからいいと言う。マーフィー所長が帰宅すると、ハッチはライフルで撃ち殺す。

 

ジャコビードクター・アンプとして放送をしている。「我々は泥の中にいる。喋るで泥を掘り出し外へ出よ!」

ネイディーンがうっとりして聞いている。

 

オードリー・ホーンが、机に向かって原稿を書いている夫のチャーリーに話しかけている。

「もう電話が鳴るのを待っているのはうんざり。ロードハウスに行くからついてきて!」

チャーリーは締め切りが迫っているからと言って渋る。オードリーは2日前から行方不明のビリーを見つけたがっているようだ。チャーリーには”タマがない”から、私はビリーとヤってるのよとオードリー。

ビリーに最後に会ったのはティナ。そう言ったのはチャックだ。「チャックはいっちゃってるから信用できない」とオードリー。

チャーリーは「チャックがビリーのトラックを盗んだ」と言う。

オードリーは渡した書類にサインするよう迫るが、チャーリーは拒否する。

オードリーに急き立てられ、チャーリーはティナに電話をかけてビリーの行方を聞くが、電話を切った後、オードリーが尋ねても何も答えない。

 

ダイアンは地図ソフトにルースの腕にあった座標を打ち込む。

表示された場所は、ツインピークス

闇へ向かっていく映像。

 

ロードハウス。クロマティックス(The Chromatics)が「Saturday」を演奏している。

ナタリーとアビーが話している。話題はアンジェラ、メアリー、クラーク

アンジェラはクラークと付き合っているが、クラークはメアリーと浮気しているらしい。アンジェラはあんなふうにママを亡くしたから、こんなの耐えられないとナタリーたちは言う。

トリックがやってきて、道路で事故に遭いかけたと言う。

ナタリーとアビーは、トリックは自宅拘禁中だったが刑期は終わって自由の身だと話す。

「自由の身かあ」「いいねえ」

 

②第12章 レビュー

 

今回は全体に地味めと言うか…会話劇の色濃い回でした。

リンチのこれもトレードマークと言える、噛み合うようで噛み合わない、まともなようでまともでない、そして妙に長い、会話シーン。

 

また、今回はワイン回でもあります。

ゴードンがワイン通とは知らなかった。やたらワインにこだわってると思ったら、どこからともなくフランス美女まで現れて、はべらせています。

役得もとことん追求するのがリンチ流。旧シリーズでもシェリーとのキスシーンを脈絡なく盛り込んでいました。

 

フランス美女を演じているのはベレニス・マーロウ。フランス出身の女優で、「007 スカイフォール」でボンドガールを演じていました。

 

セーラ・パーマーがいよいよ前に出てきました。以前からどこか異常性のある雰囲気でしたが、年老いてさらに顕著に。

普通の会話がいつの間にかちょっとずつ狂ってきて、突然発狂する!という「ちょっとヤバい人」特有の空気感が見事に再現されていて、観ていて怖いです。

演じるグレイス・ザブリスキは「インランド・エンパイア」でもちょっとネジの狂ったお隣さんを演じて怖かったですね。リンチ作品の初出は「ワイルド・アット・ハート」です。

 

セーラ・パーマーは旧シリーズの吹き替えでは「サラ・パーマー」だったような気がするんですが今回は吹き替えでもセーラですね。

 

シリーズも後半になって、いよいよオードリーが初登場です。

てっきりリチャード絡みで出てくるのかと思ってたら、まったく関係のないようす。そして、初めて聞く人物の名前ばかりで会話の意味もよくわからない。

本当に、予想通りにはいかない!

 

チャーリーを演じるのはクラーク・ミドルトン。「バードマン」「スノーピアサー」や、「フリンジ」「LAW & ORDER」などのドラマに出演しています。4歳の時から若年性関節リウマチの持病と戦っているそうです。

 

今回は大きなアクションや奇妙な出来事などはないので、多くの人が多くの組み合わせで会話をします。

ゴードンとアルバート、セーラとホーク、フランクとベン、ベンとベバリー、ハッチとシャンタル、オードリーとチャーリー、ナタリーとアビーなど。

微妙に変なところ、奇妙な要素が密かに埋め込まれているので、ごく普通の会話に見えるものでも緊張感を持って見入ってしまいます。

特に最後のナタリーとアビーの会話なんて、それまでのストーリーの流れともまったく関係なくて、普通の会話にしか見えないんだけど、やっぱりどこか変に見えてしまうのです。

 

③第12章 ネタバレ考察

 

これまでずっと謎だった「青いバラ」について、アルバートの口から一気に説明されます。

UFOを監視するブルーブック計画については、旧シリーズでもガーランド・ブリッグス少佐の秘密任務として語られていました。少佐はずっと宇宙からの信号について調査していましたが、実は信号は宇宙からではなく森から発せられていた。それがブラックロッジだった、というような説明がされていました。

 

青いバラ事件の命名の由来が語られるのは初めてです。事件に関連して死んだ女性とは誰のことなんでしょう。

もしかして、ウィンダム・アールの妻で、クーパーと愛し合って殺されたキャロライン

 

フィリップ・ジェフリーズがリーダーで、クーパーとアルバートとチェット・デズモンドがメンバーだった特殊捜査班について初めて明かされました。

テレサ・バンクス事件にせよローラ・パーマー事件にせよ、チェットやクーパーが任務についたのは初めからそれらが「青いバラ事件」にかかわる案件だとわかっていたからでしょう。

フィリップ・ジェフリーズは1986年チェットは1988年に失踪し、クーパーは1989年に失踪しているので、特殊チームはその後アルバート一人。ほぼ実質的な活動はされていなかったと思われます。

 

ダイアンが言う「Let’s rock」は、旧シリーズ第2章の「25年後の夢」で、小人が初登場した際に初めて発した言葉。

また、映画版で、チェットが失踪したトレーラーパークを訪ねたクーパーが、車のフロントガラスに書かれているのを見た言葉でもあります。

つまり、別世界の住人が好んで使う言葉です。

ということはダイアンはやはり…?

 

ジェリー・ホーンはようやく森から脱出できたよう…ってこれ関係あるのかな。

 

セーラ・パーマーは娘ローラと夫リーランドが死んで以降、ずっと孤独な日々を過ごしてきたのでしょう。半ばアル中になっているようなようすです。

ビーフジャーキーへの奇妙なこだわりから、いきなり大声で警告を発し始める。その際の、自分自身に「セーラ、ダメよ」と呼びかける様からは、多重人格であるようなようすも伺えます。

 

ダイアンが受けたメール。ダギー・ジョーンズからと思われます。

ラスベガスは?という問いかけに対して、「まだ聞いてこない」という返答。

ラスベガスのダグラス・ジョーンズ氏についてまだ聞いてこないのか?という意味でしょう。

 

ベン・ホーンは、リチャードは父親を知らないと言っています。

母親はオードリー? 父親は…?

旧シリーズでオードリーと恋仲になったのは青年実業家のジョン・ジャスティス・ウィーラーでした。父親になる可能性があるとしたら、旧シリーズの登場人物では彼くらいですが…。

ウィーラーは名前の通り正義漢だったので、リチャードの性格とはあまり似たところは感じられません。

 

殺しが日常のハッチとシャンタル

「拷問しなくていい?」「お腹空いたからいいよ」って日常会話がすごいですね。

第9章でダギーが命じた「2日以内に刑務所の所長を殺せ」は達成されました。

 

オードリー・ホーンが満を持して登場ですが、しかしここはいったいどこで、彼女は誰の話をしているんでしょう?

古めかしい書斎、ダイヤル式の黒電話頭と体が不釣り合いなチャーリー

そして、ビリー、ティナ、チャックなどこれまでのシーンで一切言及されていない人々。

唯一思い当たるのは、第7章のラストシーンでR&Rに現れて、「おい、ビリーを見なかったか?」と叫んだ男ですが、このシーンもそれっきりなのでなんの情報もないですね。

リチャード・ホーンがオードリーに関係あるなら、彼女の耳にもリチャードの容疑は伝わっているはずですが…そのようすもない。

ベン・ホーンも、シルヴィアもオードリーのことは話していませんでした。

 

 

オードリーの名前が言及されたのは、第7章でのドクター・ヘイワードの証言のみです。25年前、彼女は昏睡状態でICUにいました。オードリーがその後どうなったのか、誰も話していません。

 

ロードハウスでのナタリーとアビーの会話も同様。

会話の中に出てくるアンジェラ、メアリー、クラーク、誰も視聴者は心当たりがありません。

途中で割って入るトリックも、彼が自由かどうかも、視聴者にとってはまるで初耳の話。

何かパラレルワールドの話を聞いているような、そんな奇妙な感覚になります。

 

ロードハウスのゲストは2度目の登場のクロマティックス(Chromatics)

第2章では「Shadow」を演奏しています。そちらはヴォーカルのルース・ラデレットの歌入りでしたが、今回はインストルメンタル。

ツイン・ピークス The Returnのサントラは2種類発売されていますが、「Shadow」はバンド演奏を集めた「Music From The Limited Event Series」に、今回の「Saturday」はオリジナル・スコアを集めた「Limited Event Series Soundtrack」に収録されています。

(この2枚はタイトルが曖昧でわかりにくい!)

 

クロマティックスのメンバーでプロデューサーのジョニー・ジュエルは、ソロ名義で第5章のエンディングに「Windswept」という曲を書き下ろしています。そちらも、スコア集の方のサントラに収録されています。

 

「Shadow」収録のバンド版サントラ。

 

「Satureday」「Windswept」収録のスコア版サントラ。

 

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