Twin Peaks : The Returnn PART 2

監督/脚本/制作総指揮:デヴィッド・リンチ

脚本/制作総指揮:マーク・フロスト

カイル・マクラクラン

2017年5月21日放送(米国)

 

第2章 ストーリー覚え書き(ネタバレ)

 

拘置所で頭を抱えるウィリアム・ヘイスティングスに、妻のフィリスが面会に来る。ウィリアムはルースの部屋に行っていないが、行った夢を見たと話す。フィリスは信じない。ウィリアムが浮気していたことを知っていたと話すフィリス。ウィリアムはフィリスこそ弁護士ジョージと浮気しているとなじるが、フィリスは「死ぬまで刑務所暮らしよ」と言い放つ。

ウィリアムの二つ隣の独房で、真っ黒な顔の男が消える。

 

フィリスが家に帰ると、ダギー・ジョーンズが待っている。「上出来だ。人間の本性を剥き出しにしてる」ダギーはジョージの銃でフィリスの目を撃ち抜く。

 

ネバダ州ラスヴェガス。ダンカン・トッドがロジャーを呼び出し、「採用だと伝えろ」と告げる。「出来ることならあの男のような奴とはかかわるな」とトッド。

 

夜のダイナーで、ダギー、レイ、ダーリャ、そしてジャックという汚れた男がテーブルを囲んでいる。ダギーはレイにあさってまで別行動だと伝える。「俺に必要なものは何一つない。欲しいだけだ。その情報が欲しいんだよ」

レイはヘイスティングスの秘書から情報を引き出そうとしているようだ。

 

丸太おばさんから電話を受けたホークは、森の中の丸い輪とブラックロッジを幻視する。

 

ブラックロッジ。クーパーと、片腕の男フィリップ・ジェラード

これは未来か。それとも過去か。誰かがここにいる」

年をとったローラ・パーマーがクーパーに言う。「あなたはもう行っていい/ローラ・パーマーを知っている気がするけど、私の手は時々後ろに曲がるの/私は死んだ。でも生きてる」

ローラはクーパーに口づけし、耳元で囁く。その直後、ローラは叫び出し、空中に吸い上げられてしまう。

 

風の音。カーテンの向こうに白い馬

電気音。ゆらゆら動く枯れ木に、目鼻のない顔がついたような物体が立っている。

「そこに立っているのは進化した腕だ」

私は腕だ。私はこんな音がする」吸い込むような音。「覚えているか? お前のドッペルゲンガーを」

クーパーはボブとの追いかけっこを思い出す。

「まず彼が戻らねばならない。そうすればお前が出られる」

 

 

ダギーはガレージにベンツを預け、ジャックからリンカーンのキーを受け取る。

 

ダギーがリンカーンでモーテルへ帰ると、ダーリャが電話を切ったところだ。ダギーはダーリャにジャックは死んだと告げる。ダギーは部屋に仕掛けていた盗聴器を聞かせる。ダーリャの電話の相手はレイだ。レイは逮捕されてサウスダコタの連邦刑務所にいる。レイはジェフリーズからの伝言として、「明日の夜、クーパーが近くにいたら殺せ」とダーリャに告げた。

ダーリャはダギーに、彼を殺すと50万ドルを山分けできる約束だったと話す。ダギーはダーリャにスペードのAのカードを見せ、彼女の45口径で撃ち殺す。

 

ダギーはフィリップ・ジェフリーズと通信する。「お前が明日戻るなら、俺はまたボブと共にいよう」

 

ダギーは隣の部屋に行き、シャンタルに「亭主を呼んでこい」と命じる。「お前とハッチである場所に行ってもらう」

 

ブラックロッジ。進化した腕が言う。「253/何度も何度も繰り返す/ボブ! ボブ! ボブ!/さあ行け!」

クーパーが進んでいくと、ソファにリーランド・パーマーが座っている。「ローラを探せ」床の模様が歪む。

フィリップ「何かがおかしい」

進化した腕「我がドッペルゲンガー」

クーパーがカーテンを開くと、荒野の道路をリンカーンを運転するダギーが見える。

進化した腕「存在しない!

 

クーパーはニューヨークの上空に浮かんでいる。一つのビルの丸い窓の中に吸い込まれ、ガラスケースの中に出現する。ちょうどサムがトレイシーと共に警備員を探していて不在の時だ。震動が起こり、クーパーはケースの中から消える。

闇の中を飛ばされていくクーパー。

 

一人でカウチに座り、たばこを吸いながらテレビでライオンを眺めるセーラ・パーマー

 

ロードハウス、バンバン・バー。クロマティックスの演奏する「シャドウ」。

シェリーが友達に、「うちの娘、変な男に引っかかっちゃって」と愚痴る。

ジェームズが見ている。「怪しいのよね」という友達にシェリーは「バイク事故があって喋らなくなっただけ。今でも変わってないよ。ジェームズはかっこいい」

 

②第2章レビュー

 

サウスダコタの殺人事件もそこそこに、焦点はブラックロッジのクーパーとダギー・ジョーンズに移ります。

ツインピークスの象徴ともいうべき、「赤いカーテンの部屋」のシーン。旧シリーズと同じ第2章で初出となるのは意図的と思われますが、内容的にも時間的にも、遥かにパワーアップしたものになっています。

 

意味のわからないシュールなイメージの連続…であるかのようにも思われますが、実際のところ語られているストーリーは実は割とシンプルで、わかりにくいところは少なくなっています。

旧シリーズ第29章の意外なほどストレートな続きになっていて、クーパーとダギー・ジョーンズが25年経っていよいよ入れ替わる……というメインストーリーは、ほぼ迷いなく読み取れるようになっています。

リンチはメインストーリーの部分はあえてわかりやすくしておいて(視聴者を離さぬよう気を使って)、その上でディテールの部分で思う存分イメージを爆発させることを選んでいるようです。

 

第2章はキラー・ボブを演じたフランク・シルヴァに捧げられています。もともと俳優でなく道具係でありながら、リンチにその佇まいを気に入られボブとしてデビューし一躍有名になったフランク・シルヴァは、1995年9月13日に44歳の若さで亡くなっています。死因はエイズの合併症でした。

 

③第2章 謎の考察(ネタバレ)

 

ウィリアム・ヘイスティングスの2つ隣の独房にいて、すっと消える顔が真っ黒の男第8章で登場する「森の男」と思われます。

 

ラスヴェガスのダンカン・トッドは登場時間が短く情報が少ないのでつかみどころのない人物です。今回採用したらしい人物、しかし嫌っているらしい人物は、スパイクのことでしょうか?

※追記‥吹き替え版を観た時点では上のように受け取ってしまったのですが、字幕版を見ると雇ったのは「彼女」なのでロレインですね。関わるべきでない「あの男のような奴」はダギーのことであるようです。

 

ダギーはレイを使って「ヘイスティングスの秘書」から「数字や記号による情報」を入手しようとしています。情報とはなんのか、なぜウィリアム・ヘイスティングスがそれを持っているのか、またなぜレイがそれを手に入れられるのか(ダギーは手に入れられないのか)はまだわかりません。

 

ホークが見る森の中の白い輪は、旧シリーズ第29章に登場したグラストンベリー・グローヴ。12本のシカモアの木のあるところ、ブラックロッジへの入り口がある場所です。第29章で、アニー・ブラックバーンをさらったウィンダム・アールを追いかけるクーパーは、ここを通ってブラックロッジに入りました。

 

片腕の男、フィリップ・マイケル・ジェラード。ボブは彼を主にマイクと呼んでいました。旧シリーズでは、現実世界で靴の行商人としての人格の場合の名前をフィリップ・ジェラード、異世界の住人としての人格の場合の名前をマイクと呼び分けていたかと思いますが、ザ・リターンではフィリップ・ジェラードとのみクレジットされています。

 

ローラとクーパーのやりとり「彼女を知ってる気がする/私の手は時々後ろへ曲がるの」は第2章の「25年後シーン」と同じであり、これはまさにその25年後である、ということなのだと思われます。ただ、ローラ・パーマーが年をとっているという点だけが違っています。

 

白い馬は、旧シリーズではセーラ・パーマーの幻の中に登場していました。リーランドがボブとして犯行を行う時、睡眠薬を飲まされて朦朧としたサラの白昼夢です。

 

フィリップ・ジェラードのセリフ「これは未来か。それとも過去か」は映画版では小人(The Man from Another Place)が同じセリフを言っています。その後には「私は腕だ。そして私はこんな音がする」と続きます。この時は、小人はインディアンの雄叫びのような(または電話の音のような)声をあげています。

つまり、「私は腕だ。そしてこんな音がする」と言う「木のようなもの」は小人が進化したものである、ということになります。

旧シリーズで小人を演じたマイケル・J・アンダーソンはザ・リターンには出演していません。

 

旧シリーズ第2章で、フィリップ・ジェラード(マイク)は次のように語っています。

「我等は人々と共に暮らした。君たちのコンビニエンス・ストア。その上に住んだ。私もかつては悪魔に魅入られ、左肩に刺青をしていた。だが、神の御前に立ち、私は変わった。腕を切り落としたのだ。私はマイク。そして彼はボブだ」

 

映画版では、小人はフィリップ・ジェラードの失われた片腕の位置に立ち、同時に同じセリフを喋っていました。ここから、小人はフィリップ・ジェラードの切り落とされた腕であるという可能性が考えられます。

 

「進化した腕」は木のようにも見えます。これは「シカモアの木」である、という解釈もあります。

「進化した腕」の頭部分は脳のように見え、そうすると全体は脳神経であるようにも見えます。

ジュリー・クルーズの1993年のアルバム「The Voice Of Love」のジャケットに、リンチによるアートが掲載されていますが、これが「進化した腕」に少し似ています。ただしたくさんの枝はなく、ひょろりと地面から生えた芽に頭部のようなものがついているという形をしています。これは「発芽したばかり」の「進化した腕」のようです。

 

追記。映画「イレイザーヘッド」を再見してようやく思い出したんですが、「進化した腕」にいちばん近いものは同映画に登場する「枯れ木(?)」ですね。葉のない枝だけの木。「イレイザーヘッド」には、小さいものが主人公ヘンリーのベッドのサイドテーブルの上に盛り土とともに置かれ、大きいものがヘンリーの首が落ちる(そして消しゴムになる)シーンのステージの上に出現しています。

1977年の長編デビュー作から、リンチがずっと変わらずに持っているイメージである、ということになります。

 

ダギー・ジョーンズがダーリャに見せるトランプのカードには、真っ黒なのっぺらぼうの顔に悪魔のようなツノ? 触覚?がついたものが描かれていました。そして、何かで引っ掻いたような傷がつけられていました。これはどうやら第1章でニューヨークに出現してサムとトレイシーを殺した「エクスペリメント・モデル」らしいのですが、果たして…?

 

ダギーが見せたカード。「俺はこいつが欲しいんだ」

 

第8章より、エクスペリメントの頭部。触覚?がある。

 

ダギーはフィリップ・ジェフリーズと連絡を取り合っているようです。フィリップ・ジェフリーズは映画版に登場した、失踪して行方不明の元FBI捜査官。デヴィッド・ボウイが演じていました。

 

ダーリャを殺した後でダギーが会いに行くシャンタルは、ジェニファー・ジェイソン・リーが演じています。

 

旧シリーズで死んだローラの父リーランドが、ブラックロッジの住人として一瞬だけ登場します。それと呼応するかのように、ツインピークスで孤独に暮らしているらしいセーラも一瞬だけ登場しています。

 

いよいよクーパーとダギー・ジョーンズの入れ替わりの時が来た…ようですが、フィリップ・ジェラードは「何かがおかしい」と感じています。進化した腕は「我がドッペルゲンガー」と言っています。ダギーがクーパーのドッペルゲンガーである…という単純な意味なのか、あるいはボブが腕の(小人の)ドッペルゲンガーであると言っているのかは不明です。

直後に「存在しない!」と叫ぶのは、次回に登場しクーパーが入れ替わってしまうダミーのダギー・ジョーンズの中にボブが存在しないという意味でしょうか。

 

ニューヨーク上空に現れたクーパーはガラスケースの中に吸い込まれます。この実験装置は、異世界から来るものを吸い込む働きがあるということかもしれません。

 

ロードハウスで演奏するクロマティックス(Chromatics)は2001年にオレゴン州ポートランドで結成されたシンセ・ポップ・バンド。ヴォーカル/ギター/シンセのルース・ラデレットを中心とする4人組。

第12章で再登場します。

 

シェリーが登場。クレジットではシェリーとだけしか表記されていないので、シェリー・ジョンソンなのかシェリー・ブリッグスなのか、はたまたどちらでもないのかはわかりません。ただ、娘はいるようです。

ジェームズも登場。旧シリーズではシェリーとジェームズはほとんど接点がなかったので、シェリーがジェームズをかっこいいと言うのは意外な感じ。

ジェームズが惚れている様子のレネーがのちに再登場する他、ジェームズと一緒にいるフレディー、シェリーに撃ち抜くポーズを見せるレッドも、今後重要になってくるキャラです。さりげなく、後につながるシーンであると言えます。

 

→第3章 ネタバレ考察とレビュー

 

 

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