Twin Peaks : The Return PART 9

監督/脚本/制作総指揮:デヴィッド・リンチ

脚本/制作総指揮:マーク・フロスト

カイル・マクラクラン

2017年7月9日放送(米国)

 

①第9章 ストーリー覚え書き(ネタバレ)

 

朝、血まみれのダギーが、畑の間の道を行く。

ダギーは”ファーム”へ。ハッチとシャンタルのハッチェンス夫妻が出迎える。

 

ゴードンは国防総省のデイビス大佐からの連絡を受け、飛行機の行き先をサウスダコタのバックホーンに変更する。

クーパーに関する事件だというゴードンに、ダイアンは「青いバラ事件?」と聞く。

そこへ、刑務所のマーフィー所長から電話がかかる。受けたゴードンは、「クーパーがパアーッと逃げた!

 

ダギーはシャンタルの携帯でメールを打つ。「ディナーの席での会話は弾む

次にダンカン・トッドに電話をかけ「次に電話するまでに終わらせろ」と告げる。

ダギーはハッチに、「二日以内に刑務所の所長を殺せ」と命令。「終わったらヴェガスでダブルヘッダーだ

ハッチはシャンタルに「熱いのをボスにかましてやれ」と指示。シャンタルはダギーに熱いキスをする。

 

3人のフスコ刑事が、ブッシュネル社長にダギー・ジョーンズについて尋ねる。

待たされているクーパーとジェイニー・E。3人のフスコは別室で、ダグラス・ジョーンズの素性について話す。ダグラス・ジョーンズ氏には、1997年以前の過去がないらしい。免許証も社会保険も、出生証明書さえない。

フスコはクーパーのDNAを調べるためにコーヒーカップを鑑識に送る。

刑事がフスコにスパイクが見つかったと報告する。「アイク・ザ・スパイクもついに終わりだ」

 

クーパーはアメリカ国旗を見つめている。赤いハイヒール。そしてコンセント

 

モーテルの部屋にいるスパイクは、JTに留守番電話の伝言を残している。「惜しくも失敗したので休暇をとる」

モーテルにフスコたちが駆けつけ、スパイクは逮捕される。

 

アンディとルーシーは、ウォリー・ブランドが明け渡した部屋のための椅子を選んでいる。ルーシーはベージュの椅子がいいと言うが、アンディは赤がいいと言う。アンディが折れてベージュがいいと言うと、ルーシーは赤い椅子をポチる。

 

ホーン家。シルビア・ホーンジョニーを探し回っている。ジョニーは暴走し、壁に激突。

 

ブリッグス家。ボビーが、フランクとホークとともに家に帰る。迎えるのはボビーの母のベティ・ブリッグス

ベティは、ガーランドが死ぬ前日にクーパーが訪ねてきたと言う。クーパーが帰るとすぐ、夫はこう言った。「いつか、ボビーとホークとトルーマンが来て、クーパー捜査官のことを尋ねるだろう。来たら渡して欲しいものがある」

ベティは椅子の背から何かを取り出す。ベティはボビーに、父は最後まであなたを信じていたと言う。

 

バックホーン。ダイアンは禁煙の場所で煙草を吸っている。「クソ連中が」

ダイアンはメールを受け取る。「ディナーの席での会話は弾む

 

ゴードンとアルバートに、マックレーが事件のあらましを説明する。

「ルース・ダヴェンポートが殺され、ウィリアム・ヘイスティングスを拘留した。その夜、ヘイスティングスの妻が撃たれて殺され、弁護士のジョージが逮捕された。翌日、ヘイスティングスの秘書が車の爆発で死亡した」

アルバートは「それでシーズン2はどうなるんだ?」ゴードンは「こういう奴だ、気にするな」

 

ゴードンたちは首なし死体を見る。

マックレーの話によると、ウィリアム・ヘイスティングスは「異次元空間について」のブログを開設していた。

ブログは一週間前に閉鎖された。最後の更新には、「ついに我々はいわゆるゾーンに入り、そこで少佐と出会った」と書かれていた。

アルバートは、少佐のものとされる死体が40代であることを指摘する。少佐なら今は72歳のはずだ。

ゴードンとアルバートは状況を整理する。ツイン・ピークス郊外の政府の施設で少佐が死んだのは25年前。あの死体と同じ年だ。

「こう考えてみよう。25年前、クーパーは少佐と懇意にしていた。そして今、クーパーがこの界隈に出没している」

コンスタンス、死体の胃から出たダギーからジェイニー・Eへの指輪を見せる。

 

森の中で、ジェリー・ホーンは言うことを聞かない自分の足と会話している。

 

ツインピークス警察署。会議室で食事をしているチャドを叱るフランク。

ブリッグス家の椅子から出てきたのは金属の筒だが、開け方がわからない。

ボビーは開け方を知ってると言う。外に出て、地面に筒を叩きつけるボビー。

中からは2枚の紙が出てくる。

 

 

ジャック・ラビット・パレスから253ヤード東へ進め。ジャック・ラビット・パレスを去る前にその土地の土をポケットに入れろ。2:53 10/1 10/2

二つの山。その上に赤い丸と、赤い三日月の下にエクスペリメント・マーク

 

もう1枚は数字の羅列の中に、「COOPER/COOPER」と書かれている。

 

ボビーは、ジャック・ラビット・パレスとは小さい頃父が連れて行ってくれた、空軍基地の近くの空想の場所だと言う。「俺が名付け親なんだ」

 

ゴードンはダイアンから1本だけ煙草をもらう。「しみる!

 

タミーはウィリアム・ヘイスティングスから話を聞く。

ウィリアム・ヘイスティングスは異次元空間に興味を持ち、ブログ「ゾーンを探して」を運営していた。

図書館司書のルース・ダヴェンポートは隠された記録を見つけるのが得意で、ウィリアムの助手をしていた。ルースはしかるべき時間にしかるべき場所に行けば、異次元空間に入れると確信していた。

事件の一週間前にウィリアムは異次元空間に入り、そこでガーランド・ブリッグス少佐に出会った。少佐は冬眠だと言って、他の連中に見つかるかもしれないから、他の場所へ行きたいと言っていた。だから、数字を入手するように頼まれた。

数字は座標だった。少佐の言った通り、軍のデータベースでそれを見つけた。

数字はルースが持っていた。先週の木曜日、少佐に数字を届けに行くと、他の連中が来ていた。彼らはウィリアムの首を掴むと、床に押し付けて言った。

「女房の名前は?」

ウィリアムはフィリスと答えた。

 

タミーが広げた6人の写真から、ウィリアムは正確にブリッグス少佐を当てる。ウィリアムは写真にサインをし、9/29と日付も書く。

 

数字を渡すと、少佐は宙に浮かび上がり言った。

クーパー、クーパー

その直後、頭が消えた。その時ルースが死んだ。悲しくて、ウィリアムはルースを抱きしめた。次の瞬間、目が覚めたら家にいた。

ルースとバハマに行きたかったと、ウィリアムは泣きわめく。

 

夜、グレートノーザンホテル。ベンとビバリーが謎の音を聞く。

 

ロードハウス。ハドソン・モホーク(Hudson Mohawke)の演奏、「Human」。

クロエとエラという女が話している。エラはハイのまま仕事に行ったので、クビにされた。エラは痒がって、脇の下が赤くただれている。

演奏はオ・ルヴォワール・シモーヌ(Au Revoir Simone)の「A Violent Yet Flammable World」に変わる。

エラは「あのペンギン見た?」とクロエに聞く。

 

②第9章レビュー

 

今回は一気に話が進みます。

ダギー・ジョーンズを追っていたゴードンとアルバートたち、第1章から描かれていたルース・ダヴェンポート殺害事件が、ガーランド・ブリッグス少佐を軸につながります。

さらに、胃の中から出てきた指輪でラスヴェガスのダギー・ジョーンズ(クーパー)もつながっていることになります。

 

また、今回はユーモアの度合いがいつもより濃く感じます。

ゴードンはいきなりダジャレ。「クーパーがパァーッと逃げた!」というのは英語では「Cooper flew the coop!

「Fly The coop」は俗語で「脱獄する、ずらかる」という意味です。

 

このところダイアンに押され気味だったアルバートの毒舌が復活しています。

(連鎖しまくる事件の経過を聞いて)「シーズン2はどうなるんだ?」

(ウィリアム・ヘイスティングスを指して)「それで、いつ負け犬になった?」

(泣きわめくウィリアムを見て)「男なのか、こいつは

 

そんなアルバートに対抗して、バックホーンの検死官コンスタンス・タルボットも毒舌が冴えています。

(アルバートの「いつ負け犬になった?」を受けて)「そりゃ、タマをなくした時でしょ」

 

第2章で登場したジェニファー・ジェイソン・リーのシャンタルが再登場。

また、彼女の夫のハッチとしてティム・ロスが登場しています。

短い登場シーンながら、二人ともさすがの存在感。

 

ウィリアム・ヘイスティングスを演じるマシュー・リラードは、今回は泣くわ喚くわの大熱演。アルバートも呆れるすさまじい嘆きぶりです。

悲しみの強烈な放出、顔を歪めて泣きわめく激しい感情の放出は、リンチの大好物です。リンチ自身が「痛みと苦しみ/ガルモンボジーア」を摂取するボブなんじゃないかと思うくらい。

各作品に一回は、美しい女優の顔を歪ませる激しい泣き顔を入れてきます。ローラ・ダーンなんて、何よりも泣き顔で気に入ってんじゃないかと思います。

今回は女優じゃなくて男ですが、なかなかすごいですね。

ルースと、バハマで、ダイビングが、したかったんですよぉ〜!

 

ロードハウスの客席でなんだか変な会話をして、脇の下の湿疹をぽりぽり掻いているエラを演じているのはスカイ・フェレイラ。彼女は女優兼シンガーソングライターで、2013年に最初のアルバムをリリースしています。

 

③第9章 謎の考察(ネタバレ)

 

ダギー・ジョーンズは第2章でシャンタルに「ファームへ行け。旦那のハッチを呼べ」と指示していました。

刑務所から出て、ファームに一時避難するところまでは計算通りだったようです。でも、レイに撃たれるのまでは計算外だったのでしょう。

 

ダギーがダンカン・トッドに指示をするシーンで、ダンカンの黒幕がダギーであることははっきりしました。

ハッチにはマーフィー所長の殺害を指示しています。その後のラスヴェガスのダブルヘッダーというのは…もちろんクーパーのことでしょう。

クーパーの命を狙う刺客に、新たにハッチとシャンタルも加わりました。

 

ラスヴェガスのダギー・ジョーンズに1997年以前の経歴がないことがわかりました。

ということは、ダギー・ジョーンズ(ボブ)は自身のドッペルゲンガーを1997年に作ったということになります。ツインピークスからの失踪から8年後のことです。

 

アイク・ザ・スパイクはあっさり逮捕。その直前に電話していたJTとは誰でしょう? ダンカン・トッドならDTですが。

 

ベティ・ブリッグスから、死の前日にクーパー/ダギー(ボブ)が訪ねてきたことがあらためて語られます。

ブリッグス少佐が死んだのは「ツインピークス近郊の軍の施設」であり、死因は「その建物の火事」とのことですが、そこにクーパー/ダギー(ボブ)がどう関連しているのか…?

 

死体置き場にFBIのゴードンとアルバートとタミー、バックホーン警察のマックレーとコンスタンス、国防総省のシンディ・ノックスが一堂に会して、いよいよ核心に迫る話になってきます。

ウィリアム・ヘイスティングスのブログ「ゾーンを探して」(The Search for the Zone)は実在しています。訪問者カウンターは「since June 1, 1997」となっています。1997年開設? ヴェガスのダギー・ジョーンズ誕生と同じ年?

 

ウィリアム・ヘイスティングスの秘書」が車の爆発で死んだことが唐突にマックレー刑事によって語られます。

ダギーとレイの会話で、レイが「座標」を入手する先としてずっと語られてきた「ヘイスティングスの秘書」ですが、結局本人は一度も出てこないまま、死んでしまっていたようです。爆殺したのはおそらくレイでしょう。

いろんな細かい人物も意味ありげに描写するリンチなのに、この「秘書」に限ってはまったく描写していないのはかえって意味ありげです。

 

そして、彼らとは別に行動してダギー・ジョーンズからのメールを受け取っているダイアン。彼女の真意も、怪しくなってきました。

 

ブリッグス少佐がフランクとホークに託したのは、2枚のメモでした。

2つの山はツイン・ピークス? どう見てもエクスペリエンスな絵も出現しました。

そして、ついに日付が。10月1日が二日後ということは、この日は9月29日

その日付は、後でウィリアム・ヘイスティングスのサインでも裏付けられます。

これで、劇中の日付が確定しました。何年なのかは、劇中の描写だけではまだわかりませんが…。

 

2:53」はクーパーがダギー・ジョーンズと入れ替わった時刻です。進化した腕も「253!」と言っていました。

 

2枚目の紙の数字の羅列は、ダギー・ジョーンズが「俺はそれが欲しいんだ」とずっと言っていた「座標」に違いないでしょう。レイが「ヘイスティングスの秘書」から入手した「数字」です。

ちなみに、この「座標」はレイが持っていて、ダギーはそれを聞き出す前にレイに撃たれたので、ダギーはまだこれを入手していないはずです。

 

ウィリアム・ヘイスティングスの話で、いよいよ超自然がクローズアップされてきます。

ウィリアムが行った「異次元」とはブラックロッジでしょうか? それともまた別の異空間?

ブラックロッジは「しかるべき時、しかるべき場所」で道が開かれる場所なので、その情報さえ得ていれば、ウィリアムが行けてもおかしくはないと言えます。

 

ブリッグス少佐は人間界では既に死んだことになっていましたが、異世界ではまだ生きていたようです。彼の死の顛末がどういうものだったのか、火事で死体が見つかったのかどうかなどがわからないので、彼の死というのはクーパーやフィリップ・ジェフリーズ、あるいはチェスター・デズモンドのような「失踪」だったのかもしれません。

 

ルース・ダヴェンポートを殺したのは誰でしょうか?

ダギーやレイではない。彼らが座標を入手したのはヘイスティングスの秘書からなので、ルースからではない。

ウィリアムの「奴らが入ってきた」「大勢の人物がそこにいた」などの発言からは、例の森の男たちが連想されたりもしますが…。

 

ロードハウスで演奏するハドソン・モホーク(Hudson Mohawke)はスコットランド出身のDJ、エレクトリック・ミュージシャン。

彼の演奏「Human」は残念ながらサントラには収録されていません。

 

オ・ルヴォワール・シモーヌ(Au Revoir Simone)は第4章で「Lark」を演奏していて、これが二回目の出演。「Lark」はサントラに入っていますが、今回の「A Violent Yet Flammable World」は残念ながら未収録。

2007年のアルバム「The Bird Of Music」では両方とも聴くことができます。

 

ハドソン・モホーク「Human」

 

The Bird of Music The Bird of Music
2,484円
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「Lark」「A Violent Yet Flammable World」収録

 

エラ役のスカイ・フェレイラのアルバム

 

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