「プラットフォーム」　★★★☆～全人類の階級社会の縮図

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」は、映画鑑賞後の率直な感想を伝えるため、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれる場合があります。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の趣旨についてご理解のうえ十分注意してお読みくださるようご了承願います。

「『シネマ報告書2021』の掲載にあたって」

全人類の階級社会の縮図 ★★★☆

(C)BASQUE FILMS, MR MIYAGI FILMS, PLATAFORMA LA PELICULA AIE

（2019年／スペイン／94分／El Hoyo） 【　監督　】 ガルダー・ガステル＝ウルティア【　出演　】イバン・マサゲアントニア・サン・フアンソリオン・エギレオル

エミリオ・ブアレ

【あらすじ】

　中央に大きな穴が開いた部屋で目覚めたゴレン。部屋にはゴレンとトリマカシと名乗る老人の二人がいた。穴を覗くと上下に果てしなく部屋があり、トリマカシは、この部屋は“第48層”であり、よい部屋だという。

　すると、上の部屋から巨大な台座に乗せられた食事が降りてくる。食事は上層の人間が食べ残した残飯同然のものだったが、それしか食べ物はない。各階層には2人の人間がおり、制限時間内に台座に乗せられた食事をとるというもので、さらに1カ月毎に階層が入れ替わるというものだった。

　下層に行けば行くほど食事は減っていく。1カ月後、ゴレンが目を覚ますと、そこは“第171層”。食べ物が無い人間は餓死するか同じ部屋の人間を食べるしかなかった―

【コメント】

　今は劇場で観たい映画が目白押し。あれも観たいこれも観ておきたいと思いつつも時間的な関係もあって何本かスルーせざるを得ない状況の中、週末に行きつけのTSUTAYAに立ち寄ったところ、これはぜひとも観ておきたいと手を伸ばしたのが本作。

　本作は年初めに小規模公開された作品ですが、みるからに奇想天外で面白そうなシチュエーションスリラーだったので、劇場で観ようか迷ったものです。結局のところスルーしてしまいましたが、今般めでたくレンタル開始ということで、さっそく鑑賞してみた次第です。

(C)BASQUE FILMS, MR MIYAGI FILMS, PLATAFORMA LA PELICULA AIE

　いや～やっぱりシチュエーションスリラーって面白いですな。しかも本作は意味不明なシチュエーションながらもシンプルで、かつ言いたいことが分かりやすい。要するに現代の全人類における階層社会の縮図として描かれているわけです。

　特段の状況説明もなく、このSF的な仕組みも何も分からない。ただただ上から豪華食事が降りてきて、階層ごとにいる二人がむさぼるように手づかみで食い散らかしては下に降りていく。下層に行けば行くほど残飯同然と化していくが、それでも生きるためにその残飯を食べる。さらに下層に行けばその残飯すらも残っていない。飢え死にするわけです。だから、生きるために同層にいる片方の人間を殺して肉を喰らい生き延びるしかない。1か月後は上層かもしれないし下層かもしれないし、下層が第何層まであるのかも分からない。

　第1層からきちんと分け与えながら食事をとれば最下層まで食事が行き渡るのに、人間は時間内に食べられるだけ食べる。まさに現在の階層社会を描いているじゃあありませんか。潤っている国もあれば、明日の飯にも困る国もある。しかし潤っている国は自分たちのことで精いっぱいで貧困国を助けようとしない。そして、その階層社会を操る第0層という富裕層の存在。ある意味直接的な内容ではありましたが、非常に興味深い作品でしたね。