「おとなの事情スマホをのぞいたら」　★★★～感動に頼る邦画の悪いクセ

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」は、映画鑑賞後の率直な感想を伝えるため、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれる場合があります。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の趣旨についてご理解のうえ十分注意してお読みくださるようご了承願います。

「『シネマ報告書2021』の掲載にあたって」

感動に頼る邦画の悪いクセ ★★★

（2021年／日本／101分） 【　監督　】 光野道夫【　原作　】

映画『Perfetti sconosciuti』

【　出演　】

東山紀之
常盤貴子
益岡徹
田口浩正
木南晴夏
淵上泰史
鈴木保奈美

【あらすじ】

　ある事故がきっかけで深い絆が結ばれた7人の男女。そのうち6人は夫婦となり、年に1度みんなで集まって会食を楽しんでいた。

　その日、新婚の夫婦の提案をきっかけに、それぞれのスマホに届く全てのメールと電話を全員に公開するゲームをすることになるが、それぞれが絶対に知られたくない秘密を抱えており、スマホが鳴るたびにパーティは修羅場と化していく―

【コメント】

　再度の緊急事態宣言のため、映画館も時短20時を余儀なくされレイトショーもない状況。興収が期待された大作もまたもや公開延期の憂き目、幸先の悪い2021年の映画鑑賞ですな。

　そんな中で、これはちょいと面白そうだと以前から目を付けていたのが本作。本作は、2016年のイタリア映画『おとなの事情』の日本版リメイクで、当時数々の賞を受賞した大ヒットコメディ。世界各国でも続々とリメイクされている中で、満を持しての日本版が作られたようです。

　そういうことなので、本作を鑑賞するにあたりAmazonプライムでイタリア版を事前に鑑賞、日本版としてどのような差別化が図られたかという視点をもって「立川シネマシティ」で鑑賞した次第です。

　うん、なるほどね。イタリア版の役者に馴染みがなかったためピンときませんでしたが、やっぱり知ってる役者が出ている本作のほうが飲み込みやすかったです。

　筋書き的にはイタリア版とほぼほぼ一緒でしたが、それなりに僕は楽しめました。本作がそれと違うところが“コンビーフ”でしょうね。果たしてこの設定が必要だったのか正直怪しいところで、ムダに良い話・感動に頼ろうとする邦画の悪いクセだなーとも感じましたね。

　本作は決められた少数のキャラが密室で起こるてんやわんやな騒動を描くシチュエーションコメディで、スマホを中心とした会話やギミックが妙となるもの。スマホゲームの持っていき方やメールのやり取りなど、多少強引なところはありましたけど、ギミックはほぼほぼオリジナルを踏襲していましたね。ただ、ほんとオリジナルそのまんまのギミックを流用し、取って付けたような“コンビーフ”設定で結果良い話で終わるというのは、ちょいと芸がなさすぎ。十数年振りの映画の主役となるジャニの重鎮・東山紀之をはじめとして、鈴木保奈美や常盤貴子、益岡徹といった豪華ベテラン勢のクセのあるキャラも光っていて、観ていて楽しいのは楽しいが、大げさな演技に頼りすぎていて、日本ならではのギミックや本来の“他人の秘密を知ってしまう後ろめたさと美味しさ”という味が薄い気がしましたね。