「シネマ報告書」は、映画鑑賞後の率直な感想を伝えるため、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれる場合があります。
これから観ようと思っている方は、本報告書の趣旨についてご理解のうえ十分注意してお読みくださるようご了承願います。
綾野剛
成田凌
岸井ゆきの
石井杏奈
内野聖陽
【あらすじ】
過去の記憶がないまま車上生活を送っている名越進。
ある日、名越の前に伊藤学と名乗る医学生が現れ、期限7日間、報酬70万円を条件にある手術を提案する。それは、頭蓋骨に穴を開け第六感を芽生えさせる“トレパネーション”という手術だった。
手術を受けた名越の左目は、人間が異形の形で見えるようになってしまう。伊藤は他人の深層心理が視覚化されて見えていると解釈、それを“ホムンクルス”と名付ける。
名越はその能力でトラウマを抱える人たちと交流し、次第に失った自分の過去とも向き合うことになる―
【コメント】
さて、今回劇場で鑑賞したのは、漫画原作の実写映画化である本作。
本作の原作者である山本英夫、実は僕、山本先生の漫画「殺し屋1」が大好きで、漫画は全巻所持しているし何度も繰り返し読んでいるんです。あと、「のぞき屋」も好きで読んでいたし本作の漫画も一時期読んでいました。
しかしながら本作、「殺し屋1」の次に連載された漫画で、これまでの視覚的に刺激が強い作風とは異なる、大人しめな感じがあったので、休載時期があったこともあり途中で脱落してしまいましたが、清水崇監督・綾野剛主演で実写化ということで楽しみにしていた作品でした。ということでさっそく「立川シネマシティ」に足を運んだ次第です。
(C)2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ
うむ、なるほど、そう来ましたか。まあとりあえずは及第点といったところでしょうか。主役の綾野剛と狂気の医学生役の成田凌が役にピッタリハマっていて良かったと思います。しかしながら、原作で言わんとしているテーマやメッセージが本作で盛り込まれていたかかといえば微妙なところで、そういった意味では本作の映像化はかなり難しく、ハードルが高すぎたんじゃないかと思われます。
山本英夫の漫画は独特の世界観があって、ある種哲学的な要素が盛り込まれていて、この「ホムンクルス」は特にその哲学的思想が強い漫画だと思います。だからこそ、連載当時まだ刺激だけを求める若輩者だった僕がその意図が分からずに脱落してしまったわけですが。
じゃあ「ホムンクルス」のテーマって何だろう?となると、これまた難しいのですが、人間が抱えるトラウマを通して、自分とは何者なのか、自分という存在は何なのか、ひいては自分が見ているこの世界は一体何なのか、ということなんじゃないかなと。いわゆるお釈迦さんが唱えた般若心経そのものですね。
本作ではトレパネーションという古代に実際にあった外科手術を施すことで、これまで見てきた世界が一変するということなんですが、要するにこれは見方ひとつ変えるだけで世界がまるっきり違って見えてくる、人によって世界を見る角度は様々だから、それぞれの人間が皆同じ世界を見ているとは限らない、ということなんですね。その角度によって、人は悩んだり喜んだり悲しんだりする。そういったものが作品に込められているんじゃないかと。そう考えると、果たして実写化された本作にそれが込められていただろうか?ということなんです。残念ながら、エンタメ要素が強い本作では、そんな哲学的要素はほぼなかったと思いますね。もっとも、そんな小難しい要素を詰め込んだらわけ分かんなくなりそうですが。
(C)2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ
個人的には、もう一回「殺し屋1」を忠実に映画化してほしいな~と思う今日この頃。まあ、三池崇史監督の実写化もなかなかにグロかったですが、本当に忠実に作ったらそれこそグロ過ぎてヤバそうです。でも実は「殺し屋1」もクライマックスに進むにつれて哲学的思想が強くなっていくので、これもある種難しそうですが。これを機会に、山本英夫先生の映像化が進んでほしいですね。
【2021年度 Myランキング】(4/4時点)
本作は、本年度のベスト10ワースト3ともにランキング外。
久しぶりに腰やっちまった!
(ベスト)… ★★★☆以上が基準
1位:すばらしき世界 ★★★★
4位:ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実 ★★★★
5位:哀愁しんでれら ★★★☆
6位:騙し絵の牙 ★★★☆
9位:
10位:
次点:
(ワースト)… ★★☆以下が基準
2位:太陽は動かない ★★☆
3位:
<その他ランク外一覧>
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