「三度目の殺人」 ★★★★~“真実”とは個々の利害の調整結果である | そんなことより恋をしろ

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※※※ 注意 ※※※

 「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。

 これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。

「『シネマ報告書2017』の掲載にあたって」

 
“真実”とは個々の利害の調整結果である
★★★★
(C)2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ

 

(2017年/日本/124分) 
 
【 脚本・監督 】
是枝裕和

 

【 出演 】
福山雅治
役所広司
広瀬すず
満島真之介
市川実日子
松岡依都美
橋爪功
斉藤由貴
吉田鋼太郎
 

 

【あらすじ】

 

 とある殺人事件の犯人を弁護することになった弁護士の重盛。

 犯人の三隅は、30年前にも同様の殺人の前科があり、今回の事件の犯行も自供している。しかし、三隅の供述がコロコロ変わるため、弁護の方針を定められずにいた。

 どうにか無期懲役に持ち込もうと、重盛とその助手は事件の調査に乗り出すが、三隅と被害者の娘・咲江との接点が浮かび上がり、やがて三隅との供述とはことなる事実が分かっていく―

 

 

【コメント】

 
 さて、今回は海外のショーレースでも名をはせている是枝裕和監督の最新作を鑑賞。2004年の『誰も知らない』で一躍脚光を浴び、近年の『海街Diary』『そして父になる』で一気に有名になった監督なわけですが、恥ずかしながら是枝裕和監督作品を劇場で鑑賞するのは本作が初となります。

 見たところヒューマンミステリーっぽい仕立てで非常に興味をそそる映画だったので、今回は「吉祥寺オデヲン」に足を運び鑑賞した次第です。

 

 

(C)2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ

 

ヒューマンミステリー仕立ての社会派ドラマ

 

 まず最初に言っておきたいのは、本作は真犯人は誰だ!とか、事件の真相を追え!とかいったヒューマンミステリーの類ではないということで、むしろ根底にあるのは世の中の不条理や納得いかない“真実”というものを描いた社会派のドラマであるということです。

 本作からこのテーマを掴めなかった人は、とても不完全燃焼な作品になると思うし、逆に早くにこのことを掴み取れた人は、とても興味深い作品になると思います。ちなみに僕は後者、本作は非常に面白い映画として鑑賞できました。

 ひとつの殺人事件をめぐり、状況から見る客観的な事実と、さまざまな登場人物の思惑が重なって作られていく“真実”。主人公の弁護士・重盛は、かなり事実に近づいていくにもかかわらず、犯人・三隅の覆し証言により、展開は一変し、結局のところ事の真相はうやむやになったまま事件は収束していく。

 謎な部分を多く残したまま終劇となってしまうため、ミステリーものとしてはとてもスッキリしないので、ふざけんな!と思う人は多いと思います。しかし、本作で言わんとしていることはそこではない。登場人物の会話に耳を傾ければ、本作の主軸がそういう部分ではないということがピンとくる人はくると思います。

 ミステリーものとして観るより、事実を語っているのは一体誰なのか?タイトルの“三度目の殺人”とはどういうことなのか?最後に重盛が三隅にいった一言“器”とは何なのか?この大きな三点に重きを置いて、本作のテーマを考えながら観るべき映画だと感じます。

 

 

ミステリアスな役所広司の演技に拍手

 

 本作に出演している役者たちは、本作の奥深いテーマをしっかり描き支えていたと思います。

 なんといっても、犯人・三隅役の役所広司はさすがの一言。本作は役所広司のためにある映画といっても過言じゃないくらいの存在感で、48になってもイケメン福山雅治を完全に食った演技でした。空っぽの器のような人間、だけど時折垣間見える誰かのために役立ちたいという無償の奉仕精神と自己犠牲、誰かを守るために一瞬見せる人間らしさ。こんな難しい役どころを、よくぞここまで表現したなと感心しましたね。ベテランの味は一味も二味も違う。ますます役所広司という俳優に目が離せなくなりました。

 とはいえ、弁護士役の福山雅治も決して悪くなかったし、助手の満島真之介もフレッシュな弁護して良かったと思います。そして、広瀬すずも本作でさらなる飛躍をしましたね。

 本作は役者の深い演技で成り立った重厚な一本でもあります。

 

 

“真実”とは個々の利害の調整結果である

 

 本作で言わんとしているテーマ、それは「“真実”とは個々の利害の調整結果である」ということに他ならないと感じます。

 裁判の判決などにおいて結果として出される“真実”というのは、必ずしも“事実”ではなく、関わる人間の思惑や利害によって生み出されるものだということ、そして、“事実”ではない“真実”により解決とすることを良しとしてよいものなのか、ということを問題提起しているわけです。本作では、それが分かりやすく描かれていますね。

 証言がころころと変わり、事実が分からぬまま死刑判決が下った犯人。己の裁判勝利のために事実とはずれた方針を立てる弁護士。成績をスケジュール遵守のために真相を深堀りしないまま裁判を終わらせる裁判官。そもそもの事件の要因を知っているがひた隠しにする被害者家族。このような、それぞれの思惑が複雑に絡み合い、そんな利害をうまく調整した結果が真実として記録される。

 こういうことって、この世の中じゃよくある話なわけで、学校だって職場だって近所付き合いだってこんなことはあり得ることなんです。結局のところ、真相なんて誰にも分らない、不都合な真実は嘘や利害によって黙殺され、第三者の組み立てによってストーリーが作られてしまう、ということを言いたかったのではないかと思いますね。

 

 

(C)2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ

 

 

 

【2017年度 Myランキング】(9/18時点)

 

 本作は、本年度のベスト10中4位(暫定)にランクイン。

 また暑くなった!

 

(ベスト)… ★★★☆以上が基準

 

  1位:沈黙 -サイレンス- ★★★★☆

  2位:愚行録 ★★★★

  3位:帝一の國 ★★★★

  4位:三度目の殺人 ★★★★

  5位:ハクソー・リッジ ★★★★

  6位:ジョン・ウィック:チャプター2 ★★★★

  7位:パージ:大統領令 ★★★★

  8位:チア☆ダン ★★★★

  9位:暗黒女子 ★★★★

 10位:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス ★★★★

  次点:銀魂 ★★★★

     メッセージ ★★★☆

     おじいちゃんはデブゴン ★★★☆

     新感染 ファイナル・エクスプレス ★★★☆

 

  (ワースト)… ★★☆以下が基準

 

  1位:無限の住人 ★☆

  2位:アサシン クリード ★★

  3位:グレートウォール ★★

 

 

<その他ランク外一覧>

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『三度目の殺人』の公式サイトはこちら

 

 

 

 

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