「散歩する侵略者」　★★★～通向けのシュールなSFスリラー

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。

「『シネマ報告書2017』の掲載にあたって」

通向けのシュールなSFスリラー ★★★

【　原作　】前川知大

散歩する侵略者 (角川文庫)

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【　出演　】長澤まさみ松田龍平高杉真宙恒松祐里長谷川博己前田敦子満島真之介児嶋一哉光石研東出昌大小泉今日子笹野高史

【あらすじ】

　すでに夫婦仲が破綻していた夫・加瀬真治とその妻・鳴海。鳴海は、数日間行方不明となっていた真治が別人のようになっていることに戸惑っていた。

　一方、ジャーナリストの桜井は、自分が宇宙人と名乗る謎の高校生・天野とともに、一家惨殺事件の容疑者とされる女子高生・あきらを探していた。

　天野によると、宇宙人は人間の“概念”を調査し奪うことで、人類を侵略することを目的としており、あきらは仲間の一人だという。

　真治も鳴海に自分は宇宙人であると告げたが、ともに行動するうち不仲だった二人の愛は再び戻り始めていた―

【コメント】

　さて、今回はスリラー映画を手掛ければ右に出る者はいない？黒沢清監督によるSFスリラーである本作を鑑賞。劇場の予告編でちょっと面白そうだなと思っていたので、一週遅れたものの「MOVIX昭島」に足を運んだ次第。劇場ガラガラでしたが大丈夫か・・・

通向けのシュールなSFスリラー

　いや～シュールですな～。通向けですよコレ。

　宇宙人登場、人類滅亡の危機、というSFには定番のフォーマットでありながらも、人間に襲い掛かる宇宙人との対決やUFOとドンパチ繰り広げたりといったド派手なシーンはほぼゼロ、CGもほとんどない、人間の身体を乗っ取ったわずか３人の宇宙人が、ただただ淡々と侵略していくための準備をする過程が描かれていて、侵略感まるでなしという不可思議な映画でしたね。いやでも、僕はこのテイスト嫌いじゃないです。

　この雰囲気は70年代80年代の邦画によくあったシュールな展開（というか単純にお金が無かっただけという説）といった感じで、とにかく、ただひたすら淡々とストーリーが進んでいくので、合わない人はただただ退屈なだけかもしれませんね。逆に、こんなシュールなテイストにハマれば面白いかもしれません。

　とはいえクライマックス、宇宙人の侵略が始まり人類は一体どうなるのか？という本作の締めくくりですが、救いのキーとなるのが結局のところ“愛”という部分が僕的にはなんだかなぁ～といった感じ。最後までシュールに徹してもらっても悪くはなかったですけどね。

本作のMVP長澤まさみの熱演

　いやでも、本作の出演者たちはどれも個性的で非常に良かったと思いますよ。

　宇宙人の松田龍平しかり、高校生の高杉真宙や勝気なJK恒松祐里、ジャーナリスト長谷川博己、チョイ役でしたが前田のあっちゃん、満島真之介、アンジャッシュの渡部じゃないほう（児島だよ！）もインパクト大。最後の最後で登場したキョンキョンにも目を引きましたね。

　とはいえ、本作で最も熱演してたのはなんといっても長澤まさみでしょう。変になった夫のガイドとしてイライラしてるシーンが多いですが、徐々に夫に心惹かれていく過程がよく伝わってきます。本当に良い女優さんに成長しましたな～

スピンオフドラマ「予兆散歩する侵略者」WOWOWで9/19放送

　そんなわけで、通向けではありますがハマる人にはハマるシュール系SFスリラーでしたが、本作のアナザーストーリーであるドラマ「予兆散歩する侵略者」がWOWOWにて9/19に放送とのこと。

　監督は同じ黒沢清、キャストは夏帆、染谷将太とのことで、本作のキャストとの絡みはない別物のドラマのようですが、本作で神父としてちょいと登場した東出昌大が出演するということで、どうやらこの神父がキーマンになりそうな感じがします。

　しかし最近多いですな、こういった映画と衛星ドラマのスピンオフ系もの。WOWOW契約してないけど、そろそろ契約しよっかな～